・ | 日時 平成29年6月29日(木)13:25~14:35 |
・ | 場所 財務省 第3特別会議室 |
・ | 内容 |
1. 平成29年7-9月期における物価連動債の発行額等について ○平成29年7-9月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。 ・物価連動債については、P2のとおり、平成29年度国債発行計画では、1回当たり4,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。本日は、7-9月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。 ・今回の懇談会に先立ちヒアリングを行ったところ、物価連動債については、引き続き投資家層の拡がりが限定的であることを懸念する声が聞かれており、7-9月期における物価連動債の発行額と買入消却入札は、現状維持が望ましいとの意見が多かった。 ・こうした状況を踏まえて、P7にお示ししているとおり、7-9月期については、4-6月期と同様、発行額を4,000億円とし、偶数月の8月に200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。 ・当局としては、物価連動債の市場育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、そうした観点も踏まえ、7-9月期における発行額等について、皆様の御意見を承りたい。 ○平成29年7-9月期における物価連動債の発行額等については、当局の提案に異論はないとする意見で一致した。 2. 平成29年7-9月期における流動性供給入札について ○平成29年7-9月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。 ・流動性供給入札について、平成29年度国債発行計画では、P9のとおり、残存1-5年ゾーンが1.2兆円、残存5-15.5年ゾーンが6.6兆円、残存15.5年超ゾーンが3.0兆円で、年間10.8兆円を発行することを目処として示しつつ、最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。 ・4-6月期においては、P10にお示ししたとおり、発行計画で示した目処に即し、残存1-5年ゾーンについては、5月に2,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,500億円、残存15.5年超ゾーンについては、4月と6月に5,000億円の発行としたところ。 ・P11に、最近の流動性供給入札の結果を示している。増額した残存5-15.5年ゾーンと残存15.5年超ゾーンにおいて、概ね安定した結果となった一方、発行額を据え置いた残存1-5年ゾーンについては引き続き応募倍率が高く、旺盛なニーズが示されている状況。 ・こうした状況の下、7-9月期の流動性供給入札に向けては、国債市場特別参加者から、特に残存1-5年ゾーンにおいて需給がひっ迫しマーケット・メイクが困難になっている銘柄が多いため、残存1-5年ゾーンを増額して欲しいという要望を頂いている。 ・このため、P12にあるとおり、残存1-5年ゾーンについては、7月と9月に3,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,500億円、残存15.5年超ゾーンについては、8月に4,000億円の発行としてはどうかと考えている。 ・また、P13以降にお示ししているとおり、7-9月期以降の流動性供給入札においては、対象銘柄の選定ルールを見直すこととしている。従来のルールでは、入札月の初日時点におけるカレント銘柄については、入札対象から除外していたため、例えば、3月の残存1-5年ゾーンの流動性供給入札では、需給がひっ迫していた5年130回債が入札対象とならなかった。 ・そこで今後は、入札月の初日時点において新発債としての発行が終了しており、流動性供給入札以外の入札では発行される可能性がない銘柄については、カレント銘柄であっても流動性供給入札の対象に含めることとしたいと考えている。 ・7-9月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の議論も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて御意見を頂戴したい。 ○平成29年7-9月期における流動性供給入札については、当局の提案に異論はないとする意見のほか、以下のような意見があった。 ・当局の提案に賛成する。流動性が不足している銘柄を追加発行するという流動性供給入札の趣旨に沿った提案であると理解している。 ・当局の提案に賛成する。流動性供給入札の本来の趣旨に鑑みて、残存15.5年超ゾーンから、より需給がひっ迫している残存1-5年ゾーンへと、発行額を振り替えることが妥当である。 ・当局の提案に異論はない。足元、中短期ゾーンでは少しボラタイルな動きが見られており、レポ市場のタイト感が続いている。 ・当局の提案に異論はない。当社は金利のマイナス幅が大きい残存1-5年ゾーンを投資対象としてこなかったが、マイナス幅が浅くなってくれば投資対象とすることも考えている。 ・4-6月期にゾーン毎の発行額を見直した後も、流動性供給入札の応募倍率はさほど変動しておらず、見直しに強い必要性は感じていないが、当局の提案に異論はない。ゾーン毎の発行額を1,000億円程度振り替えることによる効果は限られるかもしれない。 ・当社の運用の観点からは現状維持の方がありがたいが、残存1-5年ゾーンの需給がひっ迫し、マーケット・メイクにも困難をきたしている状況から増額が必要という点も理解できることから、当局の提案に異論はない。10-12月期については、引き続き市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に調整してほしい。 ・投資家の目線で言えば、残存15.5年超ゾーンを増額し、残存1-5年ゾーンを減額してほしいと考えているが、昨日の国債市場特別参加者会合において、マーケット・メーカーの立場から残存1-5年ゾーンの増額が必要だとする意見が多数示されているのであれば、それに沿った対応が適当と考える。ただ、足元では中短期ゾーンの金利は上がってきており、現在の需給環境が今後も続くとは限らない。10-12月期に向けては、引き続き市場参加者との意見交換を踏まえ、ゾーン毎の発行額の見直しを検討してほしい。 ・当局の提案について、基本的には理解できる。足元では日本銀行の言う「整合的なイールドカーブ」に近づいてきたと思っているが、市場での中短期ゾーンの流通量が少ないのも事実。ただ、超長期ゾーンについても売買は活発でなく、流動性が極めて乏しい状態である。10-12月期以降は、金利水準や流動性を見ながら、必要に応じて残存15.5年超ゾーンの増額を検討してほしい。 ・流動性供給入札の趣旨から考えると当局の提案は理解できるため、反対するつもりはない。ただ、超長期ゾーンについては、生損保の潜在的な投資ニーズがあるものの、金利水準が見合わないため購入が進んでいないという状況にある。こうした中で更に超長期ゾーンの発行額が減額されることは、長い目で見て好ましくないようにも思う。 ・当局の提案に反対する訳ではないが、機関投資家として現状維持を希望していることは申し上げておきたい。当社の運用は、負債の特性を見ながら日本国債を中心に行っているが、流動性供給入札においても残存15.5年超ゾーンを積極的に活用している。今後、中期ゾーンの価格形成が正常に戻るような場合があれば、ゾーン毎の配分の見直しを検討してほしい。 ・中期ゾーンの需給のひっ迫が発生した原因の一つは、ドル円ベーシス・スワップを絡めた海外投資家のニーズであるが、足元では、国内投資家のドル調達手法の多様化により、ベーシス市場でのドル需要が一服し、スプレッドのタイト化が進んでいる。これは構造的な変化であり、今後は一時期ほどの需給がひっ迫した状況になりにくいと見ており、今から中期ゾーンを増額するのはバックワードルッキングな見直しという印象もある。 3. 大量償還月の利付債(5~30年債)及び毎月の2年債の発行に係る決済期間短縮化について ○大量償還月の利付債(5~30年債)及び毎月の2年債の発行に係る決済期間短縮化について、理財局から以下のように説明を行った。 ・前回の本懇談会で御説明したとおり、入札から発行までの期間が長くなっている、大量償還月(3・6・9・12月)の利付債(5~30年債)と毎月の2年債について、決済リスクを削減するため、決済期間短縮化の検討を進めてきた。 ・まず、実施時期については、平成30年5月1日に予定されている流通市場のT+1化に合わせて行うことを考えている。したがって、具体的には、大量償還月の利付債(5~30年債)については30年6月の入札から、毎月の2年債については、30年5月の入札から、実施することになる。 ・また、具体的な実施方法については、第一に、大量償還月の利付債(5~30年債)に関しては、現状、入札日にかかわらず20日発行(休日の場合は翌営業日)となっているが、これをT+1化する。それに伴い、大量償還月である3・6・9・12月発行分は前々月債・前月債と同月償還とし、その翌月(4・7・10・1月)発行分から償還日を3ヶ月延ばして新発債を発行することとする。これは、利払・償還が行われる3・6・9・12月にT+1で新発債を発行すると、初回利払いの関係で大規模なシステム改修が必要になるなど、様々な問題を生じるとの声が多くの市場関係者から聞かれたことによるものである。 ・第二に、毎月の2年債の発行については、現状、入札日にかかわらず翌月15日発行となっているが、その発行日を入札翌月の1日とする。また、利払日及び償還日についても、1日に変更する。これは、月末に入札を行っている2年債を単純にT+1化してしまうと、入札日次第で月内に発行される場合と翌月に発行される場合が生じ、混乱を招くおそれがあることから、翌月発行を維持した上で、できるだけ決済期間の短縮化を図ることとしたものである。 ・本件についても本日の議論を踏まえて最終的に判断したいと考えているため、改めて御意見を頂戴したい。 ・なお、国債発行のT+1化に伴い、既にお知らせしているとおり、入札のタイムテーブルを変更することとしている。P26に、昨年11月に公表したタイムテーブルの変更点を再掲しているので、後ほど御確認いただきたい。 ○大量償還月における利付債等の発行にかかる決済期間短縮化については、当局の提案に異論はないとする意見が多数見られたほか、以下のような意見があった。 ・当社の事情に配慮された実施時期の提案になっているため、当局の提案どおりで問題ない。 ・当局の提案に賛成する。当社のシステムについては、問題なく対応できることを確認している。 ・当局の提案どおりで問題ない。市場参加者のシステム改修の対応状況を今後も確認してほしい。 ・2年債を1日発行とする点について、当社ではシステム対応が追加で発生する部分もあるが、実施までに時間も十分にあるため、問題ない。 4.最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて ○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。 ・FRBの利上げやバランス・シートの縮小など、米金利を中心に将来的な金利上昇を促すような材料はあるものの、その実現可能性や時期に疑問もあったため、当社は年初に米金利が大きく上昇した局面で米債を中心に投資してきたところ。今後、再び金利が上昇するような場面では投資を行うスタンスではあるが、足元は様子を見ている状況である。 ・日本銀行の金融政策を背景として、日本国債については値動きの乏しい状況が続いている。現状の金利水準のもとでは、中短期ゾーンについては、担保所要額の範囲内での投資が中心とならざるを得ず、長期・超長期ゾーンについても、本格的な投資は引き続き見合わせざるを得ない。また、外債投資についても、短期金利が上昇していくとの見方が大勢を占めており、慎重にならざるを得ない。 ・当社は、残存20年以下のプラス利回りの債券を主な投資対象としているため、現下の低金利では非常に厳しい状況が続いている。こうした中、残存10年以下の政保債や地方債でキャッシュを潰し、資本状況やポートフォリオ残高を踏まえつつ超長期債へ最低限の投資を行いながら、投資信託等でも利回りを稼いで運用全体のバランスを取っている。 ・国内の債券ではキャリーもキャピタルもあまり狙えないため、基本的に担保繰りやキャッシュ潰しの意味合いが強くなっている。他方、外債や国内外の株式、投資信託やファンド等を使い、リスク分散を図りつつ収益を追求していきたい。ただ、市場がやや不健全な形になりつつあるため、何かをきっかけに相場が急落することも十分考えられる。その時にロスカットして終わりにならないように、もう一度ポートフォリオに組み入れる余力も持ちながら運用していきたい。 ・日本では、金融政策が強力に効いており、ボラティリティは低位で抑えられている。一方、足元ではFRBのほかにも英国やカナダの中央銀行も若干タカ派にシフトし始めており、今後は、各国中央銀行によるタカ派的な情報発信によって、市場が動揺しやすくなる可能性に注意が必要である。何年もの間、各国中央銀行のQEにより潤沢な資金が供給され、各種資産に流入してきたところ、その巻き戻しが市場に与える影響について十分に留意する必要がある。 ・既に利上げを開始しているFRBに加え、ECBやBOEについても金融緩和からの転換が市場での話題になっており、日本銀行についても出口戦略への関心が高まってきている。ただ、やはり2%という物価安定の目標が遠い中では、日本銀行が早期に出口に言及する可能性は低く、目標達成までは現状の金融緩和が継続する可能性が高いと考えている。 ・当社の中では償還分の再投資が大きな投資行動であり、そのコアが円債であることは変わらない。円債の代替手段としてはヘッジ付き外債が重要であるが、足元ではアメリカはじめ世界的に金利が下がっている中、これにも頼りにくい状況となっている。逆に、日本の長期金利は絶対水準としては魅力がないが、相対的にはヘッジ付き外債と並ぶような水準に今はなりつつあるため、日本国債についても状況を見て組み入れている。 ・海外では色々と動きがあるが、国内では日本銀行のイールドカーブ・コントロールにより市場は安定的に推移している。当社は、市場の流動性やボラティリティ、金利水準といった観点から超長期ゾーンを中心に投資を行っているが、金利水準については、投資環境として非常に厳しい状況が続いている。最近では、20年債市場にキャリー・ロールダウン効果を狙って多くの投資家が参入しているため、キャリー効果が薄れてきている。また、満期保有を行わない投資家が増えたことによって、相場が急変するリスクも高まっているのではないかと危惧している。 ・最近の注目される動きとして、アメリカのみならずヨーロッパでも利上げが話題になっている。こうした中、日本だけがなかなか動けない状況になっているという構図が顕著になってきたのではないか。 ・イールドカーブ・コントロールが導入されて時間が経っている中、金利観に基づく長期運用が難しくなり、短期運用が増えてきていると感じている。そのような中、FRBの利上げや資産圧縮等が進んでくると、様々な形で高い利回りへの追及が進んでいくことになるかもしれない。米金利のメインシナリオとしては、手前の金利が徐々に上がってベア・フラット化をするのではないかと考えているが、予想に反して金利低下すること等も考慮しながら、引き続き投資を行う必要がある。 ・3月以降、日本銀行が残存1-5年ゾーンを対象とした買入額を大幅に減額したことで、残存10年以下で見るとイールドカーブがフラット化し、カーブの歪みがなくなったことで収益機会が減少している。イールドカーブ全体を見ると残存20年のゾーンにわずかに投資余地があるため、やや過熱気味に投資家が集中するような状況。当社の運用スタンスとしては、FRBに続いてECBやBOEも金融緩和政策からの転換が意識され海外市場にボラティリティが出てきそうな状況になっていることから、そちらにキャピタルを向けている。日本国債市場については、投資機会が出てくるまで抑制的にオペレーションをしていくことになるだろう。 ・超長期ゾーンの金利が低く抑えられており、最終投資家の目線に合っていないが、当社としては、ALMの観点から購入する必要がある日本国債については、金利水準にかかわらず投資を継続する。 ・各国の金融緩和が縮小方向に進む中で、ボラティリティが高まる可能性がある。そのような状況のもとで、どのような投資行動を選択するかがポイントである。 ・円金利については、日本銀行のイールドカーブ・コントロールによって動きがなくなっている中、外債やファンドも含めて分散投資を進めている。今後は、海外金利の動向によって国内の流動性やボラティリティが上昇するリスクも考慮しながら、引き続き分散投資を進めていく。 ・日本銀行の金融政策が想定以上に長期化し、現在の低い金利水準と低ボラティリティが継続していることから、日本のトレーダーは市場での活躍の場がなくなってきている。短期的な需給予測に基づく短期トレードしかやることがない中で、経験者は市場から退出してしまう一方、他のトレード方法を知らないため若い世代が育っておらず、シンガポールや香港等とは若い運用者を含めた人材の厚みや質の高さで大きな差がついてしまっている。市場を支える人的インフラの劣化が、低金利長期化の最大のコストだと感じている。 |
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