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第40回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(令和元年10月19日)

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第40回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2019年10月19日(土))

  1. 専務理事の交代
     はじめに、クリスティーヌ・ラガルド前専務理事の専務理事としての8年にわたる卓越したリーダシップに感謝いたします。彼女と、特に本年のG20財務大臣・中央銀行総裁会議の議長として、密に仕事を行えたことは大きな誇りでした。また、クリスタリーナ・ゲオルギエヴァ新専務理事を心から歓迎したいと思います。彼女のリーダシップの下、国際通貨基金が持続可能かつ包摂的な世界経済の成長とともに国際通貨システムの安定を確保していけるように、日本としても引き続き協力していきたいと思っています。

  2. 世界経済、日本経済
    【世界経済】
     世界経済は成長を続けているものの、2018年後半以降モメンタムは弱含んでいます。来年以降、新興国経済を中心に回復が見込まれますが、足元の世界経済においては、貿易を巡る緊張の継続、地政学的な懸念や個別国の不透明な政治状況といった下方リスクに直面しています。こうした下方リスクの現実化を避けるために、国際協調の意義について認識を新たにし、これをより高い水準に押し上げてゆくことが重要であると考えます。

     こうした背景から、日本としても、国際協調を強化するという我々のコミットメントに基づき本年のG20の議長国を務めて参りました。このことは、我々がグローバル・インバランス、債務の透明性・持続可能性といった、多国間での枠組みに注力しそこから利益を得てきた国々の間で開かれた議論が必要な問題を本年のプライオリティとしたことからも明らかです。また、とりわけ、日本は6月の大阪サミットで「質の高いインフラ投資に関する G20 原則」や「経済の電子化に伴う課税上の課題に対するコンセンサスに基づいた解決策の策定に向けた作業計画」について、首脳レベルでそれぞれ合意・承認に至ることができました。これらの結果は、我々が総力を結集したときに国際協調が何を達成できるかの好例であるといえるでしょう。これまで何度も申し上げてきていることではありますが、日本は、国際協調から多くの恩恵を受けた国として、今後も貢献を惜しみません。

    【日本経済】
     日本経済については、雇用・所得環境の改善や高水準の企業収益といった内需を支えるファンダメンタルズはしっかりとしており、景気は緩やかな回復を続けています。

     このような状況の下、引き続き、経済成長と財政健全化に並行して着実に取り組んでいく必要があり、その鍵となるのは少子高齢化への対応です。本年10月1日には消費税率を8%から10%に引き上げました。これにより、財政健全化だけでなく、増収分の一部を出生率の低下への対策に用い、強固で、持続可能で、均衡のとれた、包摂的な成長を実現します。また、引上げに当たっては、引上げに伴う短期的な需要変動の平準化を図るための「臨時・特別の措置」など、経済への影響を十二分に乗り越える対策を講じています。

     我々は、引き続き、財政、金融及び構造政策を個別にまた総合的に用いる経済財政運営を継続します。世界の相互の結びつきが高まる中、世界経済の下方リスクには引き続き十分目配りし、リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行します。

  3. IMFによる日本議長下でのG20への貢献
    【IMFの日本議長下のG20への貢献】
     本年のG20議長国として、IMFのG20に対する貢献に感謝を申し上げます。日本の掲げたプライオリティの中で、グローバル・インバランス、高齢化、債務問題といったアジェンダを進めるにあたりIMFからも大きな貢献を得ました。

    (グローバル・インバランス)
     IMFによる様々な知的貢献も受けて、6月の福岡でのG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、G20は以下の事項に合意することができました。今後のIMFのサーベイランス活動において、このことが適切に考慮されることが期待されています。
      「対外収支を評価するにあたっては、サービス貿易・所得収支を含む経常収支のすべての構成要素に着目する必要があることに留意すること。対外不均衡の中には、経済のファンダメンタルズに沿ったものもあれば、過度でありリスクを孕むものもあるという見解を共有すること。過度な対外不均衡の根底にある要素には、過剰な法人貯蓄、誤った財政政策、財・サービス分野の貿易障壁が含まれうること。外国直接投資などのように、より安定的な資金を提供する形態もあるため、資金調達の構成についても注視すべきであること。」

    (高齢化)
     高齢化は、どの国も遅かれ早かれ直面する共通の課題です。また、高齢化は、労働・資本移動に加え、貯蓄・投資バランスにおける変化を通じて国際的な含意を持ちます。高齢化が財政政策及び金融政策や金融包摂にもたらすマクロ経済的な課題や、高齢化による悪影響を緩和するための政策対応について、6月の福岡G20では多国間での議論と、知見の共有がなされました。本分野へのIMFによる分析はG20での議論の土台を提供するとともに、大臣及び総裁が合意した共同声明に貴重な視点を提供してくれました。

    (債務)
     一部の低所得国(LICs)における担保付債務などの非譲許的な公的債務の増加は、世界経済の成長や国際金融の安定に加え、それらの国の持続可能な開発へのリスクとなっています。これらの国における債務透明性の向上及び債務持続可能性の確保のためには、借入国と公的及び民間の債権者の双方による協働が重要です。この文脈で、日本は、IMF・世銀グループの「様々な角度からのアプローチ」の実施など、G20が推進しているそうした協働に対するIMFの貢献に感謝します。

  4. IMFへの期待
     IMFの中核業務であるサーベイランス・貸付・能力開発の機能は、下方リスクに直面する現下の世界経済においてその重要性は増すばかりです。

    【サーベイランス】
     IMFによるサーベイランスは、世界経済や各国の足元の経済状況を認識し、適切な対応策をとる上で不可欠なサポートです。2020年に予定されている包括的なサーベイランス見直しのように、サーベイランスの不断の改善を支持します。加えて、本年のG20での議論の成果がIMFのサーベイランスにも組み込まれ、そのようなサーベイランスにおける結果がIMFの貸付や能力開発プログラムにおいて有効に活用されることを期待します。

    【貸付】
     IMFによる貸付は、グローバル金融セーフティネット(GFSN)の重要な柱であるとともに、アンゴラにおいて債務の透明性・持続可能性の取組が進展しているように、支援対象国自身による経済改革を後押しする重要な役割があります。加えて、強固なGFSNを実現するためには、外貨準備や二国間スワップ、地域レベルでの地域金融取極(RFAs)を含む、GFSNの他の要素とIMFとの連携も重要です。ASEAN+3地域に関しては、IMFとチェンマイ・イニシアティブ(CMIM)の連携、そしてIMFとCMIMの実施支援機関であるASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)との連携は、地域におけるGFSNを強化するものとして重要な役割を果たしています。

    (IMF資金とガバナンス)
     日本は、IMFが今後も十分な資金を有しGFSNの中心としての役割を果たすことを支持します。特に、新規借入取極(NAB)とバイ融資取極(BBAs)が短期間のうちに失効する予定であり、IMFのこのような役割を支援するために迅速な対処が必要です。その点で、今般の借入資金を活用したIMF資金の確保について、加盟国間で合意できたことを歓迎します。

     IMFがクォータを基礎とする機関であることは疑いありませんが、テールリスクを含むすべてのリスクにクォータで備える必要はなく、また、効率的ではありません。必要に応じて機動的に動員できるNABやBBAsといった借入資金は、今後も引き続きIMFの資金の重要な要素であるべきです。また、IMFが能力開発や低所得国支援を行うための資金も必要です。そのため、こうしたクォータ以外の資金は一時的なものではなく、IMF資金の恒久的な要素として扱われる必要があります。この観点から、加盟国が自発的に貢献するインセンティブを確保するためのメカニズムを強化する必要があると考えます。

     十分な資金の確保に加え、IMFの正統性、有効性及び信用を維持するため、ガバナンス改革の不断の継続が必要です。第15次GRQにおけるガバナンス改革の我々のコミットメントは第16次GRQにおいても弱められるべきではありません。改革の継続の保証のために、第16次GRQについて現実的かつ野心的な期限設定がなされたことを歓迎します。

    (低所得国支援)
     LICsの増加する資金ニーズに対応しつつ、債務透明性及び債務持続可能性を含む脆弱性に対処するための、LICsファシリティの見直しを歓迎します。特に、Self-Sustainabilityを確保しつつ、アクセス水準引き上げを行ったことを歓迎いたします。日本は、累積でPRGTの融資原資全体の約23%、利子補給金全体の約13%という加盟国中最大の資金貢献を行ってきています。PRGTが引き続きIMFの低所得国に対する中心的な融資の枠組みとしての役割を果たしていくことを期待します。

    【能力開発】
     現在、特に低所得国において、能力開発への需要は未だに大きく、IMFが能力開発活動を通じて果たす役割は今まで以上に重要なものとなっています。昨年実施された、能力開発戦略の議論での提言のとおり、地域ごとの能力開発需要の的確な把握やIMF内部の連携の強化、利害関係者との緊密な連携、結果に基づく管理の枠組み(RBM)を通じた成果重視の評価など、能力開発活動の実効性を高めようとするIMFの取組を歓迎します。

     また、債務持続可能性の課題を根本的に解決するためには、国内資金動員(DRM)を強化し、外部のドナーからの借入に過度に頼らない財政を構築することが重要です。限られたリソースを最大限に活用し、効果的な支援を展開するため、歳入動員支援信託基金(RMTF)や税務行政診断ツール(TADAT)を含むIMFの技術支援活動の内部調整をより一層強化することに加え、他の開発パートナーとの連携が必要です。「税に関する協働のためのプラットフォーム」(PCT)は、こうした開発パートナー間の連携を可能とする重要な枠組みであり、日本も資金貢献したところです。IMFには、効果的なDRMの鍵である中期歳入戦略の策定及び実施を含め、PCTを通じて積極的に他の開発パートナーと連携することを期待します。

    【G20への更なる貢献】

     これらの中核業務の中のいくつかは、G20の文脈において重要です。我々はIMFが特に以下の分野においてG20に更なる貢献を果たすことを期待します。

    (債務)
     債務問題については、この分野で主導的な役割を果たす機関であるIMFが、国際的な取組の継続を支援することを期待します。借入国との関係では、IMFが、債務の適切な管理や担保付債務を含む債務に関するデータの正確な収集・開示のための能力構築により、債務の透明性・持続可能性の確保を支援することを期待します。世銀と共に、「様々な角度からのアプローチ」を着実に実施していくことは、そのために不可欠です。債権者との関係では、IMFが、アウトリーチの取組を強化し、持続可能な貸付慣行の定着に向けた我々協働の取組の推進を支援することを期待します。

    (質の高いインフラ投資)
     IMFが、特に経済効率性を最大化しインフラ・ガバナンスを強化するという観点において、公共投資マネジメント評価(PIMA)やその他の分析ツールを最大限利用し、G20質の高いインフラ投資原則の実施を支援することを期待します。

    (金融技術革新)
     グローバル・ステーブルコインなどの金融技術革新によって生まれた新たな決済システムは、より効率的な決済システムをもたらし得る一方で、政策や規制に関する広範な懸念をもたらします。これらの懸念には、法的安定性、マネーロンダリング及びテロ資金供与(AML/CFT)、市場の完全性、サイバー及びその他の運用上のリスク、税務コンプライアンス、消費者保護、データ保護、公正な競争、金融安定、通貨政策の波及、通貨代替及び国際通貨システムが含まれます。こうしたリスクは、グローバル・ステーブルコイン及びその他のシステム上大きな影響を与えうる類似の取組が開始前に吟味され、適切に対処される必要があります。本年の年次総会の機会に、日本議長下のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、IMFに対し、現在行っている作業に立脚して、加盟国の通貨主権に係る問題を含むマクロ経済上のインプリケーションについて、各国の特徴を考慮しつつ、検討することを要請しました。IMFによる深い分析と政策提言の報告に期待します。

  5. IMFに対する日本の貢献
       日本は、世界経済の安定に大きな役割を果たすIMFに対し、今後も貢献を惜しみません。日本は、IMFの能力開発活動を2国間で、または、RMTFやTADATといった多国間の基金を通じて積極的に支援しています。
     債務問題に関して、日本は、multi-pronged approachへの支援として、借入国の能力開発で主要な役割を担う、IMFの「決定のためのデータ基金」の5年間の活動にドナー国で最大となる5百万ドル、IMFがパートナーとして活動の一部を担う、世銀の「債務管理ファシリティ第3フェーズ」の初年度の活動に1.5百万ドルの拠出にコミットしています。これに加え、インフラ投資計画と債務持続可能性の整合性確保などを支援するIMFのインフラ・ガバナンス・ファシリティの初年度の活動に2百万ドル拠出しました。IMFがこれらの活動から実のある結果を出すことを期待します。

     最後に、日本は、IMFに対して資金面及び政策面のみならず、人的な貢献も積極的に行って参りました。地域のバランスに配慮しながら職員の多様化に向けた取組を推進することも、IMFが多様な加盟国に対して業務を展開していることを考慮すると極めて重要です。今後もこのような貢献を一層行ってまいります。

(以 上)