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20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2016年2月26-27日 於:中国・上海)

  1. 我々は、主要な世界経済の課題を検討してこれに対処し、杭州サミットの政策アジェンダについて前進するために上海で会合した。世界経済の回復は続いているが、依然としてばらつきがあり、強固で持続可能かつ均衡ある成長のために我々が期待する水準に達していない。変動の大きい資本フロー、一次産品価格の大幅な下落、地政学的な緊張の高まり、潜在的な英国のEU離脱及びいくつかの地域における大量かつ増加する難民がもたらすショックなどを背景に、下方リスクと脆弱性が高まっている。加えて、世界経済の見通しが更に下方修正されるリスクへの懸念が増大している。これらの課題を認識しつつも、我々は最近の市場の変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではないと判断している。多くの先進国では経済活動の緩やかな拡大が続き、主要な新興国の成長は引き続き強いと予想される。しかしながら、我々は世界経済の成長という共通の目的を実現するため、更なる行動が必要であることに合意する。我々は、引き続き世界の経済・金融動向を注視する。

  2. 過去数年間、G20は成長、投資及び金融安定の強化に関し、重要な成果を挙げてきた。我々は、信認を醸成し、回復を維持・強化するための行動をとっている。これらの目標を達成するため、我々は全ての政策手段‐金融、財政及び構造政策‐を個別にまた総合的に用いる。金融政策は引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に、経済活動と物価安定を支えるだろう。しかしながら、金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう。我々の財政戦略は成長の下支えを企図しており、強靭性を高め債務残高対GDP 比を持続可能な道筋に乗せることを確保しつつ、経済成長、雇用創出及び信認を強化するため、我々は機動的に財政政策を実施する。我々はまた、質の高い投資へと支出を重点化することを含め、税制及び公共支出をできるだけ成長に配慮したものにしている。我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長の実現に向けた努力を支える上で相互補完的なマクロ経済政策と構造政策が果たす役割を再確認する。構造改革の早急な進展は、中期的に潜在成長力を高め、経済をより革新的、柔軟かつ強靭にする。潜在的なリスクへの対応力をより高めるべく、我々は引き続き、成長と安定を支えるためにG20諸国が必要に応じとり得る政策オプションにつき追求する。我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。我々は、為替市場に関して緊密に協議する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないことを含む、我々の以前の為替相場のコミットメントを再確認する。我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する。我々は、政策に関する不確実性を軽減し、負の波及効果を最小化し、透明性を向上させるために、マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行う。

  3. 我々は、経済成長を実現することの重要性、及び、生産性と潜在成長を高めるために構造改革が果たす重要な役割を再確認する。我々は、2018年までにGDPを追加的に2パーセント引き上げるとの目標を達成するため、2016年において国別の改定成長戦略の実施を優先課題とし、特に重点を置く。過去の国別のコミットメントに基づき、我々は、G20諸国が改革に取り組む際に参照するものとしての一連の優先課題と原則の策定や、国ごとの状況の多様性を考慮した上で構造改革の進捗及び構造的課題への取組みの妥当性の評価や監視を更に改善するためのインディケーターシステムの作成を含め、構造改革アジェンダを更に強化することにコミットしている。この強化された構造改革アジェンダは、強固で持続可能かつ均衡のある成長のためのフレームワークの下に設けられている、既存のワーク・ストリームに組み込まれるだろう。我々の取組みの効率性を高めるため、我々は、投資戦略を成長戦略と統合し、目標達成に向け、引き続きそれらの戦略の適時かつ効果的な実施にコミットする。我々は、強化された各国間のレビューを含め、統合された戦略を検討し、我々全体の成長目標と我々の統合的な目標である強固で持続可能かつ均衡のある成長にむけた進捗を確保するために、必要に応じて戦略を調整する。成長のための貿易及び投資の重要性と、それらの最近の弱さを認識しつつ、我々は国際機関の支援を得て、これらの分野における潜在的な政策手段を検討する。我々は引き続き、更なる包摂性を促進し、過度の世界的な不均衡を縮小させるための行動を取る。

  4. 我々は、質と量の両面からインフラに焦点を当て、投資アジェンダを前進させるという我々のコミットメントを再確認する。我々は、国際開発金融機関(MDBs)がアンタルヤで合意された通り、バランスシートを最適化する行動計画を7月までに提示することを期待している。インフラ開発の促進における国際金融開発機関の独自の役割に鑑み、またインフラ投資と貧困削減を促進するとの国際金融機関のマンデートを考慮して、アディスアベバ行動アジェンダで要請された通り、我々は国際開発金融機関が質の高いプロジェクトに関する量的目標を作成した上で、民間資金を動員することを含めて既存及び新規の国際金融開発機関との協力を強化し、複数国・機関の協力的な協調融資による協力モデルを奨励し、プロジェクトの準備に関する作業を支援する共同行動を取ることを奨励する。連結性の強化は、国内インフラによる正の波及効果を最大化し、更なる投資機会を創出するために重要である。我々は、既存インフラ・プログラムとの連携と相乗効果を強化する国際的なインフラ連結性イニシアティブを発足させる。我々は、インフラ投資をアセットクラスとして促進し、G20/OECDのコーポレートガバナンスと中小企業ファイナンスの原則の強固な実施を奨励し、国際的な投資家の関与と、資本市場の発展の促進を通じて特にエクイティ・ファイナンスに焦点をあてたインフラ融資手法の多様化に貢献する政策パッケージの立案を支援する。

  5. 安定的かつ強靭な国際金融アーキテクチャーは、強固で持続可能かつ均衡ある成長及び金融の安定のための主要な要素である。我々は、国際通貨システム(IMS)に関するIMFの現状評価も活用し、IMSの円滑な機能及び秩序ある発展を促進することを目指す、国際金融アーキテクチャー作業部会(IFAWG)の作業計画を承認した。我々は、2010年のIMFクォータ・ガバナンス改革の発効を歓迎する。我々は、新たな計算式を含め、第15次クォータ一般見直しを2017年の年次総会までに完了させるとのタイムテーブルを支持し、強固でクォータを基礎とし、かつ十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、世界銀行グループが、合意されたロードマップと時間的枠組みに従って、徐々に衡平な投票権を達成するため、投票権見直しを実施することを支持する。我々は引き続き、公的債務再編プロセスの秩序及び予見可能性を促進し、債務持続性フレームワークを強化する。資本フローは国際通貨システムの中心的な構成要素である。世界経済における現下の動向に鑑み、我々は、より適時なリスクの特定を含め資本フローをよりよく監視し、各国の経験を踏まえ、巨額で変動しやすい資本フローから生じる課題に対処する上でとり得る政策手段及び枠組みについて現状評価を行い、適切に検証を行う。我々は、十分で効果的なグローバルな金融セーフティネット(GFSN)の重要性を強調し、GFSNの構造に関するIMFの分析を4月に議論することを期待する。我々は、2015年のIMFによる特別引出権(SDR)価値決定手法のレビュー完了を歓迎し、SDRのより広い使用に関する可能性の検討及び現地通貨建て債券市場に関する更なる作業を支持する。

  6. 我々は、バーゼルIIIやTLAC(グローバルなシステム上重要な銀行の総損失吸収力)の基準を含むこれまでに合意した金融改革の適時、完全かつ整合的な実施に引き続きコミットしている。この目的のため、我々は、各国当局に対し、実効的なクロスボーダーの破綻処理枠組みや店頭デリバティブ改革の実施におけるものを含むクロスボーダーの協力を強化すること、及びサンクトペテルブルク宣言に則り、正当化されるときには、相互の規制に委ねることを奨励する。我々は、銀行セクターにおける資本賦課の全体水準を更に大きく引き上げることなくバーゼルIIIの枠組みの一貫性を確保し最大限有効なものとするため、その枠組みの要素の改良に係るバーゼル銀行監督委員会による作業を支持する。我々は、引き続き、規制改革の実施及び影響を監視し,評価する。これは、新興市場及び途上国に対するものを含む、規制改革のいかなる重大な意図せざる影響への対処を含む。我々は、グローバルなシステム上重要な保険会社の評価手法の改善のための進行中の作業と、国際保険資本基準の開発における合意されたタイムラインに従った更なる進展を支持する。我々は、合意されたCPMI-IOSCO(決済・市場インフラ委員会-証券監督者国際機構)の金融市場インフラ(FMIs)のための原則の実施と、金融市場インフラの規制・監視の更なる強化を強く奨励する。我々は、複数の国・地域にわたってシステミックな中央清算機関(CCPs)のための協調取極めを含む、中央清算機関の強靭性、再建計画及び破綻処理可能性に関する欠陥の特定と対処における更なる進捗を期待する。我々は、シャドーバンキングや資産運用業、その他の市場型金融に関連するものを含め、金融システムにおいて生じつつあるリスク及びぜい弱性を注意深く監視し続け、必要となれば対処する。我々は、簡素で透明性が高く比較可能な証券化商品を特定するための基準に関するBCBS(バーゼル銀行監督委員会)とIOSCO(証券監督者国際機構)の作業を歓迎する。我々は、市場流動性の変化と市場の安定に対する影響を包括的に検証し、必要に応じて政策手段を検討する。我々は、コルレス銀行サービスの減少に関するFSB(金融安定理事会)の作業計画に示された、国際機関による継続中の作業を歓迎し、必要に応じてこの問題に対する評価と対処における進捗を加速させることを期待する。我々は、マクロプルーデンスの枠組みと手段に関する経験と潜在的な教訓の調査と我々の7月の会議までの報告のためのFSB、IMF及びBIS(国際決済銀行)により計画されている作業を歓迎する。我々は、金融包摂のアジェンダの強化に引き続きコミットしている。我々は、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)に対し、G20中小企業行動計画の実施のための枠組みを策定し、デジタル金融包摂に関するハイレベル原則の策定とデータ収集と指標の改善を探求することを求める。

  7. G20/OECD税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトの広範で、一貫した、そして効果的な実施は、公平で現代的な国際課税システムにとって極めて重要である。我々はBEPSプロジェクトを適時に実施するという我々のコミットメントを再確認し、税の公平性及び公平な競争条件を確保するため、BEPSに関連する問題へのモニタリングと対処を続ける。一貫したグローバルな取組みを確保するために、我々はOECDより提案されたBEPSプロジェクトのグローバルな実施のための包摂的枠組みを支持し、発展途上国を含む、BEPSプロジェクトの実施にコミットする全ての関係・関心ある非G20諸国・地域に対し、同枠組みへの対等な立場で参加することを奨励する。我々は、発展途上国がBEPS実施に際し直面する特有の課題が枠組みの下で適切に対処されるべきことを支持する。我々は要請に基づく情報交換及び自動的情報交換(AEOI)のための基準の実施に引き続きコミットし、全ての金融センター及び国・地域に対して、2017年又は2018年末までの実施を求める。我々は全ての国に対する多国間税務行政執行共助条約への参加の呼びかけを再確認し、グローバルフォーラムによる進捗報告を期待する。我々はアジス税イニシアティブ、税務行政診断評価ツール及び国境なき税務調査官を含む、発展途上国が抱える税の問題に関する彼らのニーズに応えるための能力強化を目的とした既存の様々なイニシアティブを歓迎する。この点に関して、中国は国際税制の企画・研究並びに発展途上国への技術支援のための国際税制研究センターを設立することで貢献する。我々はまた、IMF、OECD、国連及び世界銀行グループが税プラットフォームを共同で立ち上げるという新たな提案を歓迎するとともに、これらの機関に対し、技術支援プログラムの効果的な実施を確実なものとすることに資するメカニズムと、税プロジェクト及び直接の技術支援に対する各国の資金の貢献方法について提案をすること、そして我々の7月の会合において提案を報告することを求める。我々は持続的な経済成長を達成するための税制の役割を認識し、7月に開かれるG20税シンポジウムにおいて更にこの問題を探求していく。我々は不正な資金の流れが我々の経済へ与える重大な悪影響を認識し、このテーマについてG20としての作業を引き続き進める。

  8. 我々は、断固としてテロ資金供与と闘う決意である。我々は、テロ資金供与の全ての資金源、技術及びチャネルに対処するための取組を強化し、我々の協力と情報交換を強化する。我々は、全ての国に対し、全ての国・地域におけるFATF基準及び国連安保理決議第2253号に関する規定の速やかな実施を含め、これらの取組に参加することを求める。我々は、FATFに対し、他の国際機関と協働しつつ、金融システムに残存する抜け穴及び問題を特定し対処するための取組を強化すること、並びにFATF基準が効果的かつ包括的であり、完全に履行されていることを確保することを求める。我々は、FATFに対し、テロ資金供与の脅威、資金源、資金調達方法及び資金使用を特定、分析、対処する取組を強化することを求める。

  9. 喫緊の環境課題とグリーン資金の動員の重要性を認め、我々はG20グリーン資金スタディグループ(GFSG)を設立した。 我々はGFSGに、グリーン資金の制度及び市場の障壁を明らかにし、またグリーン投資に民間資本を動員するため、金融システムの能力を高めるための選択肢を、各国の経験に基づき構築することを求める。GFSGは他のG20グループ、その他外部のイニシアティブ、及び民間部門と協力する。我々はGFSGに、7月の会議までに統合報告書を提出することを期待する。

  10. 我々は、気候変動に係るパリ協定の採択と気候資金に係る先進国及び国際機関によるコミットメント及びその他の国による発表を歓迎し、タイムリーな実施を求める。先進国の締約国は、気候変動枠組条約に基づく既存の義務の継続において、緩和及び適応に関する開発途上国の締約国を支援する資金を、緑の気候基金を通じ供与される支援を含め、供与する。他の締約国は、任意に、このような支援を提供すること又は引き続き提供することを奨励される。我々は持続可能な開発のための2030アジェンダの実施へのコミットメントを再確認する。

  11. 我々は、貧困層への支援の必要性を認識しつつ、中期的に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し、及び段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認する。さらに、我々は全てのG20参加国に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金に対する、自発的な各国間のレビューへの参加を検討するよう奨励する。