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20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2016年4月14-15日 於:米国・ワシントンD.C.)

  1. 世界経済の回復は続いており、金融市場は、我々の2月の上海会合以来、年初来の下落幅のほとんどを回復した。しかし、成長は引き続き緩やかでばらつきがあり、継続的な金融市場の変動、一次産品輸出国が直面する課題及び低いインフレ率を背景に、世界経済の見通しに対する下方リスクや不確実性は残っている。地政学的な紛争、テロ、難民の動き、潜在的な英国のEU離脱によるショックがまた、世界経済の環境を複雑にしている。

  2. 我々は、成長を支え、市場を安定させるため多くのG20諸国が実施している政策対応を歓迎する。我々は、信認を醸成し、回復を強化するため、全ての政策手段‐金融、財政及び構造政策‐を個別にまた総合的に用いるという我々のコミットメントを再確認する。金融政策は、中央銀行のマンデートと整合的に、引き続き経済活動と物価安定を支える。しかしながら、金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらない。我々の財政政策は経済を支えることを意図しており、我々は、強靭性を高め、債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保しつつ、経済成長、雇用創出及び信認を強化するため機動的に財政政策を実施する。我々はまた、質の高い投資を優先することを通じるなどして、税制及び公共支出をできるだけ成長に配慮したものにしている。さらに、我々は引き続き、成長を支え、潜在的なリスクに対応するために、G20諸国が必要に応じてとりうる各国の状況に応じた政策オプションにつき追求する。我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうることを再確認する。我々は、為替市場に関して緊密に協議する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないことを含む、我々の以前の為替相場のコミットメントを再確認する。我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する。我々は、政策に関する不確実性を軽減し、負の波及効果を最小化し、透明性を向上させるために、マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行う。

  3. 我々は、OECD、IMF、その他の国際機関の支援を得て、我々の強化された構造改革アジェンダについて具体的な進展を果たした。我々は、優先分野を特定しそれに合意したところであり、それをもとに、7月までに、各国が改革に取り組む際に参照するものとしての一連の原則をさらに発展させ、それに合意する。我々は、国ごとの状況の多様性を考慮した上で柔軟に適用される優先分野と原則により、恩恵を受ける。我々は、7月の会合で承認される予定の、国ごとの状況の多様性を考慮しつつ構造改革と課題の努力及び進捗を監視し評価する助けになる一連のインディケーターに関する提案を期待する。我々は、投資戦略を成長戦略と統合するアプローチに合意した上で、引き続き成長戦略の効果的かつ適時の実施にコミットする。我々は、我々の成長戦略が変化する経済状況に適応しつつブリスベンサミットで設定された我々の全体の成長目標と整合的になるように、強化された各国間のレビューを含め、我々の成長戦略における構造政策とマクロ経済政策を見直し、改定している。我々は、成長の原動力として、世界の貿易を再興させ、質の高い投資を引き上げ、イノベーションを促すための更なる手段について模索する。我々は、更なる包摂性を促進し、過度の世界的な不均衡を縮小させることに引き続きコミットしている。

  4. 我々は、質と量の両面からインフラに焦点を当て、投資アジェンダを前進させるという我々のコミットメントを再確認する。我々は、国際開発金融機関(MDBs)が、バランスシートを最適化する行動計画を実施に移すこと、及び質の高いプロジェクトに関する量的目標を作成し民間資金の動員を含めてインフラ投資を支える共同行動を取ることを奨励する。我々は、地域レベルのものも含むインフラ・プログラム間の、相乗効果と連携を強化する国際的なインフラ連結性アライアンスを発足させるための更なる作業に期待する。我々は、インフラや中小企業への融資手法の多様化のための政策指針ノートを策定する。我々は、G20/OECDのコーポレートガバナンスと中小企業ファイナンスの原則並びに指針としての中小企業ファイナンスに関するG20行動計画の実施を歓迎し、支持する。我々は、グローバル・インフラストラクチャー・ハブが提出した知識共有に関するレポートを歓迎する。

  5. 我々は、安定的かつ強靭な国際通貨システム(IMS)を引き続き強化するための行動をとっている。我々は、IMFと地域金融取極とのより効果的な連携を含め、IMFを中心とするグローバルな金融セーフティネット(GFSN)を更に強化するための作業を支持する。我々はまた、IMFの貸出手段の改善に向けた取組みを支持する。我々は、強固でクォータを基盤とし、かつ十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、新たな計算式を含め、第15次クォータ一般見直しを2017年の年次総会までに完了させることを期待する。我々は、第15次見直しにおけるクォータ・シェアの調整の結果、ダイナミックな国々のシェアが、これらの国々の世界経済における相対的な地位に沿って増加し、その結果、新興市場国・途上国全体としてのシェアが増大しうることを再確認する。我々は、世界銀行グループの、合意されたロードマップと時間的枠組みに従った投票権の見直しを期待している。より秩序立った、適時の、予見可能な公的債務再編プロセスを円滑化するために、我々は、公的債務の債権者と債務者の対話を促進し、また、強化された契約条項の組込みを促進するために作業している。我々は、10年に及ぶ論争を終わらせ、国際資本市場へのアクセスを回復させるアルゼンチンの取組みにおける進捗を歓迎する。IMF、BIS、FSB、OECDの作業に基づき、我々は、資本フローと資本フローの変動に起因するリスクに関する監視と分析を引き続き向上させる。我々は、IMFが進めている、資本フローへの対処についての各国の経験と政策を見直し、生じつつある問題を特定する作業を歓迎する。我々はまた、OECDが資本移動自由化コードの見直しを行っていることに留意する。我々は、特別引出権(SDR)第11基本期間におけるSDRの配分量と、公式な外貨準備高をSDR建てで公表することについて議論する。我々は、SDRのより広い使用に関する可能性の検討に期待する。

  6. 我々は、残された中核的な要素を最終化し、バーゼルローマ数字3やTLAC(グローバルなシステム上重要な銀行の総損失吸収力)の基準を含む、これまでに合意した金融セクター改革の課題の適時、完全かつ整合的な実施を支持するというコミットメントを再確認する。我々はまた、銀行セクターにおける資本賦課の全体水準を更に大きく引き上げることなくバーゼルローマ数字3の枠組みの一貫性を確保し最大限有効なものとするため、その枠組みの要素を改良するバーゼル銀行監督委員会の作業に対する支持を再確認する。我々は、改革の実施と影響の監視を、我々の全体的な目的とそれらとの整合性を確保するため、引き続き向上させる。これは、重大で意図せざるいかなる影響への対処によることを含む。我々は、実効的なマクロプルーデンス政策の促進に役立てるために、マクロプルーデンスの枠組みと手段に関する国際的な経験の調査を行い、我々の次回会合までに報告するというIMF、FSB(金融安定理事会)及びBIS(国際決済銀行)の協調作業を期待する。我々は、各国・地域及び各資産クラスにおける市場流動性の変化の程度、原動力、及び予想される持続性を包括的に評価し必要なら政策手段を検討するという、他の基準設定主体と協力したFSBの作業を歓迎する。我々は、資産運用業に関連する構造的脆弱性に対処するための政策提言に関する2016年半ばに予定されたFSBの市中協議を期待する。我々は、シャドーバンキング主体に係る政策枠組みの国別の実施に関するFSBのピアレビューの報告を期待し、特定された欠陥への対処を加盟国に求めるとともに、適切な場合には更なる政策提言のための論拠を評価することをFSBに求める。我々は、金融市場インフラのための原則の実施を加速し、また、危機管理グループ等のクロスボーダーの協力取極めに関するものを含む、中央清算機関の強靭性、再建計画及び破綻処理可能性の向上のための作業を進展させるというコミットメントを再確認し、9月のFSBによる報告を期待する。我々は、FSBが調整する行動計画の下でのものを含む、コルレス銀行サービスの減少を評価し、必要に応じて対処するためのFSB、FATF(金融活動作業部会)、世界銀行グループ、OECD及びIMFによる作業を支持し、サミットに提出するための進捗報告書を求める。我々は、中小企業金融の向上、デジタル金融包摂の促進、及びデータ収集と指標の改善に関するGPFI(金融包摂のためのグローバルパートナーシップ)の作業への支持を再確認する。

  7. 我々は、G20/OECD BEPSパッケージの適時かつ広範な実施という我々のコミットメントを再確認し、新たな包摂的枠組みに、その第1回会合が6月に開催されることに留意しつつ、全ての関係・関心のある国・地域が対等な立場で早急に参加することを奨励する。G20は、国際的に合意された透明性に係る基準の効果的かつ広範な実施の重要性について強く再確認する。従って我々は、自動的情報交換に係る基準を2017年又は2018年までに実施することにコミットしていない、全ての金融センター・地域を含む全ての関係する国に対して、遅滞なくコミットすること及び多国間条約に署名することを求める。我々は、2017年のG20サミットまでに、全ての国・地域が自らのグローバル・フォーラムのレーティングを、満足な水準まで改善することを期待する。我々は、OECDに対し、G20諸国と協力しつつ、我々の7月会合までに税の透明性に関する非協力的地域を特定するための客観的基準をつくることを課す。仮にグローバル・フォーラムの評価によって進捗が見られなければ、G20諸国による非協力的地域に対する防御的措置が検討される。我々は、税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム報告書が年末までに作成されることを期待する。我々は、各国及び国際機関による途上国の税分野に関する能力を強化するための足並みをそろえた継続した努力を歓迎する。我々は、G20メンバー国がアジス税イニシアティブの原則へのコミットを検討することを奨励する。

  8. G20は、特に法人及び法的取極めの実質的所有者情報に関し、金融の透明性及び全ての国・地域による透明性に関する基準の効果的な実施に付した高い優先性を再確認する。法人及び法的取極めの実質的所有者情報の透明性の改善は、国際金融システムの清廉性を守り、これら法人及び法的取極めが、腐敗、租税回避、テロ資金供与、マネーロンダリングの目的で悪用されることを防止するために、極めて重要である。G20は、全ての国・地域が法人及び法的取極めの透明性及び実質的所有者に関するFATF勧告を完全に履行することの重要性を再確認し、これに関し模範を示す決意を表明する。我々は、課税逃れ、テロ資金供与及びマネーロンダリングに対処する目的のため、各国・地域による権限ある当局の実質的所有者情報の入手可能性の改善及び権限ある当局間の国際的な実質的所有者情報の交換の重要性を特に強調する。我々は、FATF及び税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラムに対し、我々の10月会合までに、実質的所有者情報の入手可能性、及びその国際的な交換を含む、透明性に関する国際基準の履行改善のための方法についての初期提案を提示することを求める。

  9. 我々は、テロ資金供与のすべての資金源、技術及びチャネルと断固として戦い、対処するという我々の決意を再確認する。我々は、全ての国・地域に対して、FATF基準、FATFのテロ資金対策の新しい統合戦略及び国連安保理決議第2253号に関する規定の速やかで効果的な実施を含め、これらの取組に参加することを求める。我々は、FATFに対し、他の国際機関と協働しつつ、金融システムに残存する抜け穴及び問題を特定し対処するための取組を強化すること、並びにFATF基準が効果的かつ包括的であり、完全に履行されていることを確保することを求める。我々は、FATF型地域体に対し、強健なパートナーとなることを求める。我々は、IMF、OECD、FSB、世界銀行グループに対し、それぞれの専門分野における、不正な資金の流れの資金源、技術、チャネルに関する独自の分析を提供することにより、新たに生じる課題への対処にあたりFATFを支援することを求める。

  10. 我々は、グリーン投資に民間資本を動員することにおける課題を明らかにする、G20グリーン資金スタディグループ(GFSG)の作業の進捗を歓迎する。これらの課題の多くは、金融のイノベーション、知識の共有と能力開発、リスク分析、国際的な協力によって対処される。我々はGFSGに、7月の会合までに提出する統合報告書の一部として、各国による検討のために、グリーン金融を発展させ、グリーンボンド市場を拡大し、機関投資家による環境的な要素の統合を支え、グリーン資金の活動の進捗を測るための手法を策定するための、より具体的な選択肢を構築することを求める。

  11. 気候変動枠組条約における資金供与制度の運営機関の重要性を認識しつつ、我々は、緑の気候基金の戦略計画の承認を歓迎し、基金の運営を拡大させるための引き続きの努力を求める。我々は、気候変動に係るパリ協定の適時の実施についての我々の要請と、気候資金に係る先進国及び国際機関によるコミットメント及びその他の国による発表を再確認する。我々は、気候資金の監視と透明性の重要性を確認する。我々は気候資金スタディーグループ(CFSG)に、我々の7月の会合までに、今年の作業を最終化し、報告することを求める。我々は、持続可能な開発のための2030 アジェンダの実施へのコミットメントを再確認する。

  12. 我々は、貧困層への支援の必要性を認識しつつ、中期的に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し、及び段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認する。さらに、我々は、全てのG20諸国が、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金に対する、自発的な各国間のレビューへの参加を検討するよう奨励する。