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第99回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成31年4月13日)

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  1. 新総裁の歓迎
     まずはじめに、デイビッド・マルパス新世銀グループ総裁を心より歓迎いたします。マルパス総裁のリーダーシップの下、途上国の持続可能な成長と貧困削減に向けて、世銀がより一層大きな役割を果たすことを期待します。

  2. 世銀グループの増資パッケージと改革の推進
     1年前の春季会合において、我々はIBRDとIFCの歴史的な増資パッケージに合意いたしました。増資パッケージは、IBRDとIFCの資金基盤を強化するとともに、様々な改革を通じて「持続可能な開発のための持続可能なファイナンス」を目指すものです。日本は、昨年10月に総務決議が採択されたIBRD増資について、所要の国内措置を完了し、第一回目の払込みを行ったことを、ここに報告いたします。他の加盟国においても、早期に国内措置が完了することを期待します。
     増資パッケージで合意された世銀グループの改革については、金利の引上げなどは既に行われていますが、その多くはこれから本格的かつ継続的に実施していかなければなりません。日本としては、限りある資金をより貧しい国に優先的に配分していく観点から、卒業所得基準以上の国々に関する改革、すなわち、卒業政策を厳格に適用していくために、卒業基準に関するシステマティックな分析・評価を国別戦略で行うこと、支援分野を卒業に必要な政策・制度強化や国際公共財に絞り込むこと、融資配分の割合を縮減することなどを、あらゆる対象国においてしっかりと実施していくことを求めます。  また、世界経済の下方リスクが高まっているなか、IBRDが経済危機の発生に十分に備えておくことを期待します。具体的には、(i)平時のオペレーションの量を調整し、十分な資本バッファーを確保しておくこと、(ii) リスク分析、リスク緩和策、リスクが顕在化した場合の対応策の検討を早急に進め、長期的に開発効果を発揮する質の高い危機対応支援を行えるよう備えておくこと、が重要です。
     今回の増資パッケージは、いわゆる「2バイ2アプローチ」のもと、IBRDとIFCの双方の増資を行い、両機関をいわば車の両輪として強化していくものです。IFCの増資パッケージにおいてはIDA国や脆弱国への支援強化が合意されましたが、これを速やかに実施していくためにもIFCの増資を早期に実現することが重要です。日本は昨年9月にIFC増資の総務決議に賛成投票を行ったところであり、同決議ができる限り早く採択されることを強く期待しています。

  3. 日本の開発プライオリティと世銀グループとのパートナーシップ
     今年は日本においてG20やTICAD7といった重要な国際会議が開催されます。日本としては、途上国の持続可能な開発を実現するために、世銀グループとともに、国際的な開発戦略の議論をリードしていきたいと考えています。
     
    (1)質の高いインフラ投資
     質の高いインフラ投資は、物理的インフラそのものに由来する便益を超えて、経済への波及的効果を長期にわたってもたらすものです。具体的には、雇用の創出、能力構築、及び相互に合意した条件でのノウハウの移転、更なる民間投資の推進などにより、持続可能な成長を支えます。
     ライフサイクル・コストからみた経済性を最大化しつつ、プロジェクトの質を担保するためには、適正なプロジェクト組成が不可欠です。これは、インフラ投資の促進に資する環境の整備や、財源の範囲内でプロジェクトの優先順位付けを行うための計画の策定により、はじめて可能となるものです。また、プロジェクトの実施段階では、調達が透明な形で行われる必要があります。そして、インフラの「質」が満たすべき要素としては、ESG、すなわち、環境・社会・ガバナンス等の観点、中でも利用の開放性や債務持続可能性を含むものになります。
     こうした考え方を踏まえながら、日本は、他の国々や世銀グループをはじめとする国際機関とともに「質の高いインフラ投資」を推進してまいります。

    (2)国際保健(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、パンデミック対応))
     昨年秋に立ち上げられたHCP(Human Capital Project)がモメンタムを得て、各国のランキングの発表や評価手法の改善にとどまらず、60か国近くの参加を得て実際に途上国において人的資本投資を進めるための戦略策定が行われていることを歓迎します。HCPでも強調されたように、教育と保健分野への投資等を通じた人的資本の蓄積は経済成長に重要な役割を果たします。中でも、UHCとそれを支える持続的な保健財政システムは、人々の健康を維持・改善し、労働生産性の向上を助け、ひいては持続的な経済成長に貢献するものです。この観点から、日本は、4月13日に春会合のマージンで開催されるイベントであるFinancing Universal Health Coverageの開催を歓迎します。また、日本は、途上国におけるUHCの推進や持続的な保健財政システムの構築に向け、6月28日にG20大阪サミットのマージンで財務大臣・保健大臣合同セッションを開催する予定です。同セッションでは、財務大臣のUHCファイナンスへの関心を高めるとともに、財務大臣と保健大臣との連携を促すことを目指しています。
     また、UHCの推進は、保健危機の予防や備えの強化にも資するものです。日本が他ドナーと共に立ち上げに貢献したPEF(Pandemic Emergency Facility)は、エボラ出血熱などのパンデミックへの対応を継続的に支援してい ます。例えば、昨年5月、PEFから初めてコンゴ民主共和国に対する12百万ドルのグラント支援を行い、続いて、本年2月には最大20百万ドルのグラント支援を承認しました。日本は、PEFのより一層の機能強化を支持します。

    (3)債務持続可能性
     経済成長が持続可能なものとなるためには、債務も持続可能であることが必要不可欠ですが、現在、一部の低所得国では、債務が急速に積み上がり、その持続可能性に懸念が生じています。債務の透明性を向上させ債務の持続可能性を確保していくためには、借入国と公的及び民間の債権者の双方による協働が必要です。
     借入国においては、的確な債務データの収集・開示、公的資金管理や債務管理の強化に取り組むことが不可欠です。この観点から、世銀がIMFとともに、債務脆弱性に対処するためのmulti-pronged approach(様々な角度からのアプローチ)を、積極的且つ着実に推進することを期待します。multi-pronged approachの下、借入国の能力開発を行うにあたり主要な役割を担う信託基金が、IMFの「決定のためのデータ基金(Data for Decision (D4D) Fund)と世銀の「債務管理ファシリティ第3フェーズ(DMF III:Debt Management Facility-III)」です。日本は、D4Dに5年間で5百万ドル、DMF IIIの初年度の活動に1.5百万ドル拠出することを表明します。
     また、債務持続可能性の課題を根本的に解決するためには、国内資金動員(DRM:Domestic Resource Mobilization)を強化し、他国からの借入に過度に頼らない財政を構築することが必要です。税制及び執行面の支援について、日本はグローバル・タックス・プログラム(GTP:Global Tax Program)、歳入動員支援信託基金(RMTF:Revenue Mobilization Thematic Fund)及び税務行政診断ツール(TADAT:Tax Administration Diagnostic Assessment Tool)に資金貢献するとともに、世銀グループ及びIMFも参加する税に関する協働のためのプラットフォーム(PCT:Platform for Collaboration on Tax)も支援しています。本プラットフォームの活用を通じて、技術支援に係る情報の共有や中期歳入戦略(MTRS:Medium-Term Revenue Strategy)の策定・実施を含め、世銀グループ及びIMF等の開発パートナーがPCTを通じてより効果的に協調し、限りある資源の効果を最大化することを期待します。
     最後に、公的及び民間の資金の出し手は、借入国の債務の持続可能性を念頭においた貸付を行うことが重要です。世銀・IMFには、債権者の貸付慣行のストックテイクや持続可能な貸付に関するベスト・プラクティスの提供など、知識面での貢献を期待します。
     
    (4)自然災害に対する強靭性の強化
     経済・社会に大きな損失をもたらす自然災害については、被害をできるかぎり予防し、損失を最小化していくことが必要です。こうした観点から、自然災害に対して強靭なインフラの整備を進めていくため、日本は、昨年12月より開始した日本・世銀防災共同プログラムのフェーズ2を通じ、東京防災ハブの機能を最大限活用しながら、途上国を支援してまいります。
     また、災害の発生に備え、Disaster Risk Financing and Insurance(DRFI)の活用を進めていくことが重要です。世銀グループは、これまでPCRAFIやCCRIFの設立・運営に貢献し、現在は、東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF:Southeast Asia Disaster Risk Insurance Facility)の立ち上げに向けて技術支援を提供しています。日本もこの取組を積極的に支援しており、昨年12月には、カンボジア・ラオス・ミャンマー・インドネシア・シンガポール・日本がSEADRIFの設立に関する覚書に署名したところです。SEADRIFの最初の成果であるラオス・ミャンマー向けのリスクプールは2019年中に稼働開始予定です。SEADRIFはASEAN+3全ての国に開かれた枠組みであり、他のASEAN+3メンバー国もSEADRIFに参加することを強く期待します。

     日本は、G20議長国として、上記の分野の開発効果を高めるための方策についての議論をリードしています。世銀グループが、6月のG20サミットの成果も踏まえながら、これらの開発課題を主流化していくことを期待します。

  4. IDA第19次増資
     春会合に合わせて開催される第一回増資会合を皮切りに、IDA19増資交渉が本格化します。IDA18が、5つの政策テーマのもと、これまで概ね順調に実施されていることを歓迎します。IDA19においては、これら政策テーマが継続される方向で議論が行われており、日本はこの方向性は支持します。同時に、IDAが、低所得国を取り巻く状況や開発戦略を巡る国際的な議論の動向を取り入れつつ、中所得国であってもドナーとしての一層の関与を求めながら、進化し続けることを強く期待します。
     こうした観点から、日本の開発プライオリティである質の高いインフラ投資、UHC及びそれを支える持続的なファイナンス、自然災害に対する強靭性、そして債務の持続可能性が、5つの政策テーマを補完・強化する取組みとして、IDA19に反映されるべきと考えます。このうち、債務の持続可能性については分野横断的な重要課題として提案されていることを歓迎します。その他3つについては、
    •  質の高いインフラ投資は、「Human Capital」と共に経済成長に重要な役割を果たすことから、分野横断的な重要課題として「Human Capital」と並ぶ位置づけを与えられるべきと考えます。
    • UHC及びそれを支える持続的なファイナンスは「Jobs and Economic Transformation(JET)」及び「Human Capital」において、保健危機への備えはIDA18同様「Governance and Institutions(GI)」において、それぞれpolicy commitmentsが設定されることを強く期待します。
    •  自然災害に対する強靭性は、「Climate Change」においてpolicy commitmentsが設定されることを求めます。
     日本は、こうした問題意識のもと、IDA19の増資交渉において建設的かつ積極的な役割を果たしていく考えです。

  5. 個別国における取組
    (1)ラカイン州情勢
     日本は、ラカイン州の難民問題について、「安全、自発的、尊厳ある(in a safe, voluntary and dignified manner)」難民帰還を重視しており、その解決に向けたミャンマー及びバングラデシュ両国の取組をサポートします。世銀グループが、難民問題解決・包摂的成長支援のため、ミャンマーとバングラデシュに対して、関与を続けていることを評価するとともに、引き続き両国において貢献することを期待します。

    (2)ヨルダン
     ヨルダンの5か年改革・成長マトリクスの策定に係る世銀の努力を評価します。日本は本マトリクスの実施を支援するため、新規支援4.3億ドルを含め、今後5年間で最大7.3億ドルの支援の実施にコミットしています。IMF支援プログラムの第2次レビューが早期に完了し、世銀及びIMFを中心とする国際社会によるヨルダンの持続的・包摂的な成長のために必要な支援が速やかに次のフェーズに進んでいくことを期待します。

  6. 結語
     日本は、マルパス新総裁が世銀グループの改革の議論を主導し、その着実な実施にコミットしていることを高く評価しており、資金面及び政策面のみならず、人的な貢献も積極的に行い、マルチの開発支援の中核機関である世銀グループを引き続き支援してまいります。

(以 上)