現在位置 : トップページ > 国際政策 > 国際通貨制度等〜国際通貨基金(IMF)等〜 > IMF国際通貨金融委員会(IMFC) > 第37回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成30年4月21日)

第37回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成30年4月21日)

English 印刷用(PDF)

第37回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2018年4月21日(土))

    1. 世界経済、日本経済

      【世界経済】
       世界経済が引き続き堅調に推移している中、成長をサポートする各国の政策の効果もあり、世界的に広く経済成長が拡大していることを歓迎します。一方で、世界経済にはリスクが引き続き残っています。特に、世界経済の健全なファンダメンタルズにも関わらず起きた2月の金融市場の変動は、現下のリスクや脆弱性への注意を喚起させるものであり、引き続き、リスクへの警戒が必要です。

       まず、資本フローについては、先進国で金融政策の正常化が徐々に行われる中、先進国の予想以上のインフレ率の増加などに起因する国債金利の急上昇(snapback)のリスクには注意が必要です。金利の急上昇によって、新興市場国への資本流入が反転するおそれがあり、新興市場国で外貨建債務が積みあがっていることを踏まえれば、反転した場合の影響は大きなものとなりうると考えています。

       また、地政学的リスクやサイバーテロなどの非伝統的なリスクが、世界経済に対し不確実性を作り出しています。更に、最近の、経済のグローバル化に対する不安や不満の背景には、グローバル化が国内の所得格差を拡大させているという認識が存在します。しかしながら、保護主義は、世界経済全体の縮小を招き、どの国の利益にもなりません。自由で公正な貿易を通じて、各国が比較優位を活かす形で、世界経済の成長を高めていくことが重要です。

       こうしたリスクに対し、現下の堅調な経済状況を好機として、各国は、危機時に備え、脆弱性の解消に向けた取組みを推進していくことが重要です。具体的には、強固で持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を支える為に、引き続き、金融、財政、構造政策を用いることが適切です。特に、構造改革の重要性は高まっており、労働と生産性の両面から潜在成長率を引き上げていく必要があります。


      【日本経済】
       アベノミクスの成果が着実に上がってきた結果、日本経済のファンダメンタルズは堅調です。実質GDP成長率(前期比)は8四半期連続のプラス成長、企業収益は過去最高水準、賃金は4年連続の高水準の引上げが実現するなど、好調な企業収益が、雇用や所得環境の改善につながり、消費や投資の伸びをもたらすような、経済の好循環が回り始めました。

       こうした中、強固で持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を達成するため、日本経済の最大の課題である少子高齢化の克服に取り組み、生産性の向上を目指します。第一に、働き方改革を断行し、長時間労働を是正することにより、女性・高齢者の雇用を促進します。第二は、税制・予算・規制改革を通じ、ロボット、IoT、人工知能等、イノベーションを活用していきます。第三に、人材への投資です。幼児教育・高等教育の経済的負担の軽減やリカレント教育の拡充に加え、介護人材の確保や保育施設の充実などを通じた現役世代の不安解消に努めます。先月に成立した総額97.7兆円の平成30年度予算は、これらの実現に資するものです。

       また、日本の国・地方の債務残高はGDPの2倍程度に膨らむなど大変厳しい状況にあります。財政の持続可能性を確保するため、プライマリーバランスを黒字化する目標を堅持し、目標達成に向けた具体的かつ実効性の高い計画をこの夏までに策定します。引き続き、あらゆる政策手段を総動員し、経済再生と財政健全化の両立を目指していきます。


  1. IMFへの期待

    【総論】
     世界経済に依然として残るリスクに鑑み、脆弱性の解消に向けた各国の取組を支える観点からは、国際金融アーキテクチャーの機能強化が重要です。IMFが、各国へのサーベイランスや能力開発など様々な面でその強みを生かしていくことを期待します。


    【サーベイランス】
     危機の発生を可能な限り予防する上で、IMFのサーベイランス機能は大きな役割を果たしています。日本は、サーベイランス能力の向上に向けたこれまでのIMFの取組みを評価していますが、更なる取組みが必要な点として、以下3点申し上げます。

    (グローバルインバランス)
     ここ数年、グローバルインバランスは一貫して継続しており、こうした不均衡の蓄積は、世界経済にとってのリスクとなります。各国の経常収支は、マクロ的な貯蓄・投資バランスの現れであることを踏まえ、各国が持続可能な貯蓄・投資バランスを実現するために適切なマクロ経済・構造政策を実施し、グローバルインバランスの解消を図っていくことが求められます。こうした観点に基づき、IMFが各国に適切な政策助言を行っていくことを期待します。

     各国の対外ポジションを透明かつ公正な形で評価する多国間のモニタリングツールを、IMFが有していることには大きな意味があり、対外バランス評価モデルや「対外評価報告書(External Sector Report)」が、各ステークホルダーからの信認を得られるよう、IMFが継続的に取り組んでいくことを望みます。この点、対外セクター評価の客観性確保に向けたスタッフの一連の努力を評価し、今後の適切な運用に期待します。

     しかしながら、この機会に、対外セクター評価の在り方について、根源的な問題提起を行いたいと思います。今日、経常収支と為替レートの結びつきは一層弱まっています。具体的には、
    • 先進国を中心に、経常収支のうち、為替レートによる調整が機能しない所得収支の占める割合が大きい国が増えていること
    • 貿易収支についても、グローバル・バリュー・チェーンの深化・拡大により、為替レートに対する貿易の弾力性が低下していること
    • 経常取引と無関係の資本取引の規模が著しく増大し、為替レートの主たる決定要因は経常収支ではなく資本収支であること、
    などから、経常収支の評価と結び付けて為替レートを評価することの妥当性は失われているのではないでしょうか。為替レートを経常収支と関連づけて評価することの必然性・論理性について、IMFに再考を強く促します。

    (資本フロー)
     資本フローが急に反転するリスクに留意し、各国は、それぞれの取組を着実に進めていく必要があります。そうした対応の中で、資本フロー管理政策(CFMs: capital flow management measures)を講じる場合も考えられます。日本は、マクロ経済政策での対応を基本としつつ、時と場合によってはCFMsが許容される局面があるということを示したIMFの『機関としての見解(IV: Institutional View)』を高く評価しています。各国のCFMsが、IVに基づいたものとなっているかどうかを、IMFがしっかりと評価していくことが必要です。

     IVの具体的な適用にあたっては、各国当局とIMFとの間で、見解に相違がみられる場合もみられます。IVの実施が、現場において有益な形で行われるように、適切なCFMsとして許容される場合の判断基準の明確化が必要です。これに資するものとして、IMFが今後作成するノートにおいて、IMFのIVの下での各国措置の評価やCFMsの導入が適当とされる状況が説明されることとなっており、IMFに対して、こうした作業を着実に進めることを期待しています。

     更に、現在の好調な世界経済の成長モメンタムを損なうことが無いよう注意しつつ、資産価格の高騰や過剰信用などがみられる場合においては、システミックリスクの蓄積を抑制するため、必要に応じてマクロプルーデンス政策(MPMs: macroprudential measures)を用いていくことが有益です。こうした観点から、IMFによるMPMsに関するデータベース整備は、各国がそれぞれの状況に鑑み必要に応じてMPMsを講じていく上で有益なものであり、作業を歓迎します。

    (新たな課題への対応)
     技術革新や経済統合が進展し、格差や性別等に関する社会的な価値観も変化する中、IMFが、格差・ジェンダー・気候変動など、非伝統的な新しいテーマについて貢献していくことは、基本的には支持します。その一方で、IMFのリソースに限界があることも踏まえ、各国の事情に鑑みてマクロクリティカルなものに厳に絞って取組を進めていくことを強く慫慂します。また、IMFが十分な専門性を持たないケースにおいては、より深い知見を有する他の国際機関と協調が不可欠です。


    【低所得国支援/能力開発】
     一部の低所得国において非譲許的な借入に起因する債務の累積が顕在化している中、低所得国の債務持続可能性を第三者から検証可能とする債務透明性の確保が、投資資金の持続的な流入をもたらし、低所得国の成長を真に支える土台として重要です。

     それに向けて、まずは借り手である低所得国が自らの債務状況を的確に開示していくことが必要です。そのための必要な能力を有していない国に対しては、国際社会が能力開発支援を強化していくべきです。IMFには、能力開発の需給を見極めて地域のバランスを取りつつ、低所得国における質の高い債務データの収集や公表に結びつく能力開発支援を期待します。

     また、低所得国自身が債務持続可能性を確保するためには、健全な財政運営が不可欠であり、そのためには歳出管理、税収増加等の能力向上が求められます。この点、国内資金動員を効率的・効果的に達成することが特に重要であり、IMFには「税に関する協働のためのプラットフォーム」を通じ、他の開発パートナーとの間で情報共有や連携を強化するとともに、これまで同様、その活動を定期的にアップデートすることを望みます。

     更に、昨年、より精緻化する方向で見直されたIMF・世銀共同の「低所得国向け債務持続可能性フレームワーク」が、本年7月から実際に使用されます。このフレームワークは、低所得国が慎重な債務管理を行い、また、効果的に外部資金を動員する上で重要なツールです。日本としてはこのフレームワークの実施により、低所得国の債務持続性が一層確保されることを期待します。

     また、債務の透明性向上を実現するためには、貸し手に対しても、融資条件に係る適切な情報開示を促す取組を進めることが重要です。近年、低所得国に対する債権者の構成が変化し、新興債権国や民間債権者による貸付が増加しているため、こうした債権者に対してもこれらの取組を促すことが必要と考えます。IMFに対しては今後、これらの取組に向けた国際的な議論を踏まえ、建設的に貢献していくことを期待します。


    【グローバル金融セーフティネット】
     各国の外貨準備や、二国間スワップ、地域金融アレンジメント(Regional Financing Arrangements: RFAs)、IMFの融資制度などで多層的に構成されるグローバル金融セーフティネットの強化にあたっては、セーフティネットの各構成要素の充実を図るとともに、各セーフティネット間の連携強化に努める必要があります。

     こうした観点からは、IMFが各RFAとの間で、危機時に限らず平時から緊密な協力関係を構築し、連携を強化していくことが重要です。この点、IMFがチェンマイ・イニシアチブ(CMIM: Chiang Mai Initiative Multilateralization)との間で、より現実を想定した合同テストランを複数回実施してきたことを高く評価します。

     また、第15次クォータ見直しについて、日本は、グローバル金融セーフティネットの中核としてのIMFが、十分な資金基盤を有しているべきと考えています。IMFの資金基盤としては、クォータ資金に加え、借入資金の果たす不可欠な役割を正面から認識すべきです。

     IMFのあらゆる業務は、クォータ資金に加え、こうした借入資金や、低所得国支援・技術支援への資金貢献によって支えられています。しかしながら、こうした資金は、「自発的資金貢献」として、これまでクォータの計算に全く反映されてこなかったことを強く問題視しています。資金貢献インセンティブを強化することを通じ、IMFの資金基盤の充実を図るために、こうした「自発的資金貢献」をクォータ改革に反映させることが必要です。

     今次見直しの検討に当たって最も重要なことは、『IMFがグローバル金融セーフティネットの中心として期待される役割を果たしていく上で、IMFが備えておくべき資金基盤はどのようなものか』という論点に合意することです。これは、資金の本質論、即ち、資金構成、資金基盤のサイズ、クォータ増資の規模についての議論を意味します。

     クォータ見直しについては、計算式を含め、全体をパッケージとして合意を得る必要があります。しかしながら、増資の必要性をはじめとする、これらの本質的な点についての加盟国間の意見には大きな隔たりがあります。議論の収斂を目指し、IMFの全体委員会で粘り強く議論を継続していくべきだと考えます。


    【IMFのガバナンス】
     世界経済の安定した成長の実現に向けた重要な役割をIMFが今後も果たし続けていくには、その活動が加盟国全体の利益に資するものであるという信頼を得ていくことが重要です。そのためには、スタッフの多様性の確保が重要であり、そのための取組を継続することを強く求めます。

(以 上)