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第36回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成29年10月14日)

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第36回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2017年10月14日(土))

  1. 世界経済、日本経済
    【世界経済】
    世界経済の穏やかな回復が続き、足元の見通しが明るくなってきていることを歓迎します。歴史的な水準と比較すれば未だに低い成長ではあるものの、多くの先進国及び新興途上国で経済成長見通しが上方に改定され、投資、貿易、雇用も拡大が続いています。しかしながら、先進国においては、企業収益が好調であり、かつ、失業率が世界金融危機前と同等又はそれ以下の水準にあるにもかかわらず、賃金上昇は抑制されており、政策担当者にとって切実な謎となっています。さらに、中期的にはいくつかの下方リスクが残っています。たとえば、新興国における過剰信用や、外貨建て債務の増大などの金融上の脆弱性が引き続き蓄積されています。こうした国々が、グローバルな金融市場の中で弱い鎖となり、先進国の金融政策の正常化がもたらす波及効果を最も受けるおそれがあることに十分な注意を払う必要があります。また、先進国を中心とした資本市場における資産評価の継続的上昇の背景には、金融市場の低金利や低いボラティリティがあると考えられ、現在の金融環境が急変しうる可能性を踏まえ、我々は、慢心することなく、市場の動向を十分に注視していく必要があります。

    加えて、非伝統的なリスクである地政学的リスクやサイバーテロなどが、不確実性を作り出しています。特に、北朝鮮は、世界経済への重大な地政学的リスクです。こうした状況下では、市場の安定を維持することが特に重要です。為替市場における過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうることを再確認すべきです。強固で持続可能な成長と投資の観点からも、我々は、根底にあるファンダメンタルズを反映し、健全な政策と国際通貨システムに基づく、為替レートの安定が重要であることを強調します。

    現下の景気回復を好機として、各国が直面する重要な政策課題に取り組むことで、中期の下方リスクに対処し、潜在成長率を引き上げるべきです。足下の循環的な景気回復に慢心せず、また、目先の成長率のみを追求するのではなく、持続可能で包摂的な成長を実現しなければなりません。この成長目的はすべての国にとって共通ですが、各国が置かれている経済的状況や政策余地は一様ではありません。従って、共通の成長目標の実現に向けて、全ての政策手段、すなわち、金融、財政及び構造政策を個別にまた総合的に用いるというコミットメントは引き続き重要です。

    【日本経済再生に向けた取組】
    アベノミクスの成果が着実に上がってきた結果、日本経済のファンダメンタルズは堅調です。実質GDP成長率(前期比)は6四半期連続の潜在成長率を上回るプラス成長、賃金引上げ率は4年連続で今世紀最高水準、労働市場も有効求人倍率がほぼ半世紀ぶりの高水準となりました。好調な企業収益や逼迫した労働市場が消費や投資の伸びをもたらすような、経済の好循環を確かなものとしていく必要があり、そのためには継続的で安定した賃金上昇が極めて重要です。

    また、現在の経済成長を持続可能なものとするため、構造改革を推し進め、我が国最大の課題である少子高齢化を克服していきます。女性や高齢者の雇用促進や労働生産性の向上を目指す「働き方改革」は、構造改革の柱です。今後は、更に潜在成長率を引き上げるために、ロボット、IoT、人工知能等、最先端技術を駆使してあらゆる産業の生産性を引き上げること(「生産性革命」)、また、人生100年時代を見据え、幼児教育・高等教育の負担軽減や、リカレント教育の拡充を通じて人材の質を高めていくこと(「人づくり革命」)の二つに取り組んでいきます。持続可能で包摂的な成長を実現するためにも、引き続き、政府・日銀が一体となって、あらゆる政策手段を総動員して、アベノミクスを一層加速していきます。

  2. IMFへの期待
    1997年夏にアジア諸国を見舞った通貨危機から20年の歳月が経ちました。それから今日までの間、2008-09年の世界金融危機をはじめ、世界経済・金融には様々な変動が見られましたが、こうした危機に対し、IMFが、アジア通貨危機からの教訓も踏まえ、サーベイランス・政策助言や資金支援を充実させ、国際通貨システムの中核としての役割を果たしてきたことを高く評価しています。直近でも、本年5月、モンゴルに対する大規模な国際支援パッケージの策定に、IMFが大きな役割を果たしたことは、好例として歓迎します。日本は、IMFのこうした取組みをこれまで一貫して支持し、資金基盤の拡充への協力を含め、その活動を積極的に支えてきました。また、アジア通貨危機の最中に東京に設立され、今年で20周年の節目を迎えるIMFアジア太平洋地域事務所が、アジア太平洋地域の経済・金融動向のモニタリングや能力開発活動などに大きく貢献してきたことに謝意を表します。

    今日、依然として世界経済・金融における課題が山積する中、危機予防及び危機対応に大きな役割を果たす国際金融アーキテクチャーの強化は引き続き重要です。その観点から日本は、サーベイランス・グローバル金融セーフティネット・低所得国支援/能力開発の面で、IMFが世界経済・金融の安定に向け、今後とも積極的に貢献していくことを強く期待します。

    【サーベイランス】
    危機の発生を可能な限り予防し、世界経済の安定的な成長の果実を社会の幅広い層の人々が享受できるようにする上で、IMFのサーベイランス機能は非常に大きな役割を果たしています。IMFはこれまでもサーベイランス能力の向上に適切に取り組んできたと評価していますが、日本は、以下の3点について、更なる取組みを慫慂します。

    まず、先進国の金融政策正常化の新興国へのスピルオーバーは世界経済の下方リスクであり、国際的な資本フローの変動への対応は、引き続き優先課題です。日本は、資本フローに関する「IMFの機関としての見解」を支持しており、資本フロー管理政策について、適用事例のレビューやマクロプルーデンス政策との関係に係る概念整理など作業の進展が見られたことや、今般より有効で整合的な政策助言を実施できるよう、作業を継続するとの方針が示されたことを歓迎します。こうした作業に引き続いて、「機関としての見解」の一貫した、かつ適切な運用を確保するために、資本フロー管理政策に関する、より詳細で実践的なガイダンスを示すことを引き続き求めます。

    次に、各国経済が直面する新たな政策課題に対し、IMFがより各国の実情に即した形で適切に政策助言を行っていくことを期待します。最近の保護主義や内向き政策の高まりの背景には、雇用の喪失や所得格差拡大に対する不安・不満があると考えられます。そうした中、各国が労働市場改革などの構造問題に取り組むことで生産性の上昇を図りつつ、包摂性のある経済成長を実現することが、現下の世界経済における重要な課題となっています。更に、人口高齢化が世界各国において進む中で、社会保障・財政政策の持続可能性を維持することも重要な政策課題です。これまでもIMFは、マルチのサーベイランスにおいて、こうした課題に対してタイムリーな分析を行ってきたと日本は評価していますが、今後は国別のサーベイランスにおいても同様の視点から分析を行い、各国にとって有益な政策助言を行っていくことを期待します。

    更に、グローバル・インバランスの現状を評価する「対外セクター報告」に関して、その見直しが予定されていることを歓迎します。見直しにあたっては、スタッフが各国当局との積極的な関与を重ねていくことを期待するとともに、見直し後のモデルが、所得収支と貿易収支の違いや国民の消費・貯蓄行動の差異などの各国経済に固有の特性を十分に捉えるものとなることを期待します。また、モデル結果に事後的に加える調整に係るアカウンタビリティを高めるため、その理論的妥当性や公平性を担保する仕組みを設けることが必要と考えます。

    【グローバル金融セーフティネット】
    危機予防や危機対応の実効性を高め、安定した国際金融システムを実現・維持するためには、IMFを中核としたグローバル金融セーフティネットを引き続き強化していくことが重要です。こうした観点から、特に以下の課題について、密な議論が必要と考えます。

    まず、クォータ見直しに関しては、昨年12月の総務会決議などにおいて、2019年春まで、遅くとも2019年年次総会までに見直しを完了するとされていることを踏まえ、各国間で意見の隔たりが大きい各論点の解消に向け、議論を加速させることを望みます。日本は、IMFがグローバル金融セーフティネットの中核として期待される役割を十全に果たすために十分な資金基盤を有しているべきとの前提を支持します。ただし、IMFの資金基盤は、クォータを中核としつつも、借入資金にも、マーケットの信認向上や危機予防に資する効果が認められることから、その恒久財源としての重要性が認識される必要があります。現に、世界金融危機時の日本からの1,000億ドルのバイ融資取極へのコミットメントが、危機克服に重要な意味を持ったこと、また、これらのバイ融資がNABに組み入れられ、クォータに次ぐ資金基盤として、引き続き重要な役割を果たしていることを指摘します。

    クォータ計算式の見直しで重要な点は、従前よりクォータ計算式が捉えるべきとされてきた、3要素、即ち、1.経済規模、2.資金ニーズ、3.資金貢献能力、を適切に反映したクォータ計算式に合意することです。特に、「資金貢献能力」は、現在の計算式で過小評価されていますが、「貧困削減・成長トラスト(Poverty Reduction and Growth Trust: PRGT)」や技術支援を含めIMFのあらゆる業務にとって、加盟国からの自発的資金貢献は必要不可欠な存在です。そのため、「資金貢献能力」の要素を計算式により強く反映することで、加盟国がIMFの財務基盤強化に貢献するインセンティブを強化する必要があると考えます。

    また、資金規模の適切性の検討においては、世界金融危機以降の国際金融規制改革や、IMF以外のセーフティネットの強化などをどのように適切に勘案するか、更に議論が必要です。

    更に、IMFが地域金融取極(Regional Financing Arrangements: RFAs)との間で、危機時に限らず日常的に緊密な協力関係を構築し、各RFAの特性に配慮しつつ、情報共有・サーベイランス・資金支援などの面において連携を強化していくことが重要です。世界金融危機や欧州債務危機への対応における欧州RFAsとの協働が実例のほとんどを占める中、IMFが本年7月、グローバル金融セーフティネット全体を強化する観点から、RFAsの多様性を踏まえつつ、あらゆるRFAsとの協働に適用可能な運用原則を策定したことを歓迎します。この点、日本は2017年のASEAN+3の共同議長として、より現実を想定した合同テストランを実施するなどIMFと「チェンマイ・イニシアチブ」(Chiang Mai Initiative Multilateralization:CMIM)との連携を推進してきましたが、今般、IMFとASEAN+3のサーベイランスユニットであるAMRO(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)との間で情報交換や職員交流などに関するMoU(Memorandum of Understanding)の締結に至ったことを歓迎します。今後、その他の地域金融アレンジメントとの間でも、より効果的な連携関係の構築に向け、努力を継続することを期待します。

    【低所得国支援/能力開発(技術支援・研修)】
    低所得国が、世界経済への統合の進展、コモディティ価格の変動、貧困、環境問題など様々な問題に直面する中、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向け、IMFが低所得国支援に引き続き関与していく必要があります。日本としては、IMFの低所得国支援について以下の4点が重要であると考えます。

    1点目は、IMFの低所得国に対する中心的な融資の枠組みであるPRGTの評価及び見直し作業です。グローバル化が進み国・地域間の相互依存が高まる中、途上国のマクロ経済の安定を確保し、その発展を支援することは、世界経済、ひいては日本経済の安定成長や社会の発展に資するとの考えから、日本は、累積でPRGTの融資原資全体の約25%、利子補給金全体の約13%という加盟国中最大の資金貢献を行ってきました。

    PRGTを通じた支援の最終的な目標は、利用国の貧困削減と成長のために必要となる安定的かつ持続的なマクロ経済状況の実現です。利用国が着実に改革を進め、最終的にPRGTからの卒業を促す仕組みでなければいけません。日本としては、来年実施される5年に一度の見直しにおいて、PRGTの制度や支援プログラムのデザインが利用国の改革を促し、これら諸国のマクロ経済の安定や成長に貢献してきたか、卒業に向けての意欲を削ぐインセンティブやモラルハザードが内包されていないかを十分に分析・検討した上で、資金的に持続可能な枠組みを維持しつつ、必要な改善がなされることを求めます。

    2点目は、債務持続可能性の確保です。近年、一部の低所得国において、市場からの資金調達や非譲許的な借入の増加に起因する債務の累積が新たな問題として顕在化しつつあり、国際社会としての取組が求められています。この観点から、今般、IMF・世銀共同の「低所得国向け債務持続可能性フレームワーク」がより精緻化する方向で見直されたことを歓迎し、機能性及び有効性を向上させるという今回の見直しの趣旨を十分に踏まえた実施を期待します。

    また、被援助国による健全な借入と、新たに資金の出し手となった新興市場国を含む援助国による責任ある貸付を確保するため、双方が情報共有などで協力することが求められます。これらの取組を実効的なものとするためには、マクロ経済や債務に関する正確な情報に基づく分析が不可欠であり、その基礎となる政府財政、公的債務などの統計分野での能力開発が重要です。

    3点目は、国内資金動員の取組の更なる強化です。税制の強化や税務・税関行政のガバナンス向上を目的とした、「歳入動員支援信託基金(RMTF)」の活用を通じたIMFの能力開発活動を期待します。また、その効用を最大化するためにも、「税に関する協働のためのプラットフォーム(Platform on Collaboration on Tax)」等において、IMFが世銀やOECDなど他の国際機関との連携を深めていくことが重要です。

    4点目は、能力開発活動において、PDCA(Plan, Do, Check, Action)サイクルをより効果的なものとすることです。その観点から、IMFが、結果に基づく管理の枠組み(Result Based Management: RBM)を通じて、成果重視の評価を進歩させることや、その活動の透明性を更に高めようとしていることを評価します。IMFの能力開発活動がドナーからの外部資金に頼る割合が大きくなってきている傾向を鑑みても、RBMの着実な実施が重要であると考えます。

(以 上)