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日時 平成29年9月25日(月)15:00~16:30
場所 財務省 第3特別会議室
内容
 

1. 平成29年10-12月期における物価連動債の発行額等について

○平成29年10-12月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。
・物価連動債については、P2のとおり、29年度発行計画では、1回の入札当たり4,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。本日は、10-12月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。 

・7-9月期については、P3のとおり、8月に発行額4,000億円で入札を行うとともに、同月に200億円の買入消却入札を実施したところ。8月の入札は、P4のとおり、応募倍率が3.19倍となり、引き続き問題なく終了している。買入消却入札と日銀買入オペについては、P5のとおり、概ね安定した結果となっている中で、9月19日のオペでは、応募倍率が低下し、買入平均価格格差もプラスとなっているが、これは直前に解散総選挙に絡んで消費税引き上げに関する報道がなされた影響もあると思われる。
  流通市場の状況については、P6に示したとおり、BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)は、一時0.2%台後半まで低下したが、その後は持ち直しており、ここもとは0.4%程度で推移している。 

・こうした中で、今回の懇談会に先立ち御意見を伺ったところ、物価連動債については、引き続き投資家層の拡がりが限定的であることを懸念する声が聞かれており、10-12月期における物価連動債の発行額と買入消却入札は、現状維持が望ましいとの意見が多かった。 

・こうした状況を踏まえて、P7にお示ししているとおり、10-12月期については、7-9月期と同様、発行額を4,000億円とし、偶数月の10月と12月に200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。なお、本案については、先週金曜日の国債市場特別参加者会合でも議論いただいており、特段の異論は出されなかったところ。

・当局としては、物価連動債の市場育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、そうした観点も踏まえ、10-12月期における発行額等について、皆様の御意見を承りたい。

○平成29年10-12月期における物価連動債の発行額等については、当局の提案に異論はないとする意見が多数見られたほか、以下のような意見があった。 

・金融政策だけではなく財政政策の効果も含めて、日本におけるインフレ期待が高まってこなければ、物価連動債の投資家層はなかなか拡大しないと思う。インフレ期待については日本よりも海外が先行しており、当社としては、アメリカのようにインフレが現実化している国の物価連動債に対して投資している。

・物価が長期的に上昇していく見通しを持てない中、BEIの水準も十分に割安ではないため、当社は基本的に物価連動債への投資に対して慎重なスタンスをとっている。また、セカンダリーの流動性が他の利付債に比べて劣るので、物価連動債のアクティブ運用は手掛けにくい。 

・コアコアCPIが継続的に上昇するという確信が持てるまでは、基本的に物価連動債に投資することは難しい。BEIの水準は低くなってきたので、ダウンサイド・リスクは少なくなってきているが、アップサイドについても限定的である。また、流動性が低いことも欠点である。

・やや長い目で見て、物価連動債の流動性を向上させるためのアイデアを二つ持っている。一つは、例えば、発行額を増額し、日銀買入オペや買入消却も同様に増額することで、日本銀行及び当局が売買を作り出すことである。もう一つは、証券会社に対して、当局が何らかの形で物価連動債のマーケット・メイクを義務付けることである。

2. 平成29年10-12月期における流動性供給入札について

○平成29年10-12月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札について、29年度発行計画では、P9のとおり、年間10.8兆円を発行することとしつつ、「ゾーン毎の発行額等は、市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。これを受け、本日の懇談会では、10-12月期におけるゾーン毎の発行額等を御議論いただくもの。

・7-9月期においては、P10にお示ししたとおり、流動性が不足している銘柄を追加発行し、市場機能の維持・向上を図るという流動性供給入札の目的を踏まえ、ゾーン毎の発行額の見直しを実施した。具体的には、残存1-5年ゾーンについては、1回の入札当たり1,000億円増額し、7月と9月に3,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、従来どおり毎月5,500億円、残存15.5年超ゾーンについては、1回の入札当たり1,000億円減額し、8月に4,000億円の発行とした。

・P11以降に、最近の流動性供給入札の結果を示している。各ゾーンにおいて、概ね安定した結果となっている。

・こうした中で、10-12月期の流動性供給入札について、今回の懇談会に先立ち御意見を伺ったところ、現状の発行額等を維持することが適当との意見が多かった。

・こうした状況を踏まえて、P14にお示ししているとおり、10-12月期におけるゾーン毎の発行額については、7-9月期と同様、残存1-5年ゾーンについては、11月に3,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,500億円、残存15.5年超ゾーンについては、10月と12月に4,000億円の発行としてはどうかと考えている。なお、本案については、先週金曜日の国債市場特別参加者会合でも議論いただいており、大半の参加者から賛同いただいたところ。

・10-12月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の議論も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて御意見を頂戴したい。

○平成29年7-9月期における流動性供給入札については、当局の提案に異論はないとする意見のほか、以下のような意見があった。

・当局の提案に賛成する。最終投資家である当社としては、利回りがプラス圏にある年限の国債に投資することを大前提としているが、状況次第ではマイナス利回りの国債であっても、キャッシュをつぶすといった目的で運用を行う可能性があるため、中期ゾーンの流動性は重要である。 

・当局の提案に異論はない。当社としては、担保ニーズ以外でマイナス利回りの国債を購入することはないが、海外中銀などは中期ゾーンの銘柄を積極的に購入している。また、例えば利回りがマイナス20bpsの国債を買ったとしても、SCレポレートがマイナス30bpsであれば、キャリー収益を確保することができる。そのようなニーズも一定程度あるのだろう。

・当局の提案に賛成する。ただ、当社は基本的にマイナス金利のゾーンには投資していない。今後、中短期ゾーンの需給が緩和することがあれば、4-6月期の金額配分に戻す形で、残存15.5年超ゾーンを増額してほしい。 

・当局の提案に基本的には賛成する。需給がひっ迫した銘柄があるときに、流動性供給入札で調整することは、非常によいことだと思う。ただ、ALMの観点から超長期ゾーンのオフ・ザ・ラン銘柄にも投資している当社にとって、流動性供給入札は非常に有効な投資の場となっている。今後、需給のひっ迫が落ち着いた場合には、ゾーン毎の発行額を4-6月期の配分に戻してほしい。

・当局の提案に対して異論があるという訳ではないが、長い目で見て、マイナスの金利でも買いたいという海外投資家のニーズが中心となっている中期ゾーンを多く供給することが望ましいのだろうか。超長期ゾーンにニーズのある投資家は、金利水準が低いために取引を抑制しているに過ぎない。本来実需があるゾーンの流動性を維持していくという観点から考えれば、早い時期に、超長期ゾーンを減額する前の金額に戻してほしいと思う。 

・可能であれば、超長期ゾーンを増額してほしい。足元は金利が大きく動くような状況ではないので、特段支障なく売買できているが、今後大きく金利が動くような局面を想定すると、超長期ゾーンの流動性について懸念がある。他方、当社では現状、マイナス金利の国債を購入しておらず、中期ゾーンが必要な場合には、地方債等を購入することとしている。 

・ゾーン毎の発行額を4-6月期の配分に戻すことを希望する。当局の提案は、流動性に懸念のある銘柄が残存1-5年ゾーンに多いことを受けた措置だと理解しているが、当社が主な投資対象としている超長期ゾーンにも配慮してほしい。当社はデュレーションを負債に合わせていくために、かなりのボリュームで売買したいと思うことがあるものの、イールドカーブ・コントロールのもとで金利があまり動かない現状では、時間をかけて売買を実行したり、1日当たりの売買量を計画に対して10分の1程度まで抑えたりすることで対応せざるを得ない状況。今後、金利が大きく動いたときには、現状の市場の流動性では、当社が売買したい量を取引することは難しいだろう。 

3.最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて 

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。 

・景気そのものはグローバルに見て堅調であるが、FRBのバランスシート縮小の影響がどういう形で出てくるかをよく見極める必要がある。地政学リスク等で金利が抑えられていることがあるにせよ、金利水準が低すぎるため、最近の運用については慎重になっている。
  FRBがまず利上げを始め、バランスシートを縮小し、次は欧州という流れの中で、金融緩和の正常化に慎重なのが日本銀行である。相当程度景気拡大が続いているものの、あと2、3年もすると景気が後退する可能性もある。その時点で、まだ日本銀行が金融緩和を続けている場合、景気減速局面でさらに追加的な金融緩和を行わなければならない事態が生じないか懸念している。 

・FRBの利上げとバランスシート縮小の影響を今のマーケットは過少に評価しているのではないか。また、イールドカーブ・コントロール政策が変更されるという見通しがない中、来年の日銀総裁の人事が相場変動要因になる可能性がある。引き続き、国内マーケットの動きがない中にあっては、米国・欧州を中心に海外マーケットの動きを見ながら投資を進めていくというスタンスを維持していかざるを得ない。 

・下期の投資計画では、金利上昇のリスクやIRRBBへの対応というものがポイントになってくる。低金利環境下で国債の売買高が減り、流動性が低下、売買コストも上昇している。このため、ディーリングによって機動的に動いて売却益を積みあげていくことが難しい状況になっており、収益確保のためにデュレーションを長期化する、またはクレジット商品に投資することで収益を確保していく必要が生じている。
  可能であれば、国内債券で安定収益を確保していきたいという立場であり、金利の上昇を望んでいるものの、急激な変動には警戒している状況である。国内債券の金利が上昇するまでは、外債等の商品への投資を進めている。 

・当社の運用スタンスとして、基本的には日本国債を中心に投資したいが、中期ゾーンがマイナス金利になっていることから、残存10年以下の一般債を中心に投資している。 

・長い目でみると、来年から始まるIRRBBが大きな問題であると考える。IRRBBが始まると、以前のように制限なく日本国債を買える状況ではなくなる。このため、日本銀行の金融緩和が正常化された時に、金融機関が以前と同じくらいの量の国債を持てるのかという点を懸念している。 

・中長期的な観点で言うと、プライマリー・バランスや消費税増税の議論が進められているが、財政健全化に向けた具体的な対応について、政府において真摯な説明を行うことが必要である。景気拡大によるプライマリー・バランスの改善のみに依拠することなく、財源の手当や歳出の抑制など、財政健全化に向けた実効性の高い具体的な取組みを示していくことが必要となるのではないか。また、日本国債の格付け、関連する日系金融機関の格付けへの影響を含めて、長期的な視点に立ち、市場の安定性の確保といった観点からの取組みが必要であるとの問題意識を持っている。 

・日本国債の投資妙味がなかなか上がらないため、日本国債以外にも投資を行う等、分散投資を引き続き進めていくことを考えている。イールドカーブ・コントロール政策に少し柔軟性を持たせて、徐々にマーケットのボラティリティが高まるようになれば、相場変動時に投資家の資金が戻りやすくなるではないか。 

・日本国債とヘッジ付き外債を比較して、どちらが魅力的かという観点で投資を進めている。足元では、ヘッジ・コストが上がってきているので、相対的に日本国債の投資妙味が出てきている。金利が上昇すれば、日本国債を買っていくというスタンスで臨んでいきたい。 

・円金利が低い状態が続いているため、ヘッジ付き外債を中心に買い入れる状況は当面変わらないと考える。ただし、現行の金融政策があまりにも長く続いてしまうと、外貨建て商品の販売拡大により外貨建ての負債が増加し、金融政策の正常化時に、今までと同じように日本国債を大量に買うということが難しくなる可能性があることには注意する必要がある。 

・イールドカーブ・コントロール政策が効いており、通常、マーケットに影響を及ぼす要因が、現在は影響を及ぼさない状態になっている。今後、合理的な価格形成がなされるマーケットになれば、自ずと投資家は戻ってくると考える。

・日本銀行が金融政策の正常化を進める局面において、懸念しているのは、日本銀行の代わりとなる投資家が不在になっている可能性があること。当社のような投資家は、商品を売る見合いで国債を購入しているが、商品の販売のためには、顧客に対して丁寧な説明が必要であり、販売するまでに一定の期間を要する。このため、日本銀行が国債の購入をやめて、代わりに投資家が国債を購入する必要が生じた場合でも、急に対応することは難しい。 

・日本銀行が大規模な金融緩和を開始して以降、国債に関して、満足な金利水準で満足のいく量を買えていない。仮に、今後、金利水準が上昇するようなことがあれば、国債の購入を進めたい。

・中長期的な観点で言うと、現在の金融政策の下での相場に慣れてしまっているが、こうした相場は長く続かないと意識しながら運用する必要があると考える。マーケットにとって重要なのは、金融及び財政の両面で、正常化の道筋が明確に立てられることではないか。

・現在の問題は、市場に流動性がないこと。特に、オフ・ザ・ラン銘柄を買おうとする際には、証券会社から「レートを提示できない、物がない」と言われることがある。日本銀行が多くの国債を保有している状況では、証券会社も簡単にショート・ポジションをつくれないのだろう。日本銀行の国債補完供給の利便性がさらに高まれば、市場の流動性も高まるのではないか。 

・第一に、低金利の長期化により、投資人材という重要なインフラが劣化している。現在は、実質金利がマイナスになっているため、国債は他よりも割安、割高を判断してトレードを行うか、短期的なタイミングを狙って利鞘を抜くトレードしかできない。このような状況が何年も続くと、本来の投資という観点で人材が育たなくなる。金利が上昇し、本来の投資が必要な場合に、投資家がいないという大きな問題が生じてしまう。
  第二に、低金利が故に貯蓄から投資へという我が国にとって重要なトレンドが妨げられているのではないか。低金利にすれば、他の資産に投資をするだろうと考えるかもしれないが、実際はそうではなく、低金利が続く中で、投資家の合理的な行動の結果、多くを現金で持ち、その他の一部をビットコインなどの価格変動の大きいもので短期的にトレーディングするという極端な状況になっている。この点、債券に利回りが付けば、債券から得られる収益をバッファーとして、様々なリスク資産への投資が行われるだろう。
  第三に、低金利政策は、貸し手から借り手へ富の移転を行うことであるが、問題となるのは、借り手である政府が低金利環境をどのように使うのかということである。政府が低金利環境を利用して、ITインフラ投資等を行わない限り、低金利政策の意味は失われてしまう。 

・低金利の長期化の問題点として、財政規律が緩んでいること、そして財政規律の緩みを示すべきマーケットも、反応が乏しいことがある。低金利が長期化する中で、財政健全化の必要性が伝わるチャネルがないということが大きな問題である。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 北條・武田
電話 代表 03-3581-4111 内線 5701