平成29年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)
- 輸入差止件数は、30,627件(前年比17.6%増)で、3年振りに3万件を超え、過去2番目の高水準でした。
- 輸入差止点数は、506,750点(前年比18.6%減)でした。
- 1日平均で、84件、1,300点以上の知的財産侵害物品の輸入を差し止めていることになります。
- 輸入差止価額は、推計で約113億円に上ります。
(注1)「輸入差止件数」は、税関が差し止めた知的財産侵害物品が含まれていた輸入申告又は郵便物の数です。
「輸入差止点数」は、税関が差し止めた知的財産侵害物品の数です。
例えば、1件の輸入申告又は郵便物に、20点の知的財産侵害物品が含まれていた場合は、「1件20点」として計上しています。
(注2)「輸入差止価額」は、正規品であった場合の推計価額です。
知的財産侵害物品の輸入差止実績の推移

○ 仕出国(地域)別輸入差止実績
- 輸入差止件数は、中国を仕出しとするものが28,250件(構成比92.2%、前年比18.1%増)で、8年連続で9割を超えています。次いで香港が828件(同2.7%、同15.5%増)、フィリピンが430件(同1.4%、同59.3%増)、韓国が322件(同1.1%、同24.6%減)でした。
- 輸入差止点数は、中国を仕出しとするものが414,946点(構成比81.9%、前年比11.0%増)、次いで、香港が55,023点(同10.9%、同65.5%減)、韓国が9,367点(同1.8%、同82.5%減)、マレーシアが5,718点(同1.1%、同6,048.4%増)でした。
- 件数、点数ともに中国を仕出しとするものの構成比が依然として高くなっています。
仕出国(地域)別(中国・香港・韓国・その他)輸入差止件数構成比の推移

(注)四捨五入しているため、構成比の合計が100%にならない場合があります。
○ 知的財産別輸入差止実績
- 輸入差止件数は、偽ブランド品などの商標権侵害物品が30,111件(構成比98.0%、前年比17.3%増)で、引き続き全体の大半を占め、次いでイヤホンなどの意匠権侵害物品が304件(同1.0%、同249.4%増)でした。
- 輸入差止点数についても、商標権侵害物品が313,314点(構成比61.8%、前年比23.4%減)で、引き続き大半を占める傾向は変わらないものの、イヤホンなどの意匠権侵害物品が135,135点(同26.7%、同1,488.5%増)となり、大幅に増加しました。
知的財産別輸入差止実績構成比の推移(件数ベース)

知的財産別輸入差止実績構成比の推移(点数ベース)

(注1) 四捨五入しているため、構成比の合計が100%にならない場合があります。
(注2) 各権利で保護されているものは、例えば以下のものです。
商標権:商標法に基づき商標登録された文字、図形等の「ロゴマークやブランド名」
著作権:創作されたキャラクターや音楽CD等の「著作物」
意匠権:意匠法に基づき意匠登録された物品の形状、模様等の「デザイン」
特許権:特許法に基づき特許登録された「発明」
不正競争防止法で輸入が規制されているものは、例えば以下のものです。
- 広く認識されている他人の「商品等表示」との混同を生じさせるもの
- 著名な他人の「商品等表示」を使用するもの
- 他人の商品の形態を模倣するもの
- 「営業秘密」として管理されている秘密情報の不正使用により生じたもの
- 技術的に制限されているプログラムの実行を可能とする装置
(例:ゲーム機器において本来は使用することができない海賊版ソフトを使用できるようにする装置)
税関では、各権利を侵害するもの及び不正競争防止法で規制されているものを輸入してはならない貨物として、取締りを行っています。
○ 品目別輸入差止実績
- 輸入差止件数は、財布やハンドバッグなどのバッグ類が12,727件(構成比38.8%、前年比18.6%増)と最も多く、次いで衣類が4,581件(同14.0%、同18.3%増)、靴類が3,974件(同12.1%、同51.9%増)、スマートフォンケースなどの携帯電話及び付属品が3,633件(同11.1%、同18.7%減)でした。
- 輸入差止点数は、イヤホンなどの電気製品が116,999点(構成比23.1%、前年比516.4%増)と大幅に増加し、次いでスマートフォンケースなどの携帯電話及び付属品が65,085点(同12.8%、同13.0%減)、プリンタ用インクカートリッジなどのコンピュータ製品が41,944点(同8.3%、同78.5%減)、衣類が40,671点(同8.0%、同13.8%増)でした。
品目別輸入差止実績構成比の推移(件数ベース)

品目別輸入差止実績構成比の推移(点数ベース)

(注)四捨五入しているため、構成比の合計が100%にならない場合があります。
○ 輸送形態別輸入差止実績
- 輸入差止件数は、郵便物が大半を占めており、郵便物が28,340件(構成比92.5%、前年比16.6%増)、一般貨物が2,287件(同7.5%、同32.3%増)でした。
- 輸入差止点数は、郵便物が220,406点(構成比43.5%、前年比24.9%減)、一般貨物が286,344点(同56.5%、同13.0%減)でした。
輸送形態別輸入差止実績構成比の推移(件数ベース)

輸送形態別輸入差止実績構成比の推移(点数ベース)

税関で輸入を差し止めた侵害物品の例
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イヤホン(意匠権) ![]() | スマートフォンケース(商標権) ![]() |
インクカートリッジ(特許権) ![]() | パジャマ(著作権) ![]() |
バッグ(商標権) ![]() | 美容用ローラー(意匠権) ![]() |
医薬品(商標権) ![]() | 自動二輪車用タイヤ(意匠権) ![]() |
税関で輸入を差し止めた侵害物品の例(つづき)
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イヤホン(意匠権) ![]() | 首掛けライト(意匠権) ![]() |
指圧器(意匠権) ![]() | ライター(商標権) ![]() |
電子タバコ用バッテリー(意匠権) ![]() | 釣り糸(商標権) ![]() |
自転車(意匠権) ![]() | バッジ(著作権) ![]() |
税関で輸入を差し止めた侵害物品の例(つづき)
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医薬品(商標権) ![]() | 健康食品(商標権) ![]() |
シートベルトキャンセラー(商標権) ![]() | バッテリー(商標権) ![]() |
家庭用美顔器(商標権) ![]() | 美容用ローラー(意匠権) ![]() |
身体鍛錬器具(意匠権) ![]() | おもちゃ(商標権) ![]() |
告発事例
事例1 商標権を侵害する電源アダプタの密輸入事犯を告発。
平成29年1月、名古屋税関は、愛知県警察と共同調査を実施し、中国から商標権を侵害する電源アダプタ100点を密輸入しようとした中国人男性を関税法違反で告発しました。

事例2 商標権を侵害するゴルフクラブの密輸入事犯を告発。
平成29年2月、函館税関は、北海道警察と共同調査を実施し、中国から商標権を侵害するゴルフクラブ10点を密輸入した日本人男性を関税法違反で告発しました。

事例3 商標権を侵害する枕カバー及びTシャツの密輸入事犯を告発。
平成29 年2月、横浜税関は、栃木県警察と共同調査を実施し、中国から商標権を侵害する枕カバー1枚及びTシャツ12枚を密輸入した中国人男性を関税法違反で告発しました。

事例4 商標権を侵害するバッグの密輸入事犯を告発。
平成29年3月、東京税関は、警視庁と共同調査を実施し、中国から商標権を侵害するバッグ6点を密輸入しようとした中国人男性を関税法違反で告発しました。

事例5 商標権を侵害する財布の密輸入事犯を告発。
平成29年3月、長崎税関は、熊本県警察と共同調査を実施し、中国から商標権を侵害する財布10点を密輸入した中国人男性を関税法違反で告発しました。

事例6 商標権を侵害するスマートフォンケースの密輸入事犯を告発。
平成29年4月、神戸税関は、鳥取県警察と共同調査を実施し、香港から商標権を侵害するスマートフォンケース210点を密輸入しようとした日本人男性を関税法違反で告発しました。

事例7 商標権を侵害するスマートフォンケース等の密輸入事犯を告発。
平成29年7月、東京税関は、警視庁と共同調査を実施し、中国から商標権を侵害するスマートフォンケース等128点を密輸入しようとした日本人男性を関税法違反で告発しました。

事例8 商標権を侵害するステッカーの密輸入事犯を告発。
平成29年11月、神戸税関は、岡山県警察と共同調査を実施し、中国から商標権を侵害するステッカー86点を密輸入した中国人男性を関税法違反で告発しました。

差止回避工作事例
税関による差止めを回避するためと思われる工作を施した事例も見受けられます。
事例1 他の物品(玩具)の中に商標権を侵害する物品(腕時計)を隠匿していた事例。

事例2 他の物品(海苔)の中に商標権を侵害する物品(財布)を隠匿していた事例。

事例3 バッグの商標部分を異なる標章のシールで覆い、偽装していた事例。

事例4 自転車の商標部分を異なる標章のシールで覆い、偽装していた事例。

(参考)差止申立ての状況
- 平成29年末時点において税関が受理している輸入差止申立ての件数は687件で、前年に比べて0.9%減少しました。
- 知的財産別では、商標権の申立てが368件(構成比53.6%、前年比5.7%増)、次いで意匠権の申立てが107件(同15.6%、同21.6%増)、著作権の申立てが99件(同14.4%、同4.2%増)、著作隣接権の申立てが93件(同13.5%、同35.0%減)となっています。
- 輸出差止申立ての件数は、商標権5件となっています。
(注)知的財産の権利者は、自己の権利を侵害すると認める貨物が輸出又は輸入されようとする場合には、当該貨物について侵害物品かどうかを認定する手続きを執るべきことを、税関長に対し申し立てることができます。
(参考)税関が受理している輸入差止申立ての例(写真は全て真正品)
有限会社モーメント すりつぶし機能を備えた調理用切断具(特許権) ![]() | 株式会社イケックス工業 折り畳み椅子(特許権) ![]() | アラオ株式会社 コーナークッション(特許権) ![]() |
株式会社小糸製作所 車両用尾灯(意匠権) ![]() | 日本たばこ産業株式会社 たばこ吸引具バッテリー(意匠権) ![]() | ブリヂストンサイクル株式会社 自転車用チェーンケース(意匠権) ![]() |
日本薬品開発株式会社 健康食品(商標権) ![]() | 株式会社ディンギー おもちゃ(商標権) ![]() | 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 ピンバッジ(商標権) ![]() |
株式会社講談社 「進撃の巨人」台湾版DVD(著作権) ![]() | バンダイビジュアル株式会社 「ガールズ&パンツァー」缶バッジ(著作権) ![]() | 熊本県 畳表、いぐさ原草(育成者権) ![]() |