現在位置 : トップページ > 国際政策 > 国際通貨制度等〜国際通貨基金(IMF)等〜 > IMF・世銀年次総会総務演説 > 第69回IMF・世銀年次総会 麻生財務大臣総務演説(平成26年10月11日 於:ワシントンD.C.)

第69回IMF・世銀年次総会 麻生財務大臣総務演説(平成26年10月11日 於:ワシントンD.C.)

印刷用(PDF)

1.世界経済、日本経済
 世界経済は全体として緩やかながら回復を続けていますが、回復の度合いは国ごとにばらつきがあります。また、地政学リスクや金融環境の急変に係るリスクといった下方リスクが依然として存在していることに留意する必要があります。こうした中で、我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長の実現に向けて、各国の経済状況と政策余力を踏まえ、財政政策、金融政策及び構造改革等の最適なポリシー・ミックスを実施していく必要があります。また、各国の経済状況の差異によって生じる政策対応の違いについて、十分なコミュニケーションを図ることも重要です。

 日本経済について、2014年第1四半期及び第2四半期の実質GDP成長率は、本年4月の消費税率引上げの影響により大きく変動しました。しかしながら、経済の趨勢を見るため、2014年上半期をならして見れば、前年同期比で実質1.3%のプラス成長となっており、緩やかな回復基調にあると認識しています。


 こうした回復基調を確かなものとするためにも、成長戦略を着実に実行していくことが重要です。特に、本年6月に改訂された『日本再興戦略』では、日本企業が有する豊富な資金を成長分野への投資や賃金に回すとともに、企業の新陳代謝を促し、生産性・収益性向上につなげていくことを重視しています。こうした観点から、「コーポレートガバナンス・コード」の策定を含むコーポレートガバナンスの強化や、エクイティ、メザニン・ファイナンス、中長期融資等の成長資金の供給促進等に取り組んでいるところです。また、日本企業の「稼ぐ力」を高める取組を後押しするよう、成長志向に重点をおいた法人税改革に着手することとし、2015年度から、課税ベースの拡大等により財源を確保しつつ、税率の引下げを実施していきます。

 岩盤規制の改革についても、エネルギー、農業、健康医療等、幅広い分野で取組を実施しています。例えば、電力分野では、既に小売事業参入自由化を実現するための法案が成立したところですが、今後、送配電の法的分離に向けた取組を進めます。また、農業分野では、農地集約・大規模化に加え、40年以上続いた米の生産調整の見直しに向けた取組を進めます。更に、少子高齢化の中で、労働力人口を維持し、労働生産性を向上させるため、経済成長の担い手である女性・外国人の活躍促進と雇用改革に向けた取組を進めています。

 財政政策については、消費税率引上げに伴う反動減を緩和し、景気の下振れリスクに対応するため、2013年度補正予算や2014年度予算の早期実施に取り組んできたところです。また、経済再生と財政健全化の両立を実現しなければなりません。2015年10月に予定されている消費税率の10%への引上げについては、経済状況等を総合的に勘案しながら、本年中に適切に判断します。また、2020年度の基礎的財政収支の黒字化に向け、2015年度予算編成等を踏まえ、具体的な道筋を早期に明らかにできるよう検討を進めてまいります。


2.IMF・世界銀行グループへの期待
 次にIMFに対する期待を申し上げます。

 足元の金融市場のボラティリティは低下しているものの、今後、地政学的緊張の深刻化や米国での金融政策の正常化の動き等をきっかけとして、市場が想定以上にタイト化するリスクがあります。こうした中で、IMFは、強固な資金基盤の確保やグローバル・セーフティネットの強化を通じて、危機対応に万全を期す必要があります。

 IMFの資金基盤の強化については、その正当性、有効性、信頼性の維持・向上の観点からも、2010年改革の発効が引き続き最優先課題です。日本は、世界金融危機後、各国に先駆けてIMFに対して1000億ドル相当の融資枠を設定し、NAB(新規借入取極)やバイ融資取極による柔軟かつ迅速な資金基盤強化を主導してきました。こうした対応がIMFの機能強化と危機対応に非常に有効であったことは改めて強調しておきたいと思います。

 また、IMFは、世界金融危機後、予防的なファシリティの創設等、危機予防・危機対応ツールの拡充を通じてグローバル・セーフティネットを強化してきました。しかしながら、IMFが抱えるスティグマの問題は依然解消しておらず、こうしたツールは十分活用されているとは言えません。IMFには、正当性、有効性、信頼性の向上に向けて一層の努力を求めたいと思います。こうした中、IMFを補完する形で、アジアにおけるチェンマイ・イニシアティブの拡充や二国間通貨スワップ等、地域セーフティネットの拡充が進んでおり、日本としても、こうした取組を積極的に推進しているところです。引き続き、危機予防・危機対応に万全を期す観点から、IMFと協働して、セーフティネットを発展・強化させる方策について検討を進めていきたいと考えています。

 次に世銀グループに対する期待を申し上げます。

 エボラ出血熱の感染が拡大している西アフリカ諸国に対しては、世銀を始めとする各国際機関や各国政府が国際的に協調して支援していますが、特に世銀がリーダーシップを発揮している点を評価しています。あわせて、日本としても4500万ドルを超える支援や医療関係者の派遣等を表明しており、引き続き、エボラ出血熱の流行抑制に向けて貢献していきます。

 個々人は健康を維持しながら持てる能力を発揮することにより、経済・社会の発展に継続的に貢献することができます。そのためには個別の感染症対策のみならず、あらゆる保健ニーズに対応する保健医療システムの構築が必要です。日本は、世銀と協働しながら、全ての人々の適切な保健医療サービスを保障する「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を持続可能な形で実現するため、途上国への技術支援を提供していきます。

 気候変動の影響から近年大規模化の傾向が見られる自然災害は、長年の開発努力・成果を一瞬にして奪い去るリスクがあります。日本は本年2月に東京に設立された「世銀防災ハブ」と連携し、引き続き長きにわたって蓄積してきた豊富な防災の知見・経験を活かして途上国の開発を推進していきます。

 途上国が持続的に成長するためには増大するインフラ需要に応える必要があります。日本は、インフラ整備における環境・社会面での高いスタンダードを確保しつつ、民間資金を活用したインフラ整備の触媒機能を果たすために創設されるGlobal Infrastructure Facility (GIF)が実効性のある枠組みとなるよう、積極的に貢献します。


3.結び
 世界経済は、地政学的緊張や伝染病など経済以外に端を発する問題も含め、様々な課題に直面しています。政治経済の関係がますます密接になる中、IMF・世銀グループが加盟国と団結してこうした課題に対処し、強固で持続可能かつ均衡ある成長や貧困の削減の実現に尽力していくことを期待し、結びの言葉とさせていただきます。


(以上)