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第97回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成30年4月21日)

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  1. はじめに
     今般、世銀グループの増資パッケージの合意が得られたことを歓迎します。日本は、世銀グループが資金基盤の強化とガバナンスの改革を通じ、マルチの開発支援における中核的な機関として、今後とも一層主導的な役割を果たしていくことを期待します。インフラや国際保健、環境といった分野ではこれまでの取組みを更に強化・深化させるとともに、防災や債務持続性などの新たな開発課題にも積極的に対応していくことが求められます。

  2. 世銀グループの政策アジェンダ
    (1)質の高いインフラ
     質の高いインフラは、民間の経済活動の基盤となり、新産業の育成や新たな雇用の創出を通じ、自律的な成長を促します。日本は、これまでも、質の高いインフラ整備を推進するために様々な取組みを行ってきており、世銀においては、「質の高いインフラパートナーシップ基金」を通じ、これまで24件890万ドルのプロジェクト組成支援を行い、これらは計52億ドルの世銀のプロジェクトに結実しています。現在、G20において、インフラ投資のための民間資金動員の議論が行われていますが、民間資金を効果的に動員していくためには、投資対象であるインフラが質の高いものであることが重要です。こうした観点から、日本は、これまでの質の高いインフラの取組みを踏まえ、G20議長国アルゼンチン、他のG20メンバー、世銀、その他国際機関と積極的に協力してまいります。
     インフラ投資が真に途上国の経済成長に資するためには、開放性、透明性、経済性、財政の健全性、技術・ノウハウの現地への移転などが確保されていなければなりません。日本は、世銀グループやその他国際機関と協力しながら、こうした国際的スタンダードに基づくインフラ投資を推進し、成長のポテンシャルが高いインド洋・太平洋を囲む東南アジア、南アジア、東アフリカ等の地域の自由で開かれた経済発展に貢献してまいります。

    (2)国際保健
     「だれ一人取り残されない社会」という持続可能な開発目標(SDGs)の理念を実現する上で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage)の推進は、欠くべからざる重要な要素です。UHC推進に向けた世銀のリーダーシップと多大なる貢献を高く評価します。また、世銀のHuman Capital Projectにおいて、保健や教育が経済成長に果たす役割について分析が進められていることを歓迎し、今年の10月の世銀・IMF総会で成果が公表されることを期待しています。
     日本は、昨年12月、世銀・WHO等とともに各国首脳級・閣僚級の参加者や国際機関のトップ等を多数招き、東京でUHCフォーラム2017を開催しました。フォーラムでは、グローバルなリーダーシップの強化、国際機関の間の緊密な協調、国レベルでの連携体制の構築、モニタリング実施の重要性について確認し、こうした成果を盛り込んだ東京宣言を採択しました。また、UHCフォーラムにおいて、日本は、Global Financing Facility(GFF)信託基金への新規拠出を表明するとともに、IDA資金の国際保健分野への一層の動員を要請したところです。世銀がGFFも活用した保健分野への資金動員を促進するためのガイダンスノートを作成したことを歓迎します。
     UHCフォーラムにおいて、UHC達成のために財務大臣が果たす役割の重要性が確認されたことを受け、日本は、今回の春会合において、世銀、WHOと共にUHC財務大臣会合を開催しました。UHCの財源確保に向けて、各国財務大臣が保健大臣と連携して健全で持続可能な保健財政システムを確立していくことを期待します。

    (3)防災・リスク対応
    (防災主流化)
     日本と世銀グループは、開発支援における防災の主流化に取り組んでまいりました。今般、3回目の「防災主流化に関する報告書」がまとめられ、世銀の支援において防災の主流化が着実に進展していることを歓迎します。2014年に立ち上げられた世銀・日本防災共同プログラムは、5年で100百万ドルの資金支援を行い、世銀東京防災ハブの設立などを通じ、こうした防災の主流化に大きな役割を果たしてまいりました。日本は、2019年以降も引き続き防災の主流化を推進するため、同プログラムの第2フェーズを立ち上げ、5年間で100百万ドルの貢献を行うことを、ここに表明します。第2フェーズにおいては、特に災害に強いインフラ整備の強化に取り組んでまいります。

    (災害リスク保険(SEADRIF))
     本年5月のASEAN+3財務大臣・中銀総裁会合おいて、カンボジア・ラオス・ミャンマーとのSEADRIF CATリスクプールの設立、及びSEADRIFプラットフォームの枠組みについて合意すべく、作業が進められているところです。
     本枠組みは、地域のfinancial resilienceを高めるために有用であるだけでなく、中長期的には災害リスク保険を含めた民間保険市場育成に寄与するもので、事務局である世銀の協力を高く評価します。今後は、大臣レベルの承認に基づき、SEADRIF CATリスクプールを早期に稼働させると同時に、SEADRIFプラットフォームの取組みのASEAN全体への拡大に取り組んでまいります。

    (4)ジェンダー
     今般の開発委員会で世銀理事会におけるジェンダー多様化に係る報告がなされたことを歓迎し、多様化に向けた世銀および各国理事室の努力を評価します。日本は、国内外で「女性が輝く社会」の実現を目指しており、理事会メンバーにおけるジェンダー多様性の向上の重要性を理解するとともに、世銀の女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi:Women Entrepreneurs Finance Initiative)における、最初の案件承認(3件、150百万ドル)などの進捗を歓迎します。

    (5)環境
     深刻化する地球環境問題は、途上国の持続的な開発に向けた喫緊の課題です。地球環境ファシリティ(GEF)は、長期に亘り途上国における環境保全の取り組みに対する革新的かつ効果的な支援を行っています。その役割のグローバルな重要性に鑑みれば、国際社会全体でGEFを支えていく必要があります。特に、現在行われているGEF第7次増資交渉が成功裏に妥結し、十分な資金が確保されることが重要です。日本は、過去6年に亘る石井CEOのリーダーシップを高く評価するとともに、水俣条約に基づく水銀対策等、重要な政策分野に関する支援を強化するとのGEF7の方針を支持します。日本として、各国が足並みを揃えて増資の成功に向けた努力を行うことを前提に、過去最高の拠出を行った前回増資をドル建てで上回る資金貢献を行う所存です。全てのドナー国、特に先進国が、十分な資金貢献を行うことを慫慂します。

    (6)債務持続性
     一部の途上国において、債務破綻のリスクが高まっています。借り手側・貸し手側双方における債務管理能力の強化を通じ、債務の透明性の向上や債務持続性の確保に向けた一層の努力が必要であり、世銀の積極的な関与を期待します。
     借り手側においては、バイ・マルチの借入に係るデータベースの整備、低所得国自身が債務持続可能性を確保できるような歳出管理・税収増加等の能力開発が急務であると考えます。世銀グループが、こうした能力開発のためのTAを強化していくことを支持します。税収増加の観点では、日本は、途上国における国内資金動員の支援強化を目的とした「グローバル・タックス・プログラム」への資金貢献を決定しました。また、世銀グループが事務局機能を提供する「税に関する協働のためのプラットフォーム」にも、プラットフォーム参加機関が実施する途上国における税の能力構築に向けたTAの効果を最大化するために、資金貢献することとしています。プラットフォームには、TA情報の共有・提供や国内資金動員にとって重要な機能を果たすMedium-Term Revenue Strategy を含め、開発パートナー間の協調をより効果的に行うよう期待します。
     貸し手側においては、日本は、より多くの新興ドナー国がパリクラブに参加することを慫慂します。また、民間債権者が、借入国の債務の透明性と債務持続性の向上に向けて、公的セクターと更に協調的に取り組んでいくことを期待します。
     2017年3月にG20より歓迎された「持続可能な貸付に係る実務指針」(Sustainable Financing Guidelines)の遵守は、ただいま述べた各種の取組みを実行していくための極めて重要なステップであることを強調したいと思います。

    (7)民間資金動員
     SDGsの達成に必要な巨額の資金を賄っていくためには、民間資金を動員していくことが必要不可欠です。世銀グループにおいては、IFCやMIGAが民間資金の動員に主導的な役割を果たしています。今年設立30周年を迎えるMIGAは、政治リスクに対する保証を提供するというユニークなマンデートのもと、途上国への資金の呼び込みに大きく貢献してきました。本田長官のリーダーシップのもと、MIGAが引き続き民間資金の動員に積極的に取り組んでいくことを期待します。

    (8)ミャンマー
     日本は、ミャンマーの民主的な国造りを一貫して支援しており、ラカイン州の平和と和解に向けたミャンマー政府の努力を支持しています。世銀グループが、FCV国であるミャンマーに対して、包摂的な成長を支援するための関与を続けていくことを期待します。

  3. 世銀グループのガバナンス・資本基盤
     日本は、世銀グループのガバナンス改革・資本基盤強化に係る議論の開始当初より、いわゆる2 by 2アプローチのもと、一貫して議論を主導してきました。今般、両機関の一般増資・選択増資が合意に至ったことを喜ばしく思います。
     今回の増資パッケージ合意には、将来に向けた重要な意義が含まれています。
     1つ目は、SDGsの達成のために必要な膨大な開発資金の需要を抱える中で、世銀グループの限られた資源を効果的に活用するための改革の道筋がつけられたことです。所得が高く、国際金融市場へのアクセスのある国への支援について、量を絞りつつ国際公共財等真に必要な分野に限定し、これを通じ、より貧しい国に支援を重点化していくことに合意できたことは大きな成果です。
     2つ目は、IFCの大幅な資本基盤の増強を通じて、同機関が民間資金動員においてより一層革新的かつ開発インパクトの大きな役割を果たしていくことを可能にしたことです。
     3つ目は、2010年に始まる世銀グループのガバナンス改革が、厳しい交渉を経て、マルチラテラリズムの精神のもと一歩前進したことです。今回のガバナンス改革の議論においては、株主が経済力にふさわしい責任を果たして行くことの重要性が改めて認識されました。一定の成長を遂げた国が、借り手から貸し手へと移行(transform)していくこと、とりわけ、IDAを含む世銀グループの開発ミッションに対し、経済力に見合った積極的な貢献を行っていくことを強く期待します。

  4. 結語
     国際的な開発援助の提供者は、いまや様々な財団、フィランソロピー、民間セクターなど多岐に亘りますが、この70年、国際的な開発援助協調の中核を担ってきた世銀グループが、人材、知見、能力、資金動員力いずれの面においても、引続きそのリーダーとしての役割を果たしていくことを期待します。
     また、多岐にわたる開発課題に対処していくためには、世銀グループの人的資源の多様化が必要です。日本は、世銀グループに対して資金面及び政策面のみならず、人的な貢献も積極的に行い、今後とも、他の加盟国とともに、貴重な国際公共財たる世銀グループを支援してまいります。

(以 上)