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第89回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成26年4月12日)

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  1. はじめに(IDA第17次増資)

     まず、国際開発協会(IDA)第17次増資交渉の成功裏の妥結を祝福致します。多くのドナー国が厳しい財政状況に直面し、援助資金の負担能力には限界がある中、途上国支援に必要な資金量を確保できるよう、ドナー国と世銀事務局が互いに知恵を絞り、新たに融資貢献方式を導入したことにより、過去最大の資金規模が達成できたことは大変喜ばしいことです。IDAは、途上国の持続的な貧困削減を実現していく上で主導的な役割を担う機関であり、世銀グループの知見やノウハウを途上国に伝えること自体も重要ですが、途上国に対し、健全な国家運営による経済発展によって融資された資金をきちんと返済するというディシプリンを定着させる効果も注目されるべきです。これはかつて世銀からの借入国であった日本の経験からも明らかです。

     IDA第17次増資では、包摂的成長の実現に向け保健医療分野への支援の充実が図られることとなったこと、従来は国際的な認識が薄かった防災分野への支援の重要性が共有され防災が気候変動と共に支援重点分野に含められたこと、ミャンマー等の国際社会に復帰したばかりの国や、所得水準は向上したものの極度の貧困層が多く存在するインドなどのアジアの貧困削減に向けた取組強化が図られることとなったこと等を評価し、日本としても約3,120億円の追加出資と約1,904億円の融資貢献を表明しました。今回の開発委員会に先立ち、IDAへの追加出資に応じるための法律が3月28日に国会で可決、成立したことをここに報告できることを嬉しく思います。


  2. 日本が取り組む途上国支援

     かつては世銀最大の借入国の一つであった日本は、飛躍的な経済発展を遂げ、現在では世銀第2位の株主となるなど、開発援助の主要ドナーとなっています。日本は、途上国における持続可能な経済成長と貧困削減に向け、自国や東アジアの経験に照らし、民間セクターの発展・成長が重要と考え、その基盤となるインフラ整備への支援や、開発政策の策定や人材育成のための技術支援を重視してきました。最近では、これらに加え、持続的な成長の阻害要因となるリスクに着目し、防災、地球環境、保健医療の分野での支援も重視しています。こうした考えは世銀の戦略にも反映されており、日本は資金面だけではなく政策面においても世銀との協力関係を深めています。

    (1) 防災

     大規模な自然災害は一度発生すれば、人命が脅かされ、そして、それまでの発展のための努力や成果も一瞬にして奪われてしまいます。なかでも貧困層や社会的な弱者がより大きな被害を受けやすく、災害への対応能力が欠如している場合には、不平等も助長されます。このため、各国は、防災を開発の重要課題として位置付け、自然災害への事前の備えを踏まえた開発計画を適切に実施することが重要です。日本は、様々な災害を乗り越えてきた防災先進国として、世界で防災分野の協力を推進していく責務があると考え、世銀とともに、開発における防災の主流化を推進しています。
     今回の開発委員会に際して、世銀における防災の主流化に関する取組みの進捗報告がなされたことを歓迎します。2012年の東京総会や「防災と開発に関する仙台会合」での成果がその後も掘り下げて議論され、『仙台レポート』で示された方針に沿って、徐々に実践へと移されつつあることを大変喜ばしく思います。先ほど申し上げた通り、IDA-17において防災はIDA支援の重点分野にも含まれました。今後、世銀グループで実施・策定される体系的国別診断(SCD:Systematic Country Diagnostic)や国別支援フレームワーク(CPF:Country Partnership Framework)の中に、防災がしっかりと位置付けられることを求めます。
     また、本年2月、日本は世銀との新たな防災共同プログラムを開始しました。日本としては、途上国のニーズに合った防災の技術支援を拡大し、自然災害への事前の備えを踏まえた開発計画の策定を支援して参ります。今後、世銀のプロジェクトにおいて、世銀の防災支援の拠点として新たに東京に設立された「世銀防災ハブ」が有効に活用され、開発途上国における防災対策が更に促進されるとともに、日本の知見や人材が活用される機会が拡大することを期待します。

    (2) 地球環境問題

     地球環境問題は、途上国の持続的な成長を阻む大きなリスク要因であり、人類が直面する喫緊の課題の一つです。日本は、気候変動対策をはじめとする、地球環境の保全に向けた国際的な取組を支持してきており、とりわけ、同分野において20年以上にわたり先駆的で幅広い取組を行ってきた地球環境ファシリティ(GEF)の役割を高く評価しています。特に、気候変動対策については、本年3月に横浜で開催されたIPCC総会などの場においてその重要性がますます強く認識されてきていますが、UNFCCCの新たな資金メカニズムであるGCFが未だ業務開始していない中、日本は、現実的な選択として、実際に活動している唯一の資金メカニズムであるGEFに重点的に資金貢献すべきと考えています。また、2013年10月に熊本県で採択された水俣条約に基づく水銀対策、2010年に採択された愛知目標に沿った生物多様性を保全・回復するための施策など、GEFに求められる役割は今後更に増大していくことから、石井CEOの下で交渉が進められている第6次増資において十分な資金が確保されることが重要です。日本は、これらの国際的な取組をリードしてきたものとして、GEFに対し大幅に増額した資金貢献を行う所存です。GEFがその強みを活かしてインパクトのある地球環境益を実現することが出来るよう、全てのドナー国が日本と同様にGEFに十分な資金貢献を行うことを期待します。

    (3) 保健医療

     保健医療は、人々の健康と命を守るだけではなく、経済と社会発展の基盤も築き、持続的な成長の大前提となるものです。しかし、保健医療を巡る環境は、人口の高齢化に加え、糖尿病、がん等の非感染症疾患への対応等のさまざまなニーズが顕在化しており、全ての人々が、保健医療サービスを必要な時に支払い可能な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の重要性が高まっています。日本は、1961年に国民皆保険制度を実現し、保健医療サービスの公平性の改善と医療費の抑制に努め、世界で最も優れた健康長寿社会、高度な保健医療水準を達成して参りました。また、成熟化した現代社会では、急速な高齢化や医療技術の進歩等により増大する医療費に対し、制度の財務的な持続性に向け、医療の適正化・効率化に取り組んでいます。こうした日本の保健医療に関する経験・知見を、開発途上国の保健政策に活かしてもらうため、日本政府は世界銀行とともに「保健共同研究」を実施して参りました。昨年12月には、研究の集大成として、東京にて「保健政策閣僚級会合」を開催し、ガーナ、ミャンマー、セネガル、ベトナムの保健大臣をはじめ、各国政府関係者、国際機関、研究者、NGO等を招聘し、開発途上国の保健政策の課題の分析、経験の共有に向け、活発な議論を展開しました。
     また、日本は、UHCの推進を通じた我が国の保健医療の国際展開に向け、昨年以降、保健医療分野の協力覚書をバーレーン、トルクメニスタン、カンボジア、ラオス、ミャンマー、トルコ、ベトナムと締結しました。今後とも世銀との連携を通じ、保健医療に関する協力を推進していきたいと考えています。


  3. 世銀グループへの期待

     今回の開発委員会の議題である「危機後の世界経済における成長:開発途上国の政策課題(Growth in the Post-Crisis Global Economy: Policy Challenges for Developing Countries)」について、世銀グループに期待する役割を申し上げます。

     第一に、本年9月に政府間交渉が開始されるポスト2015年開発目標(ポストMDGs)は、危機後の複雑化する国際経済・社会情勢の中、途上国開発における国際協力の重要課題の在り方に大きな影響を与えるものです。先に述べた自然災害や地球環境問題、多様化する保健ニーズといった持続的成長を脅かすリスクは、自生的な市場メカニズムや途上国自身の公的メカニズムでは対応が困難であり、国際的な公的支援の枠組みで対応する必要があります。世銀グループには、日本を含む開発パートナーと協力して、そのようなリスクへの対応がポストMDGsに適切に反映されるよう議論に貢献していくことを求めます。

     第二に、グローバルな開発課題の解決に向け設定された「最貧困の撲滅」と「繁栄の共有」という2つの戦略目標を実現するためには、特に多くの絶対的貧困層を抱える南アジアやサブサハラ・アフリカにおいて、経済成長のペースを加速させる必要があります。昨年6月の「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」においても議論されたとおり、開発のエンジンとなる民間セクターの振興が鍵となります。世銀グループには、グループ一体となり、国際金融公社(IFC)や多数国間投資保証機関(MIGA)が築き上げてきた強みを活かして、民間資金をより効果的に開発に動員する触媒としての機能を果たし、これまで以上に、民間主導の経済成長を根付かせるような支援を行うことを求めます。

     第三に、先進国の財政状況が引き続き厳しい状況にある中、増大するニーズに対応する援助資金を確保していくことは益々困難となっています。そのような中、世銀グループには、資金使途や事業の成果についての検証を行い、ドナー国への説明責任を一層強化して頂くことを求めます。今般のIDA17増資交渉の過程では、キム総裁に日本の国会にてIDAを始め世銀グループの業務の意義や効果についての説明を頂き、国会議員との意見交換も行って頂きましたが、今後とも、ドナー国政府だけではなく、議会や市民社会団体等との対話も重視して頂きたいと思います。また、増資等の新規拠出の必要性や世銀グループを通じた支援の意義や支援による成果について、英語だけではなく日本語を含めた多様な言語で広報を行う等、ドナー国の納税者にとってより分かりやすく説明して頂くことを求めます。


  4. 結語

     現在、世銀グループでは、キム総裁のリーダーシップの下、開発問題の解決を重視した支援を行う「Solutions Bank」となるべく、大胆な組織改編が行われています。本年7月に新たな組織がスタートするわけですが、新たな世銀グループが、複雑化する国際経済・社会情勢の中、開発に係る多様なリスクを適切に対応し、持続的な経済成長と貧困削減に向け、着実に政策を実施し、大きな成果を実現することを期待しています。

     最後に、世銀グループがより高い開発効果を上げるためには、組織改編を進めると共に、職員構成をより多様化させる必要があります。具体的には、言語のハンディキャップを認めつつ、非英語圏のスタッフを積極的に登用していくこと、及び、民間企業出身者や弁護士等法曹界出身者、社会科学のみならず自然科学を含めた幅広い分野からの研究者の登用が求められます。日本としても、資金面や政策面での貢献だけではなく、より良い世界を築くために、世銀グループに対してその出資比率に見合うよう、人的な貢献も積極的に行っていきたいと考えています。

(以 上)