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第91回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成27年4月18日)

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  1. はじめに

     2015年はミレニアム開発目標(MDGs)の期限の年です。歴史の節目となる今年、国際社会は、共通の開発目標達成に向けたこれまでの取組と成果を振り返るとともに、2015年以降の新たな目標を設定し、その実現に向けて、それぞれの国・機関が取り組むべき課題や取るべきアクションを模索し、確認する必要があります。

     21世紀最初の15年間は、多くの途上国・新興国が総じて順調な経済成長を続けてきた一方、金融危機、感染症、自然災害、紛争といった様々な地球規模の課題への対処の重要性が改めて認識された時期でもありました。また、途上国開発においては、新興国や民間セクターの存在感が増しているとともに、途上国自身が国内公的資金を如何に動員するかが重要な課題となっています。

     こうした状況下にあって、世銀は、キム総裁のリーダーシップの下、「2030年までの極度の貧困の撲滅」と「繁栄の共有」という明確な戦略目標を定め、様々なドナー、他の国際機関や民間セクターとの連携を深めながら地球規模の課題の解決に取り組んでおり、日本としてもこうした取組を支持しています。

     以下、国際社会が、上記二つの目標に向けて歩みを進める上で、日本が世銀と連携して取り組む途上国支援、そして、世銀グループへの期待について、特に、今回の開発委員会のテーマである「2015年以降の開発資金(Post 2015 Financing for Development)」という視点から申し上げます。


  2. 日本が世銀グループと連携して取り組む途上国支援

     世界には解決すべき様々な課題がありますが、限られた開発資金を有効に活用するためには、特に重視する分野を定め、集中的かつ継続的に支援することが重要です。日本が有する豊富な知見と経験を世銀が途上国支援に活用する観点から、日本は、特に、インフラ投資促進、保健医療、防災、地球環境問題への取組及び途上国政府の成果管理能力の強化の面から世銀と協働します。

    (1) インフラ投資促進

     途上国が持続的に成長するためには増大するインフラ需要に応える必要があり、そのためには民間資金を動員することが重要です。この観点から、世銀が日本などの資金貢献を受けて新たに設立したグローバル・インフラストラクチャ・ファシリティ(GIF)が、途上国の投資環境整備やバンカブルなインフラ案件の組成を推進するプラットフォームとして機能することを期待します。
     GIFには東京の世銀スタッフが関与するほか、JICA、JBICに加えて、日本の民間金融機関もアドバイザリーパートナーとして参加します。日本は官民が連携してGIFのプロジェクトの組成のために貢献していきます。
     動員した開発資金を途上国の膨大なインフラニーズに充てるに当たっては、インフラ投資が持続的な経済成長の礎となるよう、高い質を確保することが大切です。こうした観点から、世銀が、ライフサイクルコストを重視した調達、社会環境基準、それぞれの途上国の実情に合わせた人材育成・制度強化、債務の持続可能性に十分に配慮した「質の高いインフラ投資」を世界中で推進することを期待します。この一環として、日本は、世銀を始めとするMDBsやG20諸国と連携して、「質の高いインフラ投資」に関して国際社会の共通理解を醸成するため、ワークショップを本年に開催することを検討しています。
     世銀の東京開発ラーニングセンター(TDLC)では、本年から、日本の都市インフラの知見を発信する都市パートナーシッププログラムを実施する予定です。世銀が日本の都市と連携し、都市の持続的かつ包摂的な発展、都市交通、温暖化対策、高齢化対策等、日本の都市が持つ先進的な知見を世界に発信しつつ、世銀によるインフラ整備支援に活用していくことを期待します。さらに、東京において、GIF、世銀東京防災ハブ及びTDLCが互いにシナジーを生み出しながら、世銀によるインフラ投資促進の取組に貢献していくことを期待します。

    (2) 保健医療

     昨年、西アフリカにおいて猛威を振るったエボラ出血熱は収束の兆しを見せるものの、新たな感染者は依然発生しています。感染症の蔓延という人道上の危機に対しては、感染者の治療や救援はもちろん、保健医療システムを中長期的に再構築していくことが不可欠です。
     世銀グループが昨年夏以降、キム総裁のリーダーシップにより、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの各政府や他の国際機関と連携しつつ、IDAの緊急対応ウインドウやIFCの支援プログラム等を活用して総額10億ドルの復旧・復興支援を迅速かつ包括的に実施してきたことを日本は評価しています。
     日本は、西アフリカでのエボラ出血熱流行に対し、これまでに総額約1億7,300万ドルの支援や日本人専門家の派遣を実施してきました。特に、ギニア、リベリア及びシエラレオネに対して世銀が保健システムの再構築を支援するため、日本はエボラ復旧復興信託基金に2,000万ドルを拠出しました。また、世銀の日本社会開発基金を活用してリベリアの感染者の家族や医療従事者等に対するメンタルヘルス支援を提供しています。私たちは、世銀が引き続き効果的かつ効率的にエボラ出血熱対策に取り組むことを期待します。
     今般のエボラ出血熱での教訓を活かし、今後、各国政府、国際機関、民間セクターは更に緊密に連携しながら、保健医療システムを構築する必要があります。特に、エボラ出血熱をはじめとする感染症の封じ込めと撲滅には個別の感染症対策を越えた保健医療システム全体や公衆衛生対策の強化が不可欠です。特に、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を含め、全ての人々が適切な保健医療サービスを必要な時に支払可能な費用で受けられるシステムを実現することが重要です。日本は、これまでの世銀とのUHCに関する共同研究の成果を発信するとともに、世銀と協働しながら、途上国がそれぞれの状況に応じてUHCを導入するための技術支援を行っていきます。
     また、世銀は将来起こり得るパンデミックの影響を受けた国に対し、民間セクターと連携して迅速に資金提供するシステムを検討していますが、これは日本が開発支援において重視してきたUHCと防災システムを組み合わせる概念だと理解しています。今後、UHCに関する共同研究の成果や日本と世銀が連携して太平洋島嶼国に提供している「太平洋自然災害リスク保険パイロットプログラム」で得た知見などを活用し、世銀が引き続き民間セクターや他の国際機関と連携して検討を進めることを期待します。

    (3) 防災

     本年3月に仙台で開催された「第3回国連防災世界会議」で、兵庫行動枠組に次ぐ「仙台防災枠組 2015-2030」が策定されたことを歓迎します。本会議には187か国と世銀キム総裁を含む国際機関の代表など、日本国内外から延べ15万人以上が参加しました。世界中の人々が東日本大震災の教訓や被災地の復興状況を共有しつつ、防災の在り方を議論し、防災に対する国際社会の政治的なコミットメントを得たことは、防災の主流化を進める上で大きな成果です。
     なお、同会議の期間中にサイクロン「パム」がバヌアツを襲ったことは世界に災害の脅威と防災の重要性を改めて印象付けました。日本は、バヌアツの被災直後に緊急援助物資と医師等緊急援助隊を迅速に送りました。また、先程紹介した「太平洋自然災害リスク保険パイロットプログラム」によって、バヌアツのサイクロン被害に対してその発生から3週間後に190万ドルの資金を提供することが可能となりました。日本は、今後も世銀とも緊密に連携しつつ、バヌアツの復旧・復興にできる限り貢献していくとともに、「太平洋自然災害リスク保険パイロットプログラム」を中心とするイニシアティブの拡充についても検討していきます。
     大規模災害は一度発生すれば長年にわたる開発の成果を一瞬にして消し去るとともに、貴重な人命を奪い、経済発展を阻害します。そのため、レジリエンスの観点に予め配慮したプロジェクトは、事後的にみれば災害救援に係る費用よりも小さいことは明らかです。災害計画の策定や質の高いインフラ整備により、将来発生しうる災害によるコストを抑制することが重要です。

    (4) 地球環境問題への取組

     地球環境問題に対しても国際社会が協調して取り組むことが必要です。地球環境の変化が影響し、自然災害は近年大規模化の傾向が見られます。特に、島嶼国や後発開発途上国などの気候変動に脆弱な国にとって自然災害リスクへの対応は喫緊の課題です。
     地球環境問題全般を支援してきた地球環境ファシリティ(GEF)では、石井菜穂子CEOのリーダーシップの下、昨年には過去最大の増資を得て、GEFの長期戦略(GEF2020)に基づき分野横断的な取組を実施しており、日本はこれを強く支持しています。また、気候変動対策のために新たに設立された緑の気候基金(GCF)は、本年中に途上国への支援を開始予定です。日本は、世銀がGEFやGCFと連携して地球環境問題の解決に取り組むとともに、特に気候変動への適応の面では、世銀東京防災ハブの知見を活用して支援することを期待します。

    (5) 途上国政府の成果管理能力の強化

     限られた開発資金を効果・効率的に活用するためには開発目標を定め、開発効果を測定し、得られた教訓を次の施策に活用する不断の努力が必要です。日本としても、世銀の信託基金を通じて実施する事業においてできる限り定量的な開発目標を設定し、適切に評価することを重視しています。
     また、開発効果の測定は、ドナーの説明責任を果たすためのみならず、途上国自らが政策の質を高めるために活用することが重要です。日本は途上国の関係省庁や地方自治体自らが、成果を具体的に定義し、その実現に向けて進捗状況を測定・把握することで、今後の政策形成の改善に役立てるための技術支援を実施していきます。


  3. 世銀グループへの期待

     途上国の持続可能な経済発展を実現するためには、世銀は上述のアジェンダに集中的かつ継続的に取り組むことが求められます。特に、パンデミック、災害及び経済危機からの損失を最小化するため、世銀はしっかりとしたセーフティネットを整備する必要があります。こうした努力の積み重ねによって将来必要とされる資金を未然に最小限にすることが可能となります。他方、将来的にパンデミック、災害及び経済危機等によって民間資金や途上国の国内公的資金の流れが滞る事態が生じた際には、世銀は二国間ドナー、他のMDBs、IMF、民間セクターと連携して開発資金を確保することが求められます。このように、世銀は平時と危機の双方において、それぞれの実情に応じ、ODAのみならず、民間資金や途上国自身の公的資金を動員する触媒としての機能を果たすことが重要です。

     世銀の活動を支える公的資金には限りがあることから、開発資金を確保するため、世銀がバランスシートを最適化し、市場からの資金調達を拡大する検討を進めていることを日本は支持しています。また、開発において存在感を増している民間資金を動員するため、投資環境整備を進めることも重要です。さらに、途上国政府の国内公的資金の動員力を高めるため、世銀が税制の整備や徴税能力の強化に向けた技術支援を、融資と併せて提供していくことを期待します。


  4. 結語

     キム総裁のリーダーシップの下、「2030年までの極度の貧困の撲滅」と「繁栄の共有」という二つの戦略目標が設定されて2年半が経過しました。キム総裁のリーダーシップにより、世銀グループがこの2大目標を達成するため、機構・業務・財務について大胆な改革を実施してきたことを日本は支持しています。世銀グループが、国際社会にとって重要な節目となる2015年以降も、様々なドナーや他の国際機関と連携を深めつつ、地球規模の課題に解決策を提示するために主導的な役割を果たしていくことを期待します。日本としても、世銀に対して資金面及び政策面での貢献のみならず、人的な貢献も積極的に行い、世界の持続的な経済成長と貧困削減に貢献していきます。

(以 上)