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第34回国際通貨金融委員会(IMFC) 日本国ステートメント(平成28年10月8日)

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第34回国際通貨金融委員会(IMFC)における日本国ステートメント
(2016年10月8日(土))

1.世界経済、日本経済

【世界経済】
 世界経済は穏やかな回復を続けていますが、依然として期待されるほどの力強さはありません。英国における国民投票後の市場の混乱は概ね落ち着いたとは言えますが、世界経済が抱える不確実性は引き続き残されています。市場の安定は特に重要であり、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ます。

  このような不確実性の背景には、各国の政策対応に支えられつつも弱さが残る経済見通し、新興国が抱える潜在的な脆弱性、地政学的リスク、政治面での不透明感など、複合的な要因が存在しています。このような状況であるからこそ、全ての政策手段‐金融、財政及び構造政策‐を個別にまた総合的に用いるというコミットメントの下、持続可能な成長の確保に向けて取組を進め、過度な悲観論に起因する経済の悪循環は回避する必要があります。先進国経済においては、確固たるリーダーシップに基づいて、経済・社会が抱える課題に迅速かつ的確に対処していくことが重要です。また、システミックに重要な新興国は、世界経済への相応の責任を認識し、適切な政策対応を行って脆弱性に対処することが求められます。特に、急激な信用残高の伸びが持続不可能な経済活動に繋がっていないか実態を点検し、金融システムの健全性維持に全力を挙げるべきです。また、この秋のIMFの世界経済見通しは、産業部門の需給の緩みが貿易財価格低下を通じた世界的なデフレ圧力に寄与している可能性を指摘しており、過剰生産能力の解消は世界経済の健全な発展にとって重要です。世界経済の長期的な成長を実現するために、各国が、短期的な政策対応に留まらず、潜在成長力の強化と脆弱性の解消に向けた、各国の事情に応じた構造政策を進めて行く必要があります。

【日本経済再生に向けた取組】
  日本経済のファンダメンタルズは堅調であり、2015年度の企業収益は過去最高を更新、失業率は21年ぶりの低水準となるなど、経済の好循環は着実に拡大しています。今年前半の経済成長率は第一、第二四半期に年率でそれぞれ2.1%、0.7%と、潜在成長率を上回る結果となりました。

  好調な企業収益や逼迫した労働市場が消費や投資の伸びをもたらすような、経済の好循環を確かなものとしていく必要があり、そのためには継続的に賃金を上昇させることが極めて重要です。このような好循環を拡大させていくことで、デフレ脱却を確実なものとし、持続的な経済成長につなげていきます。

  政府がこの夏にとりまとめた財政措置GDP比2.7%の規模の経済対策は、構造改革と「未来への投資」の加速を目的とした包括的かつ大胆なものです。日本にとっては、雇用促進等により、少子高齢化を乗り越え、潜在成長率を引き上げることが優先課題です。このためこの対策には、長時間労働の是正等の働き方改革など、女性や高齢者の雇用促進につながる構造改革を盛り込んでいるほか、予算面で、保育・介護の受け皿の整備等も盛り込んでいます。また、生産性の引上げに資するインフラ整備に公共投資を集中させることで、民間投資を喚起し、持続的な成長の基盤を整備することとしています。 

  さらに、マクロ経済の持続的な成長という観点から、包摂的成長の実現は重要です。日本においても、中間層の弱体化が見られるほか、労働市場の二重性の問題が指摘されています。このような状況の下、今月実施された最低賃金の3%引上げや、同一労働同一賃金の実現など、包摂的成長の実現に向けた施策を進めます。

  消費税率の10%への引上げは2019年10月まで延期しますが、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標は堅持しており、中期的な財政健全化を推進することに日本は引き続き堅くコミットしています。成長戦略を着実に実施することで経済成長を実現しつつ、2015年に策定した「経済・財政再生計画」と「改革工程表」に基づく歳出改革を実行し、2020年度のプライマリーバランス黒字化を実現するとともに、債務残高を安定的に中期的に引き下げていきます。

  金融政策については、日本銀行は先月、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果について「総括的な検証」を行い、その結果を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、金融緩和強化のための新しい枠組みである、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。この枠組みは、金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブコントロール」と、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」の2つの要素から成り立っています。日本銀行は、新たな政策枠組みのもとで、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、従来よりも一段と強力な金融緩和を推進していきます。

  引き続き、政府・日銀が緊密に連携し、アベノミクスを一層、加速するため、金融、財政及び構造政策を、一体として進めていきます。

2.IMFへの期待

  世界経済における課題が山積する中、IMFに求められる役割は引き続き大きく、今後とも国際金融システムにおける課題の解決に向けたIMFのイニシアティブに期待します。

【国際通貨システムの強化】
  近年、世界経済の統合の進展によりクロスボーダーの資本フローの量やボラティリティは著しく増大しています。このような現代の国際通貨・金融システムにおいて、各国がそれぞれ資本フローを十分に監視し、一定の状況下では適切に管理することは極めて重要です。我々はIMFによる資本フローに係る作業を強く歓迎するとともに、各国当局の政策判断の一助となるような、実践的なガイダンスをIMFが示すことを求めます。

  国際金融システムの安定化に向けたバックストップとしてのグローバル金融セーフティネットは、市場の信認を維持する観点から引き続き重要な役割を担います。各国の外貨準備蓄積や、二国間スワップ、地域金融アレンジメントの拡充により、セーフティネットは量的に見れば以前と比べ格段に拡充しましたが、多層的な各セーフティネットがシナジーを伴って有効に機能することが重要です。この意味でIMFとチェンマイ・イニシアティブの合同テストランの実施を歓迎し、今後同様の取組が他の地域金融アレンジメントとの間においても実施されることを期待します。また、情報交換を含むオペレーショナルなレベルにおいてのIMFとAMRO(ASEAN+3 マクロ経済リサーチオフィス)の連携強化についても、強力に推進していくことを期待します。

  時代に応じて変化するニーズに対応し、IMFが貸出ツールキットの不断の見直しを行うことは歓迎します。同時に、適切なコンディショナリティを備えているか、また、利用国において規律あるIMF資金の利用を促す強固なインセンティブ構造を備えているか、との観点から慎重な検討を行い、その上で考えられるファシリティに真にニーズがあるか十分に見極めるべきです。また、これまでのファシリティの簡素化の経緯も踏まえた検討が必要であると考えます。

  日本は過去、世界金融危機やユーロ圏危機等に際し、融資取極を通じてIMFの資金基盤強化を主導してきました。IMFが対応すべき国際収支危機として、設立時に想定されていた伝統的な経常収支困難に加え、資本フローの急激な流出入を伴う新しい形の危機が登場しています。近年の経験に鑑みれば、発生が予測困難かつその発生頻度も極めて低いがいざ発現した際の被害は大きいシステミックな資本収支危機に起因するものを含む、莫大な潜在的資金ニーズまで、全てクォータで賄うことについては、議論の余地があると考えています。むしろ、個別的な危機に対処する資金はIMFがクォータとして十分に確保しつつ、システミックな危機への備えとしてはクォータ以外のNAB、バイ融資等の借入にて対応することが合理的な姿であり、このような合理的な資金基盤としての欠かすことのできない役割を十分に認識して、この度日本はIMFとのバイ融資取極を延長しました。このIMFの資金基盤における借入の重要な役割に鑑み、借入資金への自発的な貢献は、IMFのガバナンスの根幹であるクォータ・シェアにおいて正当に認知されることが不可欠です。

【低所得途上国支援・開発資金】
  低所得国が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を着実に達成してくためには、マクロ経済の安定性が維持されていることが必要不可欠です。マクロ調整に関するアドバイスの面で比較優位を持つIMFが、融資、サーベイランス、技術支援の各ツールを組み合わせて効果的に支援を行うためには、各支援ツールの不断の見直しが必要です。また、低所得国の支援ニーズに適切に応えるためにIMFに十分な資金が備わっていることが引き続き重要です。

  IMFの融資については、今後も貧困削減・成長トラスト(Poverty Reduction and Growth Trust: PRGT)を通じたIMFによる低所得国向け融資が今後も安定的に継続することが重要です。日本は、これまでPRGTに加盟国中最大の貢献をしていますが、現在PRGTの融資原資の補充が課題となっていることを踏まえ、今回、2020年までのPRGTの融資原資として18億SDRの貢献を表明します。

  大規模自然災害やパンデミックといった外生ショックは予見が困難であり、IMFがこうしたショックに起因する資金ニーズに迅速に対応するために設立した、大災害抑制・救済基金(Catastrophe Containment and Relief Trust: CCRT)は、予め十分な資金を確保していることが重要です。この観点から、外生ショックに見舞われた低所得国を支援するため、日本政府はCCRTに対して多国間債務救済イニシアティブトラスト(MDRI-II Trust)から移転された資金の日本の持ち分を含め、国会の承認を前提に、合計で20百万ドルの資金貢献を行うことを表明します。

  サーベイランスについては、IMFによる債務持続可能性フレームワーク(Debt Sustainability Framework)の精緻化に向けた検討を歓迎するとともに、日本としても議論に積極的に関与していきます。このフレームワークは、低所得国が慎重な債務管理を行い、また、効果的に外部資金を動員する上で重要なツールです。

  技術支援については、低所得国がオーナーシップを持って取り組む課題への対処に継続的に貢献できるよう、それぞれの状況に合わせたアプローチで展開されることを期待します。とりわけ、今後、世界金融市場のボラティリティが高まった場合でも、アジアの途上国のマクロ経済や金融システムの強靭性が保てるように、各国における金融監督その他の制度の構築にIMFが引き続き貢献していくことを期待します。また、SDGs達成には国内資金動員(Domestic Resource Mobilization: DRM)の強化が欠かせないことから、低所得国の税制・税務行政のガバナンスやキャパシティ向上を、引き続きIMF技術支援の重点分野とすることが必要です。この点、新設の「歳入動員支援信託基金(Revenue Mobilization Trust Fund: RMTF)」が、IMFが関係機関と立ち上げた「税に関する協働のためのプラットフォーム」において共有される知見・情報も活かしつつ低所得国のDRM強化に確実に貢献できるよう、日本としても資金・知識面でより一層の貢献をしていきます。