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日時 平成29年11月24日(金)9:55~11:15
場所 財務省 第3特別会議室
内容
 

1. 平成30年度国債発行計画について〔参考配布:資料(PDF:4517KB)

平成30年度国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。

(国の債務管理の在り方に関する懇談会(10/18開催)での議論の紹介)

・先月開催した在り方懇では、国債管理政策の在り方について当局から問題提起を行った上で意見を頂戴した。初めに、当日の説明資料の抜粋を用いて、当局の問題意識を紹介する。

※在り方懇における当局の説明部分については、下記URLに記載されている議事要旨参照

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/outline/d20171018.html

・P22のとおり、総論について、「中長期的な需要動向を見極め、より安定的で透明性の高い国債発行を行っていく」必要性については賛同が得られた。その上で、今後、国債の保有構造が変わる可能性があり、それを把握していくことの重要性が指摘された。

・一方で、P23のとおり、年限別の需要動向については、意見が分かれた。人口動態の変化に伴う投資家の需要変化の可能性等を踏まえ、超長期債を増額し中・短期債を減額してきた従来方針を見直す必要を指摘する見解が出された一方、超長期債への継続的な需要の存在や債務の長期化を継続する意義を指摘する意見もあった。

・また、流動性供給入札については、市場環境に応じた国債発行の柔軟性を確保できるという意義を積極的に評価する意見が多かった。

(平成30年度国債発行計画について)

・今年度の発行計画においては、要調達額が昨年度比8.2兆円減となったが、公的部門(日銀乗換)を5.0兆円減額することにより市中発行額の減少を抑制した。ただ、この結果、日銀乗換の額が3.0兆円になっており、来年度も同じことをするのは難しい状況。
  また、来年度の要調達額は、予算編成の結果次第であるが、内閣府の中長期試算の数値等を用いた試算によれば、来年度の新規財源債と借換債の合計額は今年度比約3兆円減となる。

・もう一点、当局として、来年度計画の策定に当たって留意すべきと考えているのは計画の積算方法について。
  P27は、平成28年度の国債発行について、計画時点の見積もりと収入実績を比較したもの。歳入・歳出の変化に伴う国債発行の減は仕方ない面もあるが、通常の入札による国債発行分を示す「カレンダーベース市中発行額」が2.7兆円上振れており、これが、結果として、「年度間調整分」の下振れ、すなわち前倒債の発行増の要因となっている。
  これは、カレンダーベース市中発行額を額面での発行を前提として積算してきたことによるもの。30年度計画においては、見積もりの適正化の観点から、オーバーパー発行となる分を見込んでカレンダーベース市中発行額を積算し、収入実績の上振れを抑制することが必要。

(国債市場特別参加者会合(PD会合)(11/22開催)の議論の紹介)。

 ・一昨日のPD会合において、来年度計画の年限構成等について議論した。出席者から頂戴した主な意見を紹介する。。

 ・全ての年限について、一定の減額余地があり、全体の発行額が減るのであれば、
  各年限ともバランス良く減らすことが適当
  ・20年債は、2年連続で減額しており、また、今の金利水準でも幅広い投資家のニーズがあることから、
  超長期ゾーンでは、40年債や30年債の減額を優先すべき
  ・中・短期ゾーンでは、海外投資家のニーズが強い2年以下に比べ、5年債の減額余地が大きい
  ・物価連動債は市場育成の観点から現状維持が適当
  ・マーケットメイカーとしては、カレント債を多めに削ってでも流動性供給入札の増額が望ましい。


出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・グローバルに、特に米国においては、超長期ゾーンの発行を減額するという方向にあると理解している。一方で、金利水準という点では、超長期ゾーンに対する需要は強いのではないか。当社は超長期ゾーンを投資対象にしていないが、長い年限でないと利回りを確保できない金利環境においては、当該ゾーンを多めに発行すべきではないか。

・金融機関にとって、超長期ゾーンへの投資は心理的抵抗感が大きく、今後も積極的に投資するような雰囲気とはなっていない。

・当社の主要な投資年限である短期から長期までのゾーンについて、金利が上昇することを望んでいる。このため、発行総額を減額するのであれば、超長期ゾーンを減額してほしい。

・当社としては中短期ゾーンを中心に投資したいものの、金利水準が低いため投資できない状況が続いており、20年程度の年限まで投資対象を拡大している。したがって、20年債については、現状程度の発行額としてほしい。それよりも長い30年債及び40年債については、減額の余地があると思う。

・各年限について、全体的にバランスよく減額すべきという意見に賛成している。超長期ゾーンの中では、20年債よりは30年債の減額が望ましい。

・5年債については、中期ゾーンの中でも最終投資家の購入意欲が減退しているため、全体的なバランスという観点も含めて、減額の余地がある。超長期ゾーンを減額する場合には、20年債よりも30年債を中心に減額してほしい。また、昨年9月に増額した40年債の発行額を元に戻すということも考えられる。流動性供給入札については、同入札の趣旨や現状のマーケット環境を踏まえると、増額することが望ましい。

・2年債及び5年債については、マイナス金利が深く、当社の投資対象とならないため、減額を希望する。40年債については、ニーズが限定的であるため、減額が望ましい。流動性供給入札については、オフ・ザ・ラン銘柄の流動性を向上させるという観点のほかにも、全体として投資機会が限られている中でカレント債の入札以外の投資機会を得られるという意味があるので、増額を強く希望する。

・当社の負債のデュレーションは非常に長いため、引き続き超長期ゾーンに投資していきたい。円建ての債券としては、超長期の社債市場が育っていないため、国債しか選択肢がない。したがって、全体の発行額が減少する中でも、超長期ゾーンについては多少なりとも増額してほしい。それによって、徐々に社債市場も成長していくと思う。また、イールドカーブをスムーズにするという観点では、流動性供給入札を増額して、個別銘柄の需給バランスを改善することが望ましい。

・新規の円建て商品の販売が鈍化していることは間違いないが、業界全体としては、資産と負債のデュレーションのギャップがまだ残っている。近年は金利が低すぎるために、そのギャップを埋める動きが一旦止まっていると思うが、その状況をいつまでも放置するわけにはいかず、一定程度は埋めていかなければならない。また、金利が上昇すれば、現在は外債や他のリスク性資産に振り向けている資金を、再び日本国債に振り向ける計画もある。したがって、30年債及び40年債については、当面は需要があるので、なるべく減額せず、現在の発行額を維持してほしいところ。ただ、全体の発行額を減額しなければならないということであれば、各年限をバランスよく減額してほしい。

・全体の発行額を減額する方向であることは理解しているが、当面は、引き続き資産と負債のデュレーションを合わせにいく必要があり、超長期ゾーンのニーズはこれからも一定程度あるので、当社が投資する中心のゾーンである30年債については、できるだけ減額せず、発行額を維持してほしい。

・確かに負債側の新規契約は減っているが、超長期ゾーンのニーズはある。円金利が低下する中で、無理をして外債にシフトしているのは不健全だと思っており、金利が正常化すれば当然、日本国債に回帰する予定である。どうしても超長期ゾーンを減額しなければならない場合であっても、デュレーションのコントロールを実施しやすい40年債の発行額については、できれば維持してほしい。

・10年債までの金利がマイナスあるいはゼロに近いため、投資対象が超長期ゾーンに限られてしまっている中で、そこを大きく減額して金利水準が切り下がってしまうと、運用は苦しくなる。また、長い年限の金利は、年金債務の割引率とも関係しており、そこが大きく切り下がってしまうと割引率も厳しくなるのではないか。流動性供給入札については、オフ・ザ・ラン銘柄のオファー・ビッド・スプレッドが非常に広く、取引しづらいという状況を実感しているため、増額してほしい。

・全体として相応の金額を減額する必要があるならば、各年限を万遍なく減額してほしい。超長期ゾーンの中では、20年債については、イールドカーブ上での相対的な投資妙味の高さと、投資家層の厚みがあるので、その流動性を確保するためにも、発行額を維持することが望ましい。10年債については、日本銀行の直接的な操作対象になっており、発行額を変更することによるインパクトが少ないため、比較的減額しやすいと考えている。10年債の減額による将来的なチーペスト銘柄の流動性低下を懸念する声もあるが、残存5-15.5年ゾーンの流動性供給入札を増額することで対応可能だろう。

・5年債、10年債、20年債については、減額が可能。他方で、30年債、40年債については、発行額を維持してほしい。米国、ドイツなど海外市場では、超長期ゾーンのベンチマークは30年債金利となっている。安定消化という観点から発行額を決定することも大切だが、金利の指標となる年限の流動性を高めて、市場を育成していくことも重要である。日本国債のマーケットの現状を考えれば、30年債は、減額するよりも、しっかりとした流動性のある年限として、グローバルな投資家を含めた多くの参加者が活発に売買できるように育てていくことを考えるべきではないか。流動性供給入札については、増額を希望する。

・発行総額をある程度減額しなければならない中では、基本的に各年限を万遍なく減額するのがよい。40年債については、増額を受けて今年度はイールドカーブが幾分スティープ化してきており、特に減額の余地がある。20年債については、イールドカーブ・コントロールの下でも、投資家がある程度の利回りを確保できるため、減額しないことが望ましい。短期ゾーンについては、日本銀行によるT-Billの買入額がかなり減っている一方で、海外投資家からは引き続き強いニーズがある。ただ、T-Billの中では、1年物よりも、3か月物や6か月物に海外投資家の需要が集まっていることを考えれば、1年物に関しては、減額の余地があるのではないか。


2. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて

出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・円の投資を増やしたいという考えはあるが、現在の金利環境を踏まえると、円債ではなく、海外に投資ニーズがある。これまで進めてきた国際分散投資の傾向は変わっていない。
  投資対象の年限を長期化させれば金利収入は増えるが、IRRBBもあるので、超長期ゾーンまで年限を伸ばして投資することは難しい。このため、10年以下のゾーンの金利が戻ってくるまで、円債への投資は積極化させづらい。
  現在は担保見合いの国債投資は行っていないが、今後、保有国債の償還が進めば、残存2年以下のゾーンで担保としての投資ニーズは出てくると考えている。

・海外の国債インデックス投信への投資額が増えており、クレジットリスクよりは、金利リスクを取りながら、海外への投資に少しずつシフトしている。

・円金利の低下とともに投資収益率が落ちており、海外への投資を進めていかなければならない状況にある。ただし、IRRBBを考慮すると、海外への投資であっても、クレジット等も含め、デュレーションを抑えるような方策が必要である。

・当社が保有する日本国債の償還が進んでおり、この償還分の一部を海外投資に振り向けているが、これは海外投資が運用の中心となっているという訳ではなく、あくまでも分散投資の一環として行っているものである。また、現状、日本国債は10年から20年までを中心に投資しているが、中短期ゾーンの金利が回復してくれば、同ゾーンを中心として運用していきたいと考えている。

・各国中銀がバランス・シートを縮小していく中で、グローバルにマネーの流れがどう変わっていくのかについて注目する必要がある。足元、各国若干違いはあるが、労働市場がかなりタイトになってきており、来年度にかけて、インフレ率の上昇が顕在化してくるのか否かがテーマになってくる。そういう意味では、現在、グローバルにフラットニング圧力が強く、金利も比較的低水準という傾向が続いているが、こうしたものに変化の兆しが出てくるのか注目する必要があるだろう。
  また、当社としても、過去に購入した日本国債の償還が少しずつ始まっていく中で、担保としての短期債への需要が一定程度出てくると考えている。

・中長期的には、財政悪化による日本国債の格下げが、最大のリスク要因であると認識している。
  また、現状の低金利下では、円の運用は非常に難しく、大きな動きが取れない状況になっている。今後、金利水準が相応に上がってくれば、負債サイドのデュレーションを考えると、中期ゾーンの投資を積極的に行っていきたいと考えている。
  日本国債の担保需要については一定程度あり、コストを勘案しながら、基本的には残存2年以下のゾーンで投資を行っている。

・現在は国際的な分散投資を進めており、多少円金利が上下したとしても、各アセットの投資額を増減させて調整する程度であり、基本的な方向性を大きく変えるつもりはない。ただし、ALMの観点から、5年債の金利が戻るようなことがあれば、同ゾーンへの投資を積極化させたいと考えている。

・負債サイドが円建てである中、基本的には安定的な円の金利収入を確実に毎年確保していきたいと考えているが、円金利が低い中、その代替としてヘッジ外債への投資を増やしている。ただ、足元のヘッジコストの上昇に伴い、外債の投資妙味が薄れており、相対的に円債が魅力的になってきている。
  長期的に考えると、日本銀行の金融政策が正常化される際には、超長期ゾーンも含めて金利が急に上昇する可能性があり、金利上昇リスクを過度に抱えることのないよう、慎重に円債、ヘッジ外債に分散投資を行っている。
  超長期ゾーンに関しては、日本国債しか投資対象がなく、最近では社債も発行されてはいるが、まだまだ未成熟な状況である。今後、投資家の一員として、流動性のある、より成長した市場の育成に貢献したいと考えている。

・現在は、一時的にリスクを取って、外債やリスク性資産に資金を振り向けているが、ALMを考慮すると、円金利が上昇すれば、円建ての確定利付のアセットに資金を振り向けていきたいと考えている。
  また、超長期債は満期保有目的債券や責任準備金対応債券の区分で購入されているため、もともと頻繁に売買が行われないケースが多く、加えて、日本銀行の保有割合が増えていることで、流動性が低下していると感じる。

・当社の負債は円建てであり、円の確定的な金利収入を安定的に確保することが投資を考える上での基本となっている。このため、当面は超長期債の購入を続けていく必要があるとの状況に大きな変化はないと考えている。

・負債サイドが円建てでの海外投資は、クレジットリスクに加えて為替リスクを取っている状況となり、長期的に見れば健全ではないと言えるため、円金利が上昇すれば、円建ての資産にシフトしていきたい。

また、満期が30年や40年の債券は、国債以外ほとんどないため、社債市場も含めて、もう少し厚みのある市場になってほしいと考えている。

・債券と株のアセット・アロケーションについては、株価が相当上昇するか、あるいは円金利が大幅に上昇して株に対して債券が割安になれば、債券の割合を増やしていくことになる。
  また、円債と外債の関係については、現在は円債がやや割高に見えることから、ヘッジ外債を多めに持っているが、今後、円金利が大きく上昇すれば、円債のデュレーションを徐々に伸ばしていくことになる。

・円債の代替として、ヘッジ外債にシフトする動きが見られる。早い段階でシフトした投資家もいれば、これまで円債での運用を行っていたが、いよいよ運用の状況が厳しくなり、外債にシフトし始めた投資家もいる。投資家の心理的な面を考慮すると、前者はもちろん、後者もリスクを取ることへの負担を乗り越えてシフトした以上、今後、多少円金利が上昇したくらいでは、海外にシフトした資金が国内に戻ってこないのではないかと少し危惧している。

・米国、欧州、日本の間でのアセット・アロケーションに関し、現状、円は収益機会に乏しいため、円建て資産の割合を落とさざるを得ない。円債はイールドカーブが立っておらず、かつ低ボラティリティであるため、収益が上がりにくい状況となっている。

・グローバルな投資対象の中で、円債は、金利水準がかなり低いこと、今後の日本銀行による追加緩和が難しいことを考えると、金利リスク量を削減して運用している。一方で、ドルを保有する投資家にとっては、ベーシス・スワップの見合いで、T-Bill等への投資ニーズはある。

・大量のマネーがマーケットに流れ込んでいる中、国債管理政策は、非常に重要な意味を持っている。基本的には、価格はマーケットが決めることであるが、極端な動きに対して、どのような対応が可能なのかを常に考えておくべきである。

・プライマリー・バランス黒字化の先送りについて、投資家も懸念している。来年には新たな目標が決まり、財政規律が保たれることを期待している。

・国債市場の安定が重要であり、どのような年限の国債を発行すべきか、国債市場の流動性がどのようになっているのか等について、引き続き、本懇談会等において議論していくことが必要である。

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 北條・武田
電話 代表 03-3581-4111 内線 5701