- 開発委員会は、ワシントンD.C.にて本日10月19日に開催された。
- 世界の成長は、投資と貿易のペースの軟化を反映し、依然として低迷している。政策の不確実性の継続、貿易の緊張、金融の変動、債務の拡大を要因として、下方リスクが根強く残っている。我々は、世銀グループとIMFが引き続き各国と協働しながら、潜在成長力を高め、ショックに対する強靭性を強化し、歳入を増加させ、政策バッファーを構築していくことを求める。また、世銀グループとIMFは、新興国・低所得国における債務脆弱性の拡大に対応するため、また、持続可能かつ透明性のある借入・貸付慣行を奨励するために、債務者・債権者とともに「様々な角度からのアプローチ」を強化すべきである。我々は、世銀グループとIMFに対して、税の透明性を促進し、違法な租税回避、マネーロンダリング、不正な資金フロー、腐敗対策を含む国際金融システムの健全性に対するその他の課題へ対処するために効果的な規制及び運用を推進することを求める。更に、最も脆弱な人々を守り、民間部門による解決を可能とし、雇用創出の促進や公的セクターの効率性の強化に努めていくべきである。
- 我々は、「世界開発報告書2020 ― グローバル・バリュー・チェーン時代における開発のための貿易」を歓迎する。貿易とバリュー・チェーンの拡大は、経済成長、所得、雇用、生産性、技術移転、そして最も重要なこととして、貧困削減に正の効果をもたらすことは明らかである。同時に、貿易から得られる利益は、依然として不平等に国内外に分配されている。我々は、世銀グループに対して、加盟国と協働し、環境保護や貿易投資への参加から得られる利益の公平な分配を確保しつつ、自由、公正、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資の実現に向け努力するよう求める。
- 我々は、ヒューマン・キャピタル・プロジェクト・アップデートにおいて報告された進捗、特に参加国の具体的な制度・政策改革を評価する。我々は、世銀グループがヒューマン・キャピタル・インデックスの算出方法を継続的に見直しながら、引き続き公的及び民間セクターのパートナーと協働し、ヒューマン・キャピタル・アウトカムの改善につながるような分析を優先させるとともに、システム、介入及び投資の強化を行っていくことを慫慂する。そのようなアウトカムには、歳入確保や歳出管理の改善、開発途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けた進展、質の高い教育を確保するとともに、現在及び将来の労働市場のニーズに労働者が対応できるようにするための生涯にわたる学習の確保、女性への投資及びエンパワーメント、社会的セーフティネットの対象拡張、サービス提供の改善が含まれる。これらの行動は、二大目標である極度の貧困の撲滅と繁栄の共有の促進を持続可能な形で達成するために必要不可欠である。
- 我々は、「雇用と経済変革:原動力、政策インプリケーションと世銀グループ支援」に関する報告書を歓迎する。我々は、世銀グループが民間投資のリスクを緩和し、その触媒となる機能を担いつつ、雇用と経済変革を支援するための分析、政策アドバイス、ツールを結集し、個別国の優先度に応じた支援を行っていることを評価する。我々は、世銀グループが制度的な発展やガバナンス改革の支援、市場や雇用の創出、民間投資の促進、事業を創出するための障壁の削減、労働需要・供給の制約への対応、女性や若者のための機会向上、地域統合や南南協力をてこ入れするとともに、地域協力・プロジェクトの拡大のための、世銀グループ内における調整や緊急対策を支持する。我々は、マネジメントに対し、過去の成功から得られた教訓や本報告書で示された個別国のコンテクストにあわせた枠組みを踏まえ、こうしたアジェンダの主流化と実施を求めるとともに、2020年春までにこのアプローチのアップデートを理事会に対して行うことを求める。
- 脆弱性・紛争・暴力(FCV)に晒される国は、とりわけ自然災害、気候変動、ガバナンスの弱さ、不平等、排除、エネルギーへのアクセスの乏しさにより悪化する複雑な状況に直面している。これらの国は、多くの脆弱な人々、人口構造や移民の圧力、強制退避の問題を抱えている。これらの要素は、リスクと課題を創り出し、それらに打ち勝つためにはイノベーションと支援の拡大が求められる。FCVの状況下における貧困との闘いや繁栄の共有の促進が、二大目標とSDGsの達成に向けたさらなる進展のための鍵となる。世銀グループとIMFは、強力な現地のチームとともに、制度の強化や質の高いインフラの開発、民間セクターとの連携を進めつつ、危機の予防・緩和、危機に対する強靭性の構築に関与し続けなければならない。我々は、脆弱な島嶼国を含む影響を受けている国々における、FCVの要因及びそれが脆弱な人々に与える影響に対処することを目的とした、世銀グループの新しいFCV戦略に期待する。また、我々は、この戦略が、国別プログラムや主要な二国間及び国連を含む多国間のパートナーとともに構成されるカントリー・プラットフォームを通じて、個別のコンテクストに即した地域的な取組、政策対話、実務上の連携の道標になることを期待する。
- とりわけ世銀グループが、より厳しい環境下における業務を強化している中、世銀グループのプロジェクトに関する説明責任のメカニズムは引き続き頑健かつ効果的であることが重要である。我々は、開発効果を高める上で、世銀の査閲パネルとIFC・MIGAのコンプライアンス・アドバイザー・オンブズマンの重要性を改めて強調する。
- 民間セクターは、雇用を創出し生活水準を向上していく上で重要である。我々は、IFC及びMIGAを含む世銀グループが、IDA国及びFCV国への支援を優先しつつも、あらゆる被支援国と関与することで、上流におけるアドバイザリーサービスの提供、投資の促進と拡大、市場創出を続けていく役割を評価する。我々は、現在策定中のMIGA戦略も通じ、開発効果の最大化をしつつ、民間セクターによる課題解決に向けた機会構築を行っていく世銀グループの努力を支持する。我々は、IFC及びMIGAが民間セクター投資を増加させ、中小企業を含む起業家を支援していく上で、積極的かつ革新的であり続けることを奨励する。
- 我々は、世銀における最貧国支援のための資金の出し手であるIDAが、国際社会が直面している最も重要な開発課題への対応を支援する上で重要な役割を果たすことに同意する。我々は、IDA18の着実な実施を歓迎するとともに、IDA18で得られた教訓をIDA19に活かすことを求める。特別テーマと分野横断的な課題を含めたIDA19の全体的な方向性は、野心的なアジェンダを象徴している。このアジェンダを遂行するため、我々は、既存のドナー及び新規ドナーからの力強い貢献によるIDA19増資の成功を期待している。我々は、IDAが通常支援枠と特定目的枠を通じて現場での成果を上げることに注力し続けることを求める。また、我々は、2019年5月に承認されたIMFによる低所得国向け譲許性融資の3分の1の増額と、それによりIMFが最も貧しく脆弱な国々を支援するためのより大きな余地が生み出されたことを歓迎する。
- ジェンダーの平等は、世銀グループの優先課題であり、我々は、IDA及び増資に関連するコミットメントでそれが強化されている、ジェンダー戦略の実行に勇気づけられている。今後は、より一層の取組強化が重要である。また、我々は、IMFにおいても、各国における業務を含め、ジェンダーの平等により一層焦点があてられていることを歓迎する。
- 我々は、IBRD及びIFC増資パッケージの実行の進展及びForward Lookのコミットメントとして掲げられている(i)全ての被支援国への関与、(ii)国際公共財の主導、(iii)市場の創出、(iv)業務・運営モデルの継続的な改善の進展を称賛する。IBRDが増資パッケージのコミットメントを踏まえ、卒業所得基準未満の国へ優先的に追加的な支援を行いつつ、幅広い所得水準にわたる被支援国への関与を継続するべきである。世銀グループは国際的な開発課題に取り組む特別な位置付けにあり、我々は、開発資源のより良い活用や民間セクターによる解決策の動員のためにカントリー・プラットフォームを実行に移すことを支援するよう慫慂する。我々は、増資パッケージで特定されている、危機管理、FCV、気候変動、ジェンダー、ナレッジの共有、地域統合といった国際的な課題、そして、エネルギー安全保障、生物多様性、不正な資金フロー及びパンデミックなどのその他の個別課題への取り組みを進めるため、被支援国との関与を強化することを求める。世銀グループは、直近の国連総会においても、これらの多くの課題について取り組んでいる。また、世銀グループは、気候変動アクションプランの実行を継続すべきである。
- 我々は、2020年3月18日までにIFC増資決議が採択されることを期待しており、2018年10月2日に始まったIBRD増資の応募及び払込作業の進捗を慫慂する。
- 我々は、「IDA投票権見直し ― 総務への報告」の議論を歓迎する。我々は、IDA投票権見直しの指針及びその対象範囲を含め、提案されている見直しを承認する。我々は、IDA理事会が当該見直しを主導することを求めるとともに、議論の妥結に向けて合意されたスケジュールを踏まえ、2020年の年次総会までにアップデートがなされることを期待している。
- 次回の株式保有の見直しは2020年を予定している。同見直しは、株式保有の原則を踏まえ、合意された動的計算式による株主の代表権の状況について検討する機会である。
- 我々は、世銀グループが加盟国と協働しながら、世銀グループの金融モデルの健全性を保ちつつ、公正性・透明性の原則を適用しながら、積極的かつ秩序だったLIBORからの移行を行うための基礎を構築することを求める。
- 我々は、クリスティーヌ・ラガルド前IMF専務理事の8年間の力強いリーダーシップに感謝する。また、我々は、クリスタリーナ・ゲオルギエヴァが新IMF専務理事に選出されたことに祝意を表する。
- 次の開発委員会は、ワシントンD.C.において、2020年4月18日に開催する。