現在位置 : トップページ > 国際政策 > 国際通貨制度等〜国際通貨基金(IMF)等〜 > IMF国際通貨金融委員会(IMFC) > 第32回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成27年10月9日)

第32回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成27年10月9日)

印刷用(PDF)

第32回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2015年10月9日(金))

  1. 世界経済、日本経済

    【世界経済】
     世界経済は全体として緩やかながら回復を続けていますが、新興国や資源輸出国を中心に下方リスクが存在しています。新興国においては通貨が全体として下落圧力にさらされているために、これ以上の緩和的な金融政策には限界がある一方、国によっては財政出動の余地も少なく、需要喚起の政策手段は限られています。加えて、中国経済の減速懸念や先進国のマクロ政策運営の不確実性を背景に、金融市場の変動も高まっています。このような経済環境下においては、不確実性を緩和し透明性を向上させるため、市場参加者とのよりスムーズなコミュニケーションを取りつつ、きめ細やかな政策運営を行っていくことが重要となります。

    【日本経済再生に向けた取組】
     日本経済については、雇用・所得環境が改善し、設備投資などの民需に持ち直しの動きがみられ、緩やかな回復基調を続けています。2014年第4四半期と2015年第1四半期では2四半期連続のプラス成長でしたが、2015年第2四半期の実質GDP成長率は年率マイナス1.2%のマイナス成長となりました。これは、年初に見られた世界経済の成長鈍化がラグをもって日本経済に影響を及ぼしたことや、天候不順などにより消費が伸び悩んだことなどに起因するものであり、今後緩やかに回復していくことが期待されます。

     今後の日本経済を展望すると、労働需給が引き締まりつつあるなかで非正規雇用者の雇用転換の動きが続くと期待されるほか、良好な春闘の交渉結果などを背景に所得環境の改善傾向が続き、個人消費が徐々に改善していくことが見込まれます。加えて、2015年第2四半期の企業利益が過去最高水準となったことを背景に、今後設備投資が増加していくことが見込まれるなど、景気は緩やかに回復していくことが期待されます。平成26年度調査による企業の内部留保は対前年度比8%増の354兆円(GDP比72.2%)に達しており、好調な企業収益をいかに配当・給与・設備投資などに回るように仕向けていくかが重要です。政府としては、このような動きを通じて経済の好循環が確かなものとなるよう、引き続き経済運営を強力に推進していきます。

     アベノミクス「三本の矢」の政策により、雇用・所得環境は改善し、デフレ脱却まではもう一息ですが、日本には少子高齢化という長年の構造的課題が存在します。そこで、マル1名目GDP600兆円を目指す「強い経済」、マル2出生率1.8を達成するための「子育て支援」、マル3介護を理由に仕事をやめる方をゼロにするなどの「社会保障」を「新しい『三本の矢』」として掲げました。従来の「三本の矢」の政策は、経済政策の手段を示すものでしたが、これらの「新・三本の矢」は、具体的な目標を掲げたものです。これらの目標の達成に向けて、引き続き経済・財政運営に取り組んでまいります。

     強固で持続可能かつ均衡ある成長を実現するためには、資本ストックを増加させ、労働供給を安定的に維持するとともに、技術進歩などを通じて、生産性の向上に取り組むことが重要です。本年6月末に改訂した成長戦略では、労働人口の減少を踏まえ、積極的な投資を行って、生産性を向上させることを主要課題として掲げています。具体的には、まず、企業の積極的な投資行動を促すために、コーポレートガバナンスの強化に努めているところです。コーポレートガバナンス・コードや投資家のスチュワードシップ・コードを通じて、企業が利益を設備投資、技術革新及び人材育成に振り向けることによって、収益力の向上へとつなげていくことが期待されます。また、労働供給制約を克服し、労働の質を高めるため、女性、外国人労働者の活用を引き続き推進しています。たとえば、子育てと仕事の両立を支援しつつ、女性活躍推進のための法案を今国会で成立させており、企業や政府における女性管理職も増加しています。さらに、いわゆる岩盤規制改革については、本年8月末に農業の成長産業化を図るための関連法案が成立したところです。医療・雇用などの分野においても、引き続き規制改革に取り組みます。こうした取組を通じて、日本は生産性の向上を強力に推進しています。

    財政状況に目を転じると、公的債務残高がGDPの200%を超えるなど、極めて厳しい状況にあり、財政健全化に向けた取組を着実に進める必要があります。このような中、本年6月には2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて財政健全化計画を策定しました。計画の中間時点である2018年度のプライマリーバランス赤字の対GDP比については、マイナス1%程度を目安とし、国の一般歳出については、これまでの3年間の取組を基調として、過去3年間で実質的な増加が1.6兆円程度となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度まで継続していくことを目安とします。こうした定量的な目安に照らし、改革の進捗状況を評価し、その上で、必要な場合は、歳出、歳入の追加措置等を検討することとしており、計画の実効性をしっかりと担保しているところです。こうした取組を通じて、引き続き経済再生と財政健全化を両立し、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標を達成してまいります。

     金融政策については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。

  2. IMFへの期待

    【国際金融システムの強化】
     国際金融における課題が山積する中、IMFに求められる役割はますます大きくなっています。新興国経済の先行きや米国による金融政策正常化の影響などの今後の国際金融情勢を注視し、引き続き国際金融システムにおける課題の解決に向けた取組が必要です。上海株式市場に端を発した国際金融市場における世界的な変動の上昇は、資源価格下落と相まって、市場のリスク・センチメントを急激に悪化させる可能性があります。長らく続いた世界の緩和的な金融政策によって潤沢な資金が新興国に流入し、更にその資金が流出していくリスクが懸念される状況下で、国際的な資産価格の連動性が高まっています。そうした中、各国が自国に特有の課題に個別に対処するだけでは政策対応としては不十分であり、グローバルな金融安定のためのセーフティ・ネットを強化することの重要性が益々高まってきています。今般のGlobal Policy Agendaにおいてもグローバル・セーフティ・ネットについて言及がされているところ、今後ともIMFのイニシアティブに期待するとともに、日本も積極的に議論に参加してまいります。

     IMFが危機予防・危機対応に万全を期すための前提となる資金基盤の強化については、その正当性、有効性、及び信頼性の維持・向上の観点からも、2010年改革の発効が最優先課題です。IMFの2010年改革はパッケージとして存在する唯一の加盟国間でのコンセンサスであり、その実現が極めて重要です。しかしながら、同改革の発効が遅れていることを受けて、早急に「暫定的な解決策」の議論を行わざるを得ない状況にあります。日本としては、「暫定的な解決策」の策定に当たっては、具体的なオプションに幅広いメンバー国の理解を得るためにも、クォータシェアが2010年改革に近い形に収まる内容であることが不可欠だと考えています。

     これまで世界金融危機や欧州債務危機など、国際金融市場が困難な局面に直面するたびに、IMFのイニシアティブの下、危機予防・危機対応の仕組みの構築が行われてきました。こうしたIMFの取組を高く評価し、日本としても国際金融市場の安定に向けたより良い制度の構築に今後とも参画していきます。日本は世界金融危機後、各国に先駆けてIMFに対して1000億ドル相当の融資枠を設定し、その後もNABやバイ融資取極による柔軟かつ迅速な資金基盤強化を主導してきたところであり、先般もNABのアクティベーション及びバイ融資取極の延長に同意しました。いま一度、クォータ改革の話に戻れば、「暫定的な解決策」を検討するに当たっては、IMFがこれまでの日本の努力を評価し、我々の主張に格段の配慮が払われることを強く期待します。

     また、本年は5年に一度行われるSDR(特別引出権)の見直しの年に当たります。構成通貨の検討については、客観的なデータに基づくIMFの技術的検討を待つ必要がありますが、引き続きこれまで確立されてきた原則に立脚した議論を期待します。

    【低所得途上国支援・開発資金】
     世界経済の先行きに下方リスクが存在する中、IMFが脆弱性の大きい低所得国に対して果たすべき役割は重要です。譲許的ファシリティへのアクセス50%拡大など、第3回開発資金国際会議の中のIMFによる数々のコミットメントは低所得国の持続的な成長を安定して支えるために効果的な取組であるとして歓迎します。

     途上国が持続的に発展していくうえでは、疫病や自然災害など、自らコントロールすることが困難なリスクや緊急事態に対処する力を高めることが必要です。近年、ヘルス・マネジメント、及び自然災害やパンデミックへの対応が注目される中、WHO、世界銀行、国際連合等において、平時及び有事における国際保健システムの構築に向けた議論が活発に行われています。この点、エボラ出血熱によって深刻な被害を受けた西アフリカ諸国経済を支援するとともに、将来の国際保健における緊急事態に対する支援体制を強化するため、本年2月にCCR基金(大災害抑制・救済基金)が創設されたことを強く支持します。

     本年は、貧困、格差や気候変動等の地球規模課題に国際社会が対処していくうえで節目となる年です。先般採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実現に向けて、IMFには、融資、サーベイランス、そして技術支援を組み合わせ、特に税務行政に係るガバナンスやキャパシティの強化を通じた税収増や、投資環境改善を通じた民間資金動員といった政策課題の解決に貢献することを期待します。その際、各国の状況やニーズを可能な限り客観的に診断できるツールを整えること、各分野で比較優位を持つ他機関と連携すること、そして途上国の政治的オーナーシップを引き出すための対話を重視し、支援の成果を適切にモニタリングすることを求めます。日本は、IMFがこうしたアプローチを重視した技術支援を強化するとともに、より一層緊密に関連機関と協働できるよう、引き続き知的、人的、資金的貢献を積極的に提供する用意があります。

(以 上)