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第39回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成31年4月13日)

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第39回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2019年4月13日(土))

  1. 世界経済、日本経済
    【世界経済】
     世界経済は、2018年後半より減速の兆しを見せています。本年後半からは、緩和的な金融環境、一過性の減速要因の消失、経済刺激策の発効により改善が見込まれますが、想定よりも弱い世界経済の成長、金融環境のタイト化、貿易に関する緊張の継続といった下方リスクに引き続き直面しています。

     世界経済の成長は改善が見込まれるものの、主要国の減速が他国にも影響することで成長見通しが悪化し、世界経済全体に不確実性をもたらす可能性があります。先進国では、低金利下での企業債務の蓄積や金融市場でのリスクテイクに関する懸念が継続しています。新興国では、対外債務が増大する中、資本フローの逆転が引き続きリスクです。こうした状況において、金融環境が急激にタイト化すれば、世界経済の減速が増幅する恐れがあります。更に、貿易の緊張の長期化と政策の不確実性は、民間投資の阻害、グローバル・サプライ・チェーンの混乱、生産性向上の低迷などをもたらし、世界経済の重大なリスクとなります。ただし、各国はそれぞれが直面するリスクに対して既に政策対応を進めており、こうしたリスクがすぐに発現するような状態ではありません。

     また、仮にこのようなリスクが現実化すれば世界経済全体に影響を及ぼす可能性があるため、各国別の対応に加えて、その解決策は多国間主義の中で模索されるべきです。本年G20の議長国を務める日本は、そうした観点から、世界経済のリスク・サーベイランス、グローバル・インバランス、債務の透明性・持続可能性をプライオリティの一つに設定し、文字通り多国間での枠組みの中での議論を主導しています。6月の大阪サミットまでに具体的な成果を出すべく、引き続き尽力してまいります。

    【日本経済】
     世界の相互の結びつきが高まる中、日本も世界経済のリスクと無縁ではありません。例えば、世界経済の成長の減速は、外需のマイナス寄与という形で日本経済にも影響を及ぼしています。しかしながら、雇用・所得環境の改善や高水準の企業収益といった個人消費や設備投資等を支えるファンダメンタルズは堅調で、全体としては内需を中心に緩やかな回復が続いております。

     本年10月には消費税率を8%から10%に引き上げる予定です。これにより、中長期的な財政健全化だけでなく、増収分の一部を幼児教育の無償化や社会保障の充実に用い、包摂的な成長も実現します。引上げに当たっては、引上げに伴う需要変動の平準化を図るための「臨時・特別の措置」など、経済への影響を十二分に乗り越える対策を講じます。こうした対応を含め、引き続き、財政、金融及び構造政策を個別にまた総合的に用いる経済財政運営を継続します。

  2. IMFへの期待
     下方リスクに直面する世界経済にとって、IMFのサーベイランス・貸付・能力開発の機能は重要性を増しています。

    【サーベイランス】
     サーベイランスは、世界経済や各国の足元の経済状況を認識し、今後の対応策を検討する上で不可欠です。Comprehensive Surveillance Reviewが2020年に予定されているように、サーベイランスの不断の改善を支持します。

    【貸付】
     IMFによる貸付は、グローバル金融セーフティネット(GFSN)の重要な柱であるとともに、昨年危機に陥ったアルゼンチンに対する支援に見られるように、支援対象国自身による経済改革を後押しする重要な役割があります。

     また、強固なGFSNを実現するためには、GFSNの他の要素との連携も重要です。GFSNは、各国レベルでの外貨準備、二国間レベルでの二国間スワップ、地域レベルでの地域金融取極(RFAs)、グローバルレベルでのIMF、と多層的に構成されています。IMFとチェンマイ・イニシアティブ(CMIM)の連携はGFSNを強化するものとして今後も重要です。

    (IMF資金とガバナンス)
     日本は、IMFが今後も十分な資金を有しGFSNの中心としての役割を果たすことを支持します。特に、新規借入取極(NAB)とバイ融資取極(BBAs)が短期間のうちに失効する予定であり、迅速な対処が必要です。NAB拡充を含む借入資金を活用し必要な資金を確保することについて、早急な合意形成に向けた各国の努力を希求します。

     必要な資金サイズの確保のため、NABの拡充で不足する場合は、新たなBBAsで補完するべきです。IMFがクォータを基礎とする機関であることは疑いありませんが、テールリスクを含むすべてのリスクにクォータで備える必要はなく、必要に応じて機動的に動員できるNABやBBAsといった借入資金は、今後も引き続き長期的に必要です。また、IMFが能力開発や低所得国支援を行うための資金も必要不可欠です。こうしたクォータ以外の資金について、加盟国が自発的に貢献するインセンティブを確保するためのメカニズムが必要と考えます。

     IMFが多国間主義を体現する国際機関としての正統性を維持するため、ガバナンス改革の不断の継続が必要です。第15次GRQはIMF資金基盤の確保のため早期に合意し完了する必要がありますが、第15次GRQにおけるガバナンス改革のコミットメントは第16次GRQにおいても弱められてはなりません。改革の継続の保証のために、第16次GRQについて現実的かつ野心的な期限設定が有用です。こうした点について迅速に具体的な合意に至るよう、加盟各国の努力の継続に強く期待します。

    (低所得国支援)
     一般資金勘定(GRA)とは別に運営されている貧困削減・成長トラスト(PRGT)は、IMFの低所得国に対する中心的な融資の枠組みとして引き続き重要です。日本は、累積でPRGTの融資原資全体の約25%、利子補給金全体の約13%という加盟国中最大の資金貢献を行ってきており、PRGTを重視する姿勢に変わりはありません。現在行われているPRGTの見直しにおいて、アクセス水準引き上げや脆弱国への対応を内容とする改革パッケージ案が、Self-Sustainabilityを確保しつつLICsのニーズに対処するものとなっていることを歓迎します。

    【能力開発】
     現在、特に低所得国において、能力開発が必要な分野は未だに多く、IMFが能力開発活動を通じて果たす役割やその重要性は増しています。昨年実施された、能力開発戦略の議論での提言のとおり、地域ごとの能力開発需要の的確な把握やIMF内部の連携の強化、利害関係者との緊密な連携、結果に基づく管理の枠組み(RBM)を通じた成果重視の評価など、能力開発活動の実効性を高めようとするIMFの取組を歓迎します。

     また、債務持続可能性の課題を根本的に解決するためには、SDGsの1つである国内資金動員(DRM)を強化し、他国からの借入に頼らない財政を構築することが重要です。限られたリソースを最大限に活用し、効果的な支援を展開するため、歳入動員支援信託基金や税務行政診断ツールを含むIMF内の支援活動に加え、他の開発パートナーとの連携が必要です。「税に関する協働のためのプラットフォーム」(PCT)は、こうした開発パートナー間の連携を可能とする重要な枠組みであり、日本も資金貢献することとしています。IMFには、DRMへの支援において重要な機能を果たす中期歳入戦略の策定及び実施を含め、PCTを通じて積極的に他の開発パートナーと連携することを期待します。

    【日本議長下のG20への貢献】
     IMFに期待する事項の最後に、日本が、本年のG20議長国としてIMFに望むことを申し上げます。日本は、ラガルド専務理事のGlobal Policy Agendaに掲げられている、グローバル・インバランス、高齢化、債務、金融技術革新、自然災害といった論点が現下の世界経済が直面している具体的な課題であるとの認識を共有します。これらは日本議長下のG20においてプライオリティとして設定しており、以下の分野ではIMFからも大きな貢献を得てきています。

    (グローバル・インバランス)
     過度なグローバル・インバランスは、サービス貿易や対外資産の収益などを含む経常収支の全ての構成要素を考慮した上で、二国間の貿易上の措置ではなく、国際協調によって対処すべき課題です。更に、企業の過度な貯蓄や人口の高齢化など、貯蓄・投資バランスに影響を与える構造要因の理解も必須です。その分析にあたってはIMFからのインプットが重要であり、4月10日のG20/IMF共催セミナー開催などのIMFの貢献に感謝します。

    (高齢化)
     高齢化は、どの国も遅かれ早かれ直面する共通の課題です。高齢化が財政政策及び金融政策や金融包摂にもたらすマクロ経済的な課題や、高齢化による悪影響を緩和するための政策対応は、多国間で議論し知見を共有していくべきテーマです。IMFによる分析はG20での議論の土台を提供するものであり、今後も引き続きその貢献に期待しています。

    (債務)
     一部の低所得国では、非伝統的な貸し手からの非譲許的な借入による公的債務が急速に積み上がっています。また、担保付債務など、透明性が十分確保されていない新たな形態の債務も増えており、低所得国における債務持続可能性に懸念が生じています。

     債務透明性の向上及び債務持続可能性の確保には、借入国と公的及び民間の債権者の双方の協力が必要です。そのような取組が、借入国への持続的な投資資金の流入をもたらし、経済成長を支える土台として重要です。まずは借入国が自らの債務状況を的確に開示していくことが必要であり、そうした国への能力構築支援を行っていくことが重要です。この観点から、日本は、IMFが、世銀と共同で、債務脆弱性に対処するために実施しているmulti-pronged approach(様々な角度からのアプローチ)をサポートしています。日本は、IMFが引き続き、こうした取組を着実に実施し、具体的な成果を示すことを期待します。

     また、債権者側も、借入国の債務持続可能性を配慮し、適切な貸付を行っていくことが期待されます。IMFには、債権国の貸付慣行を分析し持続可能な貸付に関する好事例を提供するなど、国際社会による持続可能なファイナンシングの促進の取組を支援していくことを期待します。

    (金融技術革新)
     暗号資産は消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、並びにテロ資金供与に関する問題を提起しうる一方、その基礎となる技術を含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得ることから、技術活用のための検討継続が重要です。2018年秋総会で提唱されたBali Fintech Agendaは、こうしたリスクと機会の両面をとらえたものです。4月2日のIMF Fintech Roundtableにおいて、G20/IMF/FATF共催セッション「技術革新がもたらすマネロン・テロ資金供与対策上の機会・課題」が開催され、IMFからBali Fintech Agendaについてupdateがされるとともに、金融技術革新がもたらすマネロン・テロ資金対策上の機会と課題につき幅広く議論されたことを歓迎します。6月8日には金融技術革新の機会とリスクを議論するハイレベルセミナーを開催予定であり、IMFからインプットを受ける予定です。引き続き、IMFの本分野における貢献に期待します。

  3. IMFに対する日本の貢献
     日本は、世界経済の安定に大きな役割を果たすIMFに対し、今後も貢献を惜しみません。たとえば、日本は従来IMFの能力開発活動を積極的に支援してきましたが、重要性の増している分野には更に積極的に支援していきます。特に、G20のプライオリティに関連する分野について、一層の貢献を予定しています。債務問題に関して、日本は、multi-pronged approachへの貢献の一環として、借入国の能力開発で主要な役割を担う、IMFの「決定のためのデータ基金」の5年間の活動にドナー国で最大となる5百万ドル、IMFがパートナーとして活動の一部を担う、世銀の「債務管理ファシリティ第3フェーズ」の初年度の活動に1.5百万ドル拠出する予定です。また、低所得国におけるインフラ・ガバナンスの改善を図る、インフラ・ガバナンス・ファシリティの初年度の活動に2百万ドル拠出する予定です。

     また、日本は、IMFに対して資金面及び政策面のみならず、人的な貢献も積極的に行って参りました。地域のバランスに配慮しながら職員の多様化に向けた取組を推進することも、IMFが多様な加盟国に対して業務を展開していることを考慮すると極めて重要です。今後もこのような貢献を一層行ってまいります。

(以 上)