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日時 平成30年6月26日(火)10:30~11:30
場所 財務省 第3特別会議室
内容
 

1. 平成30年7-9月期における物価連動債の発行額等について

○平成30年7-9月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P3のとおり、30年度発行計画では、1回当たり4,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。本日は、7-9月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・4-6月期については、P4のとおり、5月に発行額4,000億円で入札を行うとともに、4月と6月に200億円の買入消却入札を実施したところ。P5のとおり、5月の入札は、応募倍率が発行再開後で最も高い4.01倍となるなど、問題なく終了している。買入消却入札と日銀買入オペについては、P6のとおり、応募倍率に振れは見られているが、概ね市場実勢に即した安定的な結果となっている。
  流通市場の状況については、P7に示したとおり、BEIは、ここもとは0.5%台半ばで推移している。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、物価連動債については、引き続き投資家層の拡がりが限定的であることを懸念する声が聞かれており、7-9月期における物価連動債の発行額と買入消却入札は、現状維持が望ましいとの意見が多かった。

・こうした状況を踏まえて、P8にお示ししているとおり、7-9月期については、4-6月期と同様、発行額を4,000億円とし、偶数月の8月に200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。

・当局としては、物価連動債の市場育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、そうした観点も踏まえ、7-9月期における発行額等について、皆様の御意見を承りたい。

○平成30年7-9月期における物価連動債の発行額等については、当局の提案に異論はないとする意見が多数聞かれたほか、以下のような意見があった。

・日本銀行の政策の下で、失業率は2.5%まで低下してきており、バブル期には失業率2%前後で相応のインフレ率が実現していたことも踏まえると、いずれ物価は上がっていく可能性があると考えているため、当社としては一定程度の物価連動債の残高を維持している。ただ、セカンダリー市場の流動性については改善しておらず、引き続き機動的な残高調整が難しい状況であるため、買入消却入札を継続してほしい。

・当局の提案に賛成する。物価連動債は安定消化が継続しているため、発行額等を変更する必要はない。

・当局の提案に異論はない。物価連動債のマーケットの流動性は不十分であるため、現状の発行額及び買入消却額を維持していく必要がある。

・日本のインフレ率は石油価格に連動するという議論もあるが、石油価格の高騰は、①日本全体としての購買力を低下させ、②企業の収益を下押しし、③企業は上昇したコストを製品価格に転嫁できないため、④賃金も上げられない。これらの要素はいずれも、インフレ率を低下させる方向に作用することから、石油価格の上昇によって生じたインフレは、継続的なものになると見込むことができない。こうした中で、物価連動債に対するニーズが強まるという状況を想定することは難しい。

2. 平成30年7-9月期における流動性供給入札について

○平成30年7-9月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P10のとおり、30年度発行計画では、
①残存1-5年ゾーン2.4兆円、残存5-15.5年ゾーン7.2兆円、残存15.5年超ゾーン3.0兆円で、年間12.6兆円を発行することを想定しつつ、
②最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
これを受け、本日の懇談会では、7-9月期におけるゾーン毎の発行額等を御議論いただくもの。

・P11のとおり、4-6月期においては、発行計画で想定されているのと同様、残存1-5年ゾーンについては、5月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月6,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、4月と6月に5,000億円の発行とした。

・P12以降に、最近の流動性供給入札の結果を示している。各ゾーンにおいて、安定した結果となっている。

・こうした中で、7-9月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、現状の発行額等を維持することが適当との意見が多かった。

・これを受け、P15にあるとおり、7-9月期におけるゾーン毎の発行額の当局案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、7月と9月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月6,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、8月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・7-9月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の議論も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて御意見を頂戴したい。

○平成30年7-9月期における流動性供給入札については、当局の提案に異論はないとする意見が多数聞かれたほか、以下のような意見があった。

・当局の提案に賛成する。流動性供給入札については安定消化が継続しているため、発行額等を変更する必要はない。

・当局の提案に賛成する。流動性供給入札については、カレント債の入札以外の投資機会を得られるという意味があるため、今年度発行計画において増額された現在の金額を維持してほしい。

・当社としては、資産と負債のデュレーションのギャップを埋める観点から、超長期債を購入するニーズがあるため、残存15.5年超ゾーンを1回の入札当たり6,000億円に増額してほしい。

・日本銀行による国債の保有シェアが高まるにつれて需給の逼迫感が出ており、プラス金利のゾーンにおけるオフ・ザ・ラン銘柄に対しては、当社とは異なる業態の投資家によるニーズも見られていることから、残存15.5年超ゾーンを増額してほしい。

3.最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・イールドカーブ・コントロール政策の修正に対する期待感がますます遠のいてきていると感じる。残存10年以下の年限の国債に投資したいが、現在の金利環境下では同ゾーンへの投資ができない状況が続いており、このような状況が今後も続くことへの懸念が高まっている。
  また、本来は超長期ゾーンをメインの投資対象としない層が超長期債をディーリングタッチで運用し、金利リスクを抱えている現状に懸念を持っている。

・日本国債でキャリーを確保するという戦略を採用できなくなったため、キャピタルゲインを狙う手法に移行しており、株・為替・債券に分散投資している。今後、1%、2%といった大幅な金利上昇が生じ、キャリーだけで相応の収益が見込めるようにならないと、一度離れた資金の多くが日本国債に戻ることは難しいのではないか。
  現状、日本銀行の情報発信も少し変わってきており、金融緩和の副作用への言及も増えていると感じる。金融政策の正常化にあたっては、しかるべきタイミングで、出口戦略についてマーケットに十分織り込ませた上で、それに沿って進めていく必要があると思う。

・従来は債券を継続的に保有する運用手法であったが、債券だけでなく、株や為替を含め、機会損益を狙うというヘッジファンドと似たような運用手法に変化してきている。

・マイナス金利の国債に投資できない中で、国際分散投資を進めている。
  今後の金融政策に関し、インフレ期待が高まらない中、金融機関の収益に対する副作用を和らげるとの政策意図をしっかりマーケットに伝えつつ、イールドカーブ・コントロール政策の金利ターゲットを変更するような形で、少しずつ修正を加えていくことが望ましいと思う。その際、海外投資家に対して、緩和縮小との間違ったメッセージを与えないことが重要である。

・保有している国債が次々に償還を迎える中、中短期ゾーンの国債には金利がマイナスで投資できないこともあり、やむを得ず、より長い年限の国債に投資している。このため、デュレーションが伸びて、金利リスクも高くなっている。
  将来的に金融政策が正常化される場合には、急な金利の上昇はマーケットにショックを与え得るので、状況に応じて段階的に金利を上げていくことが望ましいと考える。

・金融機関を取り巻く環境が変化していく中、足元では、金利環境が厳しいため、潜在的な成長が見込まれるエリアの貸出を伸ばすなどの取り組みを行っている。金利が上昇して収益が改善することを期待している。

・金融政策の正常化の過程で日本国債の利回りが上昇すると、これまで控えられていた投資が少しずつ戻ってくる一方で、投資家の行動に変化が生じ得ると考える。過去の利上げ局面では、より短い年限の債券を選好する投資行動が見られた。こうした過去の事例も踏まえつつ、将来の発行の在り方を考えていくことが課題ではないかと思う。

・国内の金融機関は円建ての負債を抱えており、運用も円建ての商品が中心であるため、将来的にも日本国債への需要は相応にあると見ている。ただ、金融政策の正常化の段階で財政への懸念があると、日本国債を買っていくことは難しいため、格付け等、日本国債への信用が維持されていくことが購入の前提条件になる。

・円建ての資金を預かっているため、円債で運用したいというニーズは大きいが、現在の金利環境下では、ヘッジ付き外債などで運用せざるを得ない。金利がプラスになれば、ある程度円債に戻ってきたいと多くの投資家が考えているのではないか。
  イールドカーブ・コントロール政策によって、長期にわたり低いボラティリティが継続すると、金融機関における日本国債の運用体制が縮小され、ボラティリティがあるマーケットを経験した者がいなくなる状況が生じ得る。これにより、金融政策の正常化時にマーケットの変動が必要以上に大きくなってしまうことが懸念される。

・多くの投資家が投資対象を多様化し、ヘッジ付き外債、クレジット、オルタナティブ等、日本国債以外の資産に投資している。金利が上昇すれば、日本国債に一定程度は戻ってくると思われるが、その際、日本国債を買うために別の保有資産を売って資金を捻出することが必要で、こうした資金の動きで、国債以外のマーケットに調整圧力がかかることが十分に考えられる。

・マイナス金利の環境下においては、中短期ゾーンの国債への投資は行っていないが、金利がプラスになれば、資金繰りの観点から同ゾーンへの投資は、十分選択肢になり得ると考えている。

・長期的には、負債側の予定利率を上回る収益を上げていかなければならず、多少金利がプラスになったからといって、日本国債へのアロケーションをすぐに増やすことは難しいだろう。

・昨年度は、10年債金利がゼロ%から0.1%の範囲で動いていたが、今年度に入ってからは、0.02%から0.08%の範囲で変動しており、一段とレンジが狭まっていると感じる。米金利が年明けから大幅に上昇し、欧州ではECBの政策に対する見方が変化するなど、それなりに海外金利の変動はあるが、それとの対比で国内債券市場を考えると、機能度という意味で低下していると言わざるを得ない。
  低金利・低ボラティリティでインカムも取れず、キャピタルも狙えないというマーケットになっており、日本国債は投資対象として非常に厳しい状況である。今後、日本銀行の金融政策に変更があるにしても、極めて緩やかに金利を上方シフトさせていくという形になると考えられるため、投資が活発化しづらい環境がしばらくは続くと見ている。

・短期国債の多くが為替スワップ見合いで海外投資家により保有されている。マイナス金利がプラス金利になると、短期国債の保有主体が海外から国内投資家に移行することも考え得る。海外投資家の動向や海外から見た日本国債のヘッジ・イールドもよく見ていく必要性がある。
  現状、ビッド・アスク・スプレッドはボラティリティ対比で見ると、さほどタイトではなく、板の厚みも十分にない。今後、マーケットが動いた時に流動性が急に失われてしまう可能性も念頭に置きながら、引き続き、市場の機能度や流動性を注視していく必要がある。

・日本銀行の金融政策に関し、景気サイクルを踏まえて、本年中または来年初までに金利ターゲットを上げないと、その先の政策変更はさらに難しい状況にあると思う。現実的には、金融機関の収益に配慮して、金利ターゲットを少し変更する程度かと考えている。

・イールドカーブ・コントロール政策の修正に対する期待が遠のいていると感じるとともに、市場流動性が大きく低下していることを懸念している。財政規律の緩みについても懸念しており、低金利だから財政拡大しても問題ないという考え方では、日本国債の信認を維持し続けることは難しいのではないかと思う。



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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 北條・武田
電話 代表 03-3581-4111 内線 5701