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日時 令和元年11月26日(火)13:30~14:50

場所 財務省 第3特別会議室

内容

1. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて
2. 令和2年度国債発行計画について

○令和2年度国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。

・10月25日(金)に行われた「国の債務管理の在り方に関する懇談会」における当局提出資料を説明するとともに、委員からの意見を紹介する。

(国の債務管理の在り方に関する懇談会(10/25)における議論①(理財局からの説明))
・確実かつ円滑な国債発行と、中長期的な調達コストの抑制のため市場ニーズに即した発行を行っていく必要がある。今後も100兆円を大きく上回る国債の発行が継続的に見込まれるため、機会主義的な発行ではなく、中長期的な需要動向を見極め、安定的な発行を行っていくことが、結果的にコストの抑制や、確実かつ円滑な発行につながると考えている。

・国債発行残高が増加する中で、平均償還年限の長期化の取組みにより、借換債の発行額が減少したことで、国債発行総額は減少傾向にあり、足元では150兆円を切っている。この間、発行から償還を引いたネット発行額については、超長期債は20兆円を上回る一方で、中長期債はマイナスとなっており、ストックの平均償還年限の長期化が進んでいる。国際比較では、日本の平均償還年限はイギリスを除くと最も長くなっている。

・将来推計によると、借換債の発行額は、今後10年間はほぼ横ばいで推移している。銘柄別ネット発行額については、超長期ゾーンは引き続きプラスで推移していく見込みであるのに対し、それ以外の部分については横ばいからマイナスで推移するため、今後もしばらくはストックの平均償還年限の長期化が続く見込みである。

・国内銀行の国債保有額は、日本銀行の量的・質的金融緩和以降、減少傾向にあるが、足元は担保需要等もあり、その傾向は緩やかとなっている。一方、日本銀行への当座預金残高はこの間も増え続けているため、国債への潜在的な投資余力は残っていると考えられる。

・生命保険会社の投資動向について、国債保有残高は平成20年度から24年度にかけて増加傾向にあり、超長期ゾーンの保有残高も増えてきたが、平成25年度以降はほぼ横ばいの動きとなっており、この間、外国債券の買いが増加している。この背景には、低金利下で資産と負債のデュレーションのマッチングを進めると、逆ザヤが固定化されてしまうという事情もあるため、今後の金利の動き次第では投資動向は変わり得る。

・今後の人口構成の変化によって、保険料収入の減少や新たな保険ニーズの出現の可能性が指摘されている。保険ニーズの変化は資産の運用スタイルの変化につながるため、今後も保険の負債の金額、質の両面における変化を注視していく必要がある。

・保険会社の国際的な規制に関して、2025年の導入に向けて現在議論が進んでおり、同時に、国内規制についても、今年の6月に金融庁において有識者会議が立ち上がり、議論が始まったところ。規制の中身や導入時期に応じて、また、規制対応の前後で、国債へのニーズも変わってくると予想されるため、こうした動きも見ながら今後の国債発行を考えていく必要がある。

・投資家の運用原資とデュレーションの推移において、日本とアメリカを比較すると、日本は銀行部門のウエイトが高く、運用原資のデュレーションが短くなっている。今後、国債の発行を中長期的に考える上では、この運用原資の動きも注視していく必要がある。

・日本国債の取引高と回転率は昨年の後半から幾分改善している。債券市場の機能度については、日本銀行の債券市場サーベイによると、足元の金利状況もあり、改善は足踏み状態となっている。他方で、GC-SCスプレッドや国債補完供給の落札額は、今年に入ってから落ち着いた推移になっており、個別銘柄の需給の不均衡は大きく改善していると言える。

・流動性供給入札は、個別銘柄の需給の不均衡を改善するために行っているところ。入札額は、リーマンショック後の国債増発への対応と日本銀行の量的・質的金融緩和実施の2つの時期で増額してきた。足元では、国債発行総額は減少に転じ、日本銀行の国債買入も減少してきていることを踏まえると、今後の国債の発行額を考える上で、これまでカレント債を減額してきたが、流動性供給入札の発行額についても議論をしていく必要がある。

・借換債の発行額の将来推計について、平成25年度における推計では、10年間で約30兆円の増加となっており、当時は借換債の伸びを抑制する観点から、フローの平均償還年限の長期化に取り組んでいた。その成果もあり、今回の推計では借換債の推移はほぼ横ばいとなっており、当時の長期化のメリットは足元では薄れてきている。また、3年前の在り方懇において、それまで掲げていたフローの平均償還年限の長期化という目標を転換し、投資家の中長期的な需要を踏まえ、柔軟に毎年の発行計画を検討した方がよいのではないかということを議論頂いた。

・前倒債は、ここ2年間、当初計画で一定額を取崩すことにより活用してきたが、実績では昨年度も増加となっている。今年度も、足元のマイナス金利下でカレンダーベース市中発行額の超過収入が兆円単位で上振れする見込みである上、国債発行額の不用も6月時点で1.5兆円生じており、今後の市場環境次第では昨年度と同様に増加する可能性もある。

・最近の取組みとして、第Ⅱ非価格競争入札及びカレンダーベース市中発行額の超過収入分について、当初計画段階で実績を踏まえて計上額を増加させてきたが、上期の国債発行額の不用や調達の状況を踏まえて下期から発行計画を見直すことや、乖離要因となっている仕組みの見直しとして第Ⅱ非価格競争入札の応札限度額を落札額の15%から10%に引き下げることや、現在最低0.1%としている表面利率を0.001%とすること等、表面利率の設定に関する検討が必要と考えている。年度途中での発行計画の見直しについては、海外の主要国を見ると、ドイツ、イギリス、フランスは、会計年度前に年間の国債発行計画を作成し、年度途中において変更を行うといった運用をしているところ。

(国の債務管理の在り方に関する懇談会(10/25)における議論②(当日の議論の概要))
・市場機能を維持する観点から、超長期ゾーンの活用、外国人にとっての中短期ゾーンの活用、テクノロジーやイノベーションの活用が重要というご意見があった。また、超長期ゾーンについては、プルーデンスの観点からの指摘や先物取引等のヘッジ機能の不在といった課題の指摘もあった。

・平均償還年限について、理論上は超長期ゾーンを出すとイールドカーブがスティープ化していくことなどを考えて、最適年数の検討が必要というご意見や、一方的に長期化する必要はないが、市場機能が残るのは長いゾーンしかなくなる状況も踏まえるべきとのご意見があった。

・前倒債について、中長期的に水準を適正化すべきとのご意見や、借換債の将来推計で年度間で増減があることを踏まえて、発行額の平準化のために活用すべきというご意見があった。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・最近の国債市場においては、秋口までの、グローバルなイールドカーブの過度なフラットニングの状況から、直近では大分回復してきているが、基本的にはグローバルな金融緩和の状況はあまり変わらないだろうと考えている。金利低下局面は米国主導だったが、金利上昇局面では、日本銀行の黒田総裁の発言も多少影響しているようで、外債から国内の債券に少しシフトしているようである。
  来年度国債発行計画については、30年債、40年債には、海外投資家もそれなりに投資しているように感じており、グローバルな金利状況に影響すると考えている。そのため、発行減額は、グローバルな金利にも若干影響を与えてしまう可能性があるため、30年債、40年債はできればあまり減額しないほうがよいと考えている。

・市場の現状については、夏場までの金利低下が一服し、秋以降はトレンドが変わってきたと考えている。特に、日本銀行による、超長期金利の水準が低いことへの動きや、日銀買入オペの減額の動きから、金利が少し上昇しやすくなってきていると考えている。ただし、今年度の4月、5月の金利水準と比べると、現状でも、まだその水準には達しておらず、中々金利は上昇していない。この原因としては、やはりプラス金利の債券への需要が非常に強いことが挙げられる。例えば、10年債までの金利水準がある程度上がってきているのに対して、20年債、30年債、40年債の金利水準はそれに比べるとさほど上がっていない。年度初めのイールドカーブと比べ、超長期ゾーンの金利は戻っていない状況であり、より長い年限に対する市場のニーズが強いと感じている。
   来年度国債発行計画に関しては、カレンダーベースの市中発行額の総額を増やすことは中々難しい状況かもしれないが、現状の市場環境を踏まえると、超長期ゾーンはできるだけ増額することが望ましい。特に、報道にも出ている、一番長い年限の40年債については、1額面あたりのデュレーションが最も長く、マーケットの中で長いデュレーションに対するニーズが非常に強いことから一番ニーズが高く、増額してもらえると非常によい。

・最近の国債市場については、マイナス金利が深くなると同時に、低利のドル負債を抱える主体の価格影響力が高まったことにより、海外金利の影響を受けやすくなったと感じている。米国債の逆イールドが生じたことによりイールドカーブのフラット化の圧力がかなり高まった状況と比較すると、足元、米国債のイールドカーブも相応な形状になってきたので、こうした環境下では、政策金利の変更がなければ、一定程度落ち着いてくると思っている。
  今後の運用見通しについては、外貨需要がある銀行においては、担保需要の観点から、一定程度の国債保有が継続されると考えている。また、イールドカーブが運用に資する形状であれば、プラス金利のゾーンには一定程度の需要はあると思うので、当社はそれほど保有できるわけではないが、規制等を踏まえながら、投資していくことを考えている。
  来年度国債発行計画については、当局からの説明資料の国債管理政策の意見等にもあるが、海外の中央銀行をはじめ、海外投資家が5年債を買っていることで、それ自体が邦銀の外貨調達にかなり役立っていると考えている。海外投資家がドルを使って円を運用すると、国内投資家にとって円を使ってドルを調達することになっている。海外投資家に日本国債を買ってもらうことによって調達サイドにも役立っているので、海外の中央銀行をはじめとする海外投資家が購入可能なゾーンについては、可能であれば、需給がひっ迫しないように配慮してほしい。

・足元、残存10年以下の金利がマイナス圏で推移している中で、イールドハンティングの動きから超長期ゾーンへの需要が集まっていると感じる。日銀買入オペの減額等により、一定程度改善されてきてはいるものの、同ゾーンの金利や流動性が低く、イールドカーブがフラット化する状況が続いているのではないか。
  一方で、生保は経済価値ベースの資本規制の導入に向けた議論が始まる中で、社内の内部管理、ALM上の観点から、超長期債に対する投資ニーズが継続的に強い状況にある。足元の低金利状況において、国債だけでなく、ヘッジ外債やクレジットへの投資も組み合わせて行っているが、国債の金利が上がってくれば、このようなところも変わってくるのではないかと思っている。
  来年度国債発行計画については、前倒債を減らす目的で発行額全体を減らしていく方向もあるだろうが、20年債など超長期債に関しては、できれば現状維持あるいは増額をしてほしい。特に、報道にもあった40年債については、流動性が低い中で、イールドカーブ全体のフラット化誘発要因にもなることもあるため、是非とも増額を検討してほしい。
  一方、減額が必要という場合には、日銀買入オペが減額されていることの見合いから、流動性供給入札の減額を検討してほしい。対象ゾーンごとの発行額に関しては、四半期ごとに、市場動向や市場参加者の意見を踏まえて決定されると理解しているが、現段階では、チーペスト銘柄の需給は日本銀行の国債補完供給によって緩和しているため、残存5-15.5年に減額余地があるのではないかと考えている。他方、流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンに関しては、先ほど述べた理由から現状維持が望ましい。
  昨日の国債市場特別参加者会合では、10年債に減額余地があるのではないかとの意見があったようだが、このゾーンはプラス金利になった場合に需要が見込めることや、流動性供給入札を減額するということであれば、そのゾーンとのバランスもあるため、更に減額が必要であれば、2年債や5年債も含めて減額を検討するべきではないかと思っている。

・当社の運用方針については、特に大きく変わっていない。足元、米国企業の財務レバレッジが大分高まっていることから、クレジットリスクに留意しているが、基本的には国際分散投資を継続していきたい。こうした状況の中で、日本国債の投資については、預金のデュレーションのコントロールというALMの観点から、プラス金利のゾーンを中心に引き続き一定程度投資していくことになる。ただし、国債保有残高は、緩やかに減少していくという見通しを立てている。
  来年度国債発行計画に関しては、こうした観点から、マイナス金利ゾーンについては基本的に購入していないので、プラス金利が残っている残存20年超の中で、ALM観点から、何とか投資対象となる20年債や、流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンについては、引き続き、発行額を維持してほしい。最近、セカンダリー市場で多少の売買もあるが、流動性がかなり枯渇している中で、20年債入札だけで月々の所要額を購入することは難しい状況にあるので、月2回、もしくは2か月に3回は購入機会を確保してもらえるように、流動性供給入札についても現状維持が望ましいと考えている。

・当社は、国債保有残高が償還に合わせてどんどん減ってきており、円建債券の運用に対する国債保有残高は10%を切っている状況である。ただ、マイナス金利が続いていたので、最近、20年債等の超長期ゾーンでの運用も若干始めたところである。マイナス金利での運用は社内的にも非常に厳しいので、運用していくとしたらプラス金利ゾーンでの運用を考えている。
  来年度国債発行計画については、5年債でなければならないという必然的なニーズは薄く、減額可能なのではないかと考えている。また、40年債の増額が報道に出ていたが、足元のイールドカーブを見ると、30年債と40年債の金利がそれほど変わらない状況で、40年債のニーズがどこまであるのかと思う。国債発行計画の見直しを行う際には、イールドカーブの変化に沿った国債発行計画とするのがよいのではないかと考えている。

・投資家サイドとしては、マイナス金利ゾーンのニーズは高くはないのが実情であり、現状で言うと、残存10-20年の国債等のニーズが高いという状況下にある。当局から国債の発行額等の説明があったが、40年債の増額という報道もあり、増額するのであれば、残存20年超の超長期ゾーンが望ましいと思っている。
  逆に、減額対象に関しては、マイナス金利ゾーン、特に5年債が考えられる。10年債については金利が変動する過程の中でニーズが出てくる場合があり、2年債については担保ニーズもあるが、5年債についてはニーズが少ないので減額してもよいのではないか。また、流動性供給入札については、マーケットを考えると、発行額を維持してほしいという希望は非常に強くあるが、日本銀行の各種施策により、スクイーズの動きはかなり収まってきているので、もし減額を考えるのであれば、残存5-15.5年ゾーンが一番減額しやすく、マーケットへの影響も少ないのではないかと考えている。

・国債金利に関しては上昇し難い状況と考えている。また、当局から保険関係の収支について説明があったが、当社としては、今後、バランスを重視した保険提供をする必要があると考えており、長寿化に対応した医療や介護、年金、死亡保障をどう提供していくか、重々考えていく必要がある。これらの商品設計の際には、予め設定する予定利率が重要であるが、この予定利率は日本国債の金利をベースに設定している。低金利環境の下では、この予定利率が低くなり、これが保険料に跳ね返ってくると、国民の方々に対して保険を提供するという意味では、厳しい環境が続くと感じている。
  今後の運用の見通しについては、どうしても超長期の負債があるため、それに応じた超長期ゾーンでの運用がベースになっている。また、当局から経済価値ベースでの資本規制について説明があったが、当社としても、これを踏まえた運用を実践しているところである。長い負債に対しては長い資産が必要であるので、来年度国債発行計画については、超長期ゾーンを重視して検討してほしい。

・2014年10月の日本銀行による大規模金融緩和の拡大以降、日本国債から円建外債へのシフトがかなり大きな規模で起きた。その動きがこの半年~1年くらいでようやく止まり、日本国債の投資額は増えも減りもしないような状況になっているのが今の環境かと思う。
  当社は10兆円強の日本国債の保有残高があるが、インデックスで運用しているため、基本的には発行量に応じて保有している。顧客の入出金やポートフォリオ調整に応じて、大体コンスタントに毎週、残存20年超の超長期ゾーンで数百億円、残存10年以下のゾーンで数千億円程度の売買を行っている。日本国債のイールドカーブが立った方が、海外の国債に対して相対的に魅力度が高く、顧客が入ってきやすい環境になるため、イールドカーブが立つ形を考えると、来年度国債発行計画においては、増やすのであれば基本的には40年債がよいということになると思う。ただし、毎週売買している感覚からすると、20年債に比べて30年債や40年債はまだ流動性に少し不安があるというのが正直な印象であり、可能であればもう1~2年程度、今のような環境で温めてから増額でもよいのではないかと考えている。
  流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンについては、当初はショートカバー銘柄の供給ということで、市場の安定化に非常に効果があったと思っているが、最近のマーケットの動きを見ると、入札日に投機的な動きが見られ出している印象がある。超長期ゾーンへの投資を行う観点からは、あまりに荒い値動きをされると困る。イールドカーブが立っていることと、ボラティリティが低いことが投資魅力度につながるため、その意味では、減額するのであれば流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンがよいのではないかと考えている。

・残存10年以下のイールドカーブを見ると、若干改善したとはいえ、残存2~8年はほぼフラットな状況が続いている。また、残存10年あたりは少し割安に放置されている。これは、一つには日銀買入オペが減額されてきた影響で、例えば10年351回債、残存8年半あたりまでの日本銀行の保有残高は、流動性供給入札で供給されたとはいえ80%ほどである一方、カレント債の銘柄はまだリオープン2回目で20%ほど、その手前2銘柄は50%ほどと、銘柄によってかなり保有残高に差が出てきている状況である。
  流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンは、イールドカーブの形状だけ見ていると減額余地があるようには見えない。特に、入札結果を見ても、残存6~7年あたりは相変わらずしっかりとした需要が見えているため、今ここで減額して、スクイーズが起きないとは言えないのではないかと感じている。従って、流動性供給入札の発行減額は慎重にしてはどうかと思っている。
  一方で、30年債、40年債といったプラスの金利のゾーンにはどうしても投資家としての需要があり、現状、残存10年以下のところは国債を担保にしたファンディングでも逆ザヤの状況になっており、投資としては見合わず、ずっと保有していると損が確定することから、どうしてもプラス金利の債券に投資せざるを得ない。そのため、30年債、40年債の減額は投資家としては厳しい。

・最近の国債市場については、夏頃まで金利が大きく低下して異常な状態であったが、各国の国債金利の低下が一服して、順イールドのイールドカーブが増えてきており、一時期よりはかなり正常化して投資しやすい環境になっていると思っている。特に日本国債についても、超長期ゾーンを中心に市場機能が出てきているので、収益機会があると思っている。
  今後の運用見通しについては、株式市場には今織り込まれているような楽観的な見通しもあるが、低インフレの下でバラ色な世界になるまでには引き続き時間がかかりそうである。こうした中では、国債を中心とした金利収入も必要であると思っているので、各国への国債投資は続けていく。イールドスプレッドのあるものや、できればプラス金利のものが投資の目線となる。
  来年度国債発行計画については、当社には40年債のニーズはない。減額するとすれば、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンである。日銀買入オペの減額に対応するゾーンでもあるので、市場への影響は比較的少ないのではないか。また、年度途中の国債発行計画の見直しについては、前もって周知するのであれば非常によいことではないかと考えている。

・昨年来から足元までの景気の減速、世界経済の減速、金利の低下については、米中貿易摩擦という重大なイベントがあったものの、それよりも重要なのは米国の金融引き締めであったのではないかと捉えている。米国の金融引き締め以外にも、中国も債務削減という形で引き締め的な政策を行っていたが、足元において米国はすでに金融緩和方向に舵を切っているほか、中国も債務削減策を緩めているように見える。そうしたことから、先行きに関しては、経済の減速傾向は鈍化して下げ止まり、場合によっては回復に向かう道筋が見えてくるような局面ではないかと捉えている。ただし、米中貿易摩擦の先行きが見通せない中で、経済の不確実性は引き続き強く、回復力が鈍いような状況が続くのではないかと想定している。日本についても、日本銀行は追加緩和こそ行わないまでも現行の金融緩和策が非常に長期にわたって続くのではないかと考えている。
  短期的には、米中合意がやや見えてきているため、以前に比べれば金利が上がりやすいような環境にあると認識しているものの、中長期的には、成長率や物価が低位で安定的に推移する中、金利が上昇しにくい環境が非常に長期にわたり続くのではないかと考えている。現行の金融緩和策が長期にわたり維持されるという見通しが支配的になれば、プラス金利の超長期ゾーンへの需要が増加して、自然とイールドカーブはフラットニングしやすくなるという構造が維持されると考えている。
  そうした中で来年度国債発行計画について、減額した場合に市場への影響が最も大きいのは超長期債ではないかと考えている。特に、生保の経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に向けて、30年債や40年債には需要が継続的に見込まれる状況と認識している。投資家の立場からは、これらの年限においては減額ではなく、むしろ増額してほしい。一方で、減額可能な年限としては、マイナス金利の残存10年以下、例えば中期ゾーンも考えられると思っているが、担保需要や、将来の借換債とのバランスを念頭に検討されるものと承知している。
  流動性供給入札については、残存15.5年超ゾーンは、先ほど述べたのと同じ理由で、できれば維持してほしい。残存1-5年ゾーンについては、個別要因から需給が引き締まりやすい銘柄が比較的多いように感じているため、消去法ではあるが、減額する候補としては残存5-15.5年ゾーンであると考えている。

・最近の国債市場の状況については、日本国債に関わらず、グローバルな債券市場は、夏場に見られた長期金利主導の大幅な金利低下が一旦落ち着いてきた状況であり、米国の利下げ期待の剥落や米中貿易協議などの環境変化に伴って、一時的なフラットニングも含めてイールドカーブがかなり正常化してきている状況にあると認識している。日本においては黒田日本銀行総裁から特に超長期ゾーンについて丁寧な発言があったこともあり、思っていた以上にイールドカーブが立ってきているという印象を素直に持っている。
  ただ、こういう環境の中での運用については、債券投資家としては中々チャレンジングな環境にあると認識している。グローバルな金利環境や調達コスト、スプレッド環境も含めて考えると、今後の運用見通しについては、基本的には何らかのリスクだけに賭けるのではなく、色々なものにリスク分散していくしかないと思っている。既に当局の説明にあったが、日本国債においても、償還や担保ニーズ、流動性等、そういったものを十分に踏まえながら、しっかりと対応していくことになるだろう。
  来年度国債発行計画については、当社が取引しているゾーンを中心とする見方になるが、特に5年債や10年債、20年債については、比較的厚い流動性を期待しており、減額を絶対に避けてほしいということではないが、市場に一定の流動性があった方がよいと認識している。また、報道にあった40年債の増額については、主たる投資対象とはしていないことから、特段の意見はないが、ニーズがあれば、増額してもよいと思っている。それ以外では、物価連動債については、買入消却の増額等もあったが、依然として流動性が中々ないという感触を持っているので、こうした措置によってマーケット機能が徐々に活性化することを期待したい。
  また、年度途中における国債発行計画の見直しについては、各国の例も踏まえて、国債発行計画の見直しそのものは賛成であるが、特に日本の場合、諸外国と比べてマーケット参加者の反応が大きいと思うので、予見可能性も踏まえて、コミュニケーションをしっかりととってもらえれば問題ないのではないかと思っている。

・国債は今後も重要な投資対象であるという認識はもちろんあるが、ここ数年で大量の国債償還を迎える銀行が多いと思われる中で、現在の金利水準は難しい状況にあると認識している。預貸ギャップをある程度消化していく中で、国債のウエイトは引き続き高いと思っているが、現実的には、金利が0%以下の国債は、ポートフォリオを組んでいく上で、ある程度長期間保有する前提とすれば投資対象にならないので、20年債への投資が増えていると認識している。ただ、金利感応度も当然高くなり、リスクも相応に増えていくと考えている。希望的な意見としては、残存10年以下の国債でプラス金利での運用がある程度できることが本来は望ましいと思うが、現状難しい状況であるので、リスク管理面をよく考え、金利リスクをコントロールしながら投資していかざるを得ないと考えている。
  来年度国債発行計画については、投資対象が20年債以下のゾーンとなっているので、金利の絶対水準がそれなりに低くなり、また、デュレーションが伸びている中では、ネガティブサプライズは必要なく、ある程度平準化した国債発行を継続してほしいと考えている。

・海外投資家の日本国債に対する投資がかなり膨らんでおり、こちらの動向に非常に注目している。仮に海外金利が上昇するようなことがあれば、海外投資家が買っていた日本国債を若干売ってくる中で、円金利が少し上昇する場面があるのではないかとイメージしている。
  運用の見通しについては、円の負債の年限別にキャッシュフローをみて、それに見合った形で資産のポートフォリオを作り、ALM運用を行っている。そのような観点から、メインのアセットは円建外債になる。ただ、昨今のように急激に金利が低下する中では、円建債券の中で、社債や円建外債を投資の対象とし、発行体とも対話しながら投資していくというスタンスで臨んでいる。トータルとして、円金利が低い中で、分散投資を考えていかなければならないということで、許容できる範囲内で引き続き、オープン外債・株式・オルタナティブを混ぜながら円金利が上昇するのを待つという対応をしている。
  こういった社債、円建外債はそれほど長い債券ではなく、長い債券としてはやはり日本国債となるため、円金利のレベルは非常に重要。金利が低すぎる場合は逆ザヤになってしまうため、円建投資の代替ということで、かなりの金額をヘッジ外債に投資している。あくまでも代替であり、円金利が上昇するのを待っている。ヘッジ外債もかなり金利が低下しており、ヘッジコストを勘案すると投資妙味がかなり落ちてきているため、投資の課題としてはヘッジ外債からどのタイミングで日本国債へ回帰していくかのタイミングを探っているところ。業界全体として、国民の保険の運用を健全な状態で行うということからも、長い債券のニーズは非常に強いと感じているため、来年度国債発行計画においては、30年、40年といった年限の増額を検討してほしい。一方で、マイナス金利であるゾーンに関しては発行減額を検討してほしい。流動性供給入札に関しては、これまで増額されてきたが、負債の年限に合わせた形で、特に残存15.5年超ゾーンをうまく活用してきた。同ゾーンにはまだ需要があり、引き続き増額を希望する。一方で、毎月発行されている残存5-15.5年ゾーンは減額を希望している。

・昨日麻生財務大臣にお渡しした財政制度等審議会財政制度分科会の建議の概要について、来年度国債発行計画とも関係するため、紹介する。
  まず、建議というより個人的な意見だが、来年度予算を取り巻く環境について、これまで2020年度を目標にしてきたプライマリーバランス黒字化を2025年度に延期して2年目の予算となるが、消費増税がなされたばかりであり、また安全保障や自然環境の不確実性が非常に高まっていることから、それに関わる予算増額要求がある。さらに、足元の低金利環境下、どうしてもたくさんの要求が出てしまう。また、「金融政策が限界ではないか、財政政策の出番だ」という一般的な論調も盛り上がってきている中、来年度予算をどう考えるかということについて、財政制度等審議会では次の4点を述べている。
  1点目は、基本認識ではあるが、財政問題は社会保障の問題と表裏一体である。過去30年間において、歳出で増えたのは社会保障である。その他には、地方交付税交付金が若干増えているが、ほとんどが社会保障の増額であり、その部分を赤字国債の発行で賄っている。そのため、基本認識として、財政問題は社会保障の問題であり、社会保障の受益と負担のアンバランス、つまり世代間の不均衡の問題と表裏一体ということである。それは、景気や金利の動向に関わらず、財政の健全化、すなわち、社会保障改革を進める必要があるということになる。
   2点目は、金融緩和によって、現在、国債利払いの面で恩恵を受けているという指摘に関してだが、日本国債の格付はシングルAに過ぎないが、財政の信認があることが金融緩和の恩恵を受けていることの大前提である。したがって、低金利政策に安住せずに、歳出歳入改革を行わなければならない。
  3点目は、年金の財政検証において、年金制度の持続可能性が示されたことである。国民年金の2分の1に公費が投入されているが、その背後にある国庫負担の裏付け、財政の持続可能性があって初めて、100年安心だと言えるわけだが、そもそも財政の持続可能性が十分に検証されているのだろうかという指摘がシンクタンクからあり、そういう試算を説明してもらった。
  4点目は、先月行われた消費税率の10%への引き上げは、財政と社会保障制度の持続可能性に向けた長い道のりの一里塚であることである。まずは、すべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年度において、プライマリーバランス黒字化目標の達成、利払費を除いた歳出入の均衡に向けて、改革を進めねばならない。来年度予算もそういう大きな方針の中で編成してもらいたい。

・生保の資本規制との関係については、短期的な移行期だけの特殊な需要と、移行期が過ぎた後の安定した時期の需要をうまく見極めて、一時的に需要が高まってもその後どうなるかということを含めて、長期ゾーンや超長期ゾーンをどうするか、慎重に考える必要があるだろう。
  また、前倒債の水準を適正化することは大変重要だと思うが、一方で、自然災害等が多発している中で、補正予算等において、当初予算では予期しなかった支出があることから、市場の需要に応じて国債を安定的に発行していくことが重要である。
   足元では直接的な影響はないが、イールドカーブが改善し、物価が上がってきたときに、英国や米国と比較すると、日本の税制は、日本の物価連動債に対し、少々よくない建付けになっており、市場を少しかく乱するような潜在的な問題を抱えていると考えている。今後、物価が上がり、物価連動債に対する需要が出てきたときには、市場の声を聞きながら、この問題への対応を検討する必要がある。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700