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20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2015年9月4-5日 於:トルコ・アンカラ)

  1. 我々は、現在の経済動向や各々の成長見通し、及び最近の金融市場の変動とその根底にある経済状況を検討するために、アンカラで会合を開催した。我々は、いくつかの国において経済活動が強まっていることを歓迎するが、世界の経済成長は我々の期待する水準に達していない。我々は、経済回復を維持するため断固たる行動を取ることにコミットしており、世界経済の回復は加速すると確信している。我々は、経済の信認と金融の安定を促進するために、引き続き動向を監視し、波及効果を評価し、必要に応じ新たなリスクに対処する。

  2. 我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長を達成するための我々の取組を支える、マクロ経済政策及び構造政策の役割を再確認する。金融政策は引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に経済活動を支えるだろう。しかしながら、金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう。我々は、経済見通しの改善に沿って、いくつかの先進国において金融政策の引締めの可能性がより高まっていることに留意する。我々は、根底にあるファンダメンタルズを反映するため、より市場で決定される為替レートシステムと為替の柔軟性に移行し、為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避けるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗する。我々は、債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ、経済成長と雇用創出を支えるため、短期的な経済状況を勘案して機動的に財政政策を実施する。この目的のため、我々はまた、引き続き、生産性、包摂性及び成長を支えるために歳出及び歳入の構成を考慮していく。

  3. 我々は、負の波及効果を最小化し、不確実性を緩和し、透明性を向上させるために、特に金融政策その他の主要な政策決定を行うにあたり、我々の行動を注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行う。

  4. 現実の及び潜在的な成長を引き上げる必要性は、世界経済の主要な課題である。我々は、需要を支え潜在成長を引き上げる措置を含む我々の成長戦略を、適時かつ効果的に実施することにコミットし続けている。これらの成長戦略を実施するにあたり、我々は所得の不平等を是正するものを含め、更なる包摂性を促進するための行動を取る。本年、我々はこれらの措置の実施状況を監視するための強固な枠組みを作成し、また詳細な実施スケジュールを用意した。これに基づき、我々はアンタルヤサミットにおいて、我々の成長戦略におけるコミットメントの進捗に関する、最初の説明責任報告を提示する。国際機関による暫定的な分析は、我々のコミットメントの達成に向けた進展はみられるものの、実施のための更なる努力が必要であることを示している。我々はまた、個々の成長戦略が我々全体の成長目標と整合的であることを確保するために、各国間のレビューも活用しながら成長戦略の見直しを行っている。

  5. 投資の促進は、我々にとって第一の優先課題である。このため、我々は、投資エコシステムを改善し、効率的なインフラ投資を育み、中小企業の資金調達機会を支援するための具体的行動を提示する、国別投資戦略を用意した。我々は、我々の投資戦略に関する暫定的な評価を提供し、知識の共有に貢献する、OECD の進捗報告書を歓迎する。我々は、我々の戦略に対する更なる質的・量的評価を期待し、またこの評価に基づき、アンタルヤサミットに向けて我々の投資戦略を最終化する。我々はまた、各国が公共投資の管理プロセスを強化し、投資の質を高めることを助ける、IMF、世界銀行グループ、及びOECD による提言及び評価枠組みを歓迎する。我々はまた、国際開発金融機関、各国の開発銀行の資金や技術的専門性の動員が重要であることを再確認する。この観点から、我々は、国際開発金融機関のバランスシート最適化に向けた行動計画の進捗を歓迎する。

  6. 我々は、民間部門の関与を奨励するため、共通して直面する課題に対処することができる、官民パートナーシップ(PPP)モデルにおけるベスト・プラクティスの確立を認識する。我々は、PPP の準備と実施についての国際的なベスト・プラクティスに関する指針を提供する、WBG のPPP ガイドラインと、OECD/WBG のPPP プロジェクトチェックリストを歓迎する。さらに、我々はまた、データ不足に対処し、投資に対する障壁を引下げ、平常以上に民間部門の関与を高める、グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)のビジネス計画を承認する。我々はその運営に関する定期的なアップデートを期待する。

  7. 長期投資に対する主要な資金ニーズを認識しつつ、我々はまた、代替的な資本市場商品の可能性検証に焦点を当てた。したがって、我々は、アセットベースの金融慣行の特徴を体系的に国際金融に統合するための、IMF と世界銀行グループによる政策提言に留意する。我々はまた、民間投資を促進する、強固な企業及び公的ガバナンスの枠組みを確保するのを助けるため、G20/OECD のコーポレートガバナンス原則を承認する。我々は、信用情報システムの改善、動産担保付きの貸付、及び破たん制度改革によるものを含む、中小企業への金融仲介を促進する可能性を認識する。我々は、中小企業ファイナンスに関するG20/OECD ハイレベル原則の進展、及び成長と雇用に対する中小企業の貢献を推進する世界規模の団体として機能する、新たなイニシアティブである、民間セクター主導の世界中小企業フォーラムの確立を歓迎する。

  8. 我々は、2010 年のIMF クオータ・ガバナンス改革の進捗が遅れ続けていることに、引き続き深く失望している。我々は、IMF の信頼性、正当性、有効性にとって、改革の最も早い実施が必須であり、引き続き我々の最優先課題であることを再確認する。我々は、米国に対し、2010 年改革を可能な限り早期に批准することを強く促す。我々は、強固で十分な資金基盤を備え、クォータを基礎とするIMF を維持するという我々のコミットメントを再確認する。イスタンブール会合での我々の要請に照らし、我々は11 月にSDR 構成通貨見直しに関する進捗があることを期待する。我々は、国際的な公的債券契約における、強化された集団行動とパリパスに関する条項の実施に関する進展を歓迎し、その更なる加速の重要性を強調する。債務持続可能性に関し、我々はアディスアベバ行動目標で強調された、持続可能な資金調達慣行の改善に向けた既存のイニシアティブを認識する。我々はまた、公的債務の債権者と債務者との間の対話の促進により包摂性の更なる増進に貢献する、パリ・フォーラムのイニシアティブに留意する。

  9. 我々は、金融規制改革の課題の残された中核的な要素を今年に最終化するという決意を再確認する。我々は、グローバルなシステム上重要な銀行の総損失吸収力の基準(TLAC)についての厳格かつ包括的な定量的影響度調査に関するFSB(金融安定理事会)、BIS(国際決済銀行)、BCBS(バーゼル銀行監督委員会)の作業、及び簡素で透明性が高く比較可能な証券化商品を特定するための要件に関するBCBSとIOSCO(証券監督者国際機構)の作業を歓迎する。我々は、グローバルなシステム上重要な銀行のTLACとグローバルなシステム上重要な保険会社の強固な資本上乗せ基準についての共通の国際基準のアンタルヤサミットまでの最終化、店頭デリバティブ契約の早期解約条項の一時発動停止に係る契約上の効力を他の商品や企業を含めるために拡大すること、銀行の自己資本比率のためのリスク・アセットの計算における過度なばらつき、及びG20シャドーバンキングロードマップの実施、に関する既に合意された作業の完了に期待する。我々はまた、中央清算機関の強じん性・再建計画・破綻処理可能性、不正行為リスク及びコルレス銀行業務と送金サービスからの撤退、に関する既に合意された作業計画の今年の進捗に期待する。我々は、取引情報蓄積機関への店頭デリバティブ契約の報告及び取引情報蓄積機関が有するデータに対する当局の国境を越えるアクセスに対する法的障害への対処や、当該データの使い勝手向上のための作業を行う。我々は、資産運用活動に関連するものを含む金融安定上の課題を注意深く監視し続け、関連するリスクが完全に対処されるよう確保する。我々は、あらゆる規制改革の実施と影響に関するFSBの最初の年次報告書に期待する。これは規制改革のいかなる重大な意図せざる影響、特にEMDEs(新興市場・発展途上経済)に対するものを含む。我々は、企業のバランスシートにおける負債構造の歪みから生じる金融安定上の潜在的リスクを認識しており、FSBに対し、他の国際機関と協調して、システミックリスクを引き続き調査し政策オプションを検討することを求める。

  10. テロとの闘いは、我々すべての国々にとっての主要な課題であり、したがって、その資金供与経路に対処するとの我々の決意を再確認する。我々は、特に、国境を越えた資産凍結要請を円滑化するために、情報交換及びテロリストの資産凍結に関する協力を深めるとのコミットメントを再確認するとともに、金融の流れの更なる透明性を促進させるための方法に取り組む。テロ資金供与の犯罪化、並びにテロリズム及びテロ資金供与に関する対象を特定した強固な金融制裁体制の存在は、テロ資金の流れを積極的に抑制するための基本要件である。

  11. 世界規模で公正かつ現代的な国際課税システムへ到達するという我々のコミットメントに則り、我々はG20/OECD 税源浸食・利益移転(BEPS)行動計画の実行の最終段階にある。15の行動項目全ての最終パッケージは10月までに取りまとめられると見込まれる。また、次回リマでの会合では、我々はそのパッケージをレビューし、アンタルヤで首脳に提出する。同プロジェクトの有効性はその広範かつ首尾一貫した実施によって決まる。我々はBEPSプロジェクトの成果のグローバル規模での実施、特に国境を越える税のルーリングに関する情報交換の実施状況をモニタリングするに当たり、対等な立場で作業を続ける。従って、我々はOECDに、2016年の早い時期までに、関心のある非G20諸国・地域、特に発展途上国の関与の下で、枠組みを準備することを求める。我々は関心のある発展途上国に対する、それらの国が直面するBEPSを含む国内資金の動員の課題に対処するための適切な技術支援を提供するIMF、世界銀行グループ、国連及びOECDによる取組みを歓迎する。我々は課税システムの透明性を高めるための作業を続け、以前に合意された自動的情報交換の実施に向けたスケジュールを再確認する。我々は実質的所有者の透明性に関するG20 ハイレベル原則を実施するとのコミットメントを再確認し、各国の実施の更なる進捗を期待する。我々は非G20諸国の国際課税分野への関与を強化する取組みを支持し、税に関する国際協力に関してアディスアベバ行動目標の下での決定を歓迎する。

  12. 我々は、途上国が自らの持続可能な開発アジェンダを追求できるよう、政策対話の強化等を通じて、世界経済の環境づくり促進にコミットしていることを再確認する。我々は、アディスアベバ開発資金国際会議(FFD)における良好な成果を歓迎し、これらを支援するため、特にアディスアベバ行動目標で明記された分野において、途上国が必要な制度的能力を構築することを支援するため、我々の技術協力の取り組み拡大を目指す。我々はまた、持続可能な開発のための2030アジェンダ採択を目的としたニューヨークでの国連サミットが成功裡に終わることを期待する。

  13. 2015年の気候変動に関する議題を支援するために、我々は、気候資金スタディグループ(CFSG)の報告書を歓迎し、OECDが作成した既存の気候基金についての一覧表及び、低所得国及び開発途上国、とりわけ気候変動の影響に特に脆弱な国の適応資金へのアクセスを強化するためにOECD及びGEFが作成したツールキットに注目する。我々は、先進国の継続的な努力を認識し、彼らがコミットメントに従って引き続き気候資金を拡大することを求める。我々は、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において前向きでバランスの取れた成果を得られるよう協力して取り組んでいく。COP21の成果を踏まえ、かつその目標に向かって、CFSGはUNFCCCの原則、規定、目的に従い、2016年も引き続き活動する。