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第24回EBRD年次総会 日本国総務演説(平成27年5月14日 於:ジョージア・トビリシ)

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第24回欧州復興開発銀行年次総会における菅原財務副大臣総務演説
(2015年5月14日 於:ジョージア・トビリシ)

  1. はじめに

     議長、総裁、各国総務並びに御列席の皆様、

     欧州復興開発銀行(EBRD: European Bank for Reconstruction and Development)の第24回年次総会の開催にあたり、日本政府を代表し、本総会の主催国であるジョージア政府及びトビリシ市の皆様の温かい歓迎に対して、心から感謝いたします。

     EBRDが1991年に設立されてからこれまでの間、中東欧において民主主義や市場経済が着実に根付き、多くの国がEU加盟を果たすなど大きな進展が見られました。こうした情勢の中でEBRDが市場経済への移行支援を通じて各国に果たしてきた大きな役割を高く評価します。この機会に、今後日本としてEBRDに期待する点を中心に意見を述べたいと思います。

  2. EBRDへの期待

    (1) 戦略・資本枠組み(SCF: Strategic and Capital Framework)

     今般、EBRDの中長期的な基本方針を定めることを目的として、2016年から2020年までの今後5年間の業務方針を示した「戦略・資本枠組み(SCF: Strategic and Capital Framework)」の提案が、チャクラバルティ総裁の強力なリーダーシップの下、新たなイニシアチブとして取りまとめられたことを高く評価します。

     SCFでは、COP21やSDGs (Sustainable Development Goals)といった国際的な課題に向けてのEBRDの貢献が明記されており、その点の重要性は日本も共有します。ただし、こうした課題への対応に向けては、日本としては、EBRDがこれまで中東欧諸国に対して市場経済への移行を支援してきた経験を有効に活用し、EBRDとして付加価値を提供することができる分野に特化して支援を実施していくことが重要と考えます。また、今般の「戦略・資本枠組み」においては、EBRDが現行の支援地域に向けて支援を注力していく方針が示されており、こうした方針を日本としては高く評価しています。

     昨年のロシア情勢を受け、EBRDはロシア向けの新規の投融資を停止している状況にありますが、そのリソースを有効に活用するため、EBRDが、情勢が不安定化しているウクライナや、市場経済移行支援を強く必要としている中央アジアやコーカサス諸国等の初期段階移行国(ETC: Early Transition Countries)に対する支援を将来的に増加させていくことを日本としては期待します。

     また、今後3年間(2016年から2018年まで)の子細な実施計画を示す「戦略実施計画 (SIP: Strategy Implementation Plan)を策定し、毎年実施状況をレビューしていく方針を支持します。

    (2) ギリシャ(新たな支援先)

     今年2月に、ギリシャが新たに2020年までの期限付きでEBRD支援対象国となったことを歓迎します。ギリシャの民間セクターが金融アクセス向上などによって経済活動を回復することができるよう、EBRDがギリシャを支援していくことには大きな意義があると考えます。

     一方、EU加盟国であり、一人当たりGDPも十分に高い水準にあるギリシャがEBRDの支援対象国となることには留意が必要です。今後ギリシャ経済が回復し、EBRDの支援を必要としなくなる時期が早い段階で到来することを望みます。こうした観点から、今回、EBRDによるギリシャ支援が2020年までと期限が定められたことを評価します。

    (3) ウクライナ

     昨年来、ウクライナ情勢の不安定化は、周辺国を含む地域におけるリスクとして大きな影を落としています。ウクライナの情勢、厳しい経済状況は、地域全体の経済の不安定化を招くおそれがあり、これまで進めてきた市場経済への移行努力の成果を失いかねません。そうした状況に陥る事のないよう、世界各国や国際機関が協調してウクライナに対して適時かつ効果的な支援を行う必要があります。

     ウクライナはEBRDにとって第二位の支援額を受けている国ですが、現在のウクライナの不安定な情勢下では、EBRDのような公的機関の支援が必要です。国際機関によるウクライナ支援の一環として、ウクライナの市場経済移行をこれまで支えてきたEBRDが可能な限りウクライナへのEBRD支援を増やしていくよう積極的な取組を求めます。

     昨年以降の日本によるEBRDを通じたウクライナ支援としては、日本・EBRD協力基金(JECF: Japan EBRD Cooperation Fund)を活用し、同国の農業セクター向けにアフリカ豚コレラを防止するための技術支援を実施したほか、EBRDに新たに設置された「ウクライナ支援マルチドナー基金」への資金拠出を行いました。また、日本は、昨年3月に表明したウクライナに対する最大約15億ドルのバイ支援を着実に実施しています。今年1月には新たに、東部復興支援のための約1660万ドルの支援のほか、ウクライナ経済の安定化に向けて少なくとも3億ドルのバイ支援を行う方針について表明したところです。

    (4)初期段階移行国(ETC: Early Transition Countries)

     中東欧諸国に比べ、中央アジアやコーカサス諸国といったETC諸国は市場経済への移行に向けて取り組むべき課題が山積しており、EBRDは今後こうした地域への支援に更に注力していくことが重要です。日本としてはETC諸国向けのEBRD支援額が将来的に増加していくことを期待します。

     日本としても、日本・EBRD協力基金(JECF)の活用を通じたETC諸国への技術支援について検討していきます。例えば、EBRDには、ETC諸国への技術支援を目的とした「ETCマルチドナー基金」が設置されており、日本はこれまで本基金への資金拠出を積極的に行ってきましたが、ETC諸国への継続的な支援の重要性を考慮し、日本からの新たな資金拠出について検討を行いたいと考えています。

    (5)卒業政策

     EBRD支援地域からの卒業は、市場経済への移行が概ね完了したことを表すEBRDの具体的な成果です。卒業を進めていくことは、市場経済への移行のためにより多くの支援を必要とする国のために必要な資金リソースを確保するためだけではなく、EBRDの業務の成果を示す意味でも必要です。より効果的なEBRD支援を行い、市場経済への移行を速やかに促進することで支援地域からの卒業を実現していくことを期待します。

     日本はこれまで、EU加盟を果たした中東欧諸国(EU7: ポーランド、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア)の早期卒業への期待を表明してきました。こうした国においては、世界金融危機、その後の欧州債務危機、更にロシア・ウクライナ情勢等に伴ってリスクが顕在化しており、短期的な視点からはEBRDによる一定の支援の継続は必要と考えます。他方で中長期的には、卒業に向けた道筋についてEBRDが継続的に検討を進めていくことを期待します。

    (6)新たな取組

     EBRDの新たな取組として、EBRDの内部留保を活用し、インフラ案件の組成準備を支援することを目的とした「インフラ案件準備ファシリティ」を設立したことを歓迎します。G20等の場でインフラ投資促進に向けた議論が進展する中、EBRDがインフラ案件の支援に力を入れていく方針は適切と考えます。こうした取組により、支援地域において、民間資金を動員した優良なPPPインフラ案件の組成が促進されることを期待します。

     また、EBRDが昨年12月に承認した予算案の中で、東京においてビジネス開発を目的とする代表事務所(Representative Office)を開設する方針を決定したことを歓迎します。今後、同事務所の活動を通じ、EBRDと日本企業を含めたアジアとの連携が更に深まることを期待します。

  3. おわりに

     チャクラバルティ総裁が2012年7月に就任されてから間もなく3年となります。この間、総裁のリーダーシップの下、EBRD支援の成果に着目する取組を強化するなど、効果的な支援のあり方について検討を進めている点を評価します。 EBRDが市場経済移行を促進する使命をしっかりと果たしていくため、日本として今後とも貢献していきたいと考えます。

     なお、日本としては途上国に対するインフラ投資の支援を強化していく予定であり、先日のADB総会において麻生副総理から、日本がバイ・マルチの様々な関係機関と連携して、途上国の成長のために良質なインフラ投資を通じて貢献していく方針を示したところです。具体的には、マル1日本の官民一体となった良質なインフラ投資の量的拡充、マル2良質なインフラ投資について国際的スタンダードとして浸透するよう図ること、マル3PPPインフラ投資の促進に向けたJICAと国際機関の協力関係の構築、マル4JBIC等の体制強化を通じた日本の技術・ノウハウの活用、といった取組みを進めていきます。また、日本とEBRDとの間の協力関係についても検討していきたいと考えます。

     日本がこうしたEBRDへの貢献や途上国へのインフラ投資促進の支援を進めていく際には、日本が有する知見や技術を十分に活用し、人的貢献も含めた幅広い貢献を行うよう、積極的に取り組んでいきたいと考えます。

(以上)