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第98回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成30年10月13日)

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  1. はじめに
     はじめに、インドネシア・ロンボク島及びスラウェシ島で発生した地震や津波により甚大な被害を受けた方々に、心からの哀悼の意と御見舞いを申し上げます。日本も、今夏様々な自然災害に見舞われました。キム総裁をはじめ、多くの方々からお見舞いの言葉をいただいたことに、心からの感謝を申し上げます。

  2. 世銀グループ増資
     世銀グループの増資ついては、今般、IBRD増資の総務決議が採択されたことを歓迎します。IFC増資の総務決議も、できるだけ早期に採択されることを期待します。
     総務決議は、世銀グループの改革のスタート地点に過ぎません。増資パッケージで合意された様々な改革を着実に実施していくことが必要です。
     こうした改革のうち、金利の引上げが今世銀年度から実施に移されたこと、国別戦略のガイダンスノートが増資合意に沿って改訂されたことを歓迎します。今後は、当該ガイダンスノートに基づき、卒業基準に関するシステマティックな分析・評価を国別戦略で行うこと、卒業基準所得以上国に対する融資配分を縮減していくこと、支援分野を卒業に必要な政策・制度強化や国際公共財に絞り込んでいくことなどを、増資合意に沿って着実に実施していくことを求めます。

  3. 日本が世銀グループと連携して取り組む途上国支援
    (1)質の高いインフラ
     質の高いインフラ投資は、それが開放的で万人が使用できることにより、民間投資促進、雇用創出、能力構築の好循環をもたらし、経済発展を強力に推し進めます。日本がかねてから主張してきた質の高いインフラ投資の重要性は、国際社会において広く共有されていますが、次に考えるべきことは、何が「質の高いインフラ投資」であるかを明らかにするとともに、質の高いインフラ投資に係る考え方を具体的にし、よりアップグレードしていくことです。その際、経済の連結性がますます高まっている今、人々の生活の質を向上させ、経済社会の持続的かつ包摂的な成長に真に寄与する観点から、ガバナンスや開放性をハイライトしていくことが重要です。また、こういった考え方を如何に実際に実施していくかということも必要な課題です。
     本年9月、日本は、世銀グループ・OECDと共に、東京で質の高いインフラ投資に係るセミナーを開催しました。同セミナーでは、質の高いインフラ投資が長期的な民間投資を促進し、インフラの需給ギャップを縮小するうえで果たす重要な役割について、参加者から賛意が示されました。また、インフラの運用・維持管理の重要性等、質の高いインフラ投資の構成要素や期待される効果について掘り下げた議論を行いました。日本は、同セミナーの成果も活用しながら、他の国々や世銀グループをはじめとする国際機関とともに「質の高いインフラ投資」に係る議論を進めてまいります。

    (2)Human Capital Projectと国際保健
     保健や教育などへの人的資本に対する投資は、その国の生産性を高め、長期的な経済成長に寄与するものであり、日本も重点的に支援を行ってきました。今回のバリ総会において、世銀グループのHuman Capital Projectが始動したことを歓迎します。
     人的資本の蓄積を進めるうえでは、その基盤としてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)の推進が不可欠であり、UHC達成に向けた持続的なファイナンスのために は財政当局の関与が必要です。その観点から、日本は、4月の春会合において、世銀、WHOとともに 各国財務大臣の参加を得てUHC フラッグシップ・イベントを開催し、経済発展の早期段階におけるUHC達成の重要性や、持続的な保健財政システム構築の必要性を確認しました。
     蓄積された人的資本を守るという観点からは、保健危機に対する備えが不可欠です。本年5月には、コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱への対応として、日本が他ドナーと共に立上げに貢献したパンデミック緊急ファシリティ(PEF:Pandemic Emergency Financing Facility)より、設立以来初となる1,200万ドルの資金拠出が承認され、エボラ出血熱の拡大の抑制につながりました。今後は、危機発生後の迅速な回復を助けるとともに、更なる人命と社会的損失の緩和につながるよう、同ファシリティの予防機能の強化を検討することが重要です。
     IDA第18次増資においては、日本の主張に基づき、保健危機対応のためのガバナンス強化の文脈で感染症対応能力の強化が政策コミットメントの一つとして位置づけられていますが、IDA第19次増資 においては、UHCの導入や持続可能な保健財政システムの構築を含む保健分野への支援が一層強調されるべきであると考えます。

    (3)自然災害に対する強靭性の強化
     自然災害を含む様々な危機の予防・準備に焦点を当てたプラットフォームとして、世界危機リスクプラットフォーム(GCRP:Global Crisis Risk Platform)が本格的に始動したことを歓迎します。
     日本はこれまで世銀グループと共に自然災害の予防・準備のための取組を積極的に支援してきました。2018年10月には世銀・日本共同防災プログラムのフェーズ2を開始し、フェーズ1から得られた教訓や日本の官民が有する防災の知見を活かし、自然災害に対して強靭なインフラを整備するための取組を強化していく予定です。
     日本は、世銀が技術支援を提供する東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF:Southeast Asia Disaster Risk Insurance Facility)を支援しています。その最初の成果であるラオス・ミャンマー向けの地域災害リスク保険が早期に稼働するとともに、他のASEAN+3メンバー国がSEADRIFに参加することを期待します。

    (4)債務透明性・持続可能性の向上
     近年一部の低所得国・新興国においては、非伝統的な貸し手からの非譲許的な借入や保証付・担保付融資による偶発債務の急速な増大により債務が持続困難となりかねない状況となっており、債務の透明性・持続可能性確保のための取組は喫緊の課題となっています。
     債務の透明性・持続可能性を確保するためには、債務国と新興債権国を含む公的及び民間の債権者の双方が、協調して行動することが必要です。特に、民間債権者も、債務国の債務の持続可能性を念頭においた貸出行動を行うことが重要だと考えます。
     債務の透明性に支えられ、債務の持続可能性を確保することは、投資資金の流入をもたらし、途上国の持続的な成長を支える土台となるものであり、世銀とIMF のこれまでの貢献を多とするとともに、この分野での着実な成果を得るためのさらなる取組を求めます。具体的には、
    • 第一に、適切な債務管理に不可欠な統計データの整備及び途上国の債務管理能力の構築支援のため、「決定のためのデータ基金(D4D:Data for Decisions Fund)」の活用や改訂「低所得国向け債務持続可能性フレームワーク(LIC-DSF:Debt Sustainability Framework for Low- Income Countries)」を適切に運用するための技術支援の強化を求めます。
    • 第二に、借り手・貸し手双方に対し、パリフォーラムやMultilateral Development Bank Forumなどにおけるアウトリーチを通じ、持続可能な貸付けについての理解の促進を図ることが重要であることを指摘します。
    • 第三に、IDAの非譲許的借入政策(NCBP:Non-concessional Borrowing Policy)およびIMFの債務上限政策(DLP:Debt Limit Policy)について、債務の透明性向上・持続可能性の強化に着実につながるような見直しを期待します。
     また、債務持続可能性を長期的な視点で考える場合、国内資金動員(DRM:Domestic Resource Mobilization)の強化を通じ、財政のレジリエンスを向上させていくことが重要です。日本が資金貢献しているグローバル・タックス・プログラム(GTP:Global Tax Program)、税務行政診断ツール(TADAT: Tax Administration Diagnostic Assessment Tool)及び歳入動員支援信託基金(RMTF : Revenue Mobilization Trust Fund)による技術支援の実施や、税に関する協働のためのプラットフォーム (Platform for Collaboration on Tax)を通じたドナー・国際機関間の連携により、世銀グループ及びIMFが効果的に途上国のDRM強化を行っていくことを期待します。

    (5)技術革新と開発・成長
     革新的技術(Disruptive Technologies)の進展は、経済発展の新たな「機会」と、仕事のあり方(nature of work)の変容・格差の拡大といった「リスク」双方をもたらしうるものであり、各国政府には、「リスク」を最小化しつつ、「機会」を最大限活用するための施策が求められています。特に途上国では、 政府や企業において、革新的技術を自国における開発や成長に結びつけていくための能力に課題がある、との指摘があり、こうした課題に関する現状分析や、それを踏まえたソリューションを検討していくことが重要です。
     長期的に見れば、日本をはじめとした先進国のみならず、アジア等一部新興国でも今後少子高齢化が進行し、労働力人口の減少という供給制約をもたらす可能性がある中で、技術革新は、人材を労働 集約的な分野から解放し、より高付加価値の分野に集中させることで、持続的な経済成長を実現する起爆剤となりうるものです。こうした観点から、少子高齢化の先進国(front runner)である日本における 革新的技術への対応は、必ず途上国にも有益な教訓になると信じています。日本は、このような長期的視野に立ち、開発支援において革新的技術を主流化する世銀グループの取組みに貢献していきたいと考えています。

    (6)環境
     地球環境問題、とりわけ生物多様性保護、化学物質対策、気候変動対応、砂漠化防止、国際水域の汚染対策といったGEFの支援分野は、いずれも重要かつ喫緊の対応を要する課題です。
     本年6月のGEF総会においてGEFの第7次増資が実質的に過去最大の規模で決着したことを歓迎し、困難な交渉を纏めあげた石井CEOの尽力に敬意を表します。
     日本としては、地球環境問題の取組の進展を図るべく、関係諸国・関係機関と連携し、様々な形で貢 献してまいります。

    (7)民間資金動員
     SDGsの達成に必要な巨額の資金を賄っていくためには、民間資金を動員していくことが必要不可欠 です。世銀グループにおいては、IFCやMIGAが民間資金の動員に主導的な役割を果たしています。 今年設立30周年を迎えるMIGAは、政治リスクに対する保証を提供するというユニークなマンデートのもと、途上国への資金の呼び込みに大きく貢献してきました。今後も本田長官のリーダーシップのもと、地域開発金融機関とも連携しつつ、民間資金動員の強化に向けて更なる役割を果たしていくことを期待します。

    (8)ラカイン州情勢
     日本は、ラカイン州の難民問題解決に向けたミャンマー及びバングラデシュ両国の取組をサポートします。日本は、避難民及びホストコミュニティーの生活環境改善を支援すると同時に、避難民の早期帰還と再定住に向けたミャンマー政府の努力を支持しています。世銀グループが、紛争・脆弱国であるミャンマーと難民のホスト国であるバングラデシュに対して、難民問題の解決と包摂的な成長を支援するための関与を続けていくことを期待します。

  4. 結語
     これまでの合同開発委員会におけるスリ・ムリヤニ議長の類稀なるリーダーシップに心からの敬意を表するとともに、オフォリ=アッタ・ガーナ財務大臣が新たに議長に就任されることを歓迎します。
     マルチラテラリズムを根幹とする世界銀行グループが、SDGsの達成に向けて、ドナー国・受益国・他のMDBs・民間セクターと協調して、このような取組みを実施するためのリソースを動員していくことを期待します。日本は、世銀グループに対して資金面及び政策面のみならず、人的な貢献も積極的に行い、今後とも、他の加盟国とともに、貴重な国際公共財たる世銀グループを支援してまいります。

(以 上)