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第33回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成28年4月16日)

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第33回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2016年4月16日(土))

  1. 世界経済、日本経済

    【世界経済】
     世界経済の回復は続いていますが、依然としてばらつきがあります。先進国経済の成長は引き続き緩やかな一方で、新興国・途上国経済の成長は弱いままであり、足元では金融市場は落ち着きを取り戻しつつありますが、下方リスクは残っています。また同時に、潜在成長率の低下は先進国・新興国共通の課題です。このため、各国が各々の課題に対応する構造改革に中長期の視点から着実に取り組んでいく必要があります。その上で我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長の実現に向け、引き続き、各国の経済状況・政策余力を踏まえ、財政政策、金融政策及び構造改革から成る最適なポリシー・ミックスを実施していく必要があります。

    【日本経済再生に向けた取組】
     日本経済については、2015年の実質GDP成長率が0.5%となるなど、緩やかな回復基調が続いています。足元では消費者マインドに足踏みがみられるものの、実質雇用者報酬が前年同期比でプラス、有効求人倍率が1.28 倍と 24 年ぶりの高水準となるなど、個人消費を取り巻く環境に明るい動きがみられています。更に、設備投資が2四半期連続でプラスになるなど企業部門にも前向きな動きが出ています。今後を展望すると、各種政策の推進等により、雇用・所得環境が引き続き改善し、経済の好循環が更に進展するとともに、交易条件が緩やかに改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれます。

     今般のGlobal Policy Agendaにおいても、金融、財政及び構造政策の三方面のアプローチが強調されていますが、この点日本では、これにまさに合致するものとして、安倍政権の下で大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を「三本の矢」として一体的に取り組み、経済再生と財政健全化の両立を期した経済財政運営を行っているところです。

     成長戦略については、取組を着実に進めています。経済政策を一層強化し、企業の収益を、賃上げを通じた消費の拡大や民間投資の拡大につなげていくことに加え、成長戦略をさらに進化させることにより、名目GDP600兆円を目指します。そのために、法人税改革や中小・小規模事業者向けの固定資産税減税、保育の受け皿拡大等による女性の活躍促進、人工知能・ロボット・IoTといった挑戦的な研究の支援・規制改革、農業の大規模化等による競争力強化など、政策を総動員していきます。加えて、「希望出生率1.8」や「介護離職ゼロ」に向けた施策を推し進めるなど、日本が抱える少子高齢化という構造問題にも正面から取り組みます。50年後も人口一億人を維持する「一億総活躍社会」を目指し、本年5月には具体的なロードマップである「ニッポン一億総活躍プラン」をとりまとめた上で、非正規雇用労働者の待遇改善を推進し、女性や若者等の働き方の選択肢を広げるため、同一労働同一賃金の実現に向けて必要であれば法改正も行います。

     金融政策については、日本銀行は1月末、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するため、マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入を決定しました。日本銀行は、2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を継続します。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、物価安定の目標の実現のために必要な場合には、量・質・金利の3つの次元で、追加的な金融緩和を講じます。

    財政政策については、機動的に対応してきています。2015年度補正予算は実質GDP成長率を0.6%程度押し上げると試算されており、また、今般成立した2016年度予算は過去最大規模の当初予算(96.7兆円)となっています。本予算は最大の経済対策であり、引き続き2015年度補正予算の早期実施に努めるほか、2016年度当初予算の執行も可能なものは上半期に前倒していきます。公共事業等は、上半期末において全体の8割程度が契約済となることを目指し、効果を早期に発揮させていきます。財政状況に目を転じると、公的債務残高がGDPの200%を超えるなど、極めて厳しい状況にあり、財政健全化に向けた取組を着実に進める必要があります。日本政府としては、昨年、経済・財政再生計画を策定し、2020年度におけるプライマリーバランス黒字化に向けて、マル1まずは、成長戦略を着実に実施することで、引き続き経済再生に取り組むとともに、マル2経済・財政再生計画で示された歳出水準の目安に沿って歳出改革を実行する、マル3そして、2018年度時点で、その進捗状況を評価し、必要な場合には歳出・歳入の追加的な対応を検討する、こととしています。この方針の下、引き続き経済再生と財政健全化を両立し、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて取り組んでまいります。

  2. IMFへの期待

    【国際金融システムの強化】
     近年、世界経済の統合の進展によりクロスボーダーの資本フローの量やボラティリティは増大しています。最近も一次産品価格の大幅な下落等を背景として、不安定な市場の動きが見られます。新興国経済の先行きや米国による金融政策正常化の影響などの今後の国際金融情勢を注視しつつ、引き続き国際金融システムにおける課題の解決に向けた取組が必要です。グローバルな金融安定のためのセーフティネットは引き続き重要であり、その中で中心的な役割を担うIMFのイニシアティブに今後とも期待します。日本としてもIMF に対し、2009 年に1000 億ドル相当、2012 年に600 億ドル相当の融資枠を設定するなど、積極的に協力してきたところです。IMF が今後とも、国際金融の安定や世界経済の持続可能な成長実現のために重要な役割を果たしていくことを期待しています。

     IMFについては本年1月、IMFの正当性、有効性、信頼性を維持・向上させるものとして加盟国のコンセンサスとなっていた2010年改革が約5年越しに実現したことを歓迎します。第14次クォータ増資の発効により、IMFへの加盟国全体の出資総額は倍増し、資金基盤においてクォータが占める割合も大幅に増加しました。現時点においてはIMFに大幅なリソース不足が生じている状況とは言えないことから、更なるクォータの見直しにあたっては、まずIMF全体としての資金規模の適切性につき慎重に吟味した上で、検討を行っていくべきものと考えます。今のところ利用例が限られているFCLやPLL等のIMFの既存の貸出の枠組みにも改善の余地がないか点検が必要です。また、IMFは他の金融セーフティネットと一体として機能することが重要です。地域金融セーフティネット等の各セーフティネットの多様性は尊重しつつ、セーフティネットの各要素が補完的な関係を深化させることにより、全体として調和したグローバル金融セーフティネットの構築が望まれます。

     さらに、最近の世界の金融市場のボラティリティの高まりや新興国を中心とする資本フローの不安定性を踏まえれば、資本フローに対処する政策手段と枠組みを整えておくことが急務です。一般的な処方箋ではなく、各国当局が実際にどのような政策に取り組むべきか、実践的な政策提言を早急に取りまとめる必要があり、IMFが現在取り組んでいる資本フローに関する作業の加速を促します。

     最後に、グローバルな経済・金融動向を客観的かつ正確に把握し、次の金融危機の発生を防ぐためにも、経済・金融データの透明性や適時性、包括性を向上させることも重要です。日本はこのたび、経済と金融の統計データのより高い基準にコミットし、IMFの「特別データ公表基準(SDDS)プラス」に準拠した一段と包括的で国際的に比較可能なデータの公表を開始します。また、こうした高い基準の統計整備に向けて、各国が、それぞれ自国の統計データ改善に真剣に取り組んでいく必要があります。

    【低所得途上国支援・開発資金】
     原油価格及び商品価格が低下している中、貿易構造がこれらの財に大きく依存している低所得途上国の中には経常収支や財政収支が深刻に悪化している国もあります。IMFには、喫緊の国際収支問題に対応するという本来の役割に立ち返り、マクロ調整について有益なアドバイスをするという比較優位に着目し、世銀等の開発金融機関と連携しつつ、国ごとの実情も踏まえた最も適切な形で支援を行うことが求められていると考えます。

     また、昨年採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実現に向けて、IMFには、融資、サーベイランス、そして技術支援を組み合わせ、特に税務行政に係るガバナンスやキャパシティの強化を通じた税収増や、投資環境改善を通じた国内資金動員といった途上国が直面する政策課題の解決に貢献することを期待します。その際、途上国との対話を深め、各国の税務行政の相対的な強み・弱みを客観的に把握するための診断ツールを幅広い国々に対して適用し、診断結果を技術支援に活かしていくこと、世銀、OECD及び国連等と、それぞれの比較優位を活かした連携を深めること、そのための対話の枠組みとなる「タックス・プラットフォーム」を速やかに構築し効果的に運営していくことを求めます。

     IMFがこうしたアプローチを重視した技術支援を強化できるよう、日本は、IMFが新たに立ち上げる「歳入動員支援信託基金:Revenue Mobilization Trust Fund (RMTF)」に平成28年度より6億円の新規拠出を行うとともに、「タックス・プラットフォーム」の構築と運営に積極的に貢献していく所存です。

(以 上)