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第90回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成26年10月11日)

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  1. はじめに

     まず、エボラ出血熱で苦しむ人々、亡くなった人々、そのご家族へお見舞い申し上げます。エボラ出血熱の感染が拡大している西アフリカ諸国に対しては、世銀を始めとする各国際機関や各国政府が国際的に協調して支援していますが、特に世銀がリーダーシップを発揮している点を評価しています。キム総裁が提唱するように、エボラ出血熱の感染拡大という人道上の危機に十分な対応を迅速に採ることが必要であり、これにより人々の恐怖心を和らげ、経済への悪影響を一刻も早く抑えることが重要です。日本としても4500万ドルを超える支援や医療関係者の派遣等を表明しており、引き続き、エボラ出血熱の流行抑制に向けて貢献していきます。

     多くの途上国・新興国は順調な経済成長を続けていますが、今なお極度の貧困の下にある人々、そして様々なショックにより再び貧困に陥るリスクと背中合わせの状況にある人々は少なくありません。世銀は、この状況を打開するために「2030年までの極度の貧困の撲滅」と「繁栄の共有の促進」という二つの戦略目標を定め、新しい業務戦略の導入、機構改革及び予算改革を進めていると認識しています。以下、特に「繁栄の共有の促進」の観点から、日本が世銀グループと連携して取り組む途上国支援について述べるとともに、世銀グループへの期待を申し上げます。


  2. 日本が世銀グループと連携して取り組む途上国支援 − 繁栄の共有の促進

     途上国において、繁栄の共有を着実に実現するためには、成長の果実を共有する前提となる経済成長と、成長の影で立場の弱い人々が取り残されないような経済運営や雇用創出を実現することが重要です。その際、繁栄の共有を阻害する各国固有の要因を特定した上で、これを取り除く取組みが必要ですが、日本は特に、保健医療、防災、地球環境問題への取組、民間資金を活用したインフラ投資の促進及び政府の成果管理能力の強化の面から世銀と協働します。

    (1) 保健医療

     現在、エボラ出血熱に苦しめられている国々に対しては、危機対応の支援が展開されていますが、感染者は増え続けています。エボラ出血熱をはじめとする感染症の封じ込めと撲滅には、個別の感染症対策を超えた、保健医療システム全体や公衆衛生対策の強化が不可欠です。 また、個々人が健康を維持しながら持てる能力を発揮し、経済・社会の発展に継続的に貢献していくには、感染症への対応のみならず、非感染症も含めたあらゆる保健ニーズに対応する保健医療システムの構築が必要です。
     その際、全ての人々が適切な保健医療サービスを必要な時に支払い可能な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を実現することは特に重要です。日本は、約2年間に亘り、日本を含む11カ国のUHCに係る経験と教訓をまとめ、他の途上国への適用可能性を探るための研究を世銀と共同で実施してきました。今次総会において、その研究成果を発信できることを喜ばしく思います。今後、日本は、引き続き世銀と協働しながら、様々な機会を活用して共同研究の内容を発信するとともに、途上国がそれぞれの状況に応じてUHCを導入するための技術支援を提供していきます。

    (2) 防災への取組

     自然災害の影響を最も受けるのは貧困層などの脆弱な人々です。また、気候変動の影響から近年大規模化の傾向が見られる自然災害は、長年の開発努力・成果を一瞬にして奪い去るリスクがあります。この点、防災と気候変動が、IDA17次増資の重点分野となったことを日本は歓迎し、「全ての案件において、防災上及び気候変動上の考慮が必要かを確認し、必要な場合には適切な予防措置を講じる」というIDA17のポリシー・コミットメントが確実に実施されるよう注視していきます。
     日本は本年2月、世銀との新たな防災共同プログラムを開始しました。東京に設立された「世銀防災ハブ」は既に複数のプロジェクトを開始しており、日本は、引き続き、長きにわたって蓄積してきた豊富な防災の知見・経験を活かして途上国の開発を推進するよう世銀と協働していきます。

    (3) 地球環境問題への取組

     繁栄の共有を促進するためには、“Global Public Goods”である地球環境の保全に取り組むことも重要です。地球環境問題を放置すれば自然災害のリスクを高めるなど、脆弱な人々を生み出してしまうおそれがあります。先日の国連気候サミットでは、日本は、今後3年間で1万4千人の人材育成や「適応イニシアティブ」の立ち上げなどの途上国支援、優れた技術の革新と普及、さらには将来の国際枠組への貢献として、約束草案の早期提出や緑の気候基金への貢献について取り組んでいく旨を表明しました。
     世銀においては、気候変動問題がIDA17次増資の重点分野となり、GEFにおいても、第6次増資が過去最大の資金規模を達成し、成功裡に終了したことを歓迎します。今後、GEFが、石井CEOの強力なリーダーシップの下、分野横断的・各国横断的なプログラムを支援する新たな取組である「統合アプローチ」を通じて、地球環境保全の分野において、これまで以上に大きな役割を果たすことを期待します。

    (4) 民間資金を活用したインフラ投資促進

     途上国が持続的に成長するためには増大するインフラ需要に応える必要があり、民間資金を動員することが重要です。世銀グループには、途上国のインフラ整備における環境・社会面での高いスタンダードを確保しつつ、グローバルなネットワーク、民間投資家からの高い信用力及びクレジット・エンハンスメント機能を含む多様な金融手法を活用し、民間資金を活用したインフラ案件の組成を促進することを期待します。日本は、民間資金を活用したインフラ整備の触媒機能を果たすことを目的に創設されるGlobal Infrastructure Facility (GIF)が実効性のある枠組みとなるよう、積極的に貢献します。

    (5) 途上国政府の成果管理能力の強化

     保健医療、災害・気候変動への対応、そして民間資金も活用したインフラ整備といった困難な開発課題に効果的に対応していくためには、途上国政府が、政策や事業の進捗状況や効果をデータに基づきタイムリーに把握し、「何が上手くいき、何が上手くいかなかったのか」を診断し、そして、その結果を政策形成や資源配分に活かしていく成果管理能力を高めることが重要です。日本は世銀と協働しながら、途上国政府の成果管理能力を強化するべく、新たな支援枠組を構築します。


  3. 世銀グループへの期待

     日本は、世銀が2014年7月に従来の地域局中心の体制から地域横断的な課題別のGlobal Practice局及びCross Cutting Solutions Area中心の体制に改編したことを支持します。機構改革後の世銀グループが、これまで以上に有効な支援を展開するためには、課題別のグローバルな知見と、従来地域局に蓄積されてきた支援対象国の特性に係る知見の双方の活用が重要です。こうした観点から、新しい国別戦略(“Systematic Country Diagnostic”と“Country Partnership Framework”)を柱とする世銀グループの業務運営が適切に実施され、途上国の開発に更に貢献することを期待します。

     また、世銀グループには、グローバル・コミュニティに点在する革新的なアイディアや教訓を集め、統合し、そしてグローバルに展開しながら、新たな開発潮流を作り上げることを期待します。その際、ADBを含めた他の国際開発機関、JICAなど二か国間ドナー、国連諸機関、NGO等とより一層連携を深めることが重要です。


  4. 結語

     世銀グループは、「2030年までの極度の貧困の撲滅」と「繁栄の共有の促進」という二つの戦略目標に向けてより効率的かつ効果的にSolutionを提示していくことが使命です。そのためには、各国の実情に合った施策を実施する必要があります。人的資源における多様性を確保することも重要であり、日本は最大限の貢献をしていく所存です。

     来年3月には国連防災世界会議を仙台で開催し、国際的な防災戦略について議論する予定です。キム総裁を含め、世界各国から多くの関係者に参加していただき、活発な議論が行われ、具体的な成果が挙がることを期待します。

(以 上)