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第94回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成28年10月8日)

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  1. はじめに

     まず、キム総裁の再選を歓迎します。2012年の総裁就任以降、キム総裁が、「極度の貧困の撲滅」と「繁栄の共有」という二大目標を掲げ、卓越したリーダーシップを発揮して多様な開発課題に対処してこられたことを日本は高く評価しており、今後とも、キム総裁が指導する世界銀行と協力して、途上国支援に取り組む考えです。
     また、最近まで、世界銀行の専務理事・最高執行責任者として、世銀の業務を強力に推進されてきたスリ・ムルヤニ大臣が、新たに合同開発委員会の議長に就任されたことを歓迎します。
     以下、今般の開発委員会のアジェンダである、Forward Lookと動的計算式について日本の考えを述べるとともに、日本が世銀グループと連携して取り組む途上国支援の戦略的方向性について申し上げたいと思います。

  2. Forward Look

     昨年の総会以降の精力的な議論を経て、今般、世界銀行グループの役割に関する中長期的なビジョンを示すForward Lookが策定されたことを歓迎します。こうした取り組みを通じ、株主と世銀マネジメントがビジョンを共有することは、世銀グループが2030アジェンダに向けて効果的に貢献を果たす上で、非常に有意義と考えます。
     Forward Lookに関して、3点、日本の考えを申し上げます。
     第一に、世界は、自然災害や難民、パンデミックといった多様な危機に直面しており、これらの危機の発生頻度、強度、発生期間は増加し、長年にわたる開発効果を脅かしています。こうした危機に対処するには、危機への予防及び備え、危機発生時の対応といった危機管理の各段階において適切な支援を行うことが重要と考えており、日本はこれまで、防災の主流化やパンデミックへの予防・備えの強化等に取り組んできました。
     世界銀行が先般立ち上げたGlobal Crisis Response Platform (GCRP)は、まさに、日本が推進してきた考え方に沿って、世銀グループが有する危機関連ツールを集結させたものであり、その創設を歓迎します。また、Forward Lookにおいて、GCRPも活用しつつ、危機への予防及び備え、危機発生時の対応に包括的にアプローチすることの重要性が示されたことを高く評価します。
     第二に、開発のための限られた資金については、深刻な貧困問題に直面し、他の資金源へのアクセスが限られている国に重点配分することが、開発効果を最大化する上で重要です。こうした考え方の下、日本はIDAに対して積極的な貢献を行ってきました。今般のForward Lookでは、IBRDが低中所得国向けの資金配分を強化する方向性が示されたことを歓迎します。一定の資金調達能力を有する高中所得国についても、世銀が提供する知識やアドバイスは有益であることから、IBRDが関与を継続することは適切と考えます。他方、限られた資金の有効活用という観点から、高中所得国については、支援対象を環境問題など外部性のある公共財に絞り込むことや、貸出条件を厳格化することを検討することが必要と考えます。
     第三に、IBRDが十分な財務基盤を確保することは重要であり、日本は第二の出資国としてこれに貢献をしています。
     IBRDが今後とも、開発資金の融資や危機対応、国際公共財の提供といった役割を適切に発揮するためには、引き続き、強固な財務基盤を確保することが欠かせません。そのためには、まずは、収益構造の改善策を検討することが必要と考えており、所得水準に応じた金利引き上げなどの措置を検討すべきです。IBRDの増資については、IBRDに求められる役割や収益改善策の効果などを踏まえつつ、検討することが必要と考えております。

  3. 動的計算式
         
     昨年策定されたロードマップに沿って、今般、動的計算式が合意されたことを歓迎します。これは間違いなく重要な前進です。他方、投票権見直しにおいて、動的計算式は出発点に過ぎず、合意された計算式をどのように活用し、選択的増資を実施するのかという、より重要な課題が残されていることを忘れてはいけません。
     ある一国のシェア増加は他国のシェアを希薄化させることから、投票権の再調整は、非常に幅広い支持が得られるものでない限り、前進させることができません。
     こうした観点から、日本としては、急激なシェアの変動を、増加・減少の両方向について、回避することが重要と考えます。このための具体的な手段として、日本は、シェアの急増にキャップをはめるための、principle-based forbearance、シェアの急減を回避するための希薄化の制限、を実施することが重要と考えます。また、DTC全体のシェアを下げないことを実現するため、シェアを減じるDTCへの株式の追加配分も適切と考えます。
     増資の合意期限である来年秋の総会に向け、日本としては、以上の観点から、建設的に議論に関与していく考えです。

  4. 日本が世銀グループと連携して取り組む途上国支援

    (1)広範な危機への予防・備え、対応

     自然災害やパンデミック、難民等の危機は、人々の生命・健康、そして経済活動にも多大なる被害をもたらします。日本は、これら様々な危機への予防・備え、対応を、開発上の最重要課題の一つと位置付け、世銀と連携して途上国支援に取り組んでいます。

    <防災>
     防災については、IMF・世銀東京総会で、開発における防災主流化の重要性を確認した2012年以降、防災分野での貸付が増大し、防災の主流化が着実に進展していることを歓迎します。こうした流れが途切れることがないよう、世銀グループに対し、防災の重要性に関する世銀スタッフや途上国の認識を引き続き高めるよう求めるとともに、日本としても、日本=世銀防災共同プログラムを通じて、世銀東京防災ハブと連携して防災主流化に向けた努力を継続していきます。

    <国際保健>
     国際保健については、日本が議長を務めた本年5月のG7伊勢志摩サミットにおいて、「国際保健のための伊勢志摩ビジョン」を策定し、公衆衛生危機への対応の強化、危機への予防・備えに資するUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の推進に向けた具体的な取組みの方向性を取りまとめました。
     その中でも危機対応については、世銀が設立表明した公衆衛生危機発生時における迅速な資金供給メカニズムであるPEFに対して、日本は、本年5月に世界に先駆けて、3年間で5000万ドルの資金拠出を表明しました。今後、これを着実に実施していく考えです。世銀に対しては、PEFの円滑かつ迅速な立ち上げへの更なる取り組みを期待します。また、危機対応については国際社会全体で取り組んでいくことが不可欠であり、各国からのPEFへの資金的サポートを期待します。
     危機時の対応に加えて、平時からの危機への予防・備えも重要であり、そのためには保健システムの強化をグローバルに進めることが必要です。UHCの推進はこれに資するものであり、本年8月に開催したTICADYにおいて、世銀が、アフリカでのUHC推進に向けた政策フレームワーク「UHC in Africa」を発表したことを歓迎します。今後は、UHCの進捗状況を検証することが重要と考えており、来年、日本は世銀・WHOとともに、UHCの進捗に係るハイレベルのモニタリング会合を東京で開催します。

    <難民>
     難民問題は、大きな精神的・身体的負担を難民に与えるだけでなく、難民を受け入れている周辺国・地域に厳しい財政的、政治的、社会的負担を課しています。世銀グループには、緊急的な人道支援を中心とする国連機関と連携し、難民の自立支援や受け入れ国のインフラ整備等の開発支援に貢献する役割を期待します。
     こうした中、今般、世銀グループが、難民を受け入れている国々をグローバルに支援する観点から、「グローバル譲許的資金ファシリティ(Global Concessional Financing Facility:GCFF)」を立ち上げたことを評価します。
     世銀の譲許的資金ファシリティに対しては、本年4月、難民問題への対応の重要性に鑑み、日本として、今後5年間で総額5,000万ドルのグラント及び、最大1,000億円(約10億ドル)の円借款による貢献の用意があることを表明し、既に1,000万ドルのグラントを拠出したところです。今般、GCFFの立ち上げに伴い、グラントによる協力6,000万ドルを追加し、総額1億ドル規模の協力を行うことを表明します。

    (2)質の高いインフラ投資

     質の高いインフラ投資は、途上国の経済成長や包摂的な発展の観点から極めて重要です。G7伊勢志摩サミットでは、「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」を採択し、ライフサイクルコスト、安全性、自然災害に対する強靭性、社会環境基準、人材育成とノウハウの移転等に配慮した「質の高いインフラ投資」を推進することを確認するとともに、世界銀行を含むMDBsに対し、同原則に沿ってインフラ投資を行うよう奨励しました。
     こうした中、本年7月、世界銀行がValue for Moneyを考慮した新たな調達制度を導入したことを歓迎します。日本は、世界銀行に「質の高いインフラパートナーシップ基金」を設立し、世銀による質の高いインフラ案件の組成を案件の準備から実施に至る各段階で支援することとしています。
     また、質の高いインフラを促進するためには、途上国の政府関係者や世銀スタッフに対し、知見や教訓を発信することも重要です。東京開発ラーニングセンター(TDLC)に対しては、上記パートナーシップ基金を通じて蓄積された知見の集約・発信等を積極的に実施することを期待します。
     この他、TDLCでは、途上国の抱える都市問題等の解決のため、日本の都市と連携する「都市パートナーシップ・プログラム」を開始したところです。震災の教訓を踏まえたまちづくりや環境に配慮したまちづくりなど、日本の都市が有するグッドプラクティスが、途上国の都市問題の解決に活かされることを期待します。

    (3)IDA18

     現在交渉中のIDA18において、市場借入を新たに導入することを高く評価します。市場借入は、ドナー資金の一層の効率的な活用を可能とするイノベ―ティブかつ斬新(transformative)な金融手法であり、世界の多様な開発課題に対処するための追加的資金の動員を可能にするものであるからです。加えて、自然災害や公衆衛生危機への予防・備えの強化をIDAの重点政策とする方向で議論されていることを歓迎します。
     今般、3か国についてIDAからの卒業が提案されております。IDAからの卒業は、それぞれの国の経済発展の成果であることから、円滑な卒業を支援することで、卒業国自身が卒業段階に達したことを祝福できるようにすることが重要です。このためには、卒業国がfiscal cliffに直面し、IDA国に戻ることのないよう、IBRDの貸付能力の制約も踏まえた、実践的かつ十分な移行支援を講ずることが必要と考えます。
     また、世銀グループが、“One World Bank Group”としてsolidarityを発揮し、全体として適切な資金配分を行う上で、IBRD・IFCからIDAへの純益移転は極めて重要と考えます。各機関の財務状況を踏まえつつ、世銀グループ全体でバランスのとれた結論とすることを求めます。
     日本は、低所得国支援に果たすIDAの重要性に鑑み、引き続き相応の貢献をする考えです。

  5. 結語

     2030年までの15年間、世界は多様で複雑な開発課題に直面すると見込まれます。こうした中、世銀グループが、様々なドナーや他の国際機関、民間セクターと連携を深めつつ、各国レベルの課題や地球規模の課題に解決策を提示するため、主導的な役割を果たしていくことを期待します。
     また、こうした多岐にわたる課題に対処していくためには世銀グループの人的資源を多様化することも欠かせません。日本としては、世銀グループに対して資金面及び政策面のみならず、人的な貢献も積極的に行い、世界の持続的な経済成長と貧困削減に貢献していきます。


(以 上)