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第59回米州開発銀行・第33回米州投資公社年次総会 日本国総務演説

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第59回米州開発銀行・第33回米州投資公社年次総会 日本国総務演説
(平成30年(2018年)3月24日(土)於:アルゼンチン メンドーサ)



  1.  議長、総裁、各国総務各位、ならびにご列席の皆様、

     第59 回米州開発銀行(IDB)、第33回米州投資公社(IIC、通称:IDB Invest)年次総会に当たり、日本政府を代表し、ご挨拶申し上げることを光栄に思います。また、ホスト国であるアルゼンチン政府、そしてメンドーサ市民の皆さまの暖かい歓迎に感謝申し上げます。


  2. ラテンアメリカ・カリブ地域(LAC)の経済と課題

     世界経済が緩やかに回復する中、LAC諸国経済も回復に向かっています。過去10年、中産階級人口が倍増する一方、貧困人口が3割減少するなど、LAC諸国は大きな変貌を遂げました。しかし、LAC諸国は、世界の他の地域と比べ低い成長率、根強く残る所得格差や貧困に苦しむ社会的弱者の存在、繰り返し発生するハリケーンなどの自然災害など、様々な課題を抱えています。

     LAC地域の開発銀行であるIDBには、地域の開発ニーズを踏まえ、地域が抱える課題の解決にあたることが求められます。日本は、IDBとの40年を超える強固なパートナーシップに基づき、日本の知見や革新的技術を活かしつつ、人材・資金両面で貢献し、LAC地域の持続的な成長を支援していく所存です。

  3. 質の高いインフラ

     質の高いインフラは、民間投資を促進すると共に、新たな産業の育成に貢献し、新たな雇用を生み出すことで、自律的な成長の基盤となるものです。こうした中、アルゼンチン議長の下、G20が、インフラ投資のための民間資金動員を議論していることは時宜を得たものです。日本は、民間投資を伴う、質の高いインフラの展開に向け、G20議長国アルゼンチン及びIDBと積極的に協力していきます。

     日本の取り組みとして、4点ご紹介したいと思います。

    (1)2016年には、IDB日本信託基金内にJQI(Japan Quality Infrastructure)を設置し、質の高いインフラ案件の組成支援
      を開始しました。これまでに、パラグアイにおける上下水道案件の組成準備への支援など、4件の実績が得られまし
      た。
    (2)日本は、今般、IDBが新設した、PPP(官民連携)による質の高いインフラ案件の組成を支援するファシリティを歓迎し、
       これを支えるため、5百万ドルの貢献を行います。
    (3)LAC地域においても、インフラ投資の資金ギャップは顕著であり、これに対応するためには、民間資金の動員が不可
       欠です。日本は、IDB Investが果たす役割に大きな期待を有しています。IDB Investとの間では、
       国際協力銀行(JBIC)が、2016年11月に業務協力協定(MOU)を締結しました。また、国際協力機構(JICA)
       は、今回のメンドーサ総会の場で協力覚書(MOC)に署名しました。日本の公的金融機関であるJBIC/JICAは、
       LAC地域における民間投資の一層の促進に向け、IDB Investとの協力を強化していきます。
    (4)この他、日本とIDBは、2012年以来、協調融資の枠組みCORE(Co-financing for Renewable Energy
       and Energy Efficiency)を設け、気候変動に対応した質の高いインフラの整備を進めてきました。
       これまでに6件・10億ドル超の案件が組成されています。このうち、ジャマイカ・エクアドル向けの2件は、
       新たに導入したドル建て借款を活用するものです。

     こうして、質の高いインフラの取組みを進めるにあたっては、LAC諸国が、責任ある借り手として、健全な財政運営と適切な債務管理を行えることが不可欠です。IDBには、IMFなどの他の国際金融機関と協調しつつ、必要な支援を行っていくことを期待します。


  4. 多数国間投資基金(MIF)

     MIFは、中小零細企業や社会的弱者を支援するとともに、IDBグループ全体の革新的な実験室として、パイロット的な案件に積極的に取り組んできました。

     例えば、LAC地域におけるマイクロファイナンスの発展は、MIFの大きな成果です。MIFが始めたマイクロファイナンス支援は、その後、IDB Investも実施するところとなり、支援規模が大きく拡大(スケールアップ)しました。また、MIFとIDB本体が協力することで、マイクロファイナンス機関の特性を踏まえた、金融監督・規制枠組みの立ち上げにもつながりました。

     日本は、MIFの革新性と機能的独自性を高く評価し、MIFの創設以来、積極的に支援しています。こうした中、昨年妥結したMIF3において、日本は、国会による承認を得た上で、最大ドナーとして、85百万ドルの貢献を行うことを表明しました。

     本年着任されたアリアス新長官は、AIやビックデータなどの革新的技術を積極的に活用していく考えを打ち出されました。これは、MIFの特徴である革新性の強化につながるものであり、大きな成果が上がることを期待します。

     新長官のリーダーシップのもと、MIFが技術革新を活かした開発モデルを生み出し、それをIDBグループ全体で再生・スケールアップすることにより、LAC地域の包摂的な成長に大きなインパクトをもたらしていくことが重要です。日本は、今後も、人材・資金両面から、MIFを始めとするIDBグループを支援していく所存です。


  5. 包摂的成長の実現

     日本は、LAC地域が、所得格差や依然として残る貧困層に対処し、包摂的な成長を実現することを後押しするため、IDBの日本信託基金を通じ、社会的弱者や貧困層に対する草の根の支援を実施してきました。

     今回、メンドーサ総会の機会をとらえ、日本は、マル1メンドーサ州の教育水準向上のため、パソコンを活用した授業を行うための支援や、教師を対象とした研修などの実施、マル2NGOを通じた障碍者の就業支援や、ソーシャルワーカーを対象とした研修などの実施、の2件の支援を決定しました。日本信託基金の支援により、LAC地域において経済成長の恩恵が広まり、日本とLAC地域の関係強化につながることを期待しています。

  6. 結語

     LAC地域と日本の間には、19世紀後半からの移住の歴史と、貿易と投資を通じた強い経済関係があります。また、本総会のホスト国であるアルゼンチンと日本は、今年、外交120周年を迎えました。

     モレノ総裁の強いリーダーシップの下、IDBグループがLAC地域の持続的で包摂的な経済成長に益々貢献していくことを期待しています。