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第35回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成29年4月22日)

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第35回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2017年4月22日(土))

  1. 世界経済、日本経済

    【世界経済】
     世界経済の見通しが先進国を中心に足下で上向いていることを歓迎します。一方で、潜在成長率の引上げ、ぜい弱性解消、包摂性の実現など、世界経済は引き続き構造的な課題を抱えています。足下の経済情勢が好転すると、このような課題は、一見見えにくくなりますが、慢心することなく引き続き課題への対処を進める必要があります。また、下方リスクや不確実性も残存する中、金融・為替市場の安定は特に重要です。為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ます。

     このような中、経済、金融の強靭性を高めつつ、全ての政策手段−金融、財政及び構造政策−を個別にまた総合的に用いていくとのコミットメントは引き続き適切であると考えます。金融政策は、経済活動を支え、物価の安定を確かにするために、引き続き適切に活用されるべきです。また、債務持続可能性を確保しつつ長期的な成長や構造改革に資するような成長促進的な財政政策を行うことは各国共通の課題です。そして、各国が、短期的な政策対応に留まらず、潜在成長力の強化と脆弱性の解消に向け、各国の事情に応じた構造政策を進めていく必要があります。

     最近世界経済の一部において見られる、内向きな政策に向けた動きの背景には、自由貿易や市場経済の便益を享受できず不満を持つ人たちの存在があることが指摘されています。こうした便益が幅広く行き渡るように、適切な再分配や構造面の取組を通じて経済成長と包摂性の実現を両立させることが必要です。その際、分配ありきではなく、経済成長を達成し分配の原資を確保する中で、適切な分配を行うことでなければ、持続可能ではありません。また同時に、包摂性の実現や格差問題への対応と称して自由貿易に逆行すべきではありません。自由貿易は、多くの国において、経済の繁栄に寄与してきたことを強調しておきたいと思います。

    【日本経済再生に向けた取組】
     アベノミクスの成果が着実に上がってきた結果、日本経済のファンダメンタルズは堅調です。実質GDP成長率(前期比)は4四半期連続の潜在成長率を上回るプラス成長、賃金引上げ率は3年連続で今世紀最高水準、労働市場も有効求人倍率が25年ぶりの高水準となりました。好調な企業収益や逼迫した労働市場が消費や投資の伸びをもたらすような、経済の好循環を確かなものとしていく必要があり、そのためには継続的で安定した賃金上昇が極めて重要です。また、構造改革等を通じて、少子高齢化を乗り越え潜在成長率を高めていくことも重要です。女性や高齢者の雇用促進や労働生産性の向上等につながる「働き方改革」を強力に進めており、先月には、「働き方改革実行計画」を策定しました。これらは、各国で課題となっている、持続可能で包摂的な成長の実現に資するものでもあります。以上の通り、引き続き、政府・日銀が一体となって、金融政策・財政政策・構造改革のあらゆる政策を用いてアベノミクスを一層加速していきます。

  2. IMFへの期待

     変わり続ける世界経済に対応したその時々の政策課題の解決に向けた国際協力において、IMFに求められる役割は引き続き大きく、今後とも国際通貨システムの中核としての機能を引き続き期待します。

    【サーベイランス】
     引き続き、高い専門性を持ったIMFのサーベイランス・政策提言に期待します。まず、各国当局の政策運営はつい近視眼的になってしまうということを踏まえ、より中長期の時間軸で、IMFが政策の分析・提言を行うことが有益です。また、世界経済の更なる統合が進行する中、各国当局では統一的な把握が困難なシステミックに重要な国からのスピルオーバー効果など、国を超えた連関性に重きを置いた分析にIMFの強みがあると考えます。

     世界経済の統合の進展による、国際的な資本フローの量や変動の増大への対応は、引き続き優先課題です。昨年末にIMFが取り組んだ、資本フローへの対処に関する各国の近年の事例のレビューを歓迎しますが、これはあくまで今後の作業に向けた一里塚です。資本フローに関する「IMFの機関としての見解」のような概念整理に留まらず、それに基づいたより詳細で具体的な枠組みが必要であり、個々の資本フロー管理政策の有効性・適切性評価の基礎となるような実用的なガイダンスを、IMFが示すことを引き続き求めます。

     グローバル・インバランスの現状を評価する「対外セクター報告」に関しては、為替レートの評価のあり方に改善の余地があると考えます。グローバル・インバランスを巡る議論に関しては、まず、経常収支の黒字・赤字は、各国の経済構造や景気循環等を反映して生じるものであり、それ自体に問題はありません。また、「過度な」インバランスが生じている場合、その調整は構造改革を含むマクロ政策全体で対処すべきものであり、為替レートを通じた経済調整の必要性は必ずしも意味しません。日本において為替レートが貿易収支に与える影響が低下しているとのIMFの指摘や、日本の経常黒字は所得黒字が大宗であるとの事実も踏まえれば、経常収支不均衡の是正という文脈で、日本の為替レートの評価を行うことの意味には大きな限界があると考えます。さらに、評価モデルに関しても、対内・対外投資収益率格差などの各国経済に固有の特性を、よりきめ細やかに捉えることができるよう改善の余地があります。

    【グローバルセーフティネット】
     経済危機は多種多様で、その対応の手法も様々である中、IMFとRFAは、各RFAの多様性には留意しながらも、金融・通貨の安定性確保という目標を共有しつつ、連携を強化していくべきです。連携にあたっては、危機の発生時のみならず、情報共有等を含む常日頃からの継続的な密な協力が重要となります。以上の点に鑑み、日本は、2017年のASEAN+3共同議長として、IMFとCMIMの合同テストランや、IMFとAMROの情報交換等IMFとの連携強化の議論を主導していきます。

     IMFが、その貸出手段に関し、時代に応じて変化していく国際金融情勢や、加盟国のニーズに対応し、不断の見直しに努めていることを歓迎します。見直しに当たっては、IMF資金の利用の適切な規律が確保されるか、利用国の経済状況を適正な評価が可能な制度となっているか等の観点が重要と考えており、詳細な具体案をもとにした十分な検討を踏まえた、今後の議論を期待しています。

     クォータ見直しに関しては、IMFのガバナンスの基礎であるクォータ・シェアにおいて借入資金への自発的な貢献が正当に認知されることが不可欠です。クォータ・シェアは、当該国のIMFへの「資金ニーズ」とともに、IMFに対する「資金貢献能力」を十分に反映することとされています。この「資金貢献」の観点から、近年はIMFの運営において借入資金への貢献の重要性が増しています。近年の危機の形態の変化に伴って生まれた、いざ危機が起きた際の被害は大きいものの、発生確率が高くないリスクに備えるための莫大な資金まで、全てクォータで賄っておく必要はありません。常に外準を拠出しておくクォータと比べ、IMFへの貸付枠の設定は加盟国にとってより合理的な資金拠出の手段です。従って、その重要性に鑑みれば、借入資金に対する貢献実績は、当該加盟国の実際の資金貢献の意思や実現可能性まで勘案した、クォータ・シェアに反映される変数として適切な指標です。

    【能力開発(技術支援・研修等)/低所得途上国支援】
     現在の国際社会において能力開発が必要な分野は未だに多く、IMFが引き続き重要や役割を果たすことが求められています。我が国もIMFの能力開発活動に対する主要ドナーとして継続的に貢献しています。

     この能力開発において、IMFが、結果に基づく管理の枠組み(RBM)を通じ、成果重視の評価を進めている方向性を歓迎します。能力開発は、その成果を適切に評価・検証した上で、より効果的な支援を実施していくことが求められます。また、IMFの能力開発活動においてはドナーからの外部資金に頼る割合も大きく、ドナー国に対する説明責任という観点からも、結果に基づく管理の取組は益々重要なものとなってきています。

     グローバル機関であるIMFには、世界中のあらゆる地域の能力開発の需要を見極め、バランスのとれた偏りのない支援を実施することを期待します。我々は、行政施策の企画・立案・評価のための基礎的な情報を提供する統計や、金融の規制・監督枠組みの強化、途上国の持続的発展のベースとなる公共支出管理や債務管理といった分野の能力開発が特に重要と考えます。

     また、低所得国の税制強化や税務行政のガバナンス向上などを引き続きIMFの能力開発の重点分野の一つとすることが必要です。持続可能な開発目標(SDGs)達成のためには国内資金動員(DRM)の強化が欠かせないからです。

     この点、IMFが、「歳入動員支援信託基金(RMTF)」を低所得国の国内資金動員強化のために活用していくことが不可欠です。そのためには、IMFが、関係機関と立ち上げた「税に関する協働のためのプラットフォーム」において共有される知見や情報を活用することが重要であり、日本もこの取組において積極的な役割を果たしていきます。

(以 上)