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第30回IMFC 日本国ステートメント(平成26年10月11日)

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第30回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2014年10月11日(土))

  1. 世界経済、日本経済

    【世界経済】
     世界経済は全体として緩やかながら回復を続けていますが、回復の度合いは国ごとにばらつきがあります。また、地政学リスクや金融環境の急変に係るリスクといった下方リスクが依然として存在していることに留意する必要があります。こうした中で、我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長の実現に向けて、各国の経済状況と政策余力を踏まえ、財政政策、金融政策及び構造改革等の最適なポリシー・ミックスを実施していく必要があります。また、各国の経済状況の差異によって生じる政策対応の違いについて、十分なコミュニケーションを図ることも重要です。

    【日本経済再生に向けた取組み】
     日本経済については、本年4月の消費税率引上げを受けた駆け込み需要及び反動減の影響により、2014年第1四半期及び第2四半期の実質GDP成長率が前期比年率でそれぞれ+6.0%、▲7.1%となりました。しかしながら、経済の趨勢を見るため、2014年上半期をならして見れば、前年同期比で実質1.3%のプラス成長、項目別で見ても消費は0.4%、設備投資は7.5%のプラス成長となっており、緩やかな回復基調にあると認識しています。物価動向に目を転じると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引上げの直接的な影響を除いたベースで見て、このところ1%台前半で推移しており、日本銀行の想定する道筋をたどっています。日本銀行は、今後とも2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していく旨を明言しています。
     先行きについても、消費の支えとなる雇用・所得環境の着実な改善や民間投資の回復等を受けて民需主導の緩やかな回復を見込んでいます。足元の有効求人倍率は1.10倍と22年ぶりの水準となっており、賃金・雇用者所得も増加しています。直近3年間で、約100万人の労働者が非正規職員から正規職員に転換する等、雇用の安定性の観点からも改善が見られています。また、昨年度の大幅な企業収益改善に支えられ、設備投資計画は投資の回復傾向を示唆しており、大企業では国内設備投資を重視する動きも出ています。
     こうした動きを後押しするためにも、成長戦略を着実に実行していくことが重要です。特に、本年6月に改訂された『日本再興戦略』では、日本企業が有する豊富な資金を成長分野への投資や賃金に回すとともに、企業の新陳代謝を促し、生産性・収益性向上につなげていくことを重視しています。こうした観点から、「コーポレートガバナンス・コード」の策定を含むコーポレートガバナンスの強化や、エクイティ、メザニン・ファイナンス、中長期融資等の成長資金の供給促進等に取り組んでいるところです。また、日本企業の「稼ぐ力」を高める取組を後押しするよう、成長志向に重点をおいた法人税改革に着手することとし、2015年度から、課税ベースの拡大等により財源を確保しつつ、税率の引下げを実施していきます。
     岩盤規制の改革についても、エネルギー、農業、健康医療等、幅広い分野で取組を実施しています。例えば、電力分野では、既に小売事業参入自由化を実現するための法案が成立したところですが、今後、送配電の法的分離に向けた取組を進めます。また、農業分野では、農地集約・大規模化に加え、40年以上続いた米の生産調整の見直しに向けた取組を進めます。更に、少子高齢化の中で、労働力人口を維持し、労働生産性を向上させるため、経済成長の担い手である女性・外国人の活躍促進と雇用改革に向けた取組を進めています。
     財政政策については、消費税率引上げに伴う反動減を緩和し、景気の下振れリスクに対応するため、2013年度補正予算や2014年度予算の早期実施に取り組んできたところです。また、経済再生と財政健全化の両立を実現しなければなりません。2015年10月に予定されている消費税率の10%への引上げについては、経済状況等を総合的に勘案しながら、本年中に適切に判断します。もっとも、10%への消費税率引上げを前提とした試算においても、2020年度の基礎的財政収支の黒字化の達成には対GDP比1.8%のギャップが残っています。2020年度の基礎的財政収支の黒字化に向け、2015年度予算編成等を踏まえ、具体的な道筋を早期に明らかにできるよう検討を進めてまいります。

  2. IMFへの期待

    【国際金融システムの強化】
     足元の金融市場のボラティリティは低下しているものの、今後、地政学的緊張の深刻化や米国での金融政策の正常化の動き等をきっかけとして、市場が想定以上にタイト化するリスクがあります。こうした中で、IMFは、強固な資金基盤の確保やグローバル・セーフティネットの強化を通じて、危機対応に万全を期す必要があります。
     IMFの資金基盤の強化については、その正当性、有効性、信頼性の維持・向上の観点からも、2010年改革の発効が引き続き最優先課題です。日本は、世界金融危機後、各国に先駆けてIMFに対して1000億ドル相当の融資枠を設定し、NAB(新規借入取極)やバイ融資取極による柔軟かつ迅速な資金基盤強化を主導してきました。こうした対応がIMFの機能強化と危機対応に非常に有効であったことは改めて強調しておきたいと思います。
     IMFがその役割を果たすためには、資金基盤の強化だけでは十分とは言えず、必要な支援を適時に実行に移すことの出来るよう、グローバル・セーフティネットの強化に取り組む必要があります。こうした観点から、IMFが世界金融危機後、予防的なファシリティの創設等、危機予防・危機対応ツールの拡充に取り組むとともに、定期的に見直しを実施していることを評価しています。他方で、こうした融資制度が十分に活用されていない理由として、IMFの抱えるスティグマという課題が指摘されています。スティグマの解消に向けて、アジア通貨危機や世界金融危機等の教訓を活かして実施してきた融資制度改革について一層のアウトリーチ活動を展開する等、IMFの正当性、有効性、信頼性を高めるより具体的な取組を慫慂したいと思います。なお、IMFの正当性、有効性、信頼性を高めるためには、スタッフの多様性を改善させることも重要です。日本は、IMFに対し、資金面での貢献のみならず、人材面でも同等の貢献を行う準備があります。
     IMFを補完する形で、アジアにおけるチェンマイ・イニシアティブの拡充や二国間通貨スワップ等、地域セーフティネットの拡充が進んでおり、日本としても、こうした取組を積極的に推進しているところです。引き続き、危機予防・危機対応に万全を期す観点から、IMFと協働して、セーフティネットを発展・強化させる方策について検討を進めていきたいと考えています。
     こうしたセーフティネットの強化に加えて、新興国自身による外国資金の急速な流出入に伴うシステミックリスクの抑制に向けた努力の継続等、各国が金融の安定の確保のための取組を続けることは非常に重要です。こうした観点から、本年実施されたサーベイランス見直しにおいて、マクロプルーデンスの観点をより重視していくとの方針が示されたことは適切であると考えており、今後、議論が深化していくことを期待しています。
     また、国際金融システムの安定を図る上では、仮に国家債務危機が生じた場合に、必要に応じて円滑な国家債務再編の実現を確保することも極めて重要です。アルゼンチンの残存債務訴訟は、国家債務再編が円滑に行われるためには、契約的アプローチの強化をはじめとする更なる改善策が必要であることを明らかにしました。こうした取組について、IMFが市場参加者等の幅広いステークホルダーと連携し、議論の深化に積極的に貢献していることを評価しています。

    【低所得国支援】
     我々はアフリカをはじめとする低所得国支援の重要性を忘れてはならず、この点においてもIMFの果たす役割は重要です。現在議論が進んでいる債務上限ポリシー改革について、プログラム実施国の債務持続可能性の改善及びその安定性の維持につながる制度として議論が結実することを期待します。

    【エボラ出血熱対策】
     現在、西アフリカ諸国を中心急速に感染が拡大しているエボラ出血熱は、政治、社会に甚大な混乱をもたらし、経済への悪影響は深刻です。経済成長は減速し、食料及び労働の供給が困難となり、貧困層や脆弱層が重大な打撃を受けています。この問題に対応するには、国際社会が連携して、地球規模での支援が必要です。こうした観点から、IMFが西アフリカ3か国のギニア、リベリア、シエラレオネに緊急融資を決定したことを歓迎します。日本としても4500万ドルを超える支援や医療関係者の派遣等を表明しており、引き続き、エボラ出血熱の流行抑制に向けて貢献していきます。

(以 上)