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第22回EBRD年次総会 日本国総務演説(平成25年5月11日 於:トルコ・イスタンブール)

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第22回欧州復興開発銀行年次総会における小渕財務副大臣総務演説
(2013年5月11日 於:トルコ・イスタンブール)

  1. はじめに

     議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

     欧州復興開発銀行(EBRD: European Bank for Reconstruction and Development)の第22回年次総会の開催にあたり、日本政府を代表し、本総会の主催国であるトルコ政府およびイスタンブール市の皆様の暖かい歓迎に対して、心から感謝いたします。

     今回の総会は、昨年7月に就任されたチャクラバルティ総裁にとって最初の総会となります。就任後、総裁が、移行効果(トランジション・インパクト)を重視する成果重視の取組を強化するとともに、支援国との政策対話を通じてより効果的な支援の実施を目指すなど、組織の近代化に取り組まれていることを高く評価します。

  2. EBRDの課題

    (1) 総論
     EBRDは、民主化にコミットしている中東欧諸国の市場経済への移行支援を目的として1991年に設立されました。EBRD設立から四半世紀近くが経過し、EBRDの支援を受けてきた一部の国はEU加盟を果たすまでに至りました。一方、2008年の国際金融危機以降、これらの国がEBRDから卒業するプロセスは停滞しています。また、EBRDの支援対象国の中でも、中央アジア諸国は、依然として、市場経済への移行に遅れが見られます。さらに、新たにEBRDの支援対象地域に加わろうとしている南・東地中海地域(SEMED: Southern and Eastern Mediterranean)の国々の市場経済への移行という大きなチャレンジが待ち構えています。

     EBRDには、これまで中東欧諸国で培ってきた経験を活かし、効率的かつ効果的な形で、市場経済への移行が遅れた国々に対して重点的な支援が行われることを期待しており、こうした観点から、以下の4点を申し上げます。

    (2) 南・東地中海(SEMED: Southern and Eastern Mediterranean)諸国への支援

     まず、SEMED諸国への支援について申し上げます。

     アラブの春を経験したSEMED諸国においては、市場指向型経済への移行を促進することで、経済面から、改革の機運を持続させるように手を差し伸べていくことが重要です。EBRDは、中東欧諸国における経験を活かしつつ、国営企業改革や、経済成長を支える金融セクター、中小企業の育成を加速させていくことが求められます。特に、若年失業率が高いSEMED諸国においては、雇用吸収力の高い中小企業を育成することは不可欠です。

     日本は、昨年9月に、SEMED諸国支援のために必要なEBRD設立協定の改正に係る批准手続きを終えました。EBRD設立協定第18条の改正発効により、EBRD純益を活用した特別基金の設置を通じたSEMED諸国向けの支援が開始されており、日本としても歓迎します。今後、EBRD本体によるSEMED諸国に対する支援が出来る限り早く行われるよう、全てのEBRD加盟国により、EBRD設立協定第1条の改正に係る批准が行われることを強く期待します。

     日本は、ドーヴィル・パートナーシップの下で、中東・北アフリカに対する支援を積極的に行っています。2011年9月には、野田総理より10億ドルの円借款供与を表明し、既に達成しました。また、本年5月1日には、安倍総理より、中東・北アフリカ向けの地域安定化・民主化支援として、新たに22億ドル規模の円借款等による支援を表明したところです。更に、資本市場を通じた資金調達を促進する観点から、チュニジアが発行した円建て外債(サムライ債)に対し、JBIC保証を付与しました。加えて、国際社会が協力して必要とされる技術協力を行うため、世界銀行の下にMENA(Middle East and North Africa)移行基金が設置されたことを受け、3年で12百万ドルの貢献を行うこととしています。

    (3) 中東欧諸国に対する支援とEBRD支援からの卒業

     第二に、中東欧諸国に対する支援とEBRD支援からの卒業について申し上げます。

     ユーロ圏と繋がりの深い中東欧諸国は、輸出や資本流入の減少等の影響を受けており、経済成長が低迷しています。こうした中にあって、EBRDに対して一定の役割が求められることは理解できます。他方、今後、欧州の経済・金融情勢が安定化した際には、第四次資本財源レビュー(CRR4: Capital Resources Review)で2015年までに卒業することが期待されているEU7諸国(ポーランド、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア)の早期卒業が実現することを期待します。

     これらの国々が、2008年以来の国際金融危機の経験などを通じて、卒業後にEBRDからの支援が受けられなくなることに対して不安を覚えることは理解できるところであり、卒業後を見据えた現実的な卒業のための戦略の検討も重要です。EU7諸国の卒業が円滑に進むことを確保するため、日本としては、今後、出来る限り速やかに、結論が得られることを期待します。EBRD支援対象国からの卒業は、市場経済への移行が概ね完了したことを表すEBRDの具体的な成果であり、また、卒業国の経験が後続の支援対象国に伝えられていくことを期待します。

    (4)初期段階移行国(ETC: Early Transition Countries)に対する支援

     第三に、市場経済への移行が遅れている初期段階移行国(ETC)に対する支援について申し上げます。

     EBRDは、市場経済への移行支援を目的とする機関であり、中央アジア諸国を始めとして、市場経済への移行が遅れているETC諸国への支援に注力していくことが重要です。日本は、昨年、中央アジア地域向けの支援規模が前年比で倍増したことを高く評価します。チャクラバルティ総裁のリーダーシップの下、こうしたモメンタムが維持・発展されることを期待します。

     ETC諸国の市場経済への移行を促進するためには、中小企業を育成するとともに、エネルギー効率を高めることを通じて経済全体としての競争力を強化していくことが重要であり、日本としても、積極的に協力していきます。こうした観点から、日本は、日本・EBRD協力基金(JECF: Japan EBRD Cooperation Fund)の活用を通じて、日本の優れた技術や知見の活用が図られることを期待します。

    (5)ジェンダー・資源の持続可能な利用

     最後に、新たなイニシアティブとして承認されたジェンダーと資源の持続可能な利用について申し上げます。

     EBRDの目的である、市場指向型経済への移行を促進するに当たり、ジェンダーや資源の持続可能な利用の観点を踏まえることは重要です。中小企業等に対する資金供給を円滑化する観点から行われる金融機関向けクレジットラインの設定や、国営企業の民営化など、市場経済への移行支援を目的とする個々のプロジェクトの中で、ジェンダーや資源の持続可能な利用の観点を勘案することについて、日本は支持します。

     一方、EBRDは、他の国際開発金融機関(MDBs)と異なり、開発一般を目的とする機関ではなく、市場指向型経済への移行支援を目的に設立された機関であることを十分に踏まえる必要があります。こうしたイニシアティブの実施に当たっては、移行効果が確実に得られるようにして頂きたいと思います。

  3. 結語

     議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

     EBRDは、市場経済への移行が遅れたETC諸国への支援強化や、新たに支援対象地域として加わろうとしているSEMED諸国におけるオペレーションの展開が求められる一方、現下の欧州経済・金融情勢を踏まえた対応も期待されるなど、取り組むべき課題は多岐にわたっています。

     EBRDの設立目的は、市場経済への移行支援にあり、その使命を効率的・効果的に達成していくことが重要です。また、日本としては、EBRDが市場指向型経済への移行支援を進めていくに当たり、これまで以上に、日本の民間セクターの果たす役割を重視しており、そうした観点からも、EBRDとの関係を強化していく所存です。

     ご清聴ありがとうございました。

(以上)