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第38回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成30年10月13日)

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第38回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2018年10月13日(土))

  1. 世界経済、日本経済

    【世界経済】
     世界経済の堅調な成長が続いており、ややペースは落ちると見込まれるものの、今後も成長を続ける見込みです。しかし、その成長は一部の先進国では2018年にピークを迎えるなど、ばらつきが見られます。また、リスクは下方に偏っており、一部のリスクは既に顕在化しています。特に、新興国からの資本流出と貿易摩擦が大きな下方リスクです。

     一部の先進国で金融正常化の動きが見られるなど国際的な金融資本市場がタイト化する中で、新興国に対する資本フローの反転が生じています。今は個別国の問題に留まっていますが、巨額の経常収支赤字や財政赤字を継続しているような経済状況の弱い新興国には同様のリスクが高まっています。世界経済全体へ波及するほどの悪影響はまだ見られませんが、我々は警戒レベルを高め、必要に応じて迅速に国際社会による支援を実施する必要があります。

     貿易をめぐる緊張の高まりが継続しています。貿易摩擦は市場心理を悪化させ、金融の脆弱性を高めるとともに、投資を減退させます。貿易障壁が高まればグローバル・サプライ・チェーンに悪影響を与え、世界全体の生産・投資活動を停滞させます。保護主義的な措置による内向きの政策は、どの国の利益にもなりません。一方的な保護主義的な貿易措置は、報復行為の応酬の引き金となり、短期間で世界全体の貿易取引を減少させかねません。自由で公正なルールに基づく貿易を通じて世界経済の成長を高めていくことが重要であり、二国間ではなく多国間の枠組みで解決策を追求していく必要があります。

     こうした下方リスクに対処するため、引き続き、財政、金融及び構造政策を個別にまた総合的に用いるというコミットメントが重要です。経済状況が良好な現在のうちに、将来への備えをするため、必要に応じて財政政策のバッファーを再構築することで質の高いインフラや人材に投資するための余地を創出しつつ、債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保する必要があります。高齢化や生産性低迷といった構造問題に対する政策も不可欠です。


    【日本経済】
     アベノミクスの成果が着実に上がり、日本経済のファンダメンタルズは堅調です。実質GDP成長率は、3年連続でプラス成長を実現し、足もとでも個人消費や設備投資を中心とした民需主導の力強い成長が実現しています。労働市場は引き続きタイトであり、8月の失業率は2.4%と約25年ぶりの低水準となりました。賃金については、2%程度の高い水準の上昇が5年連続で実現しました。

     中長期的な視点に立つと、日本の最大の課題は少子高齢化です。日本の財政は公的債務残高がGDPの2倍程度に累積するなど極めて厳しい状況であり、社会保障関係費の伸びの抑制は不可避の課題です。こうした中、本年6月に「新経済・財政再生計画」を策定し、財政健全化目標として、2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指すことなどを掲げました。2025年には全ての団塊の世代が75歳以上になるため、社会保障関係費の増大が見込まれており、この前に財政健全化の道筋を確かなものとする必要があります。計画に沿った歳出改革等に真摯に取り組むことで、この目標の達成を確かなものとしてまいります。

     また、2019年10月に予定されている消費税率10%への引上げに当たっては、その使い道を見直し、子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当することとしました。これにより、財政健全化に加え、現役世代が抱える不安を解消し、消費の喚起にもつながるものと考えています。このような消費税率10%への引上げを来年10月に確実に実施するため、引き続き環境整備にしっかり取り組みます。


  2. IMFへの期待

    【総論】
     各国の脆弱性の解消に向けた取組を支える観点からは、国際金融アーキテクチャーの機能強化が重要です。IMFが、そのサーベイランス機能を十全に発揮して世界経済のモニタリングを行い、支援が必要な国には迅速に融資を行い、能力開発を通じて経済成長の底上げに取り組んできたことを高く評価します。苦境に陥ったアルゼンチンに対する迅速な支援合意は、IMFが世界経済の安定に果たす役割を再度印象付けました。来年2019年には、日本がG20の議長国となります。強固で持続可能かつ均衡ある包摂的な世界経済の成長の実現に向け、日本はリーダーシップを発揮していく決意ですが、世界が直面する課題の分析や対処において、IMFからの貢献に引き続き期待します。


    【サーベイランス】
     (グローバルインバランス)
     過度のグローバルインバランスは、世界経済にとってのリスクです。各国の経常収支は、マクロ的な貯蓄・投資バランスの現れであることを踏まえ、各国が持続可能な貯蓄・投資バランスを実現するために適切なマクロ経済・構造政策を実施し、グローバルインバランスの解消を図っていくことが必要です。これを二国間の貿易問題としてとらえ、関税の引き上げなどで対処しても、グローバルインバランスは解消しません。多国間の枠組みの中で解決することが不可欠であり、IMFのサーベイランスが共通の土俵を提供することが重要です。

     その観点から、IMFの対外バランス評価モデルや対外評価報告書(External Sector Report)は、各国の対外ポジションを透明かつ公正な形で評価するツールとして有用です。人口構成の変化や世代ごとの貯蓄行動の差異をより正確に捉えるため、IMFが評価モデルの見直しに取り組んでいることを日本は高く評価します。一方で、根源的な問題も残されています。このモデルは、経常収支バランスをベースにした為替レートの評価が注目されがちですが、多くの国で、経常収支と結び付けて為替レートを評価することの妥当性は失われています。たとえば先進国を中心に、為替レートによる調整が機能しない所得収支が経常収支に占める割合が大きい国が増えているほか、経常取引と無関係の資本取引の規模が著しく増大し、その内容が為替レートの主たる決定要因となっています。為替レートを経常収支と関連づけて評価するのではなく、むしろ経常収支バランスの分析から過度のインバランスの所在を突き止め、それに対処する構造改革を提言するという本来的な意義に沿った活用に軸足を移すべきと考えます。

    (資本フロー)
     新興国の一部において資本フローの急激な反転が現実化している現在、それへの政策対応は資本の流出国と流入国の双方にとって重要です。適切かつ必要な資本フロー管理政策(CFMs: capital flow management measures)が存在するというのが、20年前のアジア通貨危機から世界が得た教訓です。日本は、時と場合によってはCFMsが許容される局面があるということを示した「IMFの機関としての見解」を高く評価しています。IVは、現場での実用性がテストされる段階です。IMFが、各国固有の事情を十分に踏まえ、even-handedかつ事後的な検証が可能な形で各国のCFMsの評価を行うことが必要です。今般、IMFが具体的なIVの適用事例の集積を示したことは、政策当局者にとって有益な指針となるため、今後も継続的な取組を期待します。

    (少子高齢化)
     少子高齢化は、先進国のみならず、新興国や途上国においても急速に進展しています。2050年には60歳以上の人口が世界で20億人に達すると予測されています。少子高齢化自体に対する政策対応だけでなく、労働供給の減少への対応、世代間公平性の確保、金融包摂など、少子高齢化が影響する分野は多岐にわたります。そうした議論を各国で進める共通の土台として、少子高齢化がマクロ経済、財政、金融に与える影響について、IMFによる分析を期待します。


    【低所得国支援】
     近年、一部の開発途上国において、非伝統的な貸し手からの借入や非譲許的な借入による債務の蓄積が問題となっています。債務国と公的及び民間の債権者の双方が、債務の透明性・持続可能性を確保するためにこの問題に取り組んでいく責任があります。

     こうした中、開発途上国が、債務の透明性の向上を通して、債務の持続可能性を確保していくことが、持続的な投資資金の流入をもたらし、経済成長を支える土台として重要です。そのためには、途上国が自らの債務状況を的確に開示していくことが必要ですが、途上国の能力は決定的に不足しています。IMFが、途上国の能力ギャップを見極め、適切な時間軸と順序で、効果的な支援を実施していくことが重要です。IMFは、債務透明性を向上し、持続可能性を確保するための技術支援を含む、多方向からのアプローチを実施しており、この取組を着実に実施していくことを期待します。具体的には、IMFには、統計データ整備を支援するための技術支援や、改訂LIC-DSFを適切に運用するための技術支援を強化することを期待し、日本もこうしたIMFの取組に今後も積極的に協力してまいります。また、IMFの債務上限政策(DLP:Debt Limit Policy)やコンディショナリティが、債務の透明性向上・持続可能性の強化に着実につながるよう見直されることを期待します。

     これに加えて、債務の持続可能性の確保のためには、国内資金動員と公的資金管理にかかる能力構築も重要です。この点、国内資金動員にとって重要な役割を果たすMedium-Term Revenue Strategyの策定及び実施がさらに多くの国に普及するよう、IMFの支援に期待します。また、国内資金動員支援の効果を最大化するためには、Tax Administration Diagnostic Assessment Toolを含むIMF内の支援活動の協調や、開発パートナーの連携が重要です。IMFには「税に関する協働のためのプラットフォーム」を通じ、他の開発パートナーとの連携を強化するとともに、これまで同様、その活動を定期的にアップデートすることを望みます。

     また、債務の透明性・持続可能性を確保するためには、借り手だけでなく、貸し手側の取組も不可欠です。新興債権国や民間債権者を含む債権者が、持続可能な貸付の重要性を理解することが重要です。IMFが積極的なアウトリーチを通して、こうした債権者の理解を促し、健全な貸付慣行の浸透に向けて取り組むことを望みます。


    【能力開発】
     現在、特に低所得国において、能力開発が必要な分野は未だに多く、IMFが能力開発活動を通じて果たす役割やその重要性は増しています。日本は、IMFの能力開発活動を積極的に支援してきましたが、重要性の増している分野には更に積極的に支援していきます。能力開発活動においては、外部資金による割合も高まっており、結果に基づく管理の枠組み(RBM)を通じて、成果重視の評価を進め、その活動の実効性を高めようとするIMFの取組を歓迎します。この点について、本年予定されている能力開発戦略レビューにおいてRBMに関する具体的な事例やその有効性が示されることを期待します。また、限られた資金を有効に活用するためには、IMF内部の連携を強化し、地域ごとの能力開発需要を的確に把握し、地域ごとのバランスにも配慮した支援が実施されることが重要です。


    【グローバル金融セーフティネット】
     世界金融危機を克服する中で、GFSNは、各国レベルのセーフティネットとしての外貨準備、二国間レベルとしての二国間スワップ、地域レベルとしての地域金融取極(Regional Financing Arrangements: RFAs)、グローバルレベルとしてのIMF、という多層的な構成で強化されてきました。各層のセーフティネットが個別に機能しつつ連携することによって、現在の国際金融システムは危機予防と危機対応の両面から安定性を高めています。IMFがチェンマイ・イニシアティブ(CMIM: Chiang Mai Initiative Multilateralization)との間で、より現実を想定した合同テストランを実施してきたことはその好例であり、高く評価します。

     そうした中、IMFが十分な資金基盤を有していることは極めて重要です。第15次クォータ一般見直しは、2019年春まで、遅くとも2019年年次総会までに見直しを完了するとされていますが、IMFが必要とする資金規模とその強化方法、クォータ計算式、といった本質的な論点について各国間で意見の隔たりが大きい状況です。IMFにおいて議論を続け、意見の隔たりを収斂することが必要です。

     その一つの方向性として、日本はIMFの資金基盤における借入資金の有用性及び重要性を強調します。世界金融危機の最中であった2010年に合意された第14次クォータ一般見直しが2016年に発効し、IMFのクォータ総額が倍増したことは大きな進展でした。一方で、2008年に日本が先陣を切って表明した1,000億ドルのIMFに対する融資は、マーケットに大きな安心感を与えるとともに、その後のIMFの資金基盤強化につながりました。各国からの融資による資金基盤強化は続き、2011年にはIMFのNABに組み入れられました。その後、欧州債務問題の深刻化を踏まえてバイ融資取極が創設されました。このように、NABやバイ融資は、IMFが機動的に必要な資金を確保するために不可欠な役割を果たしてきています。現在、世界経済が下方リスクに直面し一部の新興国が苦境に立つ中で、IMFが緊急に資金を必要とするのであれば、借入資金がその役割を有効に果たすことができると考えます。

     また、IMFの低所得国に対する中心的な融資の枠組みであるPRGTにおいても、各国の資金貢献が欠かせません。日本は、累積でPRGTの融資原資全体の約25%、利子補給金全体の約13%という加盟国中最大の資金貢献を行ってきました。こうした資金貢献のインセンティブを各国に付与するメカニズムが、IMFの活動を円滑かつ確実に進め、GFSNの安定性を高めるために重要です。その一つの仕組みとして、資金貢献能力や意思の要素をクォータ計算式により強く反映し、加盟国がIMFの財務基盤強化に貢献するインセンティブを強化する必要があると考えます。


    【新たな課題への対応】
     世界は、目覚ましい速度で進展する技術革新を目の当たりにしています。特に金融セクターでは、技術革新がビジネスモデルの変容まで迫る大きな変化をもたらしており、この動きを経済成長に繋げる一方で、その潜在的なリスクに対応していくことも必要です。

     たとえば仮想通貨や暗号資産については、マネーロンダリング、投資家保護、市場の健全性、脱税等のリスクが指摘されており、クロスボーダー・クロスセクターという特質にかんがみ、関連当局が連携しつつ、こうしたリスクに適切に対処していく必要があります。他方で、その基礎となる分散型台帳技術等については、その有用性が指摘されており、技術革新を阻害せずに進展するために、必要な環境を整備することも重要な課題です。

     Bali Fintech Agendaは、こうしたFintechを巡るリスクと機会の両面をバランス良くとらえており、歓迎します。今後、IMFにおいて、このAgendaを踏まえ、さらに検討を深められることを期待しています。

(以 上)