このページの本文へ移動
   

国の債務管理の在り方に関する懇談会(第46回)議事要旨

 

.日時 平成30年2月28日(水)10:00~11:30

.場所 財務省 第3特別会議室

.内容

 

1.平成30年度国債発行計画(報告)資料①(PDF:614KB)

2.国債市場の現状と今後の動向見通し(資料②(PDF:2134KB)) 及び資料③(PDF:1245KB)

 

 

 理財局より、平成30年度国債発行計画について(資料①(PDF:614KB))、報告が行われた。
 また、SMBC日興証券 末澤委員より、2018年の経済・金融市場の動向(資料②(PDF:2134KB))、大和証券 坂島委員より、各種サーベイから見る国債市場コンセンサスと日銀政策調整が与える影響の考察(資料③(PDF:1245KB))について、説明が行われ、その後、自由に意見交換が行われた。

  

 

▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ)は以下のとおり。

    3つの市場構造変化が起きていると考えており、今後は、2月初旬に起きたような市場の変動が、常に起こりうることを前提に、経済・金融政策の運営が必要。

    1つ目の市場構造変化は、米国を中心とした主要国の金融政策正常化の結果として、マネーフローの大きなシフトが起きる可能性。2つ目は、投資ファンドの存在感が高まり、金融全体が市場連動性の高い構造になっていること。3つ目は、市場のAI化であり、アルゴリズムや高速回転自動取引といった、相場のトレンドに沿った順張り取引が増加していること。これらの市場構造変化によって、本来、大きな経済的影響を及ぼすほどではないはずの要因が、1つの引き金となって世界中に連鎖し、市場の大きな調整が起きる可能性が高まっているのではないか。

    こうした大きな調整に備えて、国債発行に関しても何らかの予防的対応やショックを緩和する仕組みを検討しておくべき。

 

    今年に入ってからの米国の金利上昇は、米国財政の悪化懸念とどれほど関係があると考えているか。

 

    ここ10年間、米国は海外から人材・資金を取りこんで高成長・低金利を享受してきたが、今の政策を続けてうまく資金流入が続くのか。米国の財政・経済が変わりつつあると感じている。

 

    日本では、通貨の価値が上昇することを憂うという、異常な経済構造にあるが、円高が悪材料とされ、負のスパイラルが定着していることが日本の問題ではないか。このスパイラルから脱却できるきっかけは何か。

 

    米国は、リーマンショックの後、いち早くドル安政策を採ったことで回復したほか、最近のEU圏の好況は、ギリシア危機を受けたユーロ安の恩恵が大きい。日本でも、アベノミクスの下における円安が好況の一因となっていることは確か。自国通貨が強くなって景気が良くなるには、90年代のアメリカのように国内で大きなイノベーションが起きる必要があり、今後とも人口が減少し、海外に頼らざるを得ない中で、円安が日本経済にとって望ましいという構図は当面変わらないだろう。

 

    日本の輸出と輸入の対GDP比はほぼ等しい。日本の輸入財価格は、円高に対しては反応が鈍く、円安に対してはすぐ反応するといった形で非対称性がある。この非対称性が解消すれば、為替変動による経済への影響は軽減するのではないか。

    個人投資家が外貨で運用するようになれば、機関投資家が為替ヘッジにコストをかける必要もなくなるし、個人投資家の通貨分散も広がるのではないか。

    国内の国債消化余力が低下すれば、外国人投資家に保有を頼らざるを得なくなり、ギリシアのように国債市場が不安定になる。少子高齢化等により生命保険会社や年金基金の投資余力が低下しかねない中で、何年かすると、国債をいかに安定的に消化できるかが課題になるのではないか。

 

    個人の通貨分散との問題提起があったが、正直なところ、日本では、貯蓄から投資への動きは起きにくいのが実感。米国では、日本より貧富の差が大きく、リスクを取れるだけの資産を持つ資産家がおり、彼らが積極的に投資するが、富の偏りが少ない日本では、リスクを取る人が出てこないのではないか。

 

    現在、生命保険会社は、日系大手も含めて外貨建貯蓄性商品の売り上げを伸ばしているのは確か。

    また、現行の低金利環境下では、貯蓄性商品の運用先として日本国債を本格的に買うことは困難であり、金利リスクコントロールの観点からの購入に留めているが、金利が上昇した際には、買い増す余力がある。

 

    個人向け国債の売り上げが好調とのことだが、個人向け国債は中途換金が可能。残高は大きくないにせよ、市場の急変時等に個人投資家が一気に中途換金してしまうリスクがあることも留意すべきではないか。

 

    個人向け国債の売り上げが好調なのは、現在、銀行にとって預金がコストとなっており、預金から個人国債に振り替える動きが出ていることによるもの。金利水準が戻れば、個人国債の売り上げも元に戻るのではないか。

 

    欧州については、イタリアの選挙の混迷が注目されているほか、ドイツの連立政権の行方についても悲観的な見方が多い。英国のBrexit交渉も道は険しく、メイ首相がコントロールに苦労している模様。経済状況は良いが、注視すべきことが多いという印象をもっている。

    わが国については、社会保障改革が進んでいないことを心配している。政府・日銀の共同声明において、金融緩和と財政健全化をあわせて行うこととなっており、今のうちに、社会保障改革を進めることが大事だ。

    また、財政規律に関するマーケットからの警告がない今の状態は非常に心配だ。金利を通して発信できないにせよ、市場参加者が他の形でウォーニングを発していく工夫をする必要がある。

 

    政策の議論をする際には、どういったデータ・統計を基に議論するかが重要。例えば、消費者物価指数について、現在携帯電話価格や通信費が下がっているが、これは技術革新の影響であり、デフレではない。こうした状況で、特定の項目を除いた指標で議論するのは適当ではなく、刈込み消費者物価指数を基に議論すべき。

    市場は自分に都合の良いことを信じる傾向が強く、また、政策は抜本改革から逃げがち。こうした状況で、現状が変わらないという思い込みが広がると、マクロストーリーが変わる時に大きな変動が起きてしまう。国債管理当局は、こうしたテールリスクがあることを認識し、リスクが発現した時にどう対処すべきか考えておく必要がある。

 

    財政健全化の取組が先延ばしされ続けているのも、マーケットの声が届かないゆえ。マーケットは見たくないものは見ないということでは困る。低金利下では信用力の低下というのは見えにくいが、よく見れば、例えば、外貨調達コストは上昇しており、その背景には、日本の信用力の低下もあると考えている。

    また、このままでは間もなく国債残高の半分以上が日銀保有になるとの説明があったが、そうした状況で市場が機能するのか。こういう意味での国債市場の持続可能性についても、このような場で議論していく必要がある。

 

    今年、ベゾス氏とバフェット氏とダイモン氏が新しいヘルスケア企業を立ち上げるというニュースが出たが、それを受けて薬品株とヘルスケアサービス関連株の株価が大幅に下がったことが印象的だった。彼らが一定の人員を確保して音頭を取れば、医療の無駄削減が全米に展開され、これらの株の収益率が変化すると予測されたのだろう。

    日本でも、このようなイニシアティブを持つ人が出てこないものか。利害団体等しがらみの多い国や審議会ではなく、例えば大企業の健保組合から医療の効率化を推進することができるのではないか。社会の中からインテリジェンスを引き出して、ターゲティングした医療・治療制度をつくる努力を推進するべきだ。

 

 

 

(以上)

 


 

 

連絡・問合せ先:
 財務省 理財局 国債企画課 企画係
  電話 代表 03(3581)4111 内線 2565