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第92回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成27年10月10日)

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  1. はじめに

     2000年にミレニアム開発目標(MDGs)を設定してから国際コミュニティは貧困問題を解消するために共通の指針の下で取り組み、多くの成果を挙げてきました。全世界で極度の貧困の中で暮らす人々の数は、1990年の約19.5億人から2012年に約9億人に減少し、極度の貧困人口の割合を1990年から半減させるという目標は2015年になるよりも早く達成することが出来ました。これらMDGsの達成は、ドナー国と途上国の双方が経済発展と貧困削減に真摯に取り組んできた成果として評価されるべきものです。

     他方、2014年のエボラ出血熱によるパンデミックの発生、度重なる自然災害、気候変動など、この15年間で課題を残したものや新たに開発課題として認識されるものも生じています。これらの新たな課題や依然として残された課題に対応するため、持続可能な開発のための2030アジェンダが本年9月の国連サミットで採択されたことを歓迎します。

     開発に貢献するプレーヤーに目を向けると、従来中心的役割を担ってきた先進国政府やMDBs等の国際機関に加え、新興国や民間セクターが台頭し、多様化しています。また、途上国に流れる民間投融資や送金がODA資金を圧倒する規模で増大しているほか、途上国自身の国内資金が開発に与える影響も増大しています。

     2030アジェンダ実施において、世銀グループは「2030年までに極度の貧困を撲滅」と「繁栄の共有を促進」という二大目標や比較優位、他の国際機関等との相互補完性に留意しつつ、どのような役割を果たしていくべきか、そのために必要な資金をどのように確保していくのか、今後議論を深めていく必要があります。


  2. 2030アジェンダにおける世銀グループの役割

     2030アジェンダは包括的かつ多岐にわたりますが、世銀グループの限られた開発資金を有効に活用するためには、特に重視する分野を定め、集中的かつ継続的に支援することが重要です。世銀グループが提示した、マル1危機予防、準備及び対応、マル2インフラニーズへの対応、マル3気候変動との闘い、マル4開発データの改善という4つの課題に即して、日本が世銀グループに対して特に期待する点について述べます。

    (1) 危機予防、準備及び対応−国際保健と防災

     エボラ出血熱の流行により、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現を含む平時からの保健システムの強化による危機予防及び準備と、パンデミック発生時に迅速な状況把握と封じ込めを行う危機対応とを組み合わせた包括的なリスク管理メカニズムの確立の必要性を国際コミュニティは再認識しました。この平時からの危機予防及び準備と危機対応を組み合わせた考え方は、日本が長年取り組んできた防災にも通じるものです。
     この観点から、日本は世銀グループとともにグローバル・ヘルス・ガバナンスの強化に向けた建設的な議論に貢献するとともに、世銀グループがパンデミックの脅威が発生した際に民間資金を動員して迅速に資金提供するメカニズムであるパンデミック緊急ファシリティの設立を進めていることを歓迎します。また、パンデミックの復旧・復興支援を防災のアナロジーで考え、「Build Back Better」の発想により、パンデミック収束後の当該国の保健システムが、パンデミック以前より一層強固になるよう取り組むことが必要です。
     2015年12月に東京においてUHC国際会議を開催します。日本は、来年のG7ホスト国として国際保健を重要アジェンダの一つと考えており、本会議は来年のG7サミットにつながる重要なマイルストーンとなります。キム総裁を始め、関係機関の著名なリーダーの参加を歓迎するとともに、活発な議論が行われることを期待します。
     また、先進国・途上国問わず、自然が人間社会に猛威を振るう場面はなくなりません。2015年3月に採択された「仙台防災枠組2015-2030」でも確認されたように、災害リスク削減は、将来の損失を防ぐ上で費用対効果の高い投資であり、効果的な災害リスク管理は持続可能な開発に寄与します。例えば、今回の世銀・IMF総会の開催地であるペルーでは、東京防災ハブの支援を通じ、日本の教育関係者の知見を参考にしつつ、学校の耐震化に取り組んでいます。また、太平洋災害リスク保険等、世銀グループが構築してきた危機対応メカニズムを引き続き有効活用し、発展させることも必要です。

    (2) インフラニーズへの対応−質の高いインフラ

     包摂的・持続可能・強靭な成長を実現するために、ライフサイクルコスト、安全性、自然災害に対する強靭性、社会環境基準、ノウハウの移転を通じた現地の人材育成に配慮してインフラ整備を進めていくことは、2030アジェンダにも掲げられている重要な開発課題です。本年9月に日豪世銀共催で「質の高いインフラワークショップ」がトルコ・アンタルヤで開催され、インフラ整備をしていく上で上記の観点が重要であるとの共通認識が関係者間で形成されました。
     現在、世銀では、インフラ投資は質の面から評価することが必要との認識の下、ライフサイクルコストを含めたValue for Moneyの概念を取り入れた調達制度改革を実施しています。途上国は長期的にValue for Moneyの概念を自国内の調達制度に組み入れることで、便益を受けることになります。世銀が新たに作った枠組みを普及するよう努めることを期待します。
     増大するインフラ需要に対応するためには民間資金の動員も重要です。本年4月から活動を開始したGlobal Infrastructure Facility(GIF)が具体的なプロジェクトを通じて各MDBと連携して投資環境整備やPPPインフラ案件を更に促進していくことを期待します。
     日本は、質の高いインフラを推進するため、東京防災ハブ、東京開発ラーニングセンター、GIFとのパートナーシップを活用しつつ、今後、IFC、MIGAを含めた世銀グループとの連携を強化していきます。

    (3) 気候変動との闘い−地球環境問題への取組

     国際社会は、本年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、全ての国が参加する公平かつ実効的な2020年以降の新たな国際枠組みに合意することを目指しており、各国、特に途上国が実効性のある緩和及び適応行動を取るための資金を動員することが最大の焦点となっています。このため、公的・民間双方の資金を二国間、多国間あらゆるチャンネルを通じて動員することが必要です。
     特に気候変動への対応は、エネルギー、都市、産業、農業、防災等様々な開発課題そのものと言ってもよく、これまで幅広い開発問題に対し資金及び知見を提供してきた世銀グループにおいては、これらの経験を活用しつつ気候変動対策の主流化に向けて更に取り組んでいくことを期待します。
     また、気候変動対策に特化して設立された緑の気候基金(GCF)が本年から本格的に稼働を開始する予定であるところ、世銀グループが、実施機関として、例えば東京防災ハブの知見を活用するなどして、島嶼国や最貧国など、特に気候変動に脆弱な国に対する開発効果の高い案件を形成することを期待します。
     一方で、気候変動も含め、生物多様性や土地劣化、海洋、化学物質・廃棄物といった幅広い地球環境問題に取り組む地球環境ファシリティ(GEF)が、引き続き石井菜穂子CEOのリーダーシップの下で、長期戦略(GEF2020)に基づいて、複合的な視点からこれらの問題に取り組んでいくことを期待します。

    (4) 開発データの改善(正確なデータの測定と政策形成の改善への活用)−日本信託基金による技術支援

     2030アジェンダ実施に向けて国際社会が取り組んでいく上で、正確なデータを収集し、個々のプロジェクトや国全体の開発効果を測り、教訓を得て次の活動に生かしていくことが必要です。また、正確な開発効果を測定することは、ドナーや世銀グループを含めた支援主体が自らの説明責任を果たすために重要であるのみならず、途上国自身がより良い政策を策定する上でも重要です。日本は信託基金を通じて世銀グループが途上国の政府や地方自治体自らが政策の成果を具体的に定義し、その実現に向けて進捗状況を測定・把握することで自らの政策形成の改善に役立てるための技術支援に貢献していきます。


  3. 資金の確保

     世銀は、国際社会が世銀に期待する役割に適切に応えていく必要があります。そのために必要となる確固たる資金基盤を備えようとする世銀の挑戦を、日本は支持します。今後、民間資金や途上国の国内資金の動員の検討とあわせて進めていく、バランスシート最適化による既存資金の有効活用、IDA18次増資、IBRD/IFC増資についての議論に、日本は積極的に貢献していきます。

     これらの取組は多岐にわたるものの、いずれも世銀が役割を果たすために必要となる資金の確保を目指すものであり、統一的・総合的な見地から検討を進めることが重要です。その際、途上国の世銀グループに対する具体的な資金ニーズをしっかりと検証・分析していく必要があります。また、足下では、新興国経済の減速、石油等の資源価格の低下など途上国を巡る環境が変化している中で、途上国の債務持続可能性への十分な配慮が必要です。


  4. 結語

     今後、2030アジェンダの実現に向けた世銀グループの役割に関する議論が本格化するに当たり、世銀グループにはドナーやクライアント等の多様なステークホルダーと意見交換を重ね、共通認識を形成する努力の継続を強く求めます。

     また、多岐にわたる国際課題に対処していくためには人的資源を多様化することも欠かせません。日本は2030アジェンダの実現に向け、世銀グループに対して資金面及び政策面のみならず、人的な貢献も積極的に行います。

(以 上)