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第26回APEC財務大臣会合 大臣共同声明(仮訳)(2019年10月15日 於:チリ・サンティアゴ)

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  1.  我々、APECエコノミーの財務大臣は、2019年10月15日にチリ・サンティアゴで、チリ財務大臣のフェリペ・ラライン議長の下、第26回会合を開催した。

世界経済および地域経済
  1.  我々は、2019年のAPECのテーマである「人々をつなぎ、未来を構築」を支持し、直面する経済及び金融市場の見通しについて議論し、適切な政策対応に関する見解を共有した。

  2.  昨年の会合以降、世界経済の成長は弱まっており、下方リスクが増大してきている。先行きについては、世界経済は2020年に向けて緩やかに上向くことが期待されるが、経済の見通しは、世界経済の不確実性の増大を受けて引き続き課題が多い。とりわけ、貿易と地政を巡る緊張は増大してきている。我々は、これらのリスクに対処し続けるとともに、更なる行動をとる用意がある。

  3.  この文脈で、我々は、マクロ経済及び構造政策が、強固で、持続可能で、革新的で、包摂的で、かつ、均衡ある成長を実現し、APEC域内の生活水準を高めるための役割を果たすことを再確認する。我々は、世界経済が再び成長するよう、全ての利用可能な政策手段−金融、財政及び構造政策−を、可能な限り個別にまた総合的に用いることを約束する.

  4.  我々は、経済成長と雇用の創出を支えるため、包括的で機動的な財政政策を引き続き実施する。その際、包摂的かつ質の高い投資を優先し、経済及び金融の強靭性を高め、公的債務残高対GDP比が持続可能となることを確保する。

  5.  金融政策は、引き続き中央銀行のマンデートと整合的に経済活動を支え、物価の安定を確保すべきである。強固なファンダメンタルズや健全な政策、強靭な国際通貨システムは、為替レートの安定に不可欠であり、強固で持続可能な成長や投資に貢献する。柔軟な為替レートは、場合によっては、ショックを吸収するものになりうる。我々はまた、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する。我々は、通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない。

  6. 我々は、国際貿易・投資が、経済成長、技術革新、雇用創出、開発に重要であることを強調する。我々は、2019年5月のAPEC貿易担当大臣会合の結果を再確認する。

金融統合と金融包摂のためのデジタル経済
  1.  効率的・革新的・競争的な金融市場は、持続的な成長に重要である。我々は、技術革新が金融システムやより広く経済に対し大きな便益をもたらしうることを認識する。新しい技術は、金融監督と規制の機能の強化を可能とし、これは、コンプライアンスを促進・改善するため、APEC地域における幅広い産業に適用されうるものである。しかし、我々は、デジタル化が、マネーロンダリング対策に関係するものや、データの機密性、迅速性・能力の格差などを含むセキュリティ上の懸念などのリスクをもたらすことに注意している。

  2.  我々は引き続き、金融統合を促進し、競争とより良い市場環境を促進する規制の枠組みや、APEC地域において投資と技術革新を加速させる政策を策定していく。その際 、新しい技術や手段がもたらす新旧のリスクに適切に対処する。我々は、革新的な金融商品の設計と活用を加速するため、官民の地域協力プラットフォームを通じ、市場での金融革新を促す取組みについて知見を共有する努力を一層促す。

  3.  金融包摂の促進は、APEC地域において持続可能な経済成長を達成するために重要である。我々は、金融商品・サービスへのアクセスと利用の増加を通じて金融包摂を強化する全ての取組みを認識する。我々は、女性、貧困層、若年層、老年層、障がい者、遠隔農村地域の居住者、中小企業(SMEs)のアクセスの格差解消などを通じ、更に前進していくことに引き続きコミットしている。

  4.  我々は、金融包摂を確保し、金融の健全性と安心を促進する上で、強固な金融消費者保護枠組み、金融教育・リテラシー戦略、動機付けのメカニズムが重要であることを認識する。我々は、デジタル経済が格差解消を助ける潜在性を有し、消費者行動の理解や金融の包摂性、安定性、健全性を顕著に改善することができる金融商品の設計に大きな貢献をしうることを認識する。我々は、各エコノミーの状況に応じ、金融包摂上の格差に対処するため、具体的かつ重要な対応を行う。

  5.  我々は、経済協力機構(OECD)の支援を得て、2020年の提出を目指し、自主的な「デジタル金融包摂のAPECロードマップ」を策定するチリのイニシアティブを歓迎する。その実施は、各エコノミーに委ねられており、それぞれの準備状況に基づくものである。

災害リスクファイナンス・保険
  1.  我々は、災害ショックが政府支出を増加させ、経済活動を妨げることを認識する。政府が災害コストの相当部分を負担しなければならないエコノミーにおいては、財政リスクが上昇するおそれがある。事前に準備されたリスクファイナンスは、災害による政府の財政コスト削減に役立つであろう。我々は、アジア太平洋地域が自然災害に対して脆弱であることを認識し、地域において強靭な経済を構築するために、災害リスクファイナンス・保険(DRFI)に関する我々のアプローチを引き続き強化していくことの重要性を再確認する。

  2.  我々は、財政当局が、他の関連する公的機関や民間セクターと協調しながら参画することが、金融強靭性に貢献することを認識する。我々は、特に質の高い強靭なインフラのための革新的な災害リスクファイナンス・保険メカニズムや、その他の保険や資本市場を通じた利用可能なリスク移転の手法の開発を通じ、域内の金融強靱性強化に向けて協働することが共通の利益であることを再確認する。

税の安定性と協力、透明性の促進
  1.  税の安定性と透明性は投資決定において重要な要素であり、税のコンプライアンスと経済成長に影響しうる。そのため、我々は、APEC地域において、税の安定性を促進し、租税回避と脱税に対処することへのコミットメントを再確認する

  2.  我々は、この分野における協力の重要性を認識しつつ、全ての加盟エコノミーに対し、安定性、透明性、公平性を高めるような、持続可能かつ現代的な国際課税システムに向けた取組みを継続することを奨励する。我々は国際的に合意された税の透明性基準を広範に実施すること、及びこれらの分野において能力を構築することを引き続き支援する。我々はまた、OECD/G20の税源浸食と利益移転(BEPS)パッケージの実施が、引き続きAPECエコノミーの優先課題であることに留意する。我々は、OECD/G20のBEPS包摂的枠組みを通じ、経済の電子化に伴う課税上の課題への解決策が、2020年に合意されることの重要性を認識する。
インフラ開発と資金調達の加速
  1.  インフラ投資は、潜在的な成長力を現実のものとし、開発目標を達成していくために重要な役割を果たす。我々は、経済成長を高め、生産性を上昇させ、雇用創出と包摂性を促進し、地域統合を強化するため、APEC地域において質の高いバンカブルなインフラ案件への投資を促進する加盟エコノミーの取組みを歓迎するとともに、これに引き続きコミットしている。

  2.  我々は、ライフサイクルコストの観点から見たインフラプロジェクトの経済効率性を向上させることは、GDPの成長を高めうることを認識する。我々は、インフラの資金ニーズに応えるにあたり、持続可能なファイナンスのプラクティスと整合的な形で行っていくことに引き続きコミットしている。

  3.  我々は、金融協力による連結性強化のため、特に金融インフラの分野における、2015-2025年APEC連結性ブループリントの包括的な実施にコミットしている。我々は、国際金融機関や加盟エコノミーの金融機関、他の主要な関係者が、PPPを含め多様で持続可能なプロジェクト金融を提供するために協調していることを支持する。

  4.  技術進歩と革新的なアプローチはバンカブルなインフラプロジェクトの開発を加速し、これは地域の強靭性の促進や成長の維持に貢献する。我々は、互いの協力を通じ、インフラプロジェクトにおいて環境・社会配慮を効果的に盛り込み、自然災害やその他の関係リスクに対する強靭性を確保することができる。
セブ行動計画の実施
  1.  我々は、意味のある改革実行を促す具体的な成果を含む、セブ行動計画(CAP)の第一段階及び第二段階の取組みを進展させるメンバーエコノミーの努力を認識する。我々は、2016年に承認された、CAPの実行のためのAPEC戦略が来年完了することを踏まえ、来るべき年に向けた適切な戦略の策定を可能とすべく、2020年に調査を実施し、その結果を議論することを奨励する。
その他
  1.  我々は、デジタル技術の発展によりもたらされた横断的な課題と機会を認識し、メンバーエコノミーに対し、関連する構造改革に取組むための経験共有を通じ、更に協調することを奨励する。我々は、APEC財務大臣プロセスと経済委員会により共同して作成された、均衡のとれた、包摂的で、持続可能で、革新的で、確実な成長を促進するため、構造政策がいかにデジタル経済の潜在性を活用できるか議論した、2019年APEC経済政策レポート(AEPR)「構造改革とデジタル経済」を歓迎する。

  2.  我々は、域内エコノミー間での政策協力と経験を共有する活発なフォーラムとして、APEC財務大臣プロセスが重要であることを再確認する。

  3.  我々は、アジア開発銀行(ADB)、国際通貨基金(IMF)、OECD、世界銀行グループ(WBG)、APECビジネス諮問委員会(ABAC)の財務大臣会合プロセス(FMP)に対する継続的な支援に感謝する。

  4.  我々は、本年のAPEC財務大臣会合プロセスのホストを務めたチリに感謝する。我々は2020年10月、マレーシアにおける第27回会合で再会する。

附属文書−2019年の成果物
  1.  我々は、金融包摂能力構築パッケージと、2018年に開始したOECD/INFE報告書「APECエコノミーにおける金融教育」の完成を歓迎する。我々は、パプアニューギニア及びコアチームのリーダーシップと、APECポリシーサポートユニットの支援に感謝する。我々は、2020年に、金融リテラシー・金融包摂を測定する、グローバルな2019−20・OECD/INFEによる活動のリジョナルノートを受け取ることを期待する。

  2.  我々は、「新しい金融サービスデータエコシステムのためのAPECロードマップ」、「貿易とサプライチェーンファイナンスのデジタル化戦略」、「効果的な個人破産制度の必須要素」を作成したABACとアジア太平洋金融フォーラム(APFF)の取組みに感謝する。我々は、関心のあるエコノミーと国際機関に対し、民間セクターと協調してこれらを実行することを奨励する。我々は、ABACの金融包摂と金融統合に関する報告と推奨事項を歓迎する。

  3.  我々は、今年のアジア太平洋金融フォーラムが、開発協力財団の協力のもと、ABACとアジア開発銀行研究所の共催により、2019年9月に日本で開催されたことを歓迎する。

  4.  我々は、金融インフラ、特に信用情報の重要性を認識し、2019年10月の「信用情報報告システムワークショップ」を歓迎し、世界銀行、ABAC及びその他の開発パートナーの本分野における継続的な支援に感謝する。

  5.  我々は、2019年7月に開催された「フィンテックとレグテックにおける政策対話セミナー」を歓迎する。

  6.  我々は、2019年10月にチリにより開催された「投資判断への環境・社会・ガバナンス要素の統合セミナー」とその重要な成果に留意する。我々は、効果的なアプローチと課題に着目した、APEC地域における金融市場でのESG実施についての概要の作成をOECDに委託する。

  7.  我々は、メンバーエコノミーが災害によって引き起こされる経済・金融リスクに対処することを助けるための、2019年の自然災害リスクファイナンス・ワーキンググループの作業を歓迎する。我々は、2019年3月の、フィリピン、日本、ADBにより開催された、災害リスクの財務管理に焦点を当てた災害リスクファイナンス・保険(DRFI)スタディコースの開催を歓迎する。

  8.  我々は、気候関連財務情報開示タスクフォースの働きに留意する。

  9.  我々は、本年を通じた災害リスクファイナンス・保険の活動における世界銀行グループの貢献と支援に感謝する。我々はまた、2019年10月のチリ財務省と世界銀行グループにより行われた、「APEC災害リスクファイナンスセミナー:災害に対する財務リスク管理の強化」の開催を歓迎する。我々はまた、世界銀行グループによる、インフラの災害強靭性への資金調達に関する研究に留意し、ADB/OECDによる、災害リスク管理と資金調達のための技術と革新の影響に関する初期評価を歓迎し、2020年の最終報告書の提出と可能なフォローアップ作業を期待する。

  10.  我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)とアジア太平洋金融フォーラム(APFF)の、民間セクターの役割のインプットを通じた、自然災害リスクファイナンス・ワーキンググループの作業への貢献と支援及び、保険リスク証券の作業の開始、自然災害リスクファイナンス(DRFI)を高める技術を可能とする最先端のケーススタディ開発、2018年に財務大臣に承認されたマイクロ保険に関するロードマップ実施に向けた行動の準備を評価する。我々は、関心のあるエコノミーに対し、これらの取組みを進めるためにワーキンググループと協働することを奨励する。

  11.  我々は、セブ行動計画に対応して、OECDによって準備されたAPECエコノミーの税とその他の金融犯罪へ対処するための報告書を歓迎する。我々は、OECD/G20のBEPS包摂的枠組みによって策定された、経済の電子化に伴う課税上の課題への対応に関する最近の進捗を歓迎する。我々は、IMF/OECDの2019年税の安定性に関する進捗報告書を歓迎する。我々は、「税の透明性と情報交換に関するグローバルフォーラム」との継続的な関与や日本におけるOECD「アジア太平洋租税・金融犯罪調査アカデミー」の設立を通じた、税の安定性、情報交換(EOI)、能力構築及び相互支援を促進する2019年の取組みを歓迎する。

  12.  我々は、税の能力構築に関する我々の取組みを強化するため、2020年3月にチリにより開催される「BEPS、情報交換、透明性、税の安定性の進展及び税のグッドプラクティスの促進」ワークショップに期待する。我々は、来年のOECDの継続的なアップデートや国際課税の進行中の作業に関する他のワークショップを含む、更なる取組みを歓迎する。

  13.  我々は、持続可能かつ包摂的なインフラへの公的及び民間の投資を呼び込むような、APECの規制枠組みの能力を高めるグッドプラクティスの特定についての報告書が、OECDより、関連する国際機関との協力のもと、次の会合で提出されることを期待する。

  14.  我々は、セブ行動計画の取組み進展を図る官民協調を歓迎し、ABACのリーダーシップの下での、APFF、APFIF、アジア太平洋インフラ・パートナーシップの重要な貢献に感謝する。我々は公的セクターに対し、来年これらの取組みを更に進展させるため、積極的に民間セクターと協調することを奨励する。

  15.  我々は、APECと太平洋同盟の間での財務問題に関する協働イニシアティブの採択を通じた、太平洋同盟財務大臣会合とのアプローチを歓迎する。これは、今後数年間、共通の関心分野として作業する基礎を築き、作業を統合しその取組みの重複を避けるためのものである。我々はこの取組みの進展を期待する。

  16.  我々は、APECエコノミーにおけるインフラ資金調達に対する選定された効果的なアプローチに関するAPEC/OECDパッケージの最終版を歓迎する。

  17.  我々は、OECDに対し、他の関係機関の支援を得て、特定の政策分野におけるデジタルツールの活用についてのベストプラクティスと課題についてのポリシーノートを、次回会合までに作成することを委託する。