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第93回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成28年4月16日)

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  1. はじめに

     難民問題は、現在世界が直面する重大な課題の一つです。2015年末には、世界では、約2,000万人もの難民が存在し、その大部分は周辺の途上国への避難を余儀なくされていました。国際社会は英知を結集し、連携を強め、解決に当たっています。難民問題は、紛争や政情不安等の複雑な問題が根底にあるため、短期的・長期的の両視点に立って取り組む必要があります。難民問題は、大きな精神的・身体的脆弱性を難民に与えるだけでなく、難民を受け入れている周辺国・地域に厳しい財政的、政治的、社会的負担を課しています。国際社会は、難民問題が開発に与える影響に鑑み、安定を確保し、新たな危機の発生を防がねばなりません。

     この2年間を振り返るだけでも、中東の紛争のみならず、西アフリカのエボラ出血熱、ネパールの震災や太平洋島嶼国のハリケーンなどの危機に国際社会は対応してきました。このような多様な危機に途上国が適切に対処するため、日本は、世銀グループに対し、迅速な危機対応と平時の準備・予防を組み合わせた包括的なリスク管理システムの強化に貢献することを求めます。

     また、世界経済が変動する中、途上国が包摂的・持続可能・強靭な成長を実現することが重要です。質の高いインフラ投資は、ライフサイクルコスト、自然災害に対する強靭性、ノウハウの移転等を十分に考慮しており、途上国にとって有益なため、世銀グループは、開発パートナーと連携しつつ、質の高いインフラを促進する必要があります。

  2. 難民問題に対する世銀グループの役割と日本の貢献

     シリア難民への対応は、国際社会の大きな課題になっており、世銀グループが開発機関として役割を果たしていることを、日本は評価しています。世銀グループには、緊急的な人道支援を中心とする国連機関と連携し、中長期的な開発支援に貢献する役割を期待します。

     難民問題は、事後の短期的な対応だけでなく、予防や備えの面からも対処すべきです。世銀グループが、カントリー・パートナーシップ・フレームワーク(CPF)に基づき、脆弱性緩和の支援を強化し、所得格差、失業等を含め、難民問題を包括的に解決する姿勢を支持します。さらに、将来、難民が母国に帰還した後、母国の再建を担えるように人材育成することが重要です。日本は、世銀グループが生活環境の整備のみならず、女性や若者も含めた難民の教育支援、職業訓練、雇用支援などを通し、成果を出していくことを期待します。

     世銀グループが、シリア難民を受け入れているレバノンやヨルダンを支援するため、中東・北アフリカ(MENA)資金イニシアティブをリードしてきたことを、日本は高く評価しており、MENA資金イニシアティブの譲許的資金ファシリティ(Concessional Financing Facility)に対し、今後5年間で総額5,000万ドルの資金拠出及び、最大1,000億円(約9億ドル)の円借款による貢献の用意があることを表明します。世銀グループが、ステークホルダーの英知を結集し、資金を有効に活用することで、着実な成果を上げることを期待します。

     また、世銀グループと協働した日本のMENA支援としては、国際協力機構(JICA)を通じて、MENA地域の雇用創出支援のため、湾岸諸国と協力し、IFCの中東・北アフリカ支援ファンドに3,000万ドルの出資を実施します。


  3. 自然災害、パンデミックへの対応・備え・予防

     難民問題に加え、自然災害やパンデミック等、開発目標の達成を損なう、他の主要な危機も存在します。こうした危機に対処するためには、危機予防及び準備と、危機発生時の対応とを組み合わせた包括的なリスク管理メカニズムが必要です。危機への予防・備えは、危機発生時の人的・社会的損失を軽減し、速やかな復旧・復興に貢献するという意味で費用対効果が高いため、経済発展のあらゆる段階で重視すべきです。また、途上国にとって、迅速な状況把握と封じ込めを含めた危機対応メカニズムを改善していくことも必要です。

    (1) 防災

     途上国における急激な都市化の進展や、気候変動による自然災害の頻発・深刻化等により、地震、津波、サイクロン、洪水などの自然災害による損失は増加し続けると予想されています。自然災害により失われる人命の大部分は防災対策が十分でない低・中所得国におけるものであり、大規模な自然災害は、それまでの開発の成果を一瞬にして奪います。
     今般、開発委員会に提出された防災主流化に関する報告書では、IMF・世銀東京総会で、開発における防災主流化の重要性を確認した2012年以降、防災分野での貸付が増大し、防災の主流化が着実に進展していることが示されました。防災の主流化は、IDA17次増資において気候変動と防災が重点分野となり、IDAが途上国のCPFを策定する際や、新たな案件を組成する際、気候上及び自然災害上のリスクが考慮されるようになったことで推進されました。日本は、世銀グループに対し、災害リスク管理への事前投資の重要性に関する、世銀スタッフや途上国の認識を高めることを期待するとともに、2年毎の防災主流化に関する報告を継続することを求めます。日本としても、日本=世銀防災共同プログラムを通じて、世銀東京防災ハブと連携して防災主流化に向けた努力を継続していきます。

    (2) パンデミックへの備え・予防・対応

     西アフリカでのエボラ出血熱流行のような悲劇を二度と繰り返さないため、国際社会は、健康危機に対応する体制強化と、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の実現に向けた平時からの保健システム強化に、同時に取り組む必要があります。危機対応の強化としては、IDAの危機対応枠の適用基準に従来の経済危機と自然災害に加え、健康危機を明確に位置づけたことを日本は高く評価しています。また、キム総裁も指摘しているとおり、エボラの教訓に照らせば、パンデミック発生時に迅速かつ効率的に資金を動員できる仕組みが、被害拡大を防ぐ上で重要です。世銀グループが現在、G7伊勢志摩サミットに向けて最終化を進めているパンデミック緊急ファシリティ(PEF)は、民間の保険メカニズムを活用しながらこれを実現するものです。日本は、PEFの設立を強く支持します。
     このような危機対応の強化に加え、国際社会は、パンデミックに対する準備・備えを強化する資金メカニズムを構築することが必要です。世銀グループ、特にIDAは、その方策として、パンデミックの備えと予防についても自然災害に対する方策と同様に、各国のCPFに盛り込み、結果の達成を明確な指標に基づくモニタリングによって担保していくという保健システム強化に向けたインセンティブメカニズムを設けることが必要です。さらに、途上国が如何に政策を立案し、実施すべきか伝えるため、能力構築の努力の一層の強化が必要です。


  4. 包摂的・持続可能・強靭な成長の礎―質の高いインフラ投資と国内資金動員の強化

     途上国が直面する危機は紛争、災害、及び感染症といった急性の危機だけではありません。例えば、原油等のコモディティに依存している低所得国は、常に国際市況に脆弱な経常収支や財政収支を抱えています。また、多くの途上国は、生産性や生活水準の向上の深刻なボトルネックとなっている慢性的なインフラ不足に悩まされています。日本は、世銀グループに対し、IMF、他のMDBs、JICA、国際協力銀行(JBIC)等の開発パートナーと連携しつつ、中長期的な観点から、こうした慢性的な課題に対して、世銀グループの比較優位を活かし、国ごとの実情を踏まえた最も適切な形で支援を行うことを求めます。

    (1) 質の高いインフラ投資

     様々なリスクを低減し、途上国が包摂的・持続可能・強靭な成長を実現するためには、世銀グループが、ライフサイクルコスト、安全性、自然災害に対する強靭性、社会環境基準、人材育成とノウハウの移転等に配慮した「質の高いインフラ投資」を推進することが必要です。質の高いインフラ投資を推進するためには、以下の2点に留意することが重要です。
     第一に、途上国自身が、質の高いインフラ投資について明確に理解することが重要です。この観点から、日本は、世銀グループとともに、国際会議の場で質の高いインフラ投資のコンセプトの普及に努めています。また、世銀が、Value for Moneyの概念を取り入れた調達制度を導入し、途上国に対して具体的なインセンティブ付けを行っていることを、日本は評価しています。今後、世銀グループが、新たな枠組みを普及させるために一層努力していくことを慫慂します。
     第二に、案件の準備段階で質の要素を盛り込んでいくことが重要です。日本は、世銀東京防災ハブ、東京開発ラーニングセンター、Global Infrastructure Facility(GIF)を含めた世銀グループと連携し、知的支援の提供に貢献していきます。
     このような質の高いインフラ投資を推進する取組は、日本の二国間支援政策にも反映されています。この取組の一環として、円借款の更なる迅速化を進めているほか、海外インフラ整備を一層支援するため、JBICの機能強化等に取り組んでいます。

    (2) 国内資金動員の強化

     危機への備えと対応、国際金融・経済情勢に左右されにくい経済運営、そして質の高いインフラの整備等、持続的に発展を遂げるために必要な投資を継続するためには、途上国が自ら国内資金を動員することが不可欠です。この点、世銀グループには、税務行政に係るガバナンスやキャパシティの強化を通じた税収増や、特にIFCやMIGAの活動による投資環境改善を通じて国内資金動員に貢献することを期待します。その際、世銀グループが、IMF、OECD及び国連等と、それぞれの比較優位を活かした連携を深めること、そのための対話の枠組みとなる「タックス・プラットフォーム」を速やかに構築し、効果的に運営していくことを求めます。


  5. 結語

     日本は、G7議長国として、途上国が広範な危機に対応できる強靭性を高め、持続可能かつ包摂的な成長を実現するため、世銀グループに対して、引き続き、資金面、政策面、そして、人的に貢献をするとともに、国際社会の結束に向け、一層の努力を傾注してまいります。

     最後に、IDAの譲許的資金は、世銀グループが難民問題や自然災害、パンデミックを含めた危機に対処するために重要であり、世銀グループの株主として求められる最も大きな責任・役割は、IDAへの3年毎の増資に継続的に貢献することにあります。IDA18次増資の成功に向け、日本は積極的に議論に貢献するとともに、今後、世銀グループの資金能力を強化する上では、新興ドナーに限らず伝統的ドナーのIDA貢献へのインセンティブを強化することが、重要であることを強調します。


(以 上)