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第31回IMFC 日本国ステートメント(平成27年4月18日)

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第31回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2015年4月18日(土))

  1. 冒頭

     まず、今般IMFC議長を退任されたターマン氏に対し、これまで発揮されてきた卓越したリーダーシップに感謝申し上げるとともに、新たに議長に就任されたカルステンス氏を心から歓迎いたします。議長の深い知見と幅広い経験を得て、IMFCが益々重要かつ有益なフォーラムとなっていくことを確信しております。

  2. 世界経済、日本経済

    【世界経済】
     世界経済は全体として緩やかながら回復を続けていますが、回復の度合いには引き続きばらつきがあります。また、前回のIMFC以降、原油価格の下落、市場のボラティリティ上昇といった環境変化が見られています。加えて、IMFの世界経済見通しでも指摘されているとおり、潜在成長率の低下は先進国・新興国共通の課題と言えます。こうした中、我々は、環境変化の影響、各国の経済状況及び政策余力を踏まえ、最適なポリシー・ミックスを実施し、世界経済の強固で持続可能かつ均衡ある成長を実現する必要があります。同時に、各国の経済状況の差異によって生じる政策対応の違いについて、十分なコミュニケーションを図る必要があります。

    【日本経済再生に向けた取組み】
     日本経済については、引き続き緩やかな回復基調が続いており、2015年度は堅調な民需に支えられて実質1.5%程度、名目2.7%程度の成長を見込んでいます。足元では、2014年第4四半期の企業の経常利益が過去最高水準の約18兆円となり、日銀短観(3月調査)でも2014年度設備投資計画は3年連続増加となる等、設備投資の先行きについても企業収益の改善等を背景に増加していくことが見込まれます。また、主要企業における今年度の賃金引上げ水準は、過去15年で最高となった昨年を上回る水準となっているなど、企業マインドは確実に変化し、積極的な動きが多く見られます。政府としては、このような動きが消費の拡大につながり、経済の好循環が確かなものとなるよう、引き続き経済運営を強力に推進していきます。

     また、既に述べたとおり、潜在成長率引上げは各国共通の課題であり、日本としてもこれを実現するため、成長戦略を着実に実施していきます。少子高齢化の中で、労働力人口を維持し、労働生産性を向上させるため、経済成長の担い手である女性・外国人の活躍促進は極めて重要です。政府としても保育所の増設等に取り組んでおり、25−44歳の女性の労働参加率が2012年末の70.9%から2014年末には74.3%に上昇するなど進展も見られています。また、仕事・役割、貢献度を重視した賃金体系に向けた見直しを通じて労働生産性の向上にも取り組んでいきます。あわせて、日本企業が有する豊富な資金を成長分野への投資に振り向けていくことも潜在成長率向上に向けた重要な課題です。こうした観点から、「コーポレートガバナンス・コード」の策定などのコーポレートガバナンスの強化、成長資金の供給に取り組んでいるほか、設備投資減税等の民間投資促進策を着実に実施しています。更に、課税ベースの拡大等により財源を確保しつつ、法人実効税率を3%超引き下げる等の法人税改革を実施しています。岩盤規制の改革についても、エネルギー、農業等、幅広い分野で取組が着実に進んでいます。本年年央には成長戦略を改訂し、こうした取組を更に進めていきます。

     金融政策について、日本銀行は昨年10月、原油価格下落等に伴うインフレ率の低下によってデフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐため、「量的・質的金融緩和」の拡大を決めました。こうした迅速な対応の結果、予想インフレ率も上昇傾向を維持しています。また、原油価格の下落は、家計の購買力増加や企業のコスト削減などを通じて、需給ギャップの改善に寄与することが期待されます。日本銀行は、原油価格下落の影響が剥落していく中でインフレ率は高まり、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと見ています。

     財政政策については、消費税率の10%への引上げについて、経済状況等を総合的に勘案し2017年4月へと18ヶ月延期することを決定したほか、GDP比約0.7%(3.5兆円)規模の経済対策を実施するなど、足元の経済状況に対して機動的に対応してきました。一方で、公的債務残高がGDPの200%を超えるなど、日本の財政は極めて厳しい状況にあり、持続可能な成長を続けるためにも、また、日本銀行が現在取り組んでいる金融緩和を円滑に進める上でも、財政健全化に向けた取組を着実に進める必要があります。こうした観点から、先般成立した2015年度予算は、歳出規模を過去最大(96.3兆円)とするとともに、国・地方の基礎的財政収支赤字対GDP比半減目標を達成する予算となっており、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算となっています。また、市場等からの財政に対する信認を維持する観点から、国・地方の基礎的財政収支を2020年度までに黒字化するとの目標をしっかりと堅持し、その達成に向けた具体的な計画を本年夏までに策定します。
     これらの取組を通じて、経済再生と両立する財政健全化を実現していきます。

  3. IMFへの期待

    【国際金融システムの強化】
     歴史的低水準にあった金融市場のボラティリティの上昇、新興国通貨の下落に伴う外貨建て債務の負担増といった動きが見られる中で、IMFは、強固な資金基盤の確保やグローバル・セーフティネットの強化を通じて、危機予防・危機対応に万全を期す必要があります。

     IMFの資金基盤の強化については、その正当性、有効性、信頼性の維持・向上の観点からも、2010年改革の早期発効が引き続き最優先課題です。他方、2010年改革の発効が遅れていることを受けて、2010年改革に向けた「つなぎのステップ」について議論を行うことが求められています。日本としては、この「つなぎのステップ」の検討に当たっては、2010年改革の早期発効に資するものであること、及び2010年改革の合意内容を超える、もしくは代替するものではないことが確保される必要があると考えています。なお、IMFの正当性、有効性、信頼性を高めるためには、スタッフの多様性を改善させることも重要です。日本は、IMFに対し、資金面での貢献のみならず、人材面でも同等の貢献を行う準備があります。

     IMFがその役割を十分に果たすためには、資金基盤の強化だけでは十分とは言えず、必要な支援を適時に実行に移すことの出来るよう、グローバル・セーフティネットの強化に取り組む必要があります。こうした中、今般公表されたGPA(グローバル・ポリシー・アジェンダ)において、IMFがグローバル・セーフティネットの更なる強化に取り組む姿勢を示していることを高く評価しています。日本としては、これまでも危機予防のための柔軟な融資制度の創設やIMFの抱えるスティグマの解消に向けた取組等の提案をしてきたところですが、引き続き積極的に議論に貢献していきたいと思います。

     IMFが、こうした取組の一つとして、メンバー国が債務持続可能性に適切に対処することを確保するため、融資枠組みの柔軟性を高めることを検討していることを歓迎します。同時に、日本としては、国際金融市場の安定にかかるテール・リスクが万一発現した場合に、IMFが引き続き迅速かつ十分な危機対応を取ることができることを重視しています。IMFのこうした役割が確保できるような仕組みとなるよう慎重な検討を期待したいと思います。

     また、本年は5年に一度行われるSDR(特別引出権)の見直しの年に当たります。SDRが、引き続き公的準備資産としての利便性、表示通貨としての安定性といった性質を維持・向上させていくことが重要であり、これまで確立されてきた原則に立脚した議論を期待します。

    【低所得途上国支援・開発資金】
     我々はアフリカをはじめとする低所得途上国支援の重要性を忘れてはならず、この点においてもIMFの果たす役割は重要です。特に、本年は7月に第3回開発資金国際会議の開催が予定されていることをはじめとして、開発資金の動員にとって重要な年であると考えています。

     まず、債務上限ポリシーについて、低所得途上国の債務持続可能性を維持・改善しつつ、開発資金を柔軟に動員することを可能とする制度改革が実現したことを歓迎します。

     また、エボラ出血熱によって深刻な被害を受けた西アフリカ諸国経済を支援するとともに、将来の国際保健における緊急事態に対する支援体制を強化するため、CCR基金(大災害抑制・救済基金)が創設されたことを強く支持します。MDRI-II(マルチ債務救済メカニズムII)の資金をCCR基金に移転することが提案されていますが、MDRI-IIの最大のドナー国として、提案を支持するとともに本貢献の意義を強調したいと思います。

     IMFが、引き続き、そのマンデートと専門性を十分考慮し、関係機関と連携しつつ、必要な役割を果たすことを期待しています。

(以 上)