財務省財務局60年史 【第3章 管財編】

第7節 鑑定評価事務


1. 評価の基本原則

国有財産等の評価に当たっては、財政法第9条等の規定により、「適正な対価」を求めることを基本としており、評価事務の適正を期すとともに統一的な運用を図るため、「国有財産評価基準」通達により評価及び審査の手順等を定めている。

また評価の実施にあたっては、「国の行政組織の減量効率化等に関する基本計画」(平成11年4月閣議決定)及び「国の行政機関の定員の純減について」(平成18年6月30日閣議決定)の趣旨を踏まえ、原則として、不動産鑑定士等による鑑定評価額等を基に求めることとなっている。

2. 「国有財産評価基準」通達の制定及びその後の改正経緯

  • (1)「国有財産評価基準」通達の制定

    国有財産等の客観的かつ適正な価格算出基準として、昭和34年8月に「普通財産売払評価基準」が制定されたが、その後、社会・経済情勢の変化に対応できるよう、必要に応じ部分改正等が行われてきた。なかでも、昭和57年3月には宅地の評価方法について、国土庁(現国土交通省)が定めている旧「不動産鑑定評価基準」との整合性を図るため、評価方法等について抜本的な改正が行われた。

    また当時、「普通財産売払評価基準」のほか、22の関係通達が定められていたこともあり、これらの関係通達の整理・統合の必要性があったこと等から、昭和59年6月に評価関係通達について全面的な見直しを行い、「普通財産売払評価基準」及び関係通達等を整理統合のうえ、新たな通達として「国有財産評価基準」及び「国有財産評価執務参考書」が制定された。

    これらの通達は、原則として、国有財産鑑定官が自ら評価するものとし、一定の場合については、不動産鑑定士等の意見価格等を徴した上で、評定価格を決定するものであった。

    しかし、平成6年以降相続税物納財産が急増したことを背景に、国有財産の売却促進がより一層求められることとなり、一般競争入札対象財産や価格公示売却財産については、簡素合理化及び不動産鑑定士等の専門的知見・ノウハウ活用の観点から、複数の個別通達を発出し、不動産鑑定士による鑑定評価額等を基として評定価格を決定することとした。

    また、一般競争入札対象財産や価格公示売却対象財産以外の国有財産鑑定官自ら評価するものの評価方法や貸付中の小規模土地等のいわゆる評価の特例の評価方法についても、評価方法の精緻化を図る一方、事務の簡素化を図るため、必要に応じて個別通達が発出された。

    平成13年においては、これまでの「国有財産評価基準」及び「国有財産執務参考書」並びに上記個別通達等を廃止し、その内容を整理統合し規範性のあるものを盛り込んだ、新たな「国有財産評価基準」通達が発出された。

  • (2)新たな「国有財産評価基準」通達の概要

    平成13年3月に制定された「国有財産評価基準」通達は、国有財産の管理及び処分に当たり、国有財産及び国有財産となるべき財産の評価事務の適正を期し、かつ、統一的な運用を図ることを目的として、評価における基本原則及び評価手法を定めたものである。

    • イ.一般競争入札対象財産

      一般競争入札により売り払う場合の土地、建物等の評価に当たっては、民間精通者による意見価格又は鑑定評価額を徴することとし、当該鑑定評価額等を基に、評価又は審査、検討を行い、評定価格を求めるものとした。

    • ロ.価格公示売却対象財産については不動産鑑定士による鑑定評価額、その他の国有財産については、国有財産鑑定官自らが評価を行うこととされ、従来の「国有財産評価基準」及び「国有財産執務参考書」を基にその評価方法が制定された。

    • ハ.評価の特例

      貸付中の小規模土地等や単独利用困難な財産に該当する財産等については、引き続き評価の特例として、相続税評価額等を基に評価を行うこととした。

      また、平成13年6月に「無償貸付け・有償貸付けの混合契約等財産にかかる借地権等の評価について」通達が発出され、混合契約がなされている貸付中の財産や減額貸付中の財産における借地権及び底地並びに借家権及び貸家について、国有財産鑑定官自らが評価する場合の評価方法が規定された。

  • (3)平成14年度改正の概要

    • イ.価格公示売却の制度が廃止されたため、当該対象財産の評価における取扱いが廃止された。

    • ロ.国有財産鑑定官自らが行う評価や評価の特例において相続税路線価格を設定されていない場合、適正と認められる方法により仮の路線価を設定し、これにより相続税評価額を求めることができることとした。

  • (4)平成15年度改正の概要

    • イ.国土交通省が定めている「不動産鑑定評価基準」が改正されたこととの整合性を図るため、価格形成要因の分析、取引事例の選択等について、所要の改正を行った。

    • ロ.評価替については、意見価格等による変動率を基に行うことができることとされていたが、当該変動率については意見価格の他、公示価格・基準地価格を基とした変動率等適当と認められる方法により求めることができることとされた。

  • (5)「国有財産の民間精通者への評価依頼について」通達の発出

    「国の行政機関の定員の純減について」(平成18年6月30日閣議決定)により鑑定評価についてはすべて民間委託することとなったため、評価の特例に該当する財産以外はすべて、不動産鑑定士による鑑定評価額等を基に評定価格を決定することとした旨の上記通達が、平成19年3月30日付で発出された。

  • (6)平成19年度改正の概要

    前述(5)の趣旨を踏まえ、平成19年6月25日付でこれまでの国有財産鑑定官が自ら評価を行う場合の評価手順や方法等を定めた内容を、評価業務の不動産鑑定士等への外部委託を前提とする内容に改正した。

    また、これに伴い、鑑定評価額に係る審査事項に関する具体的な留意点をまとめた「不動産鑑定評価書審査マニュアル」が執務参考資料として、同日付で作成された。

    なお、上記改正に伴い、「無償貸付け・有償貸付けの混合契約等財産にかかる借地権等の評価について」通達及び「国有財産の民間精通者への評価依頼について」通達が廃止された。

3. 現行の「国有財産評価基準」通達の内容

  • (1)評定価格の求め方

    土地(土地の定着物を一体として評価する場合を含む)若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利を評価する場合には鑑定評価額を、その他の国有財産等(解体建物を含む)を評価する場合には民間精通者等による意見価格を徴し、審査等を行った上で評定価格を求める。

  • (2)審査の方法

    不動産鑑定士等の鑑定評価額等は、原則として、書面審査のほか鑑定評価書等の内容についての不動産鑑定士等への聴取及び説明資料の徴求等により審査を行い、必要に応じて現地調査を行う。

  • (3)評価の特例

    評価財産が、貸付中の小規模土地、単独利用困難な土地等については、引き続き不動産鑑定士等に評価を依頼せず、相続税評価額を基に評価を行うことができる。

    また、特別な事情により緊急に評価を行わなければならない土地等の評価については、近隣の評価先例を基に評価を行うことができる。

  • (4)評価替

    公示価格・基準地価格を基とした変動率を当初の評定価格に乗じることを原則とし、地価変動の趨勢に変化があると認められる場合等、上記方法により難い場合には不動産鑑定士等の意見による変動率を採用して求めることとした。


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