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第103回世銀・IMF 合同開発委員会における日本国ステートメント(令和3年4月9日)

  1. はじめに

     2021年に入っても新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が継続する中で、国際社会は連携して、一刻も早く危機から脱却するとともに、将来を見据えて、次の危機への備えを強化しつつ、持続可能な社会と成長の土台の構築に取り組み、強靭な復興を目指すことが重要です。

  2. COVID-19の危機からの脱却

     まずは、COVID-19の感染拡大を収束させることが喫緊の課題です。そのためには、ワクチン・治療薬・診断薬の開発・製造・普及を一層促進し、途上国を含めた公平なアクセスを確保することが不可欠です。
     こうした観点から、日本は、これまでCOVAX等への資金貢献を通じて、Access to COVID-19 Tools Accelerator(ACT-A)の取組みを支援してきました。世銀グループが、世界保健機関(WHO)等の国際機関と一体となって、ACT-Aの4つの柱である、ワクチン、治療、診断、保健システムの強化にかかる支援を更に推進することを期待します。
     特に、世銀グループがCOVAXと協調して、途上国のワクチン調達を支援していることを歓迎します。日本は、途上国政府が国内でワクチンを普及させる際に必要となる能力の強化やコールドチェーンを含む医療設備・機材の整備等を支援するため、「保健危機への備えと対応に係るマルチドナー基金(HEPRTF)」に対し、50百万ドルの追加拠出を行うことを表明します。国際金融公社(IFC)のGlobal Health Platformを通じた民間資金動員と併せ、ワクチンの公平なアクセス確保に向けた保健システムの強化が促進されることを期待します。

  3. 強靭な復興(次の危機への備え、持続可能な社会、成長の土台の構築)

     次に、危機からの復興段階においては、将来を見据えながら以下の課題に取り組んでいくことが重要です。

    (1)次の危機への備え

     まず、今回のCOVID-19の経験を踏まえ、次の危機への備えを強化する必要があります。

    ①パンデミックへの備え
     COVID-19は人類にとって最後のパンデミックではありません。次なるパンデミックへの予防・備え・対応に向けた保健システムの強化が不可欠であり、それに資するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成が一層重要です。COVID-19の経験で明らかになったように、早期の感染者特定、診断、隔離及び治療を迅速かつ的確に実施できる強靭な保健システムの構築が大切であり、それを支える医療人材の育成、機材・医薬品や施設・インフラの整備と確保、医療ネットワークや持続可能な保健財政制度の確立などに取り組む必要があります。
     また、UHCの達成には、乳幼児の発育不全や免疫低下、非感染症疾患のリスク低減のため、栄養の側面から取り組むことも重要です。日本として、12月に東京で開催する栄養サミットに向け、栄養分野において、世銀グループと連携して途上国支援に貢献していきます。

    ②自然災害への備え
     危機への備えは、パンデミックだけに求められるものではなく、気候変動により、自然災害のリスクが高まっている中で、自然災害への備えも一層重要です。本年は、東日本大震災の発生から10年目に当たり、日本は震災からの復興の中で得た知見や経験を、引き続き、途上国への支援に還元していきます。
     自然災害に対する強靭性に関する知見は、COVID-19の影響を受けた途上国のBuilding Back Better(より良い復興)に向けた取組みや、パンデミックへの備えの強化にも有用です。この観点から、日本・世銀防災共同プログラムにおける防災の取組みと保健の取組みの連携強化を期待します。

    (2)持続可能な社会の構築

     今後の復興段階においては、危機への備えと共に、持続可能な社会を構築する必要があり、この観点から、気候変動への対応と債務の透明性・持続可能性の確保が重要です。

    ①気候変動への対応
     気候変動については、日本は、2050年カーボンニュートラルを宣言したことを受け、経済と環境の好循環を追求していく方針です。こうした取組みを各国と進めるため、今般、日本は、気候変動に取り組む財務大臣連合(Coalition of Finance Ministers for Climate Action)にメンバーとして参加しました。
     多くの途上国で、今後、脱炭素化と経済成長を両立させながら、貧困削減に取り組んでいく必要がある中で、世銀グループが、民間資金も動員しつつ、各国の実情を踏まえた緩和策と適応策双方への適切な支援を行うことが重要です。日本としては、世銀グループに対し、一足飛びには脱炭素化できない途上国の着実な移行(トランジション)を支援することを期待します。
     また、民間資金の役割が一段と高まる中、その積極的動員を図る観点からは、企業による気候関連の情報開示を通じて、気候変動に係るリスクと機会を明確にすることが重要です。これに係る技術支援を行うため、IFCに設置した日本信託基金に対し5百万ドルを拠出することを表明します。

    ②債務の透明性・持続可能性の確保
     COVID-19の影響により途上国の債務状況が悪化しており、持続可能な成長のためには、債務の透明性・持続可能性の確保も不可欠です。
     途上国の高い資金ニーズに鑑み、債務支払猶予イニシアティブ(Debt Service Suspension Initiative(DSSI))の最後の延長に係るG20及びパリクラブの合意を歓迎します。これにより、IMFの高次クレジット・トランシュ(UCT)支援プログラム、また必要に応じて「共通枠組」の下での債務措置を通じた構造的な債務問題の対処へと、途上国の移行が促されることを期待します。
     「共通枠組」については、DSSIを実施した全ての債権者が「共通枠組」に基づく債務措置を透明かつ確実に実施すると共に、その他の公的二国間債権者及び民間債権者がコンパラビリティ原則に基づく措置を確実に実施することが重要と考えます。こうした債務措置が債権者委員会において早期に具体化されることが必要です。
     途上国への安定的な投資資金の流入を確保するためには、途上国の債務状況を途上国自身及び債権者や投資家が平時より正確に把握できることが不可欠です。こうした観点から、世銀が、IMFと共に、債務データ突合(Debt Data Reconciliation)を通じて、債務データの透明性・正確性の確保に努めることを慫慂します。また、世銀において、途上国の債務管理・透明性の向上に係る能力構築支援を加速することを期待します。
     こうした取組みを強化するため、国際開発協会(IDA)第19次増資で導入された持続可能な開発金融政策(Sustainable Development Finance Policy)の取組みを着実に進めることを求めます。

    (3)成長の土台の構築(質の高いインフラ投資)

     復興段階において、途上国における力強い成長を実現する上では、COVID-19の感染拡大による経済社会の変化も踏まえ、成長の土台となるインフラへの投資を進める必要があります。
     デジタル、グリーン等の分野を含め、経済基盤の整備や新たな産業の育成、雇用の創出を行うに当たっては、サイバーセキュリティーやデータプライバシーを含む安全性、包摂性、開放性、持続可能性、ガバナンス等にも配慮した質の高いインフラ投資の促進が重要です。
     世銀グループが支援する事業のみならず、他の国際開発金融機関や途上国政府自身、あるいは外国からの直接投資によって実施されるインフラ投資においても、こうした点が確保されることが重要であり、世銀グループによる案件組成支援や技術支援を通じて、知見の共有がなされることを期待します。
     こうした観点から、「質の高いインフラ・パートナーシップ基金」、「世銀東京開発ラーニングセンター(TDLC)」などを活用した支援を引き続き推進するとともに、現在日本が共同議長を務める「グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)」に対し、10百万ドルの追加拠出を行うことを表明します。

  4. 世銀グループの資金基盤の強化

     途上国が危機からの脱却と強靭かつ持続可能な復興を達成する上で、世銀グループの役割は極めて重要です。そのため、世銀グループの各機関が、途上国のニーズに応え、必要な支援をタイムリーに実施できるよう、資金基盤を確保する必要があります。
     特に、COVID-19の影響が大きい低所得国において、支援の需要が高まる中、日本が昨年10月の開発委員会でその必要性を指摘した、IDA第20次増資の前倒しに合意したことを歓迎します。本年12月までの合意に向け、国際社会が連携して取り組むことが重要であり、日本は、引き続き、議論に積極的に参画していきます。
     国際復興開発銀行(IBRD)及びIFCについても、危機対応と強靭な復興に向けた迅速な支援が求められている中で、日本として、両機関の増資に係る払込みを前倒しすることを決定しました。危機下において、両機関が全力で途上国支援に取り組めるよう、引き続きサポートしていきます。

  5. 結語

     途上国における危機対応と強靭な復興に向けて、マルパス総裁のリーダーシップの下、世界の開発をリードする世銀グループが、IMFと連携して、引き続き、主導的な役割を果たすことを期待します。
     最後に、この場を借りて、IFC長官に就任したマクタール・ディオップ氏を歓迎すると共に、日本として、世銀グループとの長年にわたるパートナーシップを更に発展させ、その世銀グループによる取組みを、資金面、政策面、そして人材面で、積極的に支援していくことを表明します。


(以 上)