現在位置 : トップページ > 国際政策 > 国際開発金融機関(MDBs)〜世界銀行、アジア開発銀行等〜 > 欧州復興開発銀行(EBRD) > 第28回EBRD年次総会日本国総務演説(令和元年5月8日 於:ボスニア・ヘルツェゴビナ・サラエボ)

第28回EBRD年次総会日本国総務演説(令和元年5月8日 於:ボスニア・ヘルツェゴビナ・サラエボ)

English 印刷用(PDF)

第28回欧州復興開発銀行年次総会日本国総務演説
(2019(令和元)年5月8日(水)於:サラエボ)


1.はじめに

 第28回欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)年次総会の開催にあたり、日本政府を代表して、本総会のホスト国であるボスニア・ヘルツェゴビナ政府及びサラエボ市の皆様の温かい歓迎に、心から感謝申し上げます。

2.EBRDの政策

(1)受益国に対する支援のあり方

 EBRDは、1991年に設立されてから今日まで、旧共産圏諸国や新たに拡大した南・東地中海地域(SEMED: Southern and Eastern Mediterranean)における民主化・市場経済化の進展に大きく寄与してきています。

 EBRDが限られたリソースを効果的かつ効率的に活用する観点から、日本としては、最大の移行効果(トランジッション・インパクト)が見込まれる地域・分野での支援に重点的に取り組むべきと考えます。具体的には、市場経済化の遅れている初期段階移行国(ETCs:Early Transition Countries)に対する支援を十分に行い、これらの国々が移行過程の初期段階から早期に脱することを強く期待します。例えば、ETCの一つであるウズベキスタンでは、一昨年EBRDによる支援が再開し、2018年の年間業務量(ABI: Annual Bank Investment)は中央アジア全体の約4割近くまで拡大しております。日本は、EBRDによるETCへのこのような力強いサポートを高く評価し、今後も一層重点的に取り組んでいくことを求めます。

 他方、市場経済化への移行が比較的進んだ受益国(ATCs: Advanced Transition Countries)については、EBRDによる支援からの卒業に向けた道筋を描くことが重要です。しかしながら、昨年末に承認された2019年以降の戦略実施計画(SIP: Strategy and Implementation Plan 2019-2021)やサラエボ総会のバックグランド・ペーパーである戦略的レビュー(Management background paper: Strategic Review –Enhancing Impact in the Countries of Operations)において、ATCsへの支援額が横ばいとなる見通しとなっていることに、日本は大きな懸念を持っています。受益国の卒業はEBRDによる支援の成功の証と考えられますので、日本としては、EBRDが早期に卒業の議論を進めることを強く期待しています。

(2)戦略・資本枠組み(SCF: Strategic and Capital Framework 2021-2025)の準備作業

 本年のサラエボ総会では、2021年以降5年間の「戦略・資本枠組み(Strategic and Capital Framework)」の準備作業に関する総務決議案が議題となっています。日本としては、EBRDの地理的範囲の拡大が5つの検討オプションの一つに過ぎない位置づけとなっていること、来年のロンドン総会における総務判断を先取りしないことが担保されていることを踏まえ、本総務決議案を支持します。

 日本は、EBRDが地理的範囲を拡大すべきかについては、様々な角度から慎重な議論が必要と考えます。特に、EBRDが中東欧諸国の市場経済化というマンデートを地理的にも機能的にも大きく超えた活動を行うことが正当化されるのか、EBRDが新たな拡大先で付加価値(アディショナリティー)を生み出す能力があるのかといった本質的な論点は、これまでしっかりとした分析・検討が行われておりません。来年のロンドン総会に向けて、事務局が十分な議論の素材を準備することを求めます。

3.EBRDと日本の協力

(1)質の高いインフラ投資

 本年は日本においてG20を始めとする重要な国際会議が開催されますが、「質の高いインフラ投資」の推進は、日本にとっての重要なプライオリティの一つです。

 「質の高いインフラ投資」は、物理的インフラそのものに由来する便益を超えて、経済への波及的効果を長期にわたってもたらすものです。具体的には、雇用創出、能力構築、相互に合意した条件でのノウハウ移転、更なる民間投資推進などにより、持続可能な成長を支えます。

 ライフサイクル・コストからみた経済性を最大化しつつ、プロジェクトの質を担保するためには、適正なプロジェクト組成が不可欠です。これは、インフラ投資の促進に資する環境の整備や、財源の範囲内でプロジェクトの優先順位付けを行うための計画の策定により、はじめて可能となるものです。また、プロジェクトの実施段階では、調達が透明な形で行われる必要があります。そして、インフラの「質」が満たすべき要素としては、ESG、すなわち、環境・社会・ガバナンス等の観点、中でも利用の開放性や債務持続可能性を含むものになります。

 こうした考え方を踏まえ、日本は、日本・EBRD協力基金(JECF: Japan EBRD Cooperation Fund)を通じて、今後とも「質の高いインフラ投資」を積極的に支援してまいります。

(2)東京事務所

 2016年3月に、EBRD代表事務所が東京に開設されて以来、同事務所は日本の企業関係者等を対象としたビジネス開発や日本国内におけるEBRDの知名度向上に向けたアウトリーチ、リクルートミッションへのサポートなど、大きな貢献をしております。今後も、同事務所を通じて、日本の技術・知見がEBRDの支援に一層活用されることを期待します。

(3)EBRD職員の多様性の確保

 EBRDが支援対象国における多種多様・複雑なニーズや、喫緊の課題に対して、柔軟かつ効果的に対応していくためには、EBRD職員が一層の多様性を有することが重要です。EBRDには、人材面での多様化を更に積極的に進め、優秀な人材が適材適所で長く活躍できる場を提供することを期待します。日本としても、人材を通じたEBRDへの貢献に更に力を入れてまいります。

4.おわりに

 来年のロンドン総会に向けての一年は、今後のEBRDの方向性を決める重要な一年となります。そうした節目の年に、EBRDがその使命を最大限に達成できる機関であり続けられるよう、日本は、引き続き積極的に貢献してまいります。

(以上)