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第102回世銀・IMF合同開発委員会 コミュニケ(ポイント)(令和2年10月16日)

  1. 開発委員会は、本日(2020年10月16日)、テレビ会議形式で開催された。

  2. 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、引き続き、各国に深刻な影響を及ぼし、特に最も脆弱な人々に対して、保健システムの圧迫、生産性の低下、食糧安全保障上の脅威、失業の増加、収入の減少をもたらしている。我々は、このパンデミックと闘い、経済活動と必要なサービスの維持に向け最前線で活動している人々を称賛し、支援する。 この世界的な危機には、開発コミュニティによる、包括的かつ強力なグローバルな対応が必要である。 従って、我々は、世界銀行グループ(WBG)と国際通貨基金(IMF)に対し、引き続き、加盟国、公的及び民間部門、地域及び二国間の開発パートナー、並びに、国際連合を含む国際機関と協力することを求める。世銀グループは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組みを支援するとともに、持続可能な形での極度の貧困の削減と繁栄の共有の促進という二大目標、並びに、国際開発協会第19次増資(IDA19)及び増資合意のコミットメントに焦点を置きながら、対応を進めるべきである。

  3. パンデミックは、過去80年間で最も大規模な国際経済の収縮をもたらしている。これにより、途上国、新興国及び先進国が影響を受けるとともに、世界の貧困率が上昇し、格差が拡大するとともに、長期的な経済成長の見通しが損なわれている。一連のロックダウン、制限及び継続する不確実性は、投資、貿易及び海外送金を急激に落ち込ませ、雇用や人的資本を侵食し、子供が通学できない状態にするとともに、食料品・医薬品のサプライチェーンを圧迫している。 人道危機は、小規模な島嶼国などにおいて、脆弱性・紛争・暴力を更に悪化させるとともに、リスクを高める可能性がある。 経済危機は、女性が主たる働き手の家庭、若者及び高齢者、難民並びに避難民などの脆弱な人々の生命と生計を脅かしている。また、ジェンダーギャップが拡大し、苦労して得られた女性と子供のための開発成果や見通しも脅かされている。

  4. 我々は、世銀グループによる各国への迅速かつ規模感のあるCOVID-19対応を称賛する。世銀グループは、救済(Relief)、再建(Restructuring)、強靭な復興(Resilient Recovery)を中心とした、多国間の取組みにおいて最前線に立ってきた。我々は、保健・社会・経済面での対応とともに、強靭で包摂的かつ持続可能な復興に不可欠な政策、制度及び投資に焦点を置いていることを歓迎する。

  5. 世銀グループは、保健システムを強化する各国の取組みを支援しており、今後も続けていくべきである。我々は、COVID-19に効果的なワクチンの重要性を強調するとともに、IDA及び国際復興開発銀行(IBRD)の支援対象国によるワクチンの購入及び供給を支援するために最近承認された120億ドルの資金支援を歓迎する。我々は、途上国が、検査、治療及びワクチンに負担可能な価格で公平にアクセスできるよう、世銀グループが支援することを慫慂する。COVID-19による危機は、長期間に亘って広範囲に及ぶ保健・経済・社会面での困難を生じさせることから、我々は、ユニバーサル・カバレッジを備えた強固な保健システムの構築に向けた取組みを強化することを慫慂し、それにより、将来のパンデミックに対する備えや強靭性を強化する。その観点で、デジタル技術は、必要な診療の確保、教育サービスの維持、企業の存続を可能とする。このため、我々は、安全性及びデータプライバシーを確保した上でのデジタルコネクティビティの拡大、デジタル金融サービスの普及・拡大、並びに、デジタルトランスフォーメーションへの支援のための世銀グループによる取組みを歓迎する。これらの取組みは、企業が危機に適応し、より競争力を高め、雇用を維持し、そして、教育、健康、社会保護及び金融へのアクセスを含む重要なサービスの提供を継続する助けとなる。

  6. COVID-19への対応の再建(Restructuring)及び復興(Recovery)の段階において、世銀グループ及びIMFは、包摂的で持続可能な復興のための基盤構築の促進、負担可能なエネルギーへのアクセス及びエネルギー安全保障の確保、気候変動を含む経済・環境上の脆弱性の課題への対応に焦点を置き、各国がより良い再建を行うことができるよう支援する必要がある。我々は、現在策定中の気候変動アクションプラン(Climate Action Plan)に期待する。雇用及び経済の変革を中心とする強靭な復興を加速させるため、我々は、世銀グループに対して、各国が社会的セーフティネットを強化するとともに、パンデミック後の文脈において生産的かつ持続可能なセクターへの資本と労働力の移行を促進できるよう、知見、政策アドバイス及び資金支援を提供すると同時に、中小企業への貿易金融の開放やインフォーマリティの課題への対応に必要なイノベーションを提供することを求める。また、我々は、世銀グループが、国際金融公社(IFC)や多数国間投資保証機関(MIGA)の革新的な商品を活用しつつ、民間の資本・資金の動員・喚起を支援するとともに、IFC戦略3.0を維持・発展させ、幅広い復興と長期的な開発のために、市場を創設し、投資及び質の高いインフラを促進することを要請する。更に、我々は、燃料補助金その他の市場歪曲的な補助金・税金を可能な限り撤廃することなどを通じ、公正性、公平性及び包摂的成長を推進する方法で、国内資金動員を増加させることの重要性を強調する。また、我々は、公衆衛生、食糧安全保障及び教育への即時の対応の重要性も指摘する。そして、我々は、全ての国々に対して、より広範な保健危機、飢饉及び飢餓のリスクを回避するため、途上国が依存している医療品及び食料の供給が確保されるよう支援することを求める。我々は、COVID-19により悪化しているジェンダー間の公平性に係るリスクや生物多様性への影響に対応するための取組みを強く歓迎する。我々は、世銀グループが、主要な国際的な課題において非常に重要な役割を担っていること、及び、二大目標及びSDGsの達成には、これまでよりも力強く、より良い形で立て直すことが不可欠であることを強調する。

  7. 我々は、世銀グループが、2020財政年度第4四半期に、ファストトラック(緊急支援)ファシリティなどを通じ、100か国以上において、IBRD・IDAから320億ドル、IFCから110億ドル、MIGAから20億ドルの合計450億ドルにコミットし、過去に例のない支援を実施したことを称賛する。我々は、IFCによる対応の第2フェーズとして、成長可能な企業・金融機関の再建及び資本増強、並びに、新興国・途上国における保健分野のバリューチェーンへの支援を行うことを歓迎する。また、我々は、各国における長期的な開発ニーズに対応するため、2021財政年度にIDA19資金規模を350億ドルに拡大する予定であることを歓迎する。世銀グループは、2021年6月までに、最大1,600億ドルの大胆で果断な対応を実施するための取組みを継続する必要がある。危機の深刻さと影響が長期化する可能性を考慮し、我々は、世銀グループが求められる役割を果たすために十分な資本を維持していることを確保するため、2021財政年度より先の世銀グループの資金規模に関する議論を慫慂する。加えて、我々は、パンデミック期間中に、主に緊急融資ファシリティを通じて、80か国以上に約900億ドルの支援を提供したIMFの迅速かつ効果的な危機対応を称賛する。我々は、IMFに対し、より強靭かつ包摂的な経済を構築するとともに、加盟国が危機からの持続的な脱出を達成するため、利用可能な全ての手段と資金を引き続き提供することを求める。

  8. 我々は、債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を6か月間延長すること、及び、2021年の世銀・IMF春季会合までに、経済・金融状況がDSSIの更なる6か月間の延長を必要とするかどうか検討することについて、2020年4月のDSSIの条件概要に係る主な補足事項とあわせて支持する。全ての公的な二国間債権者は、完全に、かつ、透明性高く、このイニシアティブを実施するべきである。我々は、適格国から要請があった際には、同等の条件で参加することを民間債権者に強く奨励する。公的な二国間債権者の努力により、DSSIは、最貧国において、強く必要とされる財政余力を生み出し、最貧国向けの世銀グループ及びIMFの資金供与プログラムを支援している。我々は、国際開発金融機関が、その現在の格付と低い資金調達コストを維持しながら、延長期間を含む猶予期間中、DSSI適格国にネットでプラスの資金フローを供与すること等を通じ、共同してDSSIを支援する努力を更に進めることを奨励する。我々は、世銀グループが、IDA総務副官との議論において、IDAの支援対象国に対するCOVID-19緊急資金供与に係る追加的な提案を模索するよう慫慂する。我々は、世銀グループ及びIMFに対し、各支援適格国に供与しているネットの新規資金について更なる詳細を提供すること等により、DSSIの実施を引き続き支援することを求める。我々は、世銀グループ及びIMFに対し、債務データの質と整合性を強化し、債務の開示を改善するための作業を継続することを求める。高い公的債務水準、経済の収縮、及び、財政への圧力の高まりを踏まえ、我々は、ケースバイケースでDSSIを超える債務措置が必要となり得ることを認識する。こうした中で、我々は、G20が、パリクラブでも合意されている「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」に原則的に合意したことを歓迎する。我々は、各国の国内承認手続を前提に、メンバー国による「共通枠組」の承認を期待する。

  9. 我々は、世銀グループ及びIMFが、引き続き、低所得国の債務の課題を見直し、それらの国々の財政及び債務のストレスにケースバイケースで対処するための行動を提案することを奨励する。また、我々は、世銀グループ及びIMFが、中所得国の債務の課題を見直し、増資パッケージにおけるコミットメントに沿った形で、こうした困難な時期において、追加的な資金を供与することを含め、それらの国々の財政及び債務のストレスについてのカスタマイズされた解決策をケースバイケースで模索することを引き続き奨励する。

  10. 我々は、2020年の株式保有の見直しに関する総務への報告を歓迎するとともに、理事会におけるこれまでの進捗に感謝する。我々は、本会合で示されたガイダンスに基づき、見直しが完了することを期待する。また、我々は、現在進行中のIDA投票権の見直しに関する理事会の作業に感謝するとともに、2021年の年次総会までに完了することを期待する。

  11. 我々は、ケン・オフォリ=アッタ ガーナ財務大臣の過去2年間に亘る開発委員会議長としてのガイダンス及びリーダシップ、並びに、イボンヌ・ツィカタ前官房長の過去4年間に亘る開発委員会へ計り知れない尽力に感謝する。2020年11月から2021年10月まで議長を務めるミア・アモール・モトレー バルバドス首相兼財務大臣、2021年11月から2022年10月まで議長を務めるアスセナ・アルベレチェ ウルグアイ経済財政大臣を歓迎する。また、ディアリエトゥ・ガイ官房長を開発委員会に歓迎する。

  12. 次の開発委員会は、ワシントンD.C.において、2021年4月10日に開催する。