財務省財務局60年史 【第2章 理財編】

第4節 金融事務


1.最近10年間の金融動向

平成11年からの10年間は、金融機関及び金融行政当局にとって、金融危機対応としての金融システムの安定化と更なる金融システムの高度化に向けた取組みが、大きな課題となった時期であった。

  • (1)金融システムの安定化・高度化に向けての取組み等

    • イ.公的資本増強制度等の整備

      • (イ)産業活力再生特別措置法

        平成11年10月1日、低生産性部門から高生産性部門への経営資源の迅速かつ円滑なシフトを図り、生産性を抜本的に改善していくための一群のパッケージを用意し、我が国産業活力の早期の再生を期することを目的として施行された産業活力再生特別措置法は、平成15年4月9日抜本的に改正され、平成19年5月11日にも技術革新や異分野連携を行う事業者を支援対象に追加する等を内容とする改正が行われた。

        金融庁においては、事業構造変更及び事業革新を行う者として産業活力再生特別措置法第3条第1項の規定に基づく事業計画再構築計画の認定や同法第4条第1項の規定に基づく計画変更の認定を行っている。

        同法に基づく事業計画再構築計画、計画変更等の認定を受けた金融機関は以下のとおり。

        【認定金融機関】

        申請者認定日
        りそなホールディングス、
        りそな銀行
        平成15年 6月27日
        (変更認定:平成17年 3月28日)
        (変更認定:平成17年12月 2日)
        北陸銀行平成15年 9月24日
        びわこ銀行平成17年 3月30日
        もみじホールディングス、
        もみじ銀行
        平成17年 8月17日
        (変更認定:平成17年11月11日)
        (変更認定:平成17年12月27日)
        (変更認定:平成19年 3月26日)
        殖産銀行、
        山形しあわせ銀行
        平成17年 9月26日
        紀陽銀行、
        和歌山銀行
        平成18年 1月25日
        豊和銀行平成18年 8月25日
        (変更認定:平成18年12月15日)
        山口銀行、
        もみじホールディングス、
        もみじ銀行
        平成18年 9月20日
        (変更認定:平成19年 3月26日)
        福岡銀行、
        熊本ファミリー銀行
        平成19年 3月23日
        足利ホールディングス、
        足利銀行
        平成20年 6月20日
        (変更認定:平成21年 3月26日)
        福岡銀行、
        熊本ファミリー銀行、
        親和銀行
        平成21年 2月12日
      • (ロ)金融機能強化法

        平成16年8月1日、地域における金融機能の強化に向けた金融機関の取組みに対して公的な支援を行うため、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」(平成16年法律第128号)が平成20年3月末までの時限立法として施行された。

        同法に基づき、平成18年11月に紀陽ホールディングス、同年12月に豊和銀行が優先株式発行による国の資本参加を受けている。

      • (ハ)改正金融機能強化法

        米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融市場の混乱をはじめとする外的な環境変化の下、厳しい状況に直面する地域経済や中小企業を支援していくことが喫緊の課題である。このため、国の資本参加によって、金融機関の資本基盤の強化を図り、金融機関が適切な金融仲介機能を発揮し、地域における中小企業に対する金融の円滑化に資する政策を積極的に推進することが重要であるとの観点から、平成20年12月12日に「金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が成立、同月17日に施行された。

        改正法では、従来とは異なり、金融機関の経営責任等の明確化は制度上一律には求めないとする一方、地域における中小規模の事業者に対する金融の円滑化等が求められている。また、平成21年3月10日の「金融円滑化のための新たな対応について」において、公的資本の商品性について、配当率を平時水準に設定する等による活用促進が図られた。

        同法に基づき、平成21年3月末には、北洋銀行、南日本銀行、福邦銀行が優先株式発行による国の資本参加を受けたほか、同年5月までに、複数の金融機関が本制度の活用を検討する旨を公表している。

    • ロ.金融機関の再編等

      • (イ)金融機関の経営破綻

        平成10年10月に成立した「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」等に基づき、経営破綻した日本長期信用銀行及び日本債券信用銀行に対して特別公的管理が行われる一方、国民銀行、幸福銀行、東京相和銀行、なみはや銀行、新潟中央銀行、石川銀行、中部銀行に対しては金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分が行われた。いずれも、受け皿金融機関への事業譲渡をもって、特別公的管理が終了するとともに、管理を命ずる処分が取り消されている。

        また、協同組織金融機関においては、自ら事業継続を断念し経営破綻を公表し、預金保険法に基づく資金援助を受けて事業譲渡を行う形での処理が行われた。

      • (ロ)金融機関の再編等

        金融機関の再編は、主要行、地域銀行における持株会社の設立による経営統合や合併、協同組織金融機関における合併のみならず、業態を超えての合併等も行われた。

        【金融機関数の推移(各年度末の金融機関数)】

         都銀地方銀行第二地銀信用金庫信用組合労働金庫
        平成11年度9646038629241
        平成12年度9645737228140
        平成13年度7645634924721
        平成14年度7645332619121
        平成15年度7645030618113
        平成16年度7644829817513
        平成17年度6644729217213
        平成18年度6644628716813
        平成19年度6644528116413
        平成20年度6644427916213
    • ハ.改革先行プログラム

      改革先行プログラムは、「骨太の方針」(「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」平成13年6月26日閣議決定)を踏まえた「改革工程表」に盛り込まれた施策の中で、構造改革に直結し、実施の緊急性の高いものを先行して実施するために策定されたものであり、金融庁関連部分としてマル1証券市場の構造改革、マル2不良債権処理の強化と金融の活性化が掲げられている。

    • ニ.金融再生プログラム−主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生−

      平成14年10月30日、金融庁は「日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復し、世界から評価される金融市場を作るためには、主要行の不良債権問題を解決する必要がある」として、「平成16年度には主要行の不良債権比率を現状の半分以下に低下」させ、「構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指す」ため、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化等の点についての行政の強化方針を発表した。

      • (イ)リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム

        当時喫緊の課題であった金融機関の不良債権の処理に向けて、平成14年10月30日に「金融再生プログラム」が策定され、主要行(メガバンク)については、不良債権のオフバランス化(バルクセール、直接償却)等により急速に処理が進められたのに対し、中小・地域金融機関については、中小企業の再生と地域経済の活性化を図るための各種の取組みを進めることによって、この不良債権問題を解決していくこととされた。

        この「金融再生プログラム」の策定を受け、金融庁においては、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を公表した。

        当該アクションプログラムにおいて「集中改善期間」として位置付けられた平成15及び16年度の2年間、金融庁及び各財務局等は、各金融機関に対し中小企業金融再生に向けた取組み等について「リレーションシップバンキングの機能強化計画」を提出させ、半期ごとに実施状況をフォローアップし、その推進に取り組んだ。

        • ※ リレーションシップバンキングとは、金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することにより顧客に関する情報を蓄積し、この情報を基に貸出等の金融サービスの提供を行うことで展開するビジネスモデルのこと。定量化されにくい情報や地域の実態に根差した情報が有効活用されることにより、マル1地域の中小企業への金融の円滑化、マル2貸し手・借り手双方の健全性の確保が図られ、中小企業の再生・地域経済の活性化を目指すもの。

      • (ロ)早期警戒制度の整備

        「金融再生プログラム」においては、「早期警戒制度の活用」として「自己資本比率に表されない収益性や流動性等、銀行経営の劣化をモニタリングするための監督体制を整備する」こととされており、早期是正措置の対象とはならない段階における金融機関であっても、その健全性の維持及び一層の向上を図るため、継続的な経営改善への取組みがなされる必要があるとの観点から、行政上の予防的・総合的な措置を講ずることにより、金融機関の早め早めの経営改善を促す仕組みとして「早期警戒制度」を整備した。

        「早期警戒制度」は、基本的な収益指標、大口与信の集中状況、有価証券の価格変動等による影響、預金動向や流動性準備の水準を基準として、収益性、信用リスク、市場リスクや資金繰りについて経営改善が必要と認められる金融機関に関して、原因及び改善策等についてヒアリング等を行い、必要な場合には銀行法第24条等に基づき報告を求めることを通じて、必要な経営改善を促すこととしている。

        更に、業務の改善を確実に実行させる必要があると認められる場合には、銀行法第26条等に基づき業務改善命令を発出することとしている。

        平成14年12月の制度導入時に設けられた収益性改善措置、安定性改善措置、資金繰り改善措置に加え、平成15年3月の「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を受けて、同年6月末から新たに「信用リスク改善措置」が追加され、平成19年3月末から実施されたバーゼルローマ数字2の第二の柱への対応として、平成18年3月には主要行等向け及び中小・地域金融機関向けの各監督指針を改正し、銀行勘定の金利リスクに係るモニタリング(平成19年4月より実施)を含む早期警戒制度の規定の見直しが行われた。

    • ホ.金融改革プログラム−金融サービス立国への挑戦−(平成16年12月24日)

      地域密着型金融の機能強化に関するアクションプログラム

      平成16年12月24日に策定された「金融改革プログラム」において地域密着型金融の一層の推進を図ることとされたことから、平成15及び16年度の実績評価したうえ、これを承継する「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」を策定した。当該プログラムにおいて「重点強化期間」として位置付けられた平成17〜18年度の2年間、金融庁及び各財務局等では、本アクションプログラムに基づく施策の進捗状況及び金融機関の取組み実績を半期ごとに取りまとめ公表するとともに、中小・地域金融機関に対する利用者等の評価に関するアンケート調査を実施し、その結果を公表した。

      また、各財務局等では、中小企業金融に係る金融機関のノウハウ等の一層の共有化に向けて、「特色ある取組み等に関するシンポジウム」を開催する等、地域密着型金融の推進に取り組んだ。

      平成19年4月5日に金融審議会金融分科会第二部会において取りまとめられた「地域密着型金融の取組みについての評価と今後の対応について」において、過去4年間の実績を受け、地域密着型金融は不良債権処理における緊急時対応としてのアクションプログラムという時限的な枠組みではなく、通常の監督行政の言わば恒久的な枠組みで推進すべきと提言されたことから、平成19年度より「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に盛り込まれ、引き続き推進することとなった。

      金融庁及び各財務局等では、当該指針に基づき、全体的な取組み状況を総合的に把握するために、年1回、各金融機関に取組み状況の報告を求め、その実績を総合的に取りまとめ公表している。

      また、各財務局等においては、同じく当該指針に基づき「地域密着型金融に関するシンポジウム」を開催するほか、特に先進的な取組みや広く実践されることが望ましい取組みについては、全国に対する事例紹介や顕彰等を実施する等の取組みを行っている。

      なお、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に明示された地域密着型金融に関する具体的な取組みは、

      • マル1 ライフサイクルに応じた取引先企業の支援の一層の強化

      • マル2 事業価値を見極める融資手法をはじめ中小企業に適した資金供給手法の徹底

      • マル3 地域の情報集積を活用した持続可能な地域経済への貢献

      とされている。

    • ヘ.ペイオフ解禁

      預金等の全額保護の特例措置は、平成8年6月の預金保険法改正により、金融システムの安定確保の観点から、平成13年3月末までの時限的な措置として導入されたが、その後の法改正により、定期性預金については平成14年3月末まで、普通預金等については平成17年3月末まで延長されていた。

      この間、金融行政においては、

      • ・ 構造改革の一環としての不良債権問題の正常化

      • ・ 少額預金者の保護制度とは別の決済機能の安定確保のための制度の整備

      • ・ 預金保険制度に係る広報(ペイオフ広報)の拡充

      • ・ 迅速な破綻処理のためのシステム面の整備(金融機関の名寄せデータの整備)

      等、ペイオフ解禁を実施する金融環境の整備に努め、これら政策目標の達成に伴い、平成17年4月1日から預金等定額保護(元本1千万円までとその利息の保護)の範囲が定期性預金から普通預金や別段預金まで拡大し、これをもって、決済用預金を除くすべての預金について、預金等全額保護の特例措置が終了することとなった。

    • ト.金融担当大臣談話「主要行の不良債権問題の正常化にあたって」平成17年5月25日、金融担当大臣から以下の談話が発表された。

      − 主要行の不良債権問題の正常化にあたって −

      • 1.主要行の平成16年度決算が発表され、不良債権比率は2.9%となった。これによって、「金融再生プログラム」において示された、「平成16年度には、主要行の不良債権比率を平成14 年3 月期(8.4%)の半分程度に低下させ、不良債権問題の正常化を図る」という目的が達成されたことになる。

      • 2.「金融再生プログラム」は、バブル崩壊以降我が国経済の大きな足枷となっていた不良債権問題を抜本的に解決し、構造改革を支えるより強固な金融システムを構築を目指すべく、平成14年10月に策定・公表された。それ以来、これまでの2年半の間、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化といった目標や、産業と金融の一体再生の取組みなど、同プログラムに盛り込まれた諸施策を強力に推進してきた。

      • 3.こうした取組みの結果として、最も中心的な課題であった主要行の不良債権問題の正常化を果たすことができ、また、その他の課題を含め、「金融再生プログラム」の目標が概ね果たされたことは、大変意義深く、また喜ばしいことである。

      • 4.金融仲介においてリスクテイクは不可欠な一要素であり、そうしたリスクをいかに管理していくかは、引き続き金融機関にとっての重要な課題であることに変わりはない。金融庁としては、不良債権問題が再び発生し、それが経済の足枷となることがないよう、今後ともここの金融機関の不良債権の状況やリスク管理態勢等を注視していくとともに、「金融再生プログラム」の残された課題についても、着実に取り組んでいく。それらを前提とした上で、今般、金融行政は不良債権問題の緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面(フェーズ)へと移行していく節目を迎えたと考えている。

      • 5.今後、「金融再生プログラム」を着実に実施することにより、「民」の活力を中心に、利用者満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムの実現を目指してまいりたい。

    • チ.バーゼルローマ数字2(新しい自己資本比率規制)への対応

      平成16年6月にバーゼル銀行監督委員会が公表した新しい自己資本比率規制(バーゼルローマ数字2)の国際的な枠組みを受け、平成19年3月末から我が国においてもバーゼルローマ数字2が実施された。

      バーゼルローマ数字2は、「最低所要自己資本比率」(第一の柱)、「金融機関の自己管理と監督上の検証」(第二の柱)及び「市場規律」(第三の柱)からなる新しい規制の枠組みであり、金融機関が抱えるリスクを従来の規制(バーゼルローマ数字1)よりも正確に計測することを通じて、金融機関により適切なリスク管理を促すものである。

      第一の柱については、バーゼルローマ数字1に比べ、信用リスクの取扱いを精緻化すると共にオペレーショナル・リスクの計測を加えた。また、複数のリスク計測手法の中から金融機関にとって最もふさわしい手法を選択するものとし、より適切なリスク管理態勢を布くことを可能とした。

      第二の柱については、金融庁として、各金融機関の規模や特性等に応じた統合的なリスク管理態勢の評価を行うとともに、銀行勘定の金利リスクや信用集中リスクといった(第一の柱に含まれない)重要なリスクについて、「早期警戒制度」を活用したオフサイト・モニタリングを実施することとし、リスク管理について、金融機関の自主的な取組みを促す枠組みを整備した。

      第三の柱については、自己資本の充実の状況について、情報開示の充実を通じた市場規律の活用により、金融機関の自己管理をより強固なものとするための枠組みを整備した。

    • リ.金融規制の質的向上への取組み

      金融庁は平成19年夏以来、金融規制の更なる質的向上を目指した取組み、すなわち、ベター・レギュレーションへの取組みをこれからの金融行政における大きな課題と位置付け、推進してきた。

      ベター・レギュレーションについては、以下の4点をその柱と位置付けている。

      第一の柱:「ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組合せ」
      第二の柱:「優先課題の早期認識と効果的対応」
      第三の柱:「金融機関の自助努力尊重と金融機関へのインセンティブの重視」
      第四の柱:「行政対応の透明性・予測可能性の向上」

      これらベター・レギュレーションに関する四つの柱の下、以下の五つの具体的方策に取り組んできている。

      • i.金融機関等との対話の充実

      • ii.情報発信の強化

      • iii.海外当局との連携強化

      • iv.調査機能の強化による市場動向の的確な把握

      • v.職員の資質向上

      この取組みは、金融規制の質は、規制の適用されるマーケットの競争力を左右する重要な要素であり、その質的向上は、我が国市場の競争力強化につながり、ひいては利用者利便の向上に資するものであること、また、金融セクターを巡る局面が変化し、金融規制のあり方も、金融機関の自己責任を重視し、自助努力を促すような枠組みに変化していく必要がある、との問題意識を背景としている。

      財務局においても、金融機関との対話の充実、情報発信の強化等、ベター・レギュレーションの取組みに注力しており、ベター・レギュレーションの考え方の定着、効果の発揮に向けての継続的・持続的な取組みを行っている。

    • ヌ.サブプライムローン問題に端を発する金融危機への対応

      米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機の中にあって、我が国の金融システムそのものは欧米に比べれば相対的に安定しているが、実体経済の下振れや株式市場の変動等のリスク要因があり、引き続き高い緊張感をもって状況を注視していく必要がある。

      また、世界的な金融市場の混乱とこれに伴う世界的な景気後退の影響を受けて、我が国の景気は急速に悪化し、中小企業をはじめとした企業の業況や資金繰りも厳しい状況となった。

      このような状況の中、金融庁においては、厳しい経済情勢を踏まえて、市場安定化や金融円滑化のための様々な措置を講じてきた。

      このうち金融円滑化については、平成20年8月29日に取りまとめられた「安心実現のための緊急総合対策」に則り、金融庁は、同年9月2日、中小企業金融の円滑化に向けた基本的考え方と今後の対応方針を取りまとめ、「中小企業金融の円滑化に向けた今後の対応について」を公表した。具体的には、民間金融機関が借手企業の経営実態や特性に応じたリスクテイクとリスク管理をきめ細かく行い、中小企業に対する円滑な資金供給の確保と自らの財務の健全性の維持とが、好循環をもって実現していく状況を目指していくことが重要であるとの基本的考え方を明確にした。その上で、具体的取組みとして、マル1きめ細かな実態把握と中小企業金融の円滑化に向けた監視の強化、マル2金融機関等への働きかけ、マル3実態を踏まえた適切な検査・監督行政の推進を行っていくこととした。

      加えて、平成21年3月10日、中小企業をはじめとする企業金融の更なる円滑化を図るため、「金融円滑化のための新たな対応について」を公表し、以下の施策を講じることとした。

      • マル1 金融円滑化のための特別ヒアリング・集中検査の実施

      • マル2 緊急保証に係るリスク・ウェイトの見直し

      • マル3 コベナンツ対応の弾力化の促進

      • マル4 市場型間接金融(シンジケート・ローン等)の積極的活用の要請

      • マル5 金融機能強化法の活用促進

      これらを受けて、各財務局等においては、

      • ・ 金融円滑化のための特別ヒアリング

      • ・ 中小企業向け貸出状況のフォローアップ

      • ・ 地域密着型金融に関するシンポジウムの開催、優秀事例の顕彰

      • ・ 商工会議所等へのアンケート調査

      • ・ 地域融資動向に関する情報交換会の開催

      • ・ 経済産業局(中小企業庁)と合同での中小企業者との意見交換会の開催

      • ・ 「中小企業の資金調達に役立つ金融検査の知識」説明会の開催

      等の実務対応が行われている。

    • ル.金融行政機構の改正

      • (イ)金融庁の設置

        金融庁は、平成12年7月1日に全体の中央省庁再編に先行して、金融再生委員会に置かれていた金融監督庁と大蔵省金融企画局を統合して設置され、更に平成13年1月6日の中央省庁再編に当たり、金融再生委員会が廃止され、改めて内閣府の外局として設置された。

        また、中央省庁等改革基本法で、「金融監督庁が各省と共同で所管している金融に関する検査及び監督の業務については、金融庁に一元化する」とされたことを受け、専ら金融の観点から各業態横断的に整備されている自己資本比率規制及び大口融資規制に関する検査を金融庁の専管とする等、法令上、所要の措置が講じられた。

      • (ロ)財務局における機構改正

        各財務局等では、複雑多様化する社会経済情勢のニーズに応じて、信託業、信託契約代理業、少額短期保険業者等に対する監督の行政需要に対応した新規業務に積極的に取り組んでおり、信用秩序の維持を目的として平成9年に関東財務局及び近畿財務局に5年間の時限措置により設置された金融安定監理官は、平成14年4月に3年間延長された後、平成17年4月に機構が恒久化されている。

      また、金融行政機構改革に関しては、地方における民間金融機関等に対する検査及び監督については、既存の大蔵省(財務局)を活用することとされ、平成12年7月1日の金融庁の発足、平成13年1月の金融再生委員会の廃止に伴う破綻処理等の事務継承後も引き続き、各財務局長等は金融庁長官から、地方銀行、信用金庫等の民間金融機関等に対する検査及び監督に係る権限の一部の委任を受けて、同長官の直接の指揮監督の下にこれらの権限を行使している。

  • (2)利用者保護・利用者利便の向上への取組み

    • イ.金融商品販売の多様化

      • (イ)投資信託の銀行窓口販売

        銀行等における投資信託の販売は、平成9年12月に銀行の投資信託委託会社への店舗貸しの形で開始され、平成10年12月の金融システム改革法の施行により、証券取引法の登録金融機関において証券投資信託受益証券等の窓口販売が可能となった。

        銀行等は、新たな収益源としての観点からも投資信託の販売を推進しており、平成21年3月末には投資信託販売額の51.6%を銀行等が占めるまでになっている。

        (社団法人投資信託協会資料「投資信託 契約型公募・私募投資信託合計の販売態別純資産残高の状況(実額)」より)

      • (ロ)保険商品の銀行窓口販売

        銀行等における保険商品の窓口販売は、平成9年の保険審議会報告、平成12年の保険業法改正を受けて、平成13年4月1日から住宅ローン関連の長期火災保険・債務返済支援保険・信用生命保険(住宅ローン関連の信用生命保険については、窓口販売を行う銀行等の子会社・兄弟会社である保険会社の商品に限定)、海外旅行障害保険について実施された。

        その後、弊害防止規定を整備しながら、対象商品を個人年金保険(定額、変額)、財形保険、年金払積立障害保険、財形障害保険等へと段階的に解禁し、併せて子会社等の商品に限定されていた規制等の撤廃を行ってきた。

        平成17年7月、保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令(平成17年内閣府令第87号)を公布し、今後解禁する商品について新たな弊害防止規定を整備し、同年12月22日から一時払終身保険、一時払養老保険、積立傷害保険、積立火災保険等について先行解禁するとともに、銀行等による保険募集の実施状況及び弊害防止措置の実効性等の検証を目的としたモニタリングを実施した。

        モニタリング結果を踏まえ、全面解禁についての関係者意見聴取等の検討を行った上で、平成19年12月21日、「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正等の所要の手当てを行い、同年12月22日、銀行等による保険販売は全面的に解禁された。

      • (ハ)証券仲介業の解禁

        平成16年4月から「証券市場の改革推進プログラム」の一環として、証券仲介業が新たな証券業種として創設され、内閣総理大臣の登録を受けた事業会社や個人が株式や債券等の売買の取次ぎを行うことが認められた。同年12月には銀行等に対しても証券仲介業が解禁され、銀行等は顧客と証券会社との間に立って、証券取引の仲介等を行うことができるようになった。

        平成19年9月の金融商品取引法施行に伴い、金融商品仲介業と改称するとともに、取扱対象に有価証券関連以外のものを含む市場デリバティブ取引等の委託の媒介や投資顧問契約等の締結の媒介等が追加された。

      • (ニ)銀行代理業の開放

        昭和38年に導入された銀行代理店制度は厳しい参入制限が課されており、銀行代理店は銀行の100%子会社等に限定、兼業禁止とするとともに、認可制となっていた。

        平成14年4月には、銀行法の改正により銀行の支店設置が認可制から届出制になったことから、代理店の設置も同様に認可制から届出制に変更された。また、同時に、銀行が他の代理店になることを認めるとともに、当座預金を除く預金業務、住宅ローン等消費者に対する貸付け業務及び内国為替取引業務の三つに制限されていた業務範囲は、債務保証や両替等の業務にも拡大された。

        更に、平成16年4月には、保険会社や証券会社が銀行代理店となることを認める等、累次にわたり規制緩和が進められた。

        一方、銀行以外の各業態においては、保険分野における生命保険募集人制度(昭和16年〜)及び損害保険代理店制度(昭和23年〜)、証券分野における証券仲介業制度(平成16年4月〜)並びに信託分野における信託契約代理店制度(平成16年12月〜)等、販売チャネルの多様化の整備が進んでいた。

        銀行業においても、より幅広い範囲で銀行代理店を活用できるよう出資規制等の見直しについて規制緩和の要望が寄せられたことから、平成18年4月1日施行の銀行法改正では、銀行代理店について、規制緩和を推進するとともに適切な業務運営を確保できるよう抜本的に制度を見直し、従来の銀行代理店制度に代わり、新たに銀行代理業制度が創設された。

        銀行代理業制度では、100%子会社規制を撤廃したが、一方で銀行代理業務は決済機能を有すること、貸付など影響力の大きい業務内容があること等から、適切な業務運営を確保するため、参入には許可制が採用され、また、兼業も個別承認制が導入された。

        なお、信用金庫、労働金庫、信用組合においても銀行と同様の制度が整備されており、それぞれ信用金庫代理業者、労働金庫代理業者、信用組合代理業者として金融機関の代理業務を行うことが認められることとなった。

    • ロ.根拠法のない共済の契約者保護ルールの導入

      共済事業については、自発的な相互扶助を基礎として、共同して社会生活を営むものが将来の危機に対し共同して生活の安定を図ろうとするものであり、これまで保険業法による規制は不要とされてきた。しかし、根拠法のない共済(いわゆる無認可共済)の規模や形態の多様化が進み、特定の者を相手方とする共済事業と従来の保険業との区別が容易でなくなってきたこと、また、根拠法のない共済の中には不適切な販売方法をとるものや財務基盤の脆弱なものがある等の指摘があることを踏まえ、契約者保護の観点から、保険業法を改正し、平成18年4月1日から「少額短期保険業」という新たな制度が導入された。

      新たに導入された「少額短期保険業」とは、一定事業規模の範囲内で、少額かつ短期の保険の引受けのみを行う事業をいう。少額短期保険業を営む事業者は財務局の監督対象となり、主な規制として、マル1登録(本店所在地の財務局)、マル2責任準備金の積立、保証金供託の義務付け、マル3資産運用規制、兼業規制、マル4募集規制(募集行為の規制や募集人の登録)、マル5情報開示、等となっている。

      なお、平成18年3月末までに既に保険に該当する商品を取り扱っていた既存業者については経過措置が設けられた。

    • ハ.改正貸金業法・多重債務者対策

      改正貸金業法成立の経緯については、そもそも、我が国の戦後における貸金業の規制等は、昭和29年に施行された出資法により、高金利処罰と簡易な届出制度(都道府県知事への委任)を規定しているに過ぎなかった。このような状態が約20年続いたが、昭和50年頃から、いわゆるサラ金業者による高金利、過剰融資や過酷な取立等を原因とする債務者等の自殺、家庭崩壊など、大きな社会問題が発生した。このため、政府は、昭和52年2月からサラ金問題に対する立法化の検討を開始したが、調整は難航し、紆余曲折の末、ようやく、昭和58年4月、貸金業者の大蔵大臣または都道府県知事への登録、罰則付き業務規制、立入検査の実施及び段階的金利引下げ等を骨子とする「貸金業の規制等に関する法律」と「改正出資法」が議員立法によって成立(同年11月施行)した。

      その後、平成11年12月13日には、いわゆる商工ローン問題の発生による貸金業の規制強化や出資法の上限金利の引下げ等を盛り込んだ法改正が行われ、更に平成15年7月25日には、ヤミ金融業者の違法行為が多発したこと等から、貸金業者の登録要件の厳格化、無登録業者に対する規制の強化等を柱とした改正(いわゆるヤミ金融対策法)が行われた。このヤミ金融対策法は平成16年1月1日に施行されたが、その附則において、「施行後3年を目途として必要な見直しを行う」とされており、また、みなし弁済制度の要件を厳格に解釈すべきとの最高裁判決が相次いだことや多重債務者問題が深刻化したこと等から、更なる法改正の必要性が求められた。

      平成17年3月以降、「貸金業制度等に関する懇談会」の開催を皮切りに、平成18年7月には与党において、「貸金業制度等の改革に関する基本的考え」が取りまとめられ、同年9月には貸金業法の抜本改正が基本的に了承された。これを踏まえ、金融庁・法務省が法案策定作業を進め、同年12月13日、「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正貸金業法)が成立し、同月20日に公布されたものである。

      改正貸金業法の施行に伴う「貸付けの上限金利の引下げ」と「貸付残高の総量規制の導入」等を実施し、新たな多重債務者の発生を抑制するとともに、既に深刻化している多重債務者への対策については、政府は改正貸金業法の附帯決議を受け、多重債務者対策の円滑かつ効果的な推進を図るため、平成18年12月22日、「多重債務者対策本部」設置について閣議決定し、「多重債務者対策本部有識者会議」で具体的な検討を開始した。

      ここでの議論などを踏まえ、平成19年4月20日に「多重債務問題改善プログラム」が策定され、「借り手対策」として、マル1丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化、マル2借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネット貸付けの提供、マル3多重債務者発生予防のための金融経済教育の強化、マル4ヤミ金の撲滅に向けた取締りの強化といった四つの施策を柱に、国と自治体及び関係団体等が一体となって、これらに取り組める施策を進めている。なお、多重債務対策本部では、改正貸金業法の完全施行(平成22年6月)までの間、各年度において、それぞれの施策の進捗状況をフォローアップし、着実な実施を確保することとしている。

    • ニ.偽造・盗難カード預貯金者保護法

      偽造キャッシュカードを用いた不正な預金引出しの増加に加え、盗難キャッシュカードやインターネットバンキングによる不正な預金引出しが増加していることを踏まえ、偽造・盗難カード等を用いて行われる不正な預貯金の引出し防止のための措置等を講じ、預貯金者の保護を図るとともに、預貯金に対する信頼を確保するため、自由民主党及び公明党より国会に提出された「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」が平成17年8月3日成立し、平成18年2月10日施行された。

      各財務局等においては、平成17年12月に改正された中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針に基づき、ATMシステム及びインターネットバンキングのセキュリティ対策に関する着眼点等について確認するとともに、偽造・盗難キャッシュカード問題に関する各金融機関の対応について、銀行法第24条等の規定により定期的に報告を求めている。

    • ホ.犯罪収益移転防止法

      我が国のマネー・ローンダリング犯罪その他の犯罪収益の移転に係る情勢等を踏まえ、金融機関が対象とされてきた本人確認義務や疑わしい取引の届出義務などを非金融業者(不動産業者、貴金属商・宝石商等)及び職業専門家(弁護士、公認会計士等)にも適用すべきとの国際的な要請等にかんがみ、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、「犯罪収益移転防止法」という。)が平成19年3月29日に成立、同3月31日に公布、翌20年3月1日に全面施行された。

      犯罪収益移転防止法は、「金融機関による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」(以下、「本人確認法」という。)及び「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(以下、「組織的犯罪処罰法」という。)第5章を母体として、本人確認及び疑わしい取引の届出義務等の対象事業者の拡大を図るものであり、同法の施行に伴い、本人確認法は廃止、組織的犯罪処罰法第5章は削除されている。

      犯罪収益移転防止法では、特定事業者として金融機関等のほか、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス業者、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士等が定められ、弁護士を除く特定事業者については本人確認及び取引記録等の保存が義務付けられるとともに、いわゆる士業者を除く特定事業者については、これに加え、疑わしい取引の届出が義務付けられることとなった。なお、弁護士による本人確認及び取引記録等の保存に相当する措置については、犯罪収益移転防止法に定める司法書士等の例に準じて日本弁護士連合会の会則の定めるところによることとされた。

      各財務局等においては、金融庁、警察庁と連携し、管内の金融機関等に対して「疑わしい取引の届出」研修会を開催し、趣旨の周知徹底を図っている。

    • ヘ.振り込め詐欺救済法

      振り込め詐欺等の被害者が預金口座等に振り込んだ資金が法的には口座名義人のものとなると考えられることや被害者への返還ルールが定まっていないこと等から、金融機関が振り込め詐欺の被害金を被害者に返還することは困難であり、被害金が金融機関に滞留する事態となっていた。

      このような状況を受け、振り込め詐欺等の被害者救済のため、預金等債権の失権手続・被害者回復分配金の支払い手続き等を定め、被害者の財産的被害の迅速な回復を図ることを目的として、平成19年6月に自由民主党及び公明党より「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払い等に関する法律」が国会に提出された。同年11月の民主党からの対案を調整のうえ、委員長提案が提出され、同年12月14日に成立、同月21日に公布、翌年6月21日に施行された。

      各財務局等においては、平成20年6月に改正された中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針に基づき、犯罪利用預金口座等の取引停止等の措置、預金等債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払手続等を適切に講ずるための態勢整備に係る着眼点等について確認を行っている。

    • ト.反社会的勢力への対応

      平成19年6月19日、犯罪対策閣僚会議幹事会における申合わせにより「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が策定、公表されたことを踏まえ、金融庁は平成19年7月に政府指針の周知を図るべく関係業界団体に要請文を発出するとともに、平成20年3月、各業態の監督指針の改正を行い、金融取引等からの反社会的勢力の排除に努めている。

      全国銀行協会は平成20年11月、「銀行取引約定書に盛り込む暴力団排除条項の参考例」を、平成21年9月、「普通預金規定、当座勘定規定及び貸金庫規定に盛り込む暴力団排除条項の参考例」を制定した。また、平成20年12月には、金融機関が暴力団排除条項を適用し、反社会的勢力との取引について期限の利益を喪失させるためには、警察等外部専門機関との連携強化が不可欠であることから、都道府県ごとに「銀行警察連絡協議会(仮称)」を設置することを決定した。

      これを受け、都道府県ごとに金融機関・警察等との連携強化を図るべく、連絡協議会が設立されている。

    • チ.口座の不正利用の防止

      預金口座を利用した悪質な事例が大きな社会問題となっていることを踏まえ、金融庁では預金口座の不正利用に関する情報について、情報入手先から同意を得ている場合には、明らかに信憑性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている金融機関及び警察当局へ情報提供者数等への情報提供を速やかに実施するとともに、情報提供件数の公表を行なっている。

      調査を開始した平成15年9月以降、平成21年3月末までに金融庁及び全国の各財務局等において、金融機関及び警察当局へ情報提供を行なった件数の累計は22,672件となっている。

      金融機関においても、預金口座の不正利用と思われる情報があった場合には、直ちに調査を行い、本人確認の徹底や必要に応じて預金取引停止、預金口座解約といった対応を迅速に取っていく必要があり、前述の22,672件に対し、12,051件の利用停止、8,621件の強制解約等を行っている。

  • (3)その他のトピックス

    • イ.異業種による銀行業参入等に対する対応

      平成11年秋以降、イトーヨーカ堂のいわゆる決済専門銀行やソニーのインターネット専業銀行等、新銀行を設立する構想が相次いで報道され、事業会社等による自らの事業と銀行業とのシナジー効果の発揮、自らの情報技術等の銀行業への活用の試み等、金融システム改革が進展する中で出てきた新しい動きとして、銀行業界における競争の促進、利用者の利便性の向上や金融技術の進展に資するものであると同時に、資本形態、業務形態、店舗形態の面で従来にない新たな動きであることから、銀行の健全性確保の観点からの検討が必要となった。

      平成12年8月3日付けで金融再生委員会・金融庁は、

      • i.子銀行の事業親会社等からの独立性確保

      • ii.事業親会社等の事業リスクの遮断

      • iii.事業親会社等と総合的な事業展開を図る場合の顧客の個人情報の保護

      • iv.資産構成が国債等の有価証券に偏っている場合のリスク管理や収益性

      • v.有人店舗を持たずインターネット・ATM等非対面取引を専門に行う場合の顧客保護

      を主な内容とする「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する基本的な考え方」「運用上の指針」を発表し、平成12年9月のジャパンネット銀行への銀行業免許付与を皮切りに、以降、平成20年6月のじぶん銀行への銀行業免許付与まで、平成21年3月末時点で計8行の新規参入が行われた。

    • ロ.郵政民営化について

      平成17年10月14日に郵政民営化関連6法が成立し、平成19年10月1日には日本郵政公社の機能を引き継いだ日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険がそれぞれの業務を開始した。

      これに伴い、全国の郵便局は、郵便局株式会社の下部組織としての郵便窓口業務のほか、株式会社ゆうちょ銀行から委託を受けて銀行代理業務等を、株式会社かんぽ生命保険から委託を受けて生命保険募集代理人業務を行うこととなり、簡易郵便局は郵便局株式会社からその再委託を受けることとなった。

      同時に、郵便局株式会社は、株式会社ゆうちょ銀行を所属銀行とする銀行代理業、金融商品仲介業の許可を受けたものとみなされ、簡易郵便局についても同様に銀行代理業者、金融商品仲介業者とみなされたことから、その所在地を管轄する各財務局等が監督権限を有することとなった。また、株式会社かんぽ生命保険、郵便局株式会社及び簡易郵便局の保険募集人についても、管轄する各財務局等が監督権限を有することとなった。

    • ハ.電子記録債権制度について

      企業間信用の手段である手形については、紙媒体を使用することに内在する保管コストや紛失リスクの問題等から、その利用が減少を辿る一方で、売掛債権については、債権の存在・発生原因を確認するためのコストや二重譲渡リスクがあるため流動性が乏しく、早期資金化が困難であるという問題を抱えており、事業者が資金調達を行う際の制約要因となっている。

      そこで、これらの問題を電子化によって解消し、事業者の資金調達の円滑化等を図ることを目的として、電子記録債権法(平成19年法律第102号)が制定され、平成20年12月1日に施行された。電子記録債権は、電子債権記録機関が有する記録原簿への電子記録をその発生・譲渡等の要件とする、既存の指名債権・手形債権とは異なる新しい金銭債権であり、従来の手形債権等と並存するものである。

      同法の成立・施行を受けて、三菱東京UFJ銀行が企業間の手形取引を電子的に仲介するサービスを開始する方針を明らかにしており、平成21年度上期の開業を予定し、平成20年6月24日に準備子会社を設立しているほか、全国銀行協会が電子記録債権版の手形交換所の役割を担う記録機関を開設する方向で動き出している。

    • ニ.金融サービスの変化

      • (イ)資金決済に関する法律

        資金決済システムは金融・資本市場を支える重要な社会的インフラであり、平成19年12月に公表された金融庁の「市場強化プラン(金融・資本市場競争力強化プラン)」においても、「安全かつ効率的で利便性の高い決済システム等の構築」が目標の一つとして掲げられている。

        資金決済は、個人や企業の間で行われるリテールの資金決済と、銀行間の資金決済に分けられ、リテールの資金決済に関しては、近年、情報通信技術の革新やインターネットの普及等により、銀行が提供する従来のサービスと異なる新たなサービスが普及・発達してきており、これまで銀行のみに認められてきた為替取引を銀行以外の事業者が容易に行い得る環境が整備されてきている。

        これらの状況を踏まえ、金融審議会金融分科会第二部会において審議が行われ、平成21年1月14日「資金決済に関する制度整備について−イノベーションの促進と利用者保護−」が公表された。

        審議会での議論に実務面での検討を加え、資金決済システムの社会的インフラとしての重要性や、我が国金融・資本市場の機能強化の必要性等にかんがみ、利用者利便の向上・イノベーションの促進等が重要であるとの観点から、マル1従来、銀行のみに認められていた為替取引を銀行以外の者でも行うことができる(資金移動業)こととし、所要の制度整備を行う、マル2商品券や、カード内のICチップにより金額等が記録されるIC型カード等と同様に、コンピュータサーバ等で金額等が記録されるサーバ型前払式支払手段を新たに規制の対象とし、利用者保護を図る、マル3銀行間の資金決済を強化するため、資金清算を行う機関(資金清算機関)を免許制にする、等の措置を講じるため、平成21年3月6日「資金決済に関する法律(案)」が国会に提出されている。

      • (ロ)金融分野における裁判外紛争解決制度の創設

        金融商品・サービスが多様化・複雑化するとともに、金融商品・サービスに関する苦情・紛争の件数が増加傾向にある中、金融商品・サービスに関するトラブルを簡易・迅速に解決する手段として、金融分野における裁判外の紛争解決制度(金融ADR(Alternative Dispute Resolution))には、利用者保護の充実・利用者利便の向上のための役割が期待されており、金融ADRの充実により、金融商品・サービスに対する利用者の信頼性の向上につながるものとして、信頼・活力ある金融・資本市場の構築のためにも大きな意義が認められている。

        これまで、金融分野における苦情・紛争の解決には、業界団体・自主規制機関による自主的な取組みが進められてきたが、実施主体の中立性・公正性及び実効性の観点から、紛争解決に関する利用者の信頼感・納得感を十分に得られていないとの指摘がみられる。

        このような状況を踏まえ、金融制度審議会金融分科会第一部会・第二部会の合同会合において審議が行われ、平成20年12月17日「金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR)のあり方について」が取りまとめられた。

        当該報告書等における提言を受け、平成21年3月6日「金融商品取引法の一部を改正する法律(案)」が国会に提出されている。

    • ホ.足利銀行の一時国有化

      栃木県に所在する足利銀行から金融庁に対し、平成15年9月期決算において債務超過となる旨の報告、併せて破綻の申出があったので、平成15年11月、内閣総理大臣が金融危機対応会議を開催、同行について預金保険法第102条第1項第3号措置を講ずる必要がある旨の認定がなされ、預金保険機構が同行の株式を取得し(特別危機管理開始)、一時国有化された。

      預金保険法第102条では、金融危機への対応として、我が国又は当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある場合に、内閣総理大臣は、金融危機対応会議の議を経て、マル1金融機関に対する資本増強(第1号措置)、マル2破綻金融機関又は債務超過の金融機関に対する特別資金援助(第2号措置)、マル3債務超過の破綻銀行に対する特別危機管理(第3号措置:第2号措置によっては信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずることを回避することができない場合に適用)を講じる必要がある旨の認定を行うことができると規定している。預金保険法第102条第3号の措置は、足利銀行に対する適用が初めての事例で、同行が栃木県を中心とする地域に多数の預金者と中小企業者等の取引先を抱えており、更に同行の規模や、栃木県における融資比率が極めて高率であることなど地域において同行が果たしている金融機能の維持が必要不可欠であることなどを総合的に勘案された結果である。

      一時国有化に伴い、政府は、地域の金融及び経済の安定に万全を期すため、関係省庁等連絡会議を開催するなど関係省庁の連携を図ったところであり、他方、関東財務局においては、金融・経済に関係する機関で構成する「栃木県金融・経済安定連絡協議会」を立ち上げ、関係機関の協力・連携を強化した。同協議会では、預金者や事業者等と接触する機会が多い商工団体や消費生活センターの相談員、市町村の担当職員等を対象に、特別危機管理の枠組みや地域金融円滑化のための施策等に関する「地域説明会」を栃木県内主要箇所で開催、預金者や事業者等の不安の払拭に努めた。

      足利銀行は新たに選任された経営陣の下で「経営に関する計画」を策定、その取組みが着実に成果を挙げたため、金融庁は平成18年9月受皿について具体的な検討を開始、平成20年3月受皿決定、平成20年7月銀行持株会社「株式会社足利ホールディングス」に足利銀行の全株式を預金保険機構が譲渡し、足利銀行の特別危機管理が公的負担を伴うことなく終了した。

2.財務局関係の金融機関

  • (1)地域銀行(地方銀行、第二地方銀行)

    地方銀行の業容について見ると、この10年間で店舗の統廃合により店舗数は7,904店舗から7,455店舗に減少したものの、業容は拡大しており、平成11年3月末時点で64行、資金量174兆1,379億円であったものが、平成21年3月末では64行、205兆4,359億円に上っている。

    一方、第二地方銀行の業容は、平成11年3月末時点で61行、4,656店舗、資金量63兆1,394億円であったものが、この10年間で合併や営業譲渡により、平成21年3月末では44行、3,253店舗、56兆6,685億円に縮小している。

    地域金融機関にとって、この10年間の大きな経営課題は、いわゆるバブル経済の崩壊により抱えるに至った多額の不良債権の処理により、経営の安定化を図り、金融本来の機能を回復させることであった。このため、地域金融機関においては、業務純益や有価証券等の含み益、更には内部留保の取崩しにより、不良債権の最終処理に取り組むとともに、経営の合理化・効率化を進めるなど自助努力を行うほか、平成10年10月に成立した早期健全化法に基づき、公的資金による資本増強を実施することにより、経営の健全化に向けた努力を行った。しかし、一部の銀行には、資産内容の悪化から早期是正措置命令を受け、経営破綻に陥ったところも見られた。

    また、地域銀行においては、経営基盤の更なる強化を図るため、合併や持株会社方式による経営統合及び子会社化等による組織再編成が盛んに進められた。このような金融機関の自主的な経営判断により行う合併等を円滑に実施できるよう、平成15年1月に施行された金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法が活用されたほか、平成16年8月に施行された金融機能の強化のための特別措置に関する法律を活用し、予防的に公的資金で資本増強することによって経営基盤の強化を図る地域銀行も見られた。

    このほか、地域密着型金融の推進については、平成15年3月に公表された「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づき、平成15年度、16年度を集中改善期間として、リレーションシップバンキングの機能を強化し、中小企業の再生と地域経済の活性化を図ると同時に不良債権問題も解決する取組みが進められた。また、これを継承するため、平成17年3月に公表された「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」では、平成17年度、18年度を重点強化期間として、中小企業等への金融仲介機能を強化するとともに、金融機関自身の経営力の強化に取り組んでいる。なお、平成19年度以降は、これまでのアクションプログラムという時限的な取組みではなく、通常の監督行政の言わば恒久的な枠組みで推進すべきとの提言を受け、監督指針に追記することにより、引き続き地域密着型金融を推進しているところである。

  • (2)協同組織金融機関(信用金庫)

    平成11年3月末時点で396金庫、8,673店舗、資金量100兆5,732億円であった信用金庫は、経営効率化を図るための合併あるいは経営破綻により、平成21年3月末においては279金庫に減少し、店舗数もリストラの進展により7,671店舗に減少したものの、資金量は115兆4,531億円に増加した。

    信用金庫にとって、この10年間の大きな経営課題は、不良債権処理問題であった。いわゆるバブル崩壊によって拡大した不良債権額がなかなか縮小しない状況が続くなか、信用金庫においては不良債権の早期処理の取組みなど経営の健全化に向けた努力が行われ、信金業界としても個別信用金庫の健全性を確保し、もって業界全体の信用力の維持・向上を図るため、平成13年4月に信用金庫経営力強化制度を創設し、経営分析・経営相談・資本増強等の支援が行われた。

    また、金融監督当局としても、中小企業の再生と地域経済の活性化を図る各種の取組みを進めることによって、不良債権問題も同時に解決していくことを目指して、中小・地域金融機関に「地域密着型金融」の推進を図ってきた。

    これらの取組みの結果、信用金庫の不良債権比率は、平成14年3月期の10.1%をピークとして、平成20年3月期には6.4%にまで低下した。

    業務面においては、多くの信用金庫は地方銀行等と比べて遅れていた投資信託等の預かり資産ビジネスへの取組みを積極化し、一部の信用金庫は証券仲介業にも参入した。

    なお、制度面では、マル1半期開示、マル2外部監査の実施対象の拡大、マル3総代会の機能強化等、協同組織金融機関のガバナンス向上が図られたが、平成2年を最後に協同組織金融機関(信用金庫・信用組合)のあり方について本格的な見直しが行われていなかったため、平成20年3月、金融審議会金融分科会第二部会の下に「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」が設置され、その業務及び組織のあり方についての総合的な見直しがスタートした。以降、16回に亘り、議論を行い、平成21年6月29日に「中間論点整理報告書」を取りまとめ、公表を行った。

  • (3)協同組織金融機関(信用組合)

    信用組合のこの10年間の動きをみると、平成11年3月末において、322組合、2,677店舗、資金量20兆2,044億円であったところ、破綻による事業譲渡のほか、経営の効率化等を目指した合併の進展等により、平成21年3月末では、162組合、1,785店舗、資金量16兆3,633億円となっている。

    信用組合は、中小企業等協同組合法によって設立され、同法及び協同組合による金融事業に関する法律を基本法とする協同組織形態の金融機関であり、その形態によって、一定地区の個人、中小規模の事業者を対象とする「地域」、特定企業等に勤務する個人を対象とする「職域」、特定業種を対象とする「業域」と「外国系」に大別されている。

    平成11年11月25日、中小企業基本法等の一部を改正する法律が成立し、同法が定義する中小企業者の範囲について、資本金の実態等から見直しがなされたことから、中小企業等協同組合法第7条に規定される信用組合の組合員資格についても、同様に上限となる資本の額が引き上げられ(製造業等の場合1億円から3億円へ引上げ等)、昭和48年の当該規定の改正以来26年ぶりに拡充されることとなった。

    都道府県の区域内を事業地区とする信用組合の検査・監督事務は、機関委任事務として都道府県により行われていたが、平成10年5月29日に閣議決定された地方分権推進計画により、信用組合の検査・監督事務は国の直接執行事務に移管することとされ、これを受け平成11年7月8日に成立した「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(地方分権一括推進法)により、平成12年4月1日をもって、既に国が所管していた12組合と併せ、全国 291組合(破綻公表済の24組合を含む)すべてが国による検査・監督を受けることとなった。

    国としては、いわゆるペイオフ解禁を平成14年4月に控え、事務移管を受けた多数の信用組合について、資産内容等の速やかな実態把握が必要であったことから、平成12年7月から始まる12事務年度において、信用組合に対する集中検査が実施され、平成13年3月までに255組合に対して立入検査が行われた。

    平成12年4月から平成14年3月末までに53組合が破綻を公表した。平成14年12月末までの間に、平成11年度以前に破綻公表した組合を含め92組合が他信組等へ事業譲渡された。

    信用組合は、もとより中小零細事業者を主な取引先とする金融機関であるが、平成15年3月に「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」が金融庁から公表されたことを受けて、中小企業金融の再生に一層努めるとともに、健全性の確保、収益性の向上に取り組むこととなり、続いて平成17年3月に公表された「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」に基づき、地域密着型金融を一層推し進め、中小企業金融の円滑化や経営力の強化、顧客利便の向上に向けた各種施策を取り組んでいくこととなった。

    信用金庫・信用組合を含む協同組織金融機関の業務や組織についての検討は平成2年以来永らく行われていなかったが(平成2年の金融制度調査会・金融制度第一委員会作業部会報告「協同組織金融機関の業務及び組織のあり方について」)、その間にも協同組織金融機関を巡る環境は大きく変化しており、協同組織金融機関に課されている資金調達手段の制約や税制上の優遇措置についての議論、また株式会社組織の金融機関に比べてガバナンスが十分ではない等の議論も聞かれるようになった。

    こうしたなか、平成19年3月に閣議決定された「規制改革推進のための3ヵ年計画」において、協同組織金融機関の業務及び組織のあり方について、総合的な視点から見直しを検討することが求められたことから、これを受けて、平成20年3月、金融審議会金融分科会第二部会の下に「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」が設置され、その業務及び組織の在り方についての総合的な見直しがスタートした。以降、16回に亘り、議論を行い、平成21年6月29日に「中間論点整理報告書」を取りまとめ、公表を行った。

  • (4)信託業・信託契約代理業

    平成16年12月30日、大正11年の制定以来82年ぶりに全面改正となった信託業法が施行された。

    信託業法の改正により受託可能財産の制限が撤廃され、特許権や著作権等の知的財産権についても受託することが可能となった。また、これまで金融機関に限定されていた信託業の担い手が拡大され、金融機関以外の一般事業法人も信託業に参入することが可能となった。

    更に、信託契約代理店制度や信託受益権販売業者制度が設けられ、信託サービスの利用者窓口が大きく広がった。

    平成19年9月30日、改正信託法の施行及び証券取引法を改正した金融商品取引法の施行に伴い、信託業法も改正された。

    金融商品取引法の施行により、市場リスクのため信託の元本について損失が生じるおそれのある信託契約については、金融商品取引法の規制が信託業法においても準用されることになった。また、法改正により信託受益権がみなし有価証券となり、金融商品取引法における規制対象となったことから、従前の信託業法により登録を受けていた信託受益権販売業者は、新たに金融商品取引法に基づく金融商品取引業者として取り扱われることとなった。

    更に、改正信託法の施行により、新しい信託類型として自己信託が創設されたこと等から、信託業法においては、自己信託の受益権を多数の者が取得することができる場合は登録制としたほか、委託者や受託者の保護に支障を生ずることのない範囲内で受託者の義務等を見直した。

    • イ.信託業

      信託業は、「信託の引受けを行う営業」と定義されており、これを営む場合には内閣総理大臣の免許を受けなければならない。ただし、営もうとする信託業が、次のいずれかに該当する信託のみの引受けを行う営業である場合には、管理型信託業として内閣総理大臣の登録(3年ごとの更新制)を受けて営むことができる。

      • ・ 委託者又は委託者から指図の権限の委託を受けた者(委託者又は委託者から指図の権限の委託を受けた者が受託者と密接な関係を有する者以外の者である場合に限る。)のみの指図により信託財産の管理又は処分が行われる信託

      • ・ 信託財産につき保存行為又は財産の性質を変えない範囲内の利用行為若しくは改良行為のみが行われる信託

      平成21年3月末現在、内閣総理大臣の免許を受けた信託業者(運用型信託会社)はいずれも東京都に本店を置く7業者、管理型信託業として内閣総理大臣の登録を受けた信託業者は7業者(関東2、近畿4、東海1)となっている。

    • ロ.信託契約代理業

      信託契約代理業とは、「信託契約(当該信託契約に基づく信託の受託者が当該信託の受益権の発行者とされる場合を除く。)の締結の代理(信託会社又は外国信託会社を代理する場合に限る。)又は媒介を行う営業」と定義され、内閣総理大臣(財務局長に権限委任)の登録を受けて営むことができる。

      信託契約代理店は、所属信託会社又は所属信託兼営金融機関のために信託契約代理業を営むこととされている。

      平成21年3月末現在の登録業者は、地域銀行や信用金庫を中心として196業者となっている。

  • (5)銀行代理業

    銀行代理業は、平成18年4月1日に施行の銀行法改正により導入された制度で、利用者利便の一層の向上を目指し、従来の銀行代理店制度の見直しを行ったもので、銀行のために次のいずれかの行為の代理又は媒介を行う営業をいう。

    • ・ 預金又は定期積金等の受入れを内容とする契約の締結

    • ・ 資金の貸付け又は手形の割引を内容とする契約の締結

    • ・ 為替取引を内容とする契約の締結

    銀行代理業を営むには内閣総理大臣の許可が必要であるが、実務上は銀行代理業申請者等の主たる営業所等の所在地を管轄する各財務局長等に委任されている。一般的に、銀行代理業は所属銀行の支店がない地域において活用されるケースが多く、所属銀行と異なる財務局において銀行代理業者を監督する場合は財務局間の連携が必要とされる。

    一方、郵政民営化については、平成17年10月14日に郵政民営化関連6法が成立し、施行日の平成19年10月1日をもって日本郵政公社の郵便貯金業務は株式会社ゆうちょ銀行に承継された。

    同時に郵便局株式会社はゆうちょ銀行を所属銀行とする銀行代理業者の許可を受けたものとみなされ、また、全国の簡易郵便局3,859業者については郵便局株式会社から再委託された銀行代理業者とみなされることとなり、銀行代理業者の数は郵政民営化により大幅に増加した。

  • (6)労働金庫

    労働金庫は昭和28年施行の「労働金庫法」に基づく金融機関であり、協同組合組織金融機関としての信用組合に対する規制態様を基本に、労働金庫本来の特殊性を加味して構成される特殊法人である。その業務は、内閣総理大臣、厚生労働大臣の監督下にあり、監督権限の内容は銀行等に対する内閣総理大臣のそれとほぼ同様である。

    平成11年3月末時点で41金庫、689店舗、預金量10兆7,079億円であった労働金庫は、平成21年3月末には13金庫、668店舗、預金量15兆7,487億円と、この10年間で合併により金庫数・店舗数は減少しているものの預金量は増加している。

    労働金庫の目的は、労働者の団体の行う福利共済活動のための金融の円滑化、労働者の地位の向上であり、貸付け等の金融業務はこれらの目的に沿って、都道府県を単位としてこれら金融事業が行われてきたが、労働者の職場等の広域化や金融ビックバン等金融環境に対応するため、平成10年から平成15年にかけ、近畿地域7金庫、東海地域3金庫、関東地域8金庫、四国地域4金庫及び東北地域6金庫が合併している。更に、少子高齢化の進展と人口減少、地域間の経済格差の拡大などの社会構造の変化に加え、会員・組合員の労働と生活のあり方が広域化・多様化していることを踏まえ、平成24年4月を目途に全国13労働金庫の合併による「日本労働金庫(仮称)」の設立について検討が進められている。

  • (7)信用保証協会

    信用保証協会は「信用保証協会法」に基づく特殊法人で、全国各都道府県と大阪、横浜、名古屋、川崎及び岐阜の5都市の計52協会があり、中小企業者等が金融機関から貸付け等を受けることについて、その貸付金等の債務を保証することを主な業務とし、中小企業者等に対する金融の円滑化を図っている。

    最近10年間の事業規模を保証債務残高でみると、平成11年3月末時点で41兆9,916億円、平成21年3月末時点では33兆9,191億円となっている。この間の残高推移は、平成12年3月末をピークに平成20年3月末までは減少傾向にあったが、平成21年3月末では、政府の経済対策に基づく平成20年10月の緊急保証制度の創設により増加に転じている。

    また、最近10年間の信用保証協会を巡る主な動きとしては、金融機関による「貸し渋り」が社会問題化した平成10年に、政府の「中小企業等貸し渋り対策大綱」に基づく保証規模20兆円(後に30兆円に拡大)の特別保証制度が創設され、その後、経営安定関連保証(セーフティネット保証)の拡充措置、保証協会債権回収会社(保証協会サービサー)の設立、責任共有制度の導入等が挙げられるが、平成20年度は、政府による累次の経済対策を受け、緊急保証制度の対象業種や保証枠が拡充されており、信用保証協会が果たす役割は大きくなっている。

    信用保証協会の監督は、内閣総理大臣、経済産業大臣の共管によって行われている一方、日常の監督は都道府県知事等に法定受託されており、各財務局等は、経済産業局及び都道府県等と連絡調整を行いつつ、許認可、検査等の業務を行っている。

  • (8)生命保険会社

    生命保険会社を取り巻くこの10年間は、金融ビッグバン・保険制度改革の仕上げとして、保険商品の銀行窓口販売が開始された。平成13年4月の一部解禁を皮切りに、平成14年10月の二次解禁、平成17年12月の三次解禁を経て、平成19年12月には全面解禁が実施された。

    平成11年3月末時点で免許を付与している生命保険会社は46社、生命保険募集人は 営業職員数で341,605人であったが、平成21年3月末時点で、合併や新規免許の付与等による増減があったものの結果的に同数の46社で、生命保険募集人は営業職員数で248,481人と大きく減少している。なお、この10年間で営業職員数は毎年減少を続けたものの、銀行窓口販売解禁や郵政民営化の影響により、代理店使用人数は180,543人から949,220人と5倍以上の増加となっている。

    各財務局等は、金融庁の委任を受けて、生命保険募集人の登録、募集活動等の監督等の業務を行っている。なお、財務局に委任されている保険募集に関する検査については、現行、金融庁が保険会社に対する検査とあわせて実施している。

    生命保険募集関係の主な改正事項等については、平成17年2月から「金融庁電子申請システム」による登録事務が始まり、現在に至っている。

  • (9)損害保険会社

    各財務局等は、金融庁の委任を受けて、損害保険代理店の登録、募集活動等の監督等業務を行っている。なお、財務局に委任されている保険募集に関する検査については、現行、金融庁が保険会社検査とあわせて実施している。

    平成11年3月末時点で免許を付与している損害保険会社は65社、登録代理店数は 593,872店であったが、経営の効率化の観点から代理店の統廃合を進める等により、平成21年3月末では51社、217,864店となっている。

  • (10)少額短期保険業者

    平成18年4月1日から保険業法の一部改正に伴い、「少額短期保険業」という新たな制度が導入された。

    「少額短期保険業」は、契約者保護の観点から、保険業法を改正し、一定の事業規模の範囲内で、少額かつ短期の保険の引受けのみを行う事業をいい、少額短期保険業を営む事業者は各財務局等の監督対象となった。

    各財務局等は、金融庁の委任を受けて、少額短期保険業者の登録、少額短期保険業者の募集人の登録・変更等の監督等の業務を行っている。

    平成21年3月末時点で登録している少額短期保険業者は64業者、少額短期保険業の募集人は24,246人となっている。

  • (11)保険仲立人

    平成8年4月施行の新保険業法でブローカー制度が導入された。これに伴い、保険募集を行う者として保険契約の締結の媒介のみを行う「保険仲立人」が新たに規定され、保険仲立人の登録及び検査事務が新規業務として加わった。

    各財務局等は、金融庁の委任を受けて、保険仲立人の登録、募集活動等の監督業務等を行っている。

    登録された保険仲立人は平成8年9月から営業を開始しており、平成21年3月末の保険仲立人は32社に上っている。

  • (12)火災共済協同組合

    火災共済協同組合は、中小企業等協同組合法に基づき設立され、組合員のために火災共済事業を行っている。平成21年3月末時点では、都道府県単位で事業を行っている42組合及びこれらの単位組合に対する再保険事業を行う火災共済協同組合連合会がある。

  • (13)貸金業者及び貸金業協会

    平成18年12月20日、貸金業規制法制定以来の抜本改革となる「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正貸金業法)が公布された。

    この新しい法律は、4段階に分けての施行となるが、まず、公布後1ヵ月後の平成19年1月20日、第1段階として、無登録営業に対する罰則や超高金利の貸付けに対する罰則の強化が実施された。次に、同年12月19日、第2段階として、法律本体が施行され、具体的には、取引規制の強化、業務改善命令導入、新貸金業協会設立等の実施と、法律の名称も「貸金業法」に改められた。更に、平成21年6月18日、第3段階として、貸金業務取扱主任者の試験開始、指定信用情報機関制度の創設、財産的基礎の引上げ(2,000万円)等が実施された。なお、第4段階となる完全施行日は本体施行日後2年半以内(つまり、平成22年6月19日以前)となるが、「みなし弁済」廃止、出資法上限金利の引下げ、総量規制導入、貸金業者登録の財産的基礎の引上げ(5,000万円)などが実施される。

    各財務局等は金融庁の委任を受け、貸金業者の登録やその取消し等の監督業務、検査業務を行ってきたが、平成19年12月に施行された改正貸金業法によって新設された業務改善命令の発出など、機動的な監督業務を行うほか、多重債務問題の解決に向けた相談窓口の整備、強化や、警察等関係先と連携してヤミ金の撲滅に向けた取締りの強化にも取り組んでいるところである。

    業界の現状については、平成18年1月13日のいわゆるグレーゾーン金利を実質否定した最高裁判決後、利息制限法超過部分の利息返還を貸金業者に求める過払い金返還請求が急増し、貸金業者の財務内容は急激に悪化した。また、改正貸金業法の完全施行後の上限金利引下げを踏まえ、貸出審査を強化せざるを得ない等、厳しい経営環境が続いている。このような状況もあって、財務局登録貸金業者数は、平成11年3月末には1,195者あった業者数は、平成21年3月末では473者と、半数以下に減少している。なお、都道府県登録貸金業者を含む全業者数も、平成11年3月末時点では30,290者となっていたが、平成21年3月末では6,178者と、こちらも激減している。

    貸金業協会については、貸金業者の業務の適正化の観点から、業界の自主規制機能を抜本的に強化するため、新たに自主規制機関として、内閣総理大臣が認可する全国組織の貸金業協会を設立することとされ、改正貸金業法本体施行(平成19年12月19日)と同時に、日本貸金業協会が設立された。

    なお、協会の事務所の所在地を管轄する各財務局長等は、報告徴収及び立入検査を行うことができるものとなっている。

  • (14)前払式証票発行者

    近年、情報通信技術の革新やインターネットの普及等により、IC型のプリペイド・カードをはじめとするいわゆる電子マネーの普及や収納代行サービス、代金引換サービスの普及等、銀行以外の事業者による新しいサービスが発達してきていることから、「決済に関するワーキング・グループ」が金融審議会金融分科会第二部会の下に設けられ、平成20年5月以降、12回にわたり、事業者等からのヒアリングを実施する等、検討が重ねられ、平成21年1月には、サーバ型の前払式支払手段に係る規制、自家型発行者に対する監督規定の整備等に関して報告書がまとめられた。

    この報告を受け、金融庁においては「前払式証票の規制等に関する法律」を廃止し、新たに「資金決済に関する法律」を策定し、平成21年3月に法律案が国会提出されている。

    本法律案には、従来、前払式証票の規制等に関する法律の規制対象外であったサーバ管理型前払式支払手段を法規制の適用対象とすることが盛り込まれているほか、従来、資料提出命令にとどまっていた自家型前払式証票発行者監督において、立入検査や業務改善命令等など監督・検査権限強化策も導入されている。

    なお、平成21年3月末時点での登録・届出業者数は1,729者となっている。また、発行者の破綻による発行保証金の還付手続きは、平成2年の「前払式証票の規制等に関する法律」施行後、全国で31件発生している。

  • (15)不動産特定共同事業者

    不動産特定共同事業法は、平成3年頃を中心に、経営基盤の脆弱な業者が不動産特定共同事業を行い倒産して、深刻な投資家被害を招いた事例が発生したため、こうした被害を未然に防ぎ、投資家保護を図りつつ不動産特定共同事業の健全な発達を促すことを目的として制定された。不動産特定共同事業を営もうとする者は同法に基づき、金融庁長官及び国土交通大臣、又は都道府県知事の許可を受けなければならない。

    各財務局等では、金融庁長官の所掌業務のうち、立入検査等権限の一部が委任されている。

    不動産特定共同事業者の数は平成11年3月末で68社であったが、平成21年3月末は109社となっている。このうち金融庁長官・国土交通大臣許可業者は平成11年3月末で29社であったが、平成21年3月末は32社となっている。

  • (16)特定目的会社(SPC)

    金融制度調査会答申(平成9年6月)において、資金調達手段の多様化を図る上での環境整備を行う必要性が提言されたこと等を受けて、マル1特定目的会社が業として特定資産の流動化を行う制度を確立し、特定資産の流動化に係る業務の適正な運営を確保する、マル2特定資産の流動化の一環として発行される各種の証券の購入者等の保護を図ることにより、一般投資家による投資を容易にする、等を目的として、「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」が平成10年6月に成立し、同年9月に施行された。その後、金融審議会での21世紀を展望した金融サービスに関する基盤整備の観点からの検討を踏まえ、平成12年5月に法改正が行われ、「資産の流動化に関する法律」が同年11月から施行された。

    本改正では、流動化対象資産を指名金銭債権・不動産から財産権一般に拡大されるとともに、特定目的会社に関する規制を簡素・合理化して、より使い勝手のよい制度に改められた。また、流動化の器として信託も利用可能とされた。これに伴い法律名が改められた。

    各財務局長等は金融庁長官の委任を受け、届出受理、検査・監督業務を行っている。

    平成21年3月末現在の特定目的会社は1,065社となっている。

3.金融機関等に対する検査

金融機関等に対する検査は、信用秩序の維持、預金者等の保護、金融機能の円滑化の観点から、金融機関等の健全性等を確保することを目的として、銀行法第25条等に基づき実施するものである。地方における民間金融機関等に対する検査権限については、財務局長は、金融庁長官(証券会社等に対する検査については証券取引等監視委員会)の委任を受け、同長官(又は同委員会)の指揮監督の下に権限を行使することとされている。

  • (1)検査権限の変遷

    金融機関等に対する検査権限は、金融行政機構改革等に応じて移管されてきた。具体的には、金融監督庁発足前は大蔵大臣が、総理府の外局として金融監督庁が発足した平成10年6月22日以降は内閣総理大臣の委任を受けた金融監督庁長官が、金融監督庁が金融再生委員会に置かれることとなった同年12月15日以降は同委員会の委任を受けた金融監督庁長官(金融監督庁と大蔵省金融企画局を統合して金融庁が発足した平成12年7月1日以降は金融庁長官)が、それぞれ検査権限を行使することとされていた。中央省庁再編により、金融再生委員会が廃止され、金融庁が内閣府の外局として置かれた平成13年1月6日以降は、内閣総理大臣の委任を受けた金融庁長官が検査権限を行使することとされている。

    このほか、平成12年4月1日には、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」の施行に伴い、都道府県の区域内を地区とする信用組合に対する検査権限が、地方(都道府県知事)から国(金融再生委員会)に移管された。なお、平成17年7月1日には、証券会社等に対する検査の一元化を図るため、証券会社の財務の健全性等に関する検査権限や投資信託委託会社、投資顧問業者等に対する検査権限が、金融庁長官から証券取引等監視委員会に委任された。

  • (2)検査に関する主な制度的枠組み等の整備

    • イ.金融検査マニュアルの整備

      金融機関等の不良債権処理が国政上の最重要かつ喫緊の課題となっていた中で、平成10年7月2日に政府・与党において取りまとめられた「金融再生トータルプラン(第2次とりまとめ)」では、「金融検査については、外部のノウハウを取り入れた検査マニュアル及びチェックリストを整備」することとされた。これを受け、検査部に設置された「金融検査マニュアル検討会」での検討等を経て、検査官が金融機関を検査する際の手引書として用いるものであること、金融機関の規模や特性を十分踏まえ、機械的・画一的な運用に陥ってはならないこと等が検査官等に周知徹底されたうえで、平成11年7月1日に検査部長通達「預金等受入金融機関に係る金融検査マニュアルについて」(金検第177号)が発出された。

    • ロ.意見申出制度の創設

      早期是正措置の導入、金融検査マニュアルの整備等を背景に、検査に対しては、より一層の質的水準及び判断の適切性の向上が求められ、検査監理機能の充実が不可欠であった。こうした観点から、検査官と被検査機関とが十分な議論を尽くしたうえでも、認識が相違した項目がある場合に、被検査機関が当該相違項目について意見を申し出る意見申出制度が創設され、平成12年1月1日から試行的に実施された。この意見申出制度は、その事務処理を行う体制整備が図られたこと等を踏まえ、同年9月11日に検査局長通達「意見申出制度について」(金検第74号)が発出され、同日から本格的に実施されている。

    • ハ.金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の作成

      いわゆる貸し渋り問題等にかんがみ、具体的で実効性のあるデフレ対策を強力に実施する必要があり、当面金融的な問題を解決していくことが不可欠との認識の下、平成14年2月27日に「早急に取り組むべきデフレ対応策」が政府において取りまとめられた。この中で「中小・零細企業等の債務者区分の判断について、金融検査マニュアルの具体的な運用例を作成し、公表する」こととされたことを受け、検査局において、中小・零細企業等の経営実態の把握の向上による適切な検査の運用確保のため、金融検査マニュアルの解説及び具体的な適用事例が作成され、同年6月28日に検査局長通達「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕について」(金検第264号)として発出された。

      また、主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生を図るべく、平成14年10月30日に金融庁が策定・公表した「金融再生プログラム」において、「中小・地域金融機関の不良債権処理については、主要行とは異なる特性を有する『リレーションシップバンキング』のあり方を多面的な尺度から検討」することとされ、平成15年3月28日に「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」が策定・公表された。この中で「当該別冊の定着状況等をモニタリングし、その内容が中小企業の実態により即したものとなるよう改訂する」こととされたことを受け、検査局において、借り手サイドを含めた幅広い意見聴取等を行い、マニュアル別冊の内容がより中小企業等の実態に即したものとなるよう改定がなされ、平成16年2月26日に検査局長通達「『金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕』等の改訂について」(金検第86号)が発出された。

    • ニ.金融検査に関する基本指針の策定

      我が国の金融システムを巡る局面が不良債権問題への緊急対応から、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面に転換しつつあったことを踏まえ、平成16年12月26日に、新たな金融行政の指針である「金融改革プロラム」が金融庁において策定・公表された。同プログラムでは「金融庁の行動規範(code of conduct)の確立」が掲げられ、その具体的施策の一つとして、「『検査手続に係る指針(検査実施における行動規範)』を策定・公表」することとされた。これを受け、検査局に設置されたワーキンググループでの検討等を経て、平成17年7月1日に、検査運用の基本的考え方及び実施手続等を定めた検査局長通達「金融検査に関する基本指針について」(金検第369号)が発出・施行され、検査に関連して発出される通達等の解釈及び運用は、本指針を基に行うこととされた。

    • ホ.金融検査評定制度の導入

      「金融改革プログラム」では、「活力ある金融システムの創造」が掲げられ、検査・監督による金融機関の経営改善に向けた動機付けを図るための具体的施策の一つとして、「財務状況のみならず、様々な観点からの検査における評定制度の導入等によるメリハリの効いた効果的・選択的な行政対応」が示された。これを受け、検査局に設置された「評定制度研究会」での検討等を経て、平成17年7月1日に検査局長通達「預金等受入金融機関に係る検査評定制度について」(金検第370号)が発出された。金融検査評定制度は、金融機関の検査の際、金融検査マニュアルに基づき検証した検査結果を段階評価することにより、金融機関の自主的・持続的な経営改善に向けての取組みや検査官と金融機関との双方向の議論を促すこと等を目的としており、平成18年1月1日から試行が開始され、平成19年4月1日(主要行以外の金融機関については平成20年1月1日)から本格的に施行されている。

    • ヘ.ベター・レギュレーションに向けた「マニュアル5原則」の明記

      我が国市場の競争力強化を図るため、金融庁が取りまとめ、平成19年12月21日に公表された「金融・資本市場競争力強化プラン」においては、その柱の一つとして「よりよい規制環境(ベター・レギュレーション)」が掲げられている。検査分野においても、この考え方を浸透させ、実践・定着を図る観点から、検査運営の質的向上にあたって特に重要な5原則を、検査官が金融検査を行う際に配意すべき事項として、検査マニュアルの冒頭に明記することとし、平成20年8月8日に検査局長通達「『預金等受入金融機関に係る検査マニュアル』等の一部改定について」(金検第354号)が発出された。金融庁・財務局の検査部局においては、5原則の考え方を踏まえつつ、検査におけるベター・レギュレーションを進化させるべく、情報収集・検証手法の高度化、人材の強化等に向けた各般の施策に取り組んでいるところである。

      (参考)マニュアル5原則

      • マル1 重要なリスクに焦点をあてた検証

      • マル2 問題の本質的な改善につながる深度ある原因分析・解明

      • マル3 問題点の指摘と適切な取組の評価、静的・動的な実態の検証

      • マル4 指摘や評定根拠の明示、改善を検討すべき事項の明確化

      • マル5 検証結果に対する真の理解(「納得感」)

4.その他

  • (1)金融経済教育

    • イ.金融教育の歴史と経緯

      金融経済教育は、貯蓄推進・貯蓄増強という目的のために戦後間もない頃から始まった金銭教育の流れを汲むものであるが、金融庁として、平成12年6月の金融審議会答申で「金融分野における消費者教育の必要性」について言及されたことを機に、金融トラブルの未然防止等を目的とした金融経済教育に取り組み始められ、更には、「貯蓄から投資へ」の流れを受けて、「投資教育」的な要素も加わる形で金融経済教育は粛々と進められてきた。

      このような状況の中、平成17年3月に、当時の伊藤金融担当大臣の私的懇談会として金融経済教育懇談会が設置され、金融経済教育の在り方等について議論された結果、同年6月に「金融経済教育に関する論点整理」が取りまとめられた。これを契機に、平成17年が「金融教育元年」と位置付けられる等、業界団体や各金融機関等においても金融経済教育の気運が高まり、現在に至っている。

    • ロ.金融リテラシー(基礎知識・活用能力)向上の必要性と現状

      • (イ)経済社会環境の変化における自己責任による投資機会の増加

        近年、右肩上がり経済の終わり、高齢社会の到来、終身雇用・年功制の変容等、経済社会環境の変化に伴い、個人が金融資産の運用について、自らの責任で意思決定する期間・機会が人生の中で格段に増加している。

        また、金融商品の多様化・高度化、IT化と販売チャネルの多様化といった金融環境も大きく変化している中で、金融商品の持つリスクを理解し、自らの責任によって意思決定した上での投資行動を促していくためには、国民一人一人に、金融やその背景となる経済についての基礎知識と、日々の生活の中でこうした基礎知識に立脚しつつ自立した個人として判断し意思決定する能力、すなわち「金融経済リテラシー」を身に付けていただくことは、個人が社会で生活していく上で必要不可欠となった。

      • (ロ)多重債務者問題等への対応

        経済が高度に発展し多様な商品が溢れる一方で、ローンやクレジットカード等、その場で「現金」を必要としない購入方法が広く浸透していく中、自己の返済能力を過大に評価し、返済能力を上回る過剰な借入によって家計が深刻な状況に追い込まれている人も出る等、多重債務問題が社会問題化した。

        これを受け、平成19年4月20日に決定された「多重債務問題改善プログラム」において、「多重債務者発生予防のための金融経済教育の強化」が盛り込まれ、多重債務の予防のための金融リテラシーの向上が社会全体の重要な目標となった。

    • ハ.財務局における金融経済教育への取組み状況

      • (イ)小学校から高等学校における金融経済教育

        金融経済教育懇談会の論点整理が発表されて以来、金融広報委員会や業界団体、個別金融機関における金融経済教育の気運は確実に高まっている。

        金融広報中央委員会が、小学校、中学校、高等学校等の各発達段階に応じて行うべき金融教育の内容等を体系的に整理、取りまとめた「金融教育プログラム」を全国の学校に浸透させていくため、金融庁と金融広報委員会は全国40以上の都道府県教育委員会を直接訪問し、こうしたプログラムの普及に取り組んできた。

        また、各財務局等においても、各都道府県の金融広報委員会と連携し、金融教育に携る教員向けの研修会を開催・協力や、学校における金融経済教育講演会への講師派遣等を通じて、学校教育における金融経済教育の充実に向け取り組んできている。

      • (ロ)社会人や高齢者に対する金融経済教育

        金融経済教育の取組みは、初等中等教育段階のほか、社会人・高齢者の段階でも行う必要がある。

        このため、金融庁は、自治体等への各種パンフレットの配布、シンポジウムの開催、金融庁のホームページにおける金融教育のコーナーの充実等によって金融知識の普及に取り組んできている。

        また、各財務局等においても、公民館における金融経済教育講演会への講師派遣を通じて、社会人や高齢者に対する金融経済教育の充実に取り組んできている。

  • (2)苦情対応

    財務局における苦情相談への対応は、金融行政所管官庁として所管業務から派生する問題として、従来から行われてきたが、苦情相談の中には、財務局へ苦情相談を持ち込むことによって、苦情対象金融機関からなんらかの利益を得ることを目的としたものもあり、業務上支障の生じる場合も出てきている。

    こうした状況を踏まえ、平成10年6月の金融監督庁発足に伴い発出された事務ガイドラインにおいて、「当局は個別取引に関して仲裁等を行う立場にないこと及び銀行法等に基づき金融機関の経営の健全性等を確保することが当局の職務であることを明快に説明するものとする。」等と苦情に対する対応が示され、現在の中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針等に引き継がれている。

    また、中小企業等借り手の声等、各種の情報を受け付けるため、平成14年10月金融庁に開設され、同年11月、各財務局等に開設された「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」は、平成17年7月19日に金融庁「金融サービス利用者相談室」に一元化されているところ。「金融サービス利用者相談室」においては、相談内容・対応状況等を体系的に記録・保管するとともに、相談内容等を情報として関係部局に回付し、企画立案・検査・監督等各業務において有効活用を図っているほか、相談等の受付実績や主な相談事例等を取りまとめ・公表するなど、利用者保護・利便性向上につながる情報を広く提供している。


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