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第70回世銀・IMF年次総会 麻生財務大臣総務演説(平成27年10月9日 於:リマ)

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1.世界経済、日本経済
 世界経済は全体として緩やかながら回復を続けていますが、新興国や資源輸出国を中心に下方リスクが存在しています。新興国においては通貨が全体として下落圧力にさらされているために、これ以上の緩和的な金融政策には限界がある一方、国によっては財政出動の余地も少なく、需要喚起の政策手段は限られています。加えて、中国経済の減速懸念や先進国のマクロ政策運営の不確実性を背景に、金融市場の変動も高まっています。このような経済環境下においては、不確実性を緩和し透明性を向上させるため、市場参加者とのよりスムーズなコミュニケーションを取りつつ、きめ細やかな政策運営を行っていくことが重要となります。

 日本経済は、雇用・所得環境が改善し、設備投資などの民需に持ち直しの動きがみられ、緩やかな回復基調を続けています。今後を展望すると、非正規雇用者の雇用転換の動きや改善傾向にある所得環境を背景とした個人消費の改善に加えて、過去最高水準となった企業利益を背景とした設備投資の増加が見込まれるなど、景気は緩やかに回復していくことが期待されます。平成26年度の企業の内部留保が対前年度比8%増、GDP比72.2%に達していることを踏まえ、好調な企業収益を配当・給与・設備投資などに回るように仕向けていくなど、経済の好循環が確かなものとなるよう、政府として引き続き経済運営を強力に推進していきます。


 アベノミクス「三本の矢」の政策により、雇用・所得環境は改善し、デフレ脱却まではもう一息ですが、日本には少子高齢化という長年の構造的課題が存在します。そこで、マル1名目GDP600兆円を目指す「強い経済」、マル2出生率1.8を達成するための「子育て支援」、マル3介護を理由に仕事をやめる方をゼロにするなどの「社会保障」を「新しい『三本の矢』」として掲げました。従来の「三本の矢」の政策は、経済政策の手段を示すものでしたが、これらの「新・三本の矢」は、具体的な目標を掲げたものです。これらの目標の達成に向けて、引き続き経済・財政運営に取り組んでまいります。

 強固で持続可能かつ均衡ある成長を実現するため、本年6月末に改訂した成長戦略では、労働人口の減少を踏まえ、積極的な投資を行って、生産性を向上させることを主要課題として掲げています。具体的には、企業の積極的な投資行動を促すために、コーポレートガバナンスの強化に努めているところであり、コーポレートガバナンス・コードや投資家のスチュワードシップ・コードを通じて、収益力の向上へとつなげていくことが期待されます。また、女性、外国人労働者の活用を引き続き推進しており、女性活躍推進のための法案を今国会で成立させ、企業や政府における女性管理職も増加しています。

 財政状況に目を転じると、公的債務残高がGDPの200%を超えるなど、極めて厳しい状況にあり、財政健全化に向けた取組を着実に進める必要があります。このような中、本年6月には2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて財政健全化計画を策定しました。計画の中間時点である2018年度において、プライマリーバランス赤字対GDP比マイナス1%程度及び国の一般歳出の水準の目安に照らして改革の進捗状況を評価し、その上で必要な場合は、歳出、歳入の追加措置等を検討することとしています。


2.IMF・世界銀行グループへの期待
 次にIMFに対する期待を申し上げます。

 足元の金融市場のボラティリティに変調が見られるなか、今後の国際金融情勢を注視し、引き続き国際金融システムにおける課題の解決に向けた取組が必要です。長らく続いた世界の緩和的な金融政策によって潤沢な資金が新興国に流入し、更にその資金が流出していくリスクが懸念される状況下で、国際的な資産価格の連動性が高まっています。そうした中、各国が自国に特有の課題に個別に対処するだけでは政策対応としては不十分であり、グローバルな金融安定のためのセーフティ・ネットを強化することの重要性が益々高まってきています。今後ともIMFのイニシアティブに期待するとともに、日本も積極的に議論に参加してまいります。

 IMFの資金基盤の強化については、2010年改革がパッケージとして存在する唯一の加盟国間でのコンセンサスであり、その実現が極めて重要です。しかしながら、同改革の発効の遅れを受けて議論されている「暫定的な解決策」の具体的なオプションにおいては、クォータシェアが2010年改革に近い形に収まる内容であることが不可欠だと考えています。日本は世界金融危機後、各国に先駆けてIMFに対して1000億ドル相当の融資枠を設定し、その後もNABやバイ融資取極による柔軟かつ迅速な資金基盤強化を主導してきたところです。クォータ改革の「暫定的な解決策」を検討するに当たっては、IMFがこれまでの日本の努力を評価し、我々の主張に格段の配慮が払われることを強く期待します。

 また、本年のSDR(特別引出権)構成通貨の見直しについては、客観的なデータに基づくIMFの技術的検討を待つ必要がありますが、引き続きこれまで確立されてきた原則に立脚した議論を期待します。

 次に世界銀行グループに対する期待を申し上げます。

 本年9月に持続可能な開発のための2030アジェンダが国連サミットで採択されました。世銀グループは「2030年までに極度の貧困を撲滅」と「繁栄の共有を促進」という二大目標や比較優位、他の国際機関等との相互補完性に留意しつつ、どのような役割を果たしていくべきか、そのために必要な資金をどのように確保していくのか、今後議論を深めていく必要があります。

 2030アジェンダは包括的かつ多岐にわたりますが、世銀グループの限られた開発資金を有効に活用するためには、特に重視する分野を定め、集中的かつ継続的に支援することが重要です。日本としては、国際保健、防災、質の高いインフラ、及び地球環境問題への取組を特に重視しています。

 世銀は、国際社会が世銀に期待する役割に適切に応えていく必要があります。そのために必要となる確固たる資金基盤を備えようとする世銀の挑戦を、日本は支持します。今後、民間資金や途上国の国内資金の動員の検討とあわせて進めていく、バランスシート最適化による既存資金の有効活用、IDA18次増資、IBRD/IFC増資についての議論に、日本は積極的に貢献していきます。

 これらの取組は、いずれも世銀が役割を果たすために必要となる資金の確保を目指すものであり、統一的・総合的な見地から検討を進めることが重要です。その際、途上国の世銀グループに対する具体的な資金ニーズをしっかりと検証・分析していく必要があります。また、足下では、新興国経済の減速、石油等の資源価格の低下など途上国を巡る環境が変化している中で、途上国の債務持続可能性への十分な配慮が必要です。

今後、2030アジェンダの実現に向けた世銀グループの役割に関する議論が本格化するに当たり、世銀グループにはドナーやクライアント等の多様なステークホルダーと意見交換を重ね、共通認識を形成する努力の継続を強く求めます。


3.結び
 1945年のIMFと世界銀行の設立から今年で70年が経過しましたが、この間、世界経済を取り巻く環境はダイナミックに変化し続け、両機関は常に新たな政策課題に直面してきました。IMF・世銀グループがこれまで果たしてきた大きな役割と国際社会に対する多大な貢献に敬意を表すとともに、今後も増え続けるであろう困難な世界的諸課題に対処し、強固で持続可能かつ均衡ある成長や貧困の削減の実現に尽力していくことを期待して、結びの言葉とさせていただきます。


(以上)