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第74回IMF・世界銀行年次総会麻生財務大臣総務演説(令和元年10月18日 於:ワシントンD.C.)

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1.世界経済、日本経済

 世界経済は成長を続けているものの、2018年後半以降モメンタムは弱含んでいます。来年以降、新興国経済を中心に回復が見込まれますが、足元の世界経済においては、貿易を巡る緊張の継続、地政学的な懸念や個別国の不透明な政治状況といった下方リスクに直面しています。こうした下方リスクの現実化を避けるために、国際協調の意義について認識を新たにし、これをより高い水準に押し上げてゆくことが重要であると考えます。

 こうした背景から、日本としても、国際協調を強化するという我々のコミットメントに基づき本年のG20の議長国を務めて参りました。このことは、我々がグローバル・インバランス、債務の透明性・持続可能性といった、多国間での枠組みに注力しそこから利益を得てきた国々の間で開かれた議論が必要な問題を本年のプライオリティとしたことからも明らかです。また、とりわけ、日本は6月の大阪サミットで「質の高いインフラ投資に関する G20 原則」や「経済の電子化に伴う課税上の課題に対するコンセンサスに基づいた解決策の策定に向けた作業計画」について、首脳レベルでそれぞれ合意・承認に至ることができました。これらの結果は、我々が総力を結集したときに国際協調が何を達成できるかの好例であるといえるでしょう。これまで何度も申し上げてきていることではありますが、日本は、国際協調から多くの恩恵を受けた国として、今後も貢献を惜しみません。

 日本経済については、雇用・所得環境の改善、高水準の企業収益など内需を支えるファンダメンタルズはしっかりとしており、景気は緩やかな回復を続けています。

 このような状況の下、引き続き、経済成長と財政健全化に並行して着実に取り組んでいく必要があり、その鍵となるのは少子高齢化への対応です。本年10月1日には消費税率を8%から10%に引き上げました。これにより、財政健全化だけでなく、増収分の一部を出生率の低下への対策に用い、強固で、持続可能で、均衡のとれた、包摂的な成長を実現します。また、引上げに当たっては、引上げに伴う短期的な需要変動の平準化を図るための「臨時・特別の措置」など、経済への影響を十二分に乗り越える対策を講じています。

 我々は、引き続き、財政、金融及び構造政策を個別にまた総合的に用いる経済財政運営を継続します。世界の相互の結びつきが高まる中、世界経済の下方リスクには引き続き十分目配りし、リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行します。

2.IMF及び世銀グループへの期待

 まず、両機関に対する期待を申し上げます。

 近年、一部の低所得国において、非伝統的な貸し手からの非譲許的な借入による公的債務の累積が問題となっています。債務の透明性向上と債務の持続可能性の確保のために、債務国と公的及び民間の債権者の双方による協働が不可欠です。IMF及び世銀が、「様々な角度からのアプローチ」を着実に実施し、債務国の能力構築支援を実施することを期待します。また、債務持続可能性の重要性について、借り手・貸し手双方の理解を促す取組を行っていくことを期待します。

 次に、IMFに対する期待を申し上げます。

 IMFによるサーベイランスは、世界経済や各国の足元の経済状況を認識し、適切な対応策をとる上で不可欠なサポートです。2020年に予定されている包括的なサーベイランス見直しのように、サーベイランスの不断の改善を支持します。加えて、本年のG20での議論の成果がIMFのサーベイランスにも組み込まれ、そのようなサーベイランスにおける結果がIMFの貸付や能力開発プログラムにおいて有効に活用されることを期待します。

 IMFによる貸付は、グローバル金融セーフティネット(GFSN)の重要な柱であるとともに、アンゴラにおいて債務の透明性・持続可能性の取組が進展しているように、支援対象国自身による経済改革を後押しする重要な役割があります。加えて、強固なGFSNを実現するためには、外貨準備や二国間スワップ、地域レベルでの地域金融取極(RFAs)を含む、GFSNの他の要素とIMFとの連携も重要です。ASEAN+3地域に関しては、IMFとチェンマイ・イニシアティブ(CMIM)の連携、そしてIMFとCMIMの実施支援機関であるASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)との連携は、地域におけるGFSNを強化するものとして重要な役割を果たしています。

 日本は、IMFが今後も十分な資金を有しGFSNの中心としての役割を果たすことを支持します。特に、新規借入取極(NAB)とバイ融資取極(BBAs)が短期間のうちに失効する予定であり、IMFのこのような役割を支援するために迅速な対処が必要です。その点で、今般の借入資金を活用したIMF資金の確保について、加盟国間で合意できたことを歓迎します。

 IMFがクォータを基礎とする機関であることは疑いありませんが、テールリスクを含むすべてのリスクにクォータで備える必要はなく、また、効率的ではありません。必要に応じて機動的に動員できるNABやBBAsといった借入資金は、今後も引き続きIMFの資金の重要な要素であるべきです。また、IMFが能力開発や低所得国支援を行うための資金も必要です。そのため、こうしたクォータ以外の資金は一時的なものではなく、IMF資金の恒久的な要素として扱われる必要があります。この観点から、加盟国が自発的に貢献するインセンティブを確保するためのメカニズムを強化する必要があると考えます。

 十分な資金の確保に加え、IMFの正統性、有効性及び信用を維持するため、ガバナンス改革の不断の継続が必要です。第15次GRQにおけるガバナンス改革の我々のコミットメントは第16次GRQにおいても弱められるべきではありません。改革の継続の保証のために、第16次GRQについて現実的かつ野心的な期限設定がなされたことを歓迎します。

 また、我々は本年のG20の議論を踏まえ、特に以下の分野において、IMFが国際社会に更なる貢献を果たすことを期待します。

 IMFが、特に経済効率性を最大化しインフラ・ガバナンスを強化するという観点において、公共投資マネジメント評価(PIMA)やその他の分析ツールを最大限利用し、G20質の高いインフラ投資原則の実施を支援することを期待します。

 グローバルステーブルコインなどの金融技術革新によって生まれた新たな決済システムは、より効率的な決済システムをもたらし得る一方で、公共政策や規制に関する広範な懸念をもたらします。こうした問題は、グローバルステーブルコインや潜在的にシステム全体に影響を持ちうるその他の類似の取組が開始される前に特定され、適切な対応がとられる必要があります。IMFによる深い分析と政策提言の報告に期待します。

 次に世銀グループに対する期待を申し上げます。

 最初に、インフラは経済の成長と繁栄の原動力であり、持続可能な成長と開発のための強固な基盤となるものです。インフラにおいて、質と量は補完的な関係であり、質の高いインフラ投資は、インフラそのものの物理的価値を超え、長期的な経済・社会への波及効果をもたらします。こうしたことを念頭に、G20大阪サミットでは、「質の高いインフラ投資の関するG20原則」が承認されました。今後は、策定された原則を具体的なプロジェクトに反映させていくことが重要であり、世銀グループが質の高いインフラ投資の推進に貢献することを期待します。

 次に、保健について申し上げます。強固な保健財政制度の構築は、人的資本形成の基盤となるUHC達成に不可欠です。今後は、具体的な取組を促すため、日本議長下のG20で取りまとめた「途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」に沿って支援が行われることを期待します。また、UHCの推進は保健危機への対応としても有用ですが、保健危機の発生に備えたprevention、preparednessの強化も必要です。日本が立上げを主導したPEF(Pandemic Emergency Financing Facility)は、民間資金も活用し、パンデミックの発生に際して迅速かつ効果的な支援を可能とする保険機能を備えた画期的な仕組みです。こうした保険機能がより効果的に発揮されるよう、後続フェーズの立上げに向けた検討が進められることを期待します。

 三点目に、自然災害への強靭性強化には自然災害保険の活用も重要です。日本も支援する東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF:Southeast Asia Disaster Risk Insurance Facility)は、年内に、ラオス・ミャンマー向け自然災害保険を開始します。その他のASEAN諸国、更に他の地域への拡大に向け、日本も協力していきます。

 四点目に、第19次IDA増資交渉について、日本は、質の高いインフラ、UHCファイナンス、パンデミック、債務持続可能性といった重要な課題への対応がしっかりと行われることを期待します。エボラ熱などのパンデミックについては、UHC達成に向けた平時からの取組強化に加え、万が一の事態に備え、資金面を含め、迅速に対応できる仕組みの構築が重要です。低所得国が抱える多様な開発ニーズに対応するためには、適切な資金規模の確保が重要であり、市場借入の継続が不可欠です。また、伝統的ドナーに加え、新興ドナーからの資金貢献も重要です。日本は、低所得国支援に果たすIDAの重要性に鑑み、引き続き、相応の貢献をしてまいります。

 最後に、IBRD・IFCの増資パッケージは、貧しい国への優先的な資金配分や民間資金の積極的動員を図るもので、着実な実行が重要です。IBRDに続き、IFC総務会決議が一刻も早く採択されることを期待します。

3.結び

 日本は本年G20議長国として、世界経済の変化や課題に適切に対処していくべく、IMFや世銀グループからの協力を得ながらリーダーシップを発揮して参りました。また、両機関がこれまで果たしてきた大きな役割と国際社会に対する多大な貢献に敬意と感謝を表すとともに、今後も増え続けるであろう困難な世界的諸課題に対処し、強固で持続可能かつ均衡ある包摂的な成長や貧困の削減の実現に尽力していくことを期待して、結びの言葉とさせていただきます。


(以上)