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第54回米州開発銀行・第28回米州投資公社年次総会 日本国総務演説

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1.序

 議長、総裁、各国総務各位、ならびにご参列の皆様、

 第54 回米州開発銀行(IDB)、第28回米州投資公社(IIC)年次総会にあたり、日本政府を代表して、ホスト国であるパナマ政府、そしてパナマ市の皆様の暖かい歓迎に感謝申し上げます。パナマ運河を擁し、太平洋と大西洋をつなぐ海上交通の要衝であるパナマは、加盟国が一堂に会し、中南米カリブ地域の開発について議論を行うのに相応しい場所です。


2.中南米カリブ地域の開発課題

 中南米カリブ地域は、比較的開発が進んだ中所得国が多い一方で、貧富の格差という課題を抱えています。また、島嶼国を含め、自然災害に脆弱な国が多いという特徴を有しています。こうした点を踏まえ、本日は、中南米カリブ地域の特に重要な開発課題として、「民間セクター開発」、「防災」、「気候変動・環境対策」、「ジェンダー・母子保健」の4点について申し上げます。

(1)民間セクター開発

 最初に、民間セクター開発について申し上げます。

 中南米カリブ地域諸国は、欧州債務危機等の影響により、2012年は経済が減速したものの、2013年以降は穏やかに回復することが見込まれています。世界的にダウンサイドリスクが残る中で、経済成長を持続させることが重要であり、そのために、中南米カリブ地域においてIDBが大きな役割を果たすことを期待します。特に、中所得国においては、民間セクター主導の持続的な経済成長を実現することが重要です。

 こうした観点から、IDBグループ全体として、民間資金をより効果的に開発に動員する触媒としての機能を果たすため、機構改革の検討を開始していることを歓迎します。IDBには、民間部門業務と公的部門業務の有機的な連携を確保する仕組みの構築など、具体的な改革のあり方について議論を進展させることを求めます。

 民間セクター主導の持続可能な経済成長を実現していくためには、国境を跨いだ物流の円滑化・迅速化などを通じて地域統合を推進していくことが重要です。IDBが、2010年の第9次一般増資の合意に基づき、地域統合を重点分野の一つに設定し、支援に取り組んでいることは適切です。

 地域統合を推進するにあたっては、重点分野として設定された港湾や道路等のインフラ整備に加えて、貿易円滑化のためのソフト面の支援も忘れてはなりません。中南米カリブ地域では、長時間の手続きを主因とする高い通関コストを引き下げる余地があります。このためには、税関の能力強化や通関制度の整備といった取り組みが有効です。IDBが、世界税関機構(WCO)との協力関係を強化し、貿易円滑化のための支援を行っていることを歓迎します。日本は、IDBとWCOの取り組みを支援するため、IDBに対し、日本特別基金から300万ドルの資金貢献を行うことを、ここに表明します。

(2)防災

 第二に、防災について申し上げます。

 一昨年、日本を襲った東日本大震災から二年が経過しました。IDB及び中南米カリブ地域諸国の皆様から頂いた心温まるお見舞いと支援に対し、改めて感謝の意を表します。日本は、この悲劇を乗り越え、力強く復興、復旧を進めています。

 大規模災害は一度発生すれば、それまでの発展のための努力や成果を一瞬にして消し去ります。日本には「災害は忘れた頃にやってくる」という諺がありますが、あらゆる国において、日頃から、構造物対策や避難訓練、防災教育など、防災のための取組を強化していく必要があります。IDBが、モレノ総裁のリーダーシップにより2006年に防災イニシアティブを立ち上げたことは、先見の明があったと考えます。日本同様に自然災害の多発地域であり、脆弱な島嶼国が多い中南米カリブ地域において、IDBが、防災に対する取り組みを更に強化していくことを期待します。

 日本は、途上国における自然災害に対する取り組みを支援するための有効なツールとして、自然災害発生後の復旧段階で発生する資金需要に即応した迅速に資金を供給するプログラム型円借款「災害復旧スタンドバイ円借款」を創設します。今後、中南米地域に対しても活用していきます。

(3)気候変動・環境対策

 第三に、気候変動・環境対策について申し上げます。

 近年の自然災害増加の要因の一つとして、気候変動が挙げられています。気候変動は、自然災害のみならず、島嶼国における海面上昇による国土の消失など様々な影響を通じて中南米カリブ地域の人々の生活・経済を脅かしています。深刻化する気候変動の悪影響に対処するためには、IDBを含め、国際社会全体による着実な取り組みが必要です。IDBが、第9次一般増資の合意に基づき、気候変動対策を重点分野に設定し、積極的に支援に取り組んでいることを歓迎します。

 日本は、経済成長と気候変動対策の両立を目指し、昨年、IDBとの間で、省エネルギー・再生可能エネルギー分野において協調融資を行う枠組「CORE(Cofinancing for Renewable Energy and Energy Efficiency)」に署名しました。今般、COREの第1号案件として、コスタリカのグアナカステ地熱開発に対し、IDBとの協調融資により、約560億円の円借款を供与することを喜ばしく思います。

 更に日本は、現在、環境や防災といった、途上国の経済・社会の開発等に寄与し、日本の知見や技術が最大限活用できる分野について、比較的所得の高い国にも円借款を提供できる仕組みを検討しています。こうした取り組みが、中南米カリブ地域の経済開発促進に貢献することを期待します。

(4)ジェンダー・母子保健

 最後に、ジェンダー・母子保健について申し上げます。

 中南米カリブ地域は、全体的に豊かになっているものの、依然大きな貧富の格差は残っており、格差是正に向けた対応が求められています。中でも、ジェンダー平等の向上は、格差是正のみならず、経済効率性の改善を通じて開発を促進するものであることから、優先的に対応していかなければなりません。こうした中、IDBが組織戦略においてジェンダーを優先分野の一つに設定し、開発プロジェクトのあらゆる側面にジェンダーの要素を盛り込むという「ジェンダーの主流化」に取り組んでいることは適切な対応です。

 ジェンダーの課題に取り組むにあたって、母子保健の重要性を強調したいと思います。母子保健はミレニアム開発目標の中でも、特に進展が遅れている分野です。中南米カリブ地域においても、国によっては妊産婦死亡率が高止まりしており、引き続き支援が必要です。日本では、医療人材の数と質の向上、医療技術の改善、妊産婦の栄養や健康状況の向上、施設分娩の普及などに加え、母子健康手帳の開発・普及を包括的に推進することにより、妊産婦死亡率を改善してきました。母子保健分野の支援においても、日本の経験を踏まえた協力を行ってまいります。

 なお、今般、ウルグアイにおける乳幼児への包括的支援を行うため、日本が、IDB日本特別基金を通じて60万ドルのプロジェクトを実施することを喜ばしく思います。

 保健分野に関しては、日本として、円借款を活用し、ポリオ根絶や妊産婦の支援体制強化などの支援を行っています。また、世界銀行と連携し、国民皆保険の分野に関し、国民の健康を増進すると共に、経済と社会の発展で寄与するという点で重要であるとの認識の下、約50年前に導入した日本の皆保険に係る経験・知見の途上国への適用可能性を探るために、共同研究を現在実施しています。保健分野は、国際社会に対し、日本が貢献できる重要な分野と考えており、引き続き積極的に対応していく考えです。


3.結び

 日本は、中南米カリブ地域と長きに渡る移民・交流の歴史を有しています。本総会のホスト国であるパナマとも100年を超える豊かな関係があります。例えば、1914年に開通したパナマ運河建設には日本人技術者が参加し、進行中のパナマ運河拡張事業には邦銀が主幹事行として融資を行っています。また、パナマ市及びパナマ湾浄化事業に対し、円借款を提供しています。

 日本は、このように営々と築き上げた歴史を基盤として、中南米カリブ地域とのパートナーシップを強化したいと考えます。これまで日本は、IDB通常資本への出資に加え、日本特別基金や日本貧困削減プログラムなどの信託基金への拠出を通じ、IDBが行う中南米カリブ地域の貧困削減に向けた取り組みを支援してきました。日本は、今後もIDBの活動を後押ししていきます。

 IDBが本年秋に東京で開催を予定している「日本−中南米カリブ地域フォーラム」は、日本企業と中南米カリブ地域企業の出会いの場を提供し、両国・地域間の貿易・投資の活発化に貢献するものです。今後ともIDBには、引き続き中南米カリブ地域の開発に貢献すると共に、アジア事務所を大いに活用し、我が国を含むアジアとの橋渡しの役割を強化することを期待します。

 どうも有難うございました。

以上