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第27回EBRD年次総会日本国総務演説(平成30年5月9日 於:ヨルダン)

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第27回欧州復興開発銀行年次総会日本国総務演説
(2018(平成30年)5月9日(水)於:ヨルダン)

  1. はじめに

     欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)の第27回年次総会の開催にあたり、日本政府を代表して、本総会のホスト国であるヨルダン政府及び死海地方の皆様の暖かい歓迎に心より感謝いたします。

  2.      
  3. EBRDへの期待

    (1)EBRDの役割・業務

     日本は、自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有する国々の安定的成長や健全な社会形成を重視しています。EBRDは設立から四半世紀以上にわたり、旧共産圏諸国や、新たにSEMED地域における民主化・市場経済化を支援してきており、日本はその重要な役割を評価しています。

     EBRDは、市場経済化の質を重視する新たな移行概念(トランジッション・コンセプト)の実現のため、限られたリソースを最も効果的かつ効率的に活用することが必要です。このためには、最大の移行効果(トランジッション・インパクト)が見込まれる地域・分野に支援を重点化すべきと考えます。日本としては、EBRDが依然として市場経済化が遅れている初期段階移行国(ETC:Early Transition Countries)に対する支援を十分に行い、これらの国々の移行過程が初期段階から早期に脱することを強く期待します。なお、ETCの一つであるウズベキスタンにおいてEBRDによる支援が再開され、昨年10月に再開後初の融資案件が理事会承認されたことを歓迎します。同国において、改革プログラムが着実に進捗し、高いトランジション・インパクトが生み出されるよう、EBRDの力強いサポートを期待します。

     一方、市場経済化への移行が比較的進んだ受益国については、受益国が自発的に改革を進め、EBRDによる支援からの卒業に向けた道筋を描くことが重要であり、EBRDには卒業の議論を進めることを強く期待します。受益国の卒業は、EBRDによる支援の成功の証と考えます。

     なお、最近、支援が複数の国にまたがるプロジェクトの提案が増えています。中でも、支援の対象にEBRDの受益国ではない国が含まれているものについては、EBRDが支援すべきか否かについて明確なポリシーがなく、アドホックな対応となっていることを懸念します。日本としては、こうしたプロジェクトへの支援の在り方について、理事会で議論することを求めます。

     本年は「戦略・資本枠組(SCF:Strategic and Capital Framework)2021-2025」の策定に当たっての指針となる中期方向性(Medium Term Directions)の議論が実施されることになっています。EBRDが1996年の増資以降20年以上にもわたり、株主から直接的な追加財政負担を求めずに運営を行ってきたことを評価し、引き続き財務の効率性・持続可能性を追求していくことを期待します。

    (2)EBRDの将来

     EBRDは、アラブの春以降のSEMED諸国の市場経済化の支援や、シリア難民受入国の支援などの新たな課題について、国際社会の要請に応じ、設立当初の地理的範囲を超えて取り組んできました。

     他方、今後、EBRDが徐々に業務に関する地理的範囲を拡大すべきかについては、様々な観点から慎重な議論が必要です。

     まず、EBRDが、現在の地理的範囲において十分な役割が果たせているのかを検証すべきです。先ほど申し上げたとおり、ETCの国々は依然として市場経済化が遅れています。地理的範囲を拡大する前に、こうしたETCの国々における支援を強化していくことが求められます。

     次に、EBRDの支援対象国の追加は、EBRDの支援を求める国々の要請があって初めて検討されるべきものであり、EBRDの主導で議論が拙速に進むことがあってはなりません。

     仮に新たにEBRDの支援を求める国が出てくる場合であっても、EBRDの関与を正当化しうるような付加価値(アディショナリティー)を生み出すことができるのかについて、慎重な検討が求められます。具体的には、市場経済移行へのトランジション・インパクトを生み出すことができるのか、他のMDBsと重複せずアディショナリティーを発揮することができるのか、新たな支援が既存の受益国(特にETC諸国)への支援をクラウド・アウトすることにならないか、といった点を十分に議論すべきです。

     地理的範囲の拡大が、追加資本を求めるようなことがあってはならないことは言うまでもありません。卒業の促進や経費合理化などを通じ、財源を確保することが大前提であることを強調しておきたいと思います。

  4.    
  5. EBRDと日本の協力

    (1)質の高いインフラ

     市場経済の下、受益国の持続的かつ包括的な経済成長を促していくためには、「質の高いインフラ投資」が重要と考えます。「質の高いインフラ投資」と言うと、整備されたインフラ自体について、それがライフサイクルで見た経済性、安全性などを備えているということがまず想起されると思います。しかしながら、改めて「質の高いインフラ投資」というものを見つめ直してみると、その意義は、インフラの持つ物理的な価値にとどまるものではありません。

     「質の高いインフラ」が整備され、それが開放的で万人が使用できることによって、経済の歯車が動き出し、その国の経済が発展していきます。すなわち「質の高いインフラ投資」は、民間投資促進、雇用創出、能力構築、持続可能な借入等が、相互に好影響を及ぼしながら包摂的な成長が持続していくこと、言い換えれば経済発展のための「自律的循環」を強力に推し進めるということになるのです。そして、この「自律的循環」こそが「質の高いインフラ投資」のもたらす大きなもう一つの重要な価値です。

     こうした考え方から、来年のG20に向けて、国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の「自律的循環」実現への効果を明確化するとともに、何が「質の高いインフラ投資」であるかのコンセプトに係る原則をアップグレードしていく考えです。アップグレードに当たっては、「自律的循環」を実現する「質の高いインフラ投資」の要素として、マル1経済性、マル2環境・社会配慮、マル3災害などに対する強靭性を改めて強調するとともに、これまで強調されていなかったマル4ガバナンスについては、Responsible Financingやインフラの利用の開放性を前面に出したいと考えています。

     更に、上流すなわちプロジェクト組成から下流すなわちファイナンスに至るまで、更にはインフラの質に関するデータ整備等を含め、包括的な支援メニューを用意しておくことも重要です。こうしたメニューは、受益国による主体的な「質の高いインフラ投資」の実施の助けになると考えています。

     上流支援として、日本は、日本・EBRD協力基金(JECF:Japan EBRD Cooperation Fund)を通じて、今後とも「質の高いインフラ投資」を積極的に支援していく方針です。

     下流支援については、日本は、JBICに、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資という世界的潮流に着眼した新たな支援ファシリティを創設します。

     このファシリティでは、再生可能エネルギー分野も含め、地球環境保全目的に貢献するインフラ整備を幅広く支援します。このファシリティが、新たな次元での資金支援の先鞭をつけるものとなることを期待します。また、新ファシリティによる支援にあたっては、国際開発金融機関との協調融資など、国際社会とも緊密に連携していきます。

     このように「質の高いインフラ投資」に係る原則をアップグレードし、新ファシリティを含め包括的な支援メニューを用意することが、国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の国際的な取組を更に前進させていきます。これが受益国等の「自律的循環」に貢献し、更に民間資金動員を一層促進します。

    (2)東京事務所

     2016年3月に、EBRD代表事務所が東京に開設されてから2年余りとなります。これまで、日本の企業関係者等を対象としたビジネス開発や日本国内におけるEBRDの知名度向上に向けたアウトリーチに大きく貢献してまいりました。本事務所を通じて、日本の技術・知見がEBRDの支援に一層活用されることを期待します。

    (3)国際機関としてのEBRDの多様性の確保

     国際社会の問題が多様化・複雑化している中で、EBRDが喫緊の課題に柔軟かつ効果的に対応していくためには、EBRDにおける職員の一層の多様性も重要と考えております。EBRDには、人材面での多様化を積極的に進め、優秀な人材が適材適所で長く活躍できる場を提供することを期待します。日本も人材を通じたEBRDへの貢献に更に力を入れてまいります。

  6. おわりに

     日本は、EBRDが戦略・資金・組織・人材のあらゆる面において、その使命を最大限に達成できる機関であり続けるよう、引き続き貢献していく考えであり、EBRDとの協力関係を一層強固なものとしてまいります。

(以上)