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大口返還財産の留保地の今後の取扱いについて

1 はじめに

 



.大口返還財産についてのこれまでの答申

 昭和48年1月、日米合同委員会において合意をみた米軍の基地集約化計画に基づき、米軍に提供されていた大規模な国有地のうち昭和48年から昭和57年にかけて11跡地(別紙参照)が返還された。
 これらの大口返還財産の取扱いについては、昭和48年4月26日、大蔵大臣から国有財産中央審議会に対し、「主要な米軍提供財産の返還後の利用について」が諮問され、これまでに以下の答申がとりまとめられている。

   


(1)


 「米軍提供財産の返還後の利用に関する基本方針について」(昭和51年6月21日答申、以下「三分割答申」という。)
 「三分割答申」においては、大口返還財産の有効利用を早期に実現するために、利用区分に関する統一的な処理基準及び留保地の考え方が示された。

     

1

 利用区分に関する統一的な処理基準
 「大都市及びその周辺に所在する大規模な返還財産(10万平方メートル程度以上の土地)については、特別のものを除き、おおむねその面積を3等分して、それぞれ次のように処理するものとする。

       

(1) 地元地方公共団体等が利用する
(2) 国、政府関係機関等が利用する
(3) 当分の間処分を留保する

(A地区)
(B地区)
(C地区) 」

     


2


 C地区(留保地)の考え方
 「この処理基準における留保地は、現時点では予測できない需要に備えるためのものである。特に最近のように、社会的、経済的変動の激しい時期においては、大規模な返還財産の全域にわたって具体的な利用計画を短期間に決めてしまうことは適当でなく、その一部について利用計画の策定を留保しておくことが、長期的にみて土地全体としてのより有効な活用に資すると考えられる。」

   


(2)


 各跡地ごとの「処理の大綱について」答申
 昭和52年6月から平成6年6月にかけて、各跡地ごとに逐次、大口返還財産の土地利用の基本計画に相当する処理の大綱が決定された。
 各跡地ごとの処理の大綱において、北富士演習場返還国有地を除く10跡地について留保地が設定された。

     

(注1

)横浜海浜住宅地区跡地については、国有地と民有地が混在している状況にあり、横浜市による土地区画整理事業を施行する必要があったことから、「三分割答申」以前の昭和49年3月14日、国有地の集約化を図ることなどを盛り込んだ大綱が決定されている。
 なお、本跡地の利用計画の決定及び留保地の設定は、「三分割答申」の基本方針に基づき、平成元年12月、国有財産関東地方審議会においてとりまとめられた答申に盛り込まれている。

(注2

)北富士演習場返還国有地については、昭和48年3月、北富士演習場の存続と地元民生の安定とを両立させるため、本地を地元地方公共団体に払い下げて林業整備事業を営ませる方針が閣議了解されたことから、留保地を設定しなかった。

   


(3)


 「大口返還財産の留保地の取扱いについて」(昭和62年6月12日答申、以下「留保地答申」という。)
 「三分割答申」の審議過程において、留保地については、各跡地の処理の大綱決定後5年間ないし10年間を目途に留保するという考え方が一応の前提とされていた。昭和57年までに関東村住宅地区を除く全ての跡地について処理の大綱が決定されたが、その後5年が経過して、留保地の取扱いについての新たな方針を定める必要が生じたため、「留保地答申」がとりまとめられた。
 「留保地答申」では、次のような留保地の取扱いについての基本的考え方が示された。
 留保地については、「1大都市圏に残された数少ないまとまった国有地であり、今後再びこのような土地が得られることは期待できないため、長期的観点からその有効活用を考える必要があること、2当審議会が答申した処理計画に従い、留保地以外の地区において各種施設等の整備が行われ、また今後も整備が進められる見込みであり、それによって都市環境の改善及び防災性の向上が図られると考えられること、から引き続きできる限りこれを留保しておくことが望ましい」とされる一方、「留保地の利用要望がある場合は個別に検討し、必要性及び緊急性があると認められるものについては、留保地を利用することもやむを得ない」、「留保地は公用・公共用の用途に充てる」場合に例外的に利用が認められることとされた。(以下「原則留保、例外公用・公共用利用」という。)

 



.留保地の状況

   


(1)


 平成6年6月、関東村住宅地区跡地の処理の大綱が決定され、すべての跡地について処理計画が定められた。それまでに設定された留保地の面積は全体で653ヘクタールであるが、その後米軍より13ヘクタールが追加返還された結果、最終的に666ヘクタールが留保地に区分されている。
 これらの留保地は、平成元年3月までは全て未利用であったが、その後地方公共団体等の要望に基づき個別に検討された上で利用が進められた。
 この結果、平成15年3月末までに、留保地全体の40%、269ヘクタール(このうち国・政府関係機関86ヘクタール、地方公共団体等183ヘクタール)が公用・公共用に利用されたが、なお留保地全体の60%、397ヘクタールについては引き続き未利用となっている。
 地方公共団体等への売却を開始した平成元年当時と比較すると、近年、地方公共団体等による留保地の購入の動きは極めて低水準にあり、過去5年間における件数は2件にすぎない。

   


(2)


 「留保地答申」から16年が経過したが、この間に留保地を巡る事情は大きく変化した。

     

1

 「留保地答申」当時はいわゆるバブルの拡大期で、東京都心部をはじめとして地価高騰が生じていた。その後のバブル崩壊に伴い、地価は長期間にわたり大幅に下落し続けている。

     

2

 留保地周辺の市街化が急速に進展したため、広大な雑木林や荒れ地の状態として取り残された多くの留保地が住宅地や商業地に隣接することになり、結果的に都市形成を阻害している。

     

3

 多くの関係地方公共団体では、「留保地答申」後も暫くの間は財政事情にも余裕があり、地域開発の動きも活発であったが、その後の財政事情の悪化に伴い、利用構想を立てても、用地取得や施設整備の財源の目途が立たないため、現在では地域開発の動きが停滞している。

 



.留保地の取扱いに関する問題意識

 留保地の取扱いについては、これまで「留保地答申」に示された「原則留保、例外公用・公共用利用」の基本的考え方に則ってきたところである。しかしながら、前述のとおり留保地を巡る事情は大きく変化してきており、今後、その活用について現実的な展望がないまま未利用の状態が継続すれば、国民経済的な観点から非効率であるとともに、望ましい都市形成を阻害すると考えられる。
 最近の新しい動きとしては、

     

1

 昨年4月制定された都市再生特別措置法において、急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に対応して、都市の魅力と国際競争力を高め、都市再生を実現することが国家的な重要課題とされている。

     

2

 昨年12月制定された構造改革特別区域法では、構造改革特別区域の計画作成の際、地方公共団体が規制の特例措置を提案することができることとされているが、関係地方公共団体の一部から、留保地について、民間利用の容認と暫定的利用の拡大の提案がなされている。

 

 

 また、近年、国の厳しい財政事情の下で、国有財産当局においては、売却手法の多様化、売却件数の大幅増加に取り組むなど未利用国有地の売却促進を図っているが、このような状況を踏まえ、留保地について原則留保の基本的考え方を維持することが国有財産行政上整合的かどうかの検討が必要となっている。
 以上を踏まえれば、「留保地答申」など留保地の取扱いに関するこれまでの国有財産中央審議会の関係諸答申について、今日的な観点から抜本的な見直しを行うことが不可欠である。
 財政制度等審議会国有財産分科会は、このような認識の下、同分科会に設置した不動産部会において、留保地の今後の取扱いについて検討を行うこととした。





2 現地視察結果

   


 当審議会国有財産分科会不動産部会では、平成15年4月、東京都立川市及び昭島市に所在する立川飛行場跡地と埼玉県朝霞市等に所在するキャンプ朝霞跡地の留保地について現地視察を実施した。

 



.立川飛行場跡地

 立川飛行場跡地(総面積は460ヘクタール)は、昭和51年から52年にかけて返還された財産であり、昭和54年11月19日、国有財産中央審議会の答申において処理の大綱が決定された。
 具体的には、大規模公園及び広域防災基地を二本の柱としながら、立川市、昭島市の市街地の健全な形成のために必要なオフィスビル等の業務地区を周囲に配置することとされ、地元地方公共団体等利用の地区が219ヘクタール、国・政府関係機関等利用の地区が130ヘクタール、留保地が111ヘクタールに区分され、それぞれの地区の処理が進められた。
 現在未利用となっている留保地面積は、94ヘクタール(立川地区44ヘクタ−ル、昭島地区50ヘクタ−ル)となっている。
 なお、現在の国営昭和記念公園は、地元地方公共団体等利用の区分に立地している。

   


(1)


 立川地区の留保地
 立川地区の約半分の留保地(24ヘクタール)については、都市基盤整備公団施行の土地区画整理事業が進行中であり、国の行政機関の移転整備や関係地方公共団体の庁舎整備が行われている。土地区画整理事業の対象となっていない残りの留保地(20ヘクタール)については、具体的な土地利用計画がない状況である。
 土地区画整理事業区域を中心に都市基盤整備が計画的に図られ、周辺を含めて市街化が進展しているなかで、立川市としては、土地利用構想において、業務地区として位置付けられた3ヘクタールのエリアに民間企業等を誘致し、秩序ある都市形成を図りたいとしている。
 また、立川市は、民間企業等を誘致する際に留保地の秩序ある街区整備を図るため、

     

 1

 国が地域の土地利用計画を踏まえた条件付きの入札を実施して売却すること

 2

 土地取得を条件とする民間企業の誘致が困難であることを勘案して、国自らが事業用定期借地の設定を行うこと

     

を要望している。

   


(2)


 昭島地区の留保地
 昭島地区の留保地の現状は、金網フェンスで囲われて全体に鬱蒼とした雑木林の状態にあり、米軍に提供していた当時の工作物も現存している。平成10年に東京都が土地利用構想を策定しているものの、その後の社会経済情勢の変化や財政事情の悪化などから、構想は具体化に至っていない。
 昭島市は、当面は、民間活力による整備を検討するための具体的な土地需要や開発動向等の調査を行った上で、将来整備構想・土地利用計画案を策定する作業を進めている。
 他方、東京都及び昭島市は、土地利用構想の具体化に向けて、改めて事業内容や整備手法(都市計画道路等の先行的な整備による段階的なまちづくりを含め)を検討していく意向である。

 



.キャンプ朝霞跡地

 キャンプ朝霞跡地(総面積は302ヘクタール)は、昭和46年から61年にかけて返還された財産であり、北地区、南地区及び根津地区の3地区に分かれ、昭和54年11月19日、国有財産中央審議会の答申において処理の大綱が決定された。
 具体的には、公園の整備等により良好な生活環境の確保及び都市の防災性の向上を図りながら、この地域に不足している学校その他必要な都市施設の整備を行い、あわせて国の必要とする施設の用地を確保することとされ、地元地方公共団体等利用の地区が132ヘクタール、国・政府関係機関等利用の地区が94ヘクタール、留保地が66ヘクタールに区分され、それぞれの地区の処理が進められた。
 現在未利用となっている留保地面積は、昭和61年に追加返還された北地区10ヘクタールを加え、23ヘクタールとなっている。このうち16ヘクタールが北地区に所在しており、現状は、金網フェンスで囲われた雑木林の状態にあり、米軍に提供していた当時の建物も一部現存している。
 北地区の留保地について、朝霞市は、「留保地答申」の「原則留保、例外公用・公共用利用」の基本的考え方に則り、平成13年8月、8つのゾーニングを行うなどの市独自の土地利用構想を決定している。
 このうち、例えば文教・学術機関誘致ゾーンとして8ヘクタールのエリアを設定しているが、現在の厳しい財政事情から朝霞市自らは当面購入できないとしており、構想の実現の目途は立っていない。





3 留保地の今後の取扱い
   


 留保地の今後の取扱いについては、当審議会国有財産分科会不動産部会において、これまでの留保地の取扱いについての前述のような問題意識の下、現地視察による現況把握の結果を踏まえつつ論点整理を行うとともに、関係地方公共団体に対し意見照会を行い、検討を行った。
 当審議会は、同不動産部会がとりまとめた報告書を審議会の答申としてとりまとめたものである。
 なお、本答申書においては、留保地の今後の取扱いに関する論点ごとに、同部会における各委員の主要な意見及び関係地方公共団体に対する意見照会の結果を記載しているが、これらは、あくまでも当審議会の結論に至る議論の経緯を明らかにすることを目的としたものである。

 



.基本方針

 「留保地答申」においては、留保地の取扱いについて、「原則留保、例外公用・公共用利用」を基本的考え方とし、一定の基準の下にその利用を認めている。
 この基本的考え方について、各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 関係地方公共団体が、これまで「留保地答申」の基本的考え方に沿って留保地の活用を検討してきたことを考慮すると、留保地利用の方針を転換すれば戸惑いが生じ、また、無理な計画が策定されるおそれもある。したがって、原則留保の考え方は維持しつつ、例外としての利用の枠の拡大を図る必要がある。
 その際、公用・公共用の概念を拡大し、街に賑わいを創造することや土地利用計画に沿って民間が利用するということも公共性があるという発想に立って、民間利用も含めた幅広い土地活用を可能とすべきである。

     

 少子化・高齢化の進行や現在の諸情勢を考えると、土地を大切に留保しておくという意義は、既に失われていると考える。十数年間にわたり荒蕪の状態でいわば放置されているのは、地域にとってマイナスであり、原則留保の基本的考え方を維持する意味はない。

     

 「原則留保、例外公用・公共用利用」の基本的考え方が関係地方公共団体の自由な発想による利用計画の策定を妨げているのではないか。この際、関係地方公共団体が機動的かつ自由に利用計画を策定できるような方向性を打ち出すことが重要である。

     

 国有地に限らず土地については、いわゆるバブル期を境として「保有から利用へ」と基本的な考え方が転換されており、留保地についても、民間の発想を活用しながら利用計画を策定できるよう、原則利用の方針を打ち出すべきである。

   



関係地方公共団体に対する照会結果》

     

 将来関係地方公共団体が利用するまで留保すべきである。
 「原則留保、例外公用・公共用利用」という基本的考え方で議会や住民の了解を取り付けて利用計画を策定してきた経緯があり、それに沿った開発が望ましい。

     

 留保地をすべて公用・公共用で使い切ることは不可能であるので、制限を解除することはやむを得ない。
 経済情勢の低迷が長期化しているなかで、民間活力の導入が期待されるところであり、原則留保から原則利用に方針を転換し、土地利用の促進を図ることが重要である。

     


 「留保地答申」の基本的考え方を巡っては、関係地方公共団体間で、それぞれの留保地の規模や立地条件、これまでの検討経緯、将来の利用見込みの相異などから、その考え方に対立が見受けられるが、委員の意見は、都市再生や経済活性化、地域の活性化等の観点から、関係地方公共団体と連携しながら、民間利用も含めた留保地の利用を促進すべきであることについて、一致をみている。
 留保地の今後の取扱いの基本方針としては、従来の「原則留保、例外公用・公共用利用」の考え方を転換し、原則利用の考え方に基づき留保地の活用を促進するという新しい発想の下で、地域の特性や土地利用計画との調和を図りつつ、都市部に残る大規模な国有地の計画的な有効活用を促進することが適当である。(以下「原則利用、計画的有効活用」という。)
 留保地とされていた返還財産は、国の行政目的に直接供されていない財産(普通財産)であることから、本来売却することが前提とされるものである。この「原則利用、計画的有効活用」という新たな基本方針に立てば、その取扱いについても速やかな売却を行うということに立ち戻ることになる。ついては、留保地の計画的な有効活用を図るため、留保地の利用計画の策定、関係地方公共団体に対する支援措置などの留保地の活用に向けた具体策について、以下検討する。

 また、民間利用の容認等の構造改革特別区域の提案については、新たな基本方針により留保地全体の有効活用を促進することとしたことから、特定の地域に限定する必要はなく、留保地にかかる共通の取扱いとすることが適当である。

 



.留保地の活用に向けた具体策

 「原則利用、計画的有効活用」の基本方針に基づいて留保地の活用を促進するためには、道路・下水道等の都市基盤施設、公園・教育文化施設等の公的施設、住宅施設、業務施設などをどのように整備するかを定める基本計画(利用計画)が公的主体において策定される必要がある。同時に、関係地方公共団体が自ら取得して活用する区域と民間による活用を推進する区域が画定される必要がある。
 また、留保地の管理処分の主体である国は、策定された利用計画を円滑に実現するため、あるいは利用計画が具体化するまでの間の有効な土地利用を図るため、関係地方公共団体に対する支援措置、民間に対する売却方法、留保地の管理方法などについて具体的に定める必要がある。

   


(1)


 利用計画の策定
 利用計画の策定に関する策定主体、策定期間などについての検討結果は、以下のとおりである。

 



 利用計画の策定主体
 利用計画の策定の在り方について、各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 地方への権限委譲や民間活力の活用という今日的な流れを踏まえると、最終的には関係地方公共団体に判断を委ね、そのもとで民間活用を進めるべきである。その際、関係地方公共団体が実現可能性のある利用計画を策定することを期待する。

     

 大規模な留保地の処理に関して、市場原理に委ねて民間プロジェクトを進める場合に、秩序ある都市形成に資するため、関係地方公共団体が民間主導の利用計画を策定する際に、管理処分の主体である国も協力していく必要がある。

   



関係地方公共団体に対する照会結果》

     

 利用計画の目的は住民福祉の向上であり、地元の関係地方公共団体が主体的に利用計画を策定するべきである。

     

 過去の経緯や地域事情に精通していることなどに鑑み、地方の自由な発想を尊重する観点からも、基本的に地元の関係地方公共団体に利用計画の策定を委ねるべきである。

     


 利用計画は地域のニーズを踏まえて策定されるべきであり、民間の発想、活力を活用しつつ留保地の活用を進める場合においても、その留保地の活用の在り方が、まちづくり、都市形成と密接に関係することから、関係地方公共団体が、留保地の管理処分の主体である国と緊密に連携しつつ、主導的に実現可能な利用計画を策定していくことが適当である。

 



 利用計画の策定期間
 留保地の活用を促進するため、利用計画の策定について一定の期間を設ける必要があるかどうかに関し、各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 拙速で硬直的な利用計画とならないよう、策定期間に時間的な余裕をもたせるなどフレキシビリティをもった対応をすることが必要である。

     

 市町村合併の動きがある中で短期間に利用計画を策定することは困難であり、策定に猶予期間を設けることが必要である。

     

 留保地の活用を促進するためには、早期に利用計画が策定されることが望ましく、都市計画や公共事業の見直し期間あるいは地方公共団体の首長の任期などを勘案して、利用計画の策定に必要な合理的な期間を設定することが考えられる。

   



関係地方公共団体に対する照会結果》

     

 国の方針が変更されるのであれば、利用計画を見直し、住民の理解を求めるために十分な時間が必要であり、期限を設けるべきではない。

     

 関係地方公共団体が、必要に応じて都市計画法による地区計画やまちづくり条例等を定めることにより、将来の土地利用計画を担保する手段を講じられるだけの時間的な猶予が確保されるべきである。

   


 「原則利用、計画的有効活用」の基本方針に基づき、留保地の活用を促進するためには、関係地方公共団体において、できるだけ早期に利用計画が策定されることが望ましく、利用計画の策定期間については、規模や立地条件に見合った合理的な期間を設定することが適当である。その際の合理的な期間としては、都市計画や公共事業の見直し期間などを勘案すると、 5年程度が妥当と考えられる。

 



 利用計画の策定に関する留意点
 利用計画の策定について、留意すべき点として、各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 利用計画の実効性を高めるため、いわゆるPFI方式の開発事業手法など民間の発想やノウハウを積極的に取り入れていくことが重要である。

     

 公園の代替地として利用することなども含め、地域にとって真に役立ち、かつ実効性のある利用計画を検討すべきである。

     

 民間が活用すれば、国にとっては時価での売却収入等が確保でき、地方公共団体にとっては不動産課税の税収が見込めるが、このようなことも考慮に入れて利用計画を策定すべきである。

   



関係地方公共団体に対する照会結果》

     

 利用計画については、策定後の事情の変化に応じて適宜見直しができるような、フレキシビリティをもたせることが必要である。

     

 関係地方公共団体への調査費助成やアドバイザー派遣など、国において、利用計画策定のための支援策が講じられるべきである。

     

 民間が利用する場合には、周辺地域の実情及び都市計画との整合性が図られることが重要である。

   


 利用計画の策定については、その実効性を高めるため、民間の発想やノウハウを活用した開発事業手法を積極的に取り入れることに留意して取り組む必要がある。

 また、関係地方公共団体において策定された利用計画については、策定後の情勢の変化等に応じて、機動的にその見直しを行うことができるよう仕組むことが適当である。


(2)


 関係地方公共団体に対する支援措置

 



 売却条件
 返還財産の売却条件(処分条件)については、「三分割答申」において、「その返還に当たり相当の移転経費を要しているものが大部分である。また、これらの移転経費は、米軍基地の全体的整理縮小に伴って必要とされるものであるから、返還財産全体に対応させて考えるべき」であり、「返還財産の処分に際しては、原則として有償処分とし、法令上優遇措置の認められる用途に充てる場合は、その優遇措置の適用限度について、すべての返還財産を通じ、統一を図ることとすべきである」とされた。この答申を踏まえ、昭和54年12月、全返還財産共通の売却条件が決定された。
 その後昭和58年3月、国の財政事情の悪化から、返還財産以外の国有地について、売却価格の時価に対する割合(時価率)が引き上げられた。

   

 (注

)例えば、公園に充てる場合には、対象面積の「2分の1時価売払い、2分の1無償貸付け」(時価率50%)の売却条件が「3分の2時価売払い、3分の1無償貸付け」(時価率66%)に変更された。

   

 留保地の売却条件については、「留保地答申」において、「現行の返還財産の処分条件設定時から諸事情が変化していること、及び、返還財産が所在する地方公共団体とそれ以外の地方公共団体とのバランス等を考慮して、その処分条件のあり方を検討する必要がある」とされたことを踏まえ、平成元年1月、留保地の時価率を一般の返還財産よりも高くする見直しが行われた。

 留保地の売却条件についての経緯は以上のとおりであるが、今後の売却条件について、各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 関係地方公共団体は留保地の活用の意向を持っているものの、いずれも財政事情が厳しいため、売却条件を緩和しないと現実的に対応できないと考えられる。

     

 留保地の利用を促進することに政策的な意義を見出すのであれば、売却条件を含めて支援措置を講ずる必要がある。

     

 留保地の利用を促進するということで留保の概念を取り払うのであれば、一般の返還財産の売却条件に戻すことが合理的である。

     

 留保地について特別な支援措置が講ぜられるのであれば、土地の付加価値を高めていくような利用を導く観点からも、売却に当たり環境アセスメントや景観などの条件を付加することが考えられる。

   



関係地方公共団体に対する照会結果》

     

 厳しい財政事情のもとで公用・公共用の利用を容易にするため、一般の返還財産の売却条件と同一とすること、あるいは譲与や無償貸付を含め大幅な条件緩和を図ることを要望する。

     

 旧軍港市転換法との均衡に配慮し、関係地方公共団体が公共用の用途に充てる場合には、無償譲渡とすることを要望する。

     

 売却条件等の支援措置を講ずることに伴い、関係地方公共団体に対し環境アセスメントなどの義務付けを条件とすることは新たな規制と同じであり、慎重な考慮が必要である。

   


 留保地の売却条件については、「原則利用、計画的有効活用」への方針転換に伴って、留保地と一般の返還財産との区別がなくなること、関係地方公共団体による利用計画の具体化を円滑なものとする必要があることから、一般の返還財産の売却条件にそろえることが適当である。
 なお、旧軍港市転換法に基づく普通財産である国有財産の譲与(無償譲渡)は、旧軍港市転換事業の用に供するために必要があると認める場合において、その事業の執行に要する費用を負担する公共団体に対して認められたものである。一方、返還財産は、米軍基地の整理縮小に移転経費を国が負担していることから、「三分割答申」において原則有償処分とされたものであり、旧軍港市転換法とは事情が異なるため、留保地を無償譲渡とすることは適当ではない。

 



 その他の措置

   


1


 関係地方公共団体による暫定的利用
 現在、留保地の管理の一類型として、緑地、広場等の公共的なオープンスペース、あるいは臨時的な駐車場や資材置き場等に使用する場合であれば、国は関係地方公共団体等の要望に応じ、管理委託や無償あるいは有償貸付けの手法で暫定的利用を認めている。
 新しい留保地の取扱いについての基本方針の下では、有効かつ計画的な活用を図るため、売却を行うことが原則であるが、関係地方公共団体の一部から、財政事情が厳しく留保地の購入が困難であるため、構造改革特別区域の規制の特例措置として、留保地の取得に代え有償貸付けを受けたい、あるいは中長期の管理委託を受けたいとの要望が出されている。
 暫定的利用についての各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、おおむね次のとおりであった。

 



各委員の意見》

   

 留保地を閉鎖的に留保しておくよりは積極的な利用を図るべきであり、公園に近い機能を持つものなどへの暫定的利用があってもよい。

   

 全体として利用促進という新しい発想に立つのであれば、特定の地域に限定して認めるのではなく、留保地にかかる共通の取扱いとすべきである。

 



関係地方公共団体に対する照会結果》

   

 利用計画が実現するまでの間、あるいは国が売却するまでの間、地方公共団体による暫定的利用が認められることを要望する。

 


 関係地方公共団体による暫定的利用については、暫定的なものとはいえ留保地を活用する意味はあることから、積極的に対応することが適当であるが、そのために、本格的な利用計画の策定がおろそかになったり、暫定的利用が恒常化することがあってはならない。
 このため、「原則利用、計画的有効活用」という基本方針の下、関係地方公共団体が実現可能な利用計画を策定した場合には、速やかに売却するという原則の例外として、その利用計画が実現するまでの間、暫定的利用を認めることが適当である。
 次に、利用計画が未策定の段階においても、速やかな売却促進の観点から、関係地方公共団体が自ら取得して活用する区域と民間による活用を推進する区域を画定した場合には、関係地方公共団体が自ら取得して活用する区域について、最長で利用計画の策定期間まで暫定的利用を認めることが適当である。また、利用計画が策定された段階で、その利用計画と整合が図られていれば、更に暫定的利用を認めても差し支えないと考える。


2


 都市基盤整備用地の先行的な処分
 都市基盤整備に関して、各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、次のとおりであった。

 



各委員の意見》

   

 大規模な留保地については、地方公共団体への支援策として都市基盤整備公団を活用することも考えられる。

 



関係地方公共団体に対する照会結果》

   

 比較的規模の大きい留保地について、利用の可能性の拡大や利用促進を図るため、道路、下水道等の都市基盤整備用地の先行処理を要望する。

 


 道路、下水道等の都市基盤整備用地の先行的な処分については、利用計画の策定や都市計画等の裏付けがある場合には、その利用計画の具体化を円滑なものとするため、これを認めていくことが適当である。


(3)


 民間に対する処分等

 



 民間に対する処分方法
 留保地の民間に対する処分方法について、各委員の意見及び関係地方公共団体に対する照会結果は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 地方公共団体に留保地を活用する意思がないのであれば、国が地方公共団体に代わって事業コンペの入札を実施し、地域にとって望ましい利用主体を選ぶという方法が考えられる。

     

 民間が開発するとしても、地方公共団体の行政システム(都市計画審議会、公聴会、許認可等)に従うことが要請されるため、乱開発等の事態に至ることはないと考えられる。

   



関係地方公共団体に対する照会結果》

     

 国と関係地方公共団体との事前の協議や地区計画の都市計画決定などにより、周辺地域の整備や土地利用計画との整合性が確保される必要がある。

     

 建設する施設に条件を付す入札とするなど、周辺のまちづくりとの整合性が図られるような処分方法を国が採用することを要望する。

     

 都市基盤が未整備の留保地を民間に処分する場合には、事前に国と関係地方公共団体による協議機関を設置して利用計画の具体化に取り組み、都市基盤整備や公共施設整備に係る地元負担が軽減されるように国等に要望する。

   


 民間に対する処分方法については、関係地方公共団体のまちづくり構想(街区条件、用途、景観等)や土地利用計画に沿った開発が行われることを確保する必要がある場合には、国と関係地方公共団体との間で協議を行い、土地利用の条件を設定した入札や提案方式による入札などの売却方法を採用することが適当である。
 なお、関係地方公共団体においては、民間による留保地の計画的な有効活用が図られるよう、市街化調整区域の市街化区域への編入や地区計画の都市計画決定、あるいは景観まちづくり条例等に基づく重点地区の指定に機動的に取り組む必要がある。

 



 事業用定期借地の設定
 関係地方公共団体の一部から、構造改革特別区域の規制の特例措置として、地域整備構想を進めるために民間のニーズが高い事業用定期借地を国が設定するという提案がなされている。これについて、各委員の意見は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 規模、立地条件によっては、土地利用の呼び水としての効果が期待できることから、地方公共団体の要望に応え、事業用定期借地を民間利用の一形態として導入し、その成果を見極めることが考えられる。

     

 経済情勢や周辺の開発動向を見ながら運用できること、また、用途について見直すこともできることから、フレキシビリティのある良い制度であり、導入に賛成である。

     

 大規模な留保地の複合開発を図る方法として一般定期借地の設定も考えられるが、それは開発を実施する事業者において設定の要否を決定する問題である。国の場合には、次の利用計画が固まるまでの暫定的な活用策として事業用定期借地の導入が想定される。

     

 暫定的利用と同様に、特定の地域に限定して取り扱うのではなく、留保地にかかる共通の取扱いとすべきである。

   


 事業用定期借地の設定については、速やかに売却するという原則の例外となることから、関係地方公共団体による利用計画の具体化を図るために必要かどうかを総合的に判断して認めることとし、当面、その導入を必要としている特定の関係地方公共団体と調整を図りつつ、契約方式等実施面の検討を行うことが適当である。


(4)


 国による暫定的利用の拡大
 暫定的利用のなかには、関係地方公共団体からの要望のほか、町内会や民間企業、特定非営利活動法人(NPO)等からの要望を受けて暫時国が有償貸付けや管理委託を行う場合も見受けられるが、極めて限定的である。
 留保地が利用されないことによって管理コストや逸失利益が発生していることに鑑み、国が主導的に、競争原理を働かせつつ留保地の有償貸付けを拡大していくことも考えられる。
 この国による暫定的利用を拡大することについて、各委員の意見は、おおむね次のとおりであった。

   



各委員の意見》

     

 国にも保有コストがかかっている上、得べかりし利益を放棄しているのは問題であるので、積極的に利用を図るべきである。

     

 暫定的利用については、民間が利用することも考えられる(地方公共団体においてアウトレットストアやショッピングセンターを事業用定期借地で利用させている事例がある。)。
 住宅展示場など一時使用のための借地権を設定することも考えられる。

     

 留保地の利用を促進するため、国においても暫定的利用に積極的に取り組むことが必要である。

   


 国による暫定的利用については、国はこれまでいわば受動的に利用要望に応えてきたが、今後は留保地の効率的、収益的な管理を図るため、規模、立地条件や関係地方公共団体による利用計画の策定状況等を勘案しつつ、地域住民の福祉の向上、利便性の増進等にも配慮し、前述の事業用定期借地を含めた有償貸付け、あるいは管理委託等を活用して、速やかな売却の支障とならない範囲内で、これに積極的に取り組むことが適当である。



第4



 おわりに

 当審議会は、今回、留保地の今後の取扱いについての答申書をとりまとめ、これまでの「原則留保、例外公用・公共用利用」の基本的考え方を、「原則利用、計画的有効活用」の基本方針に転換し、新しい発想の下で地域の実情に則した計画的な有効活用の促進を図るとともに、留保地の活用に向けた具体策として、利用計画の策定、関係地方公共団体に対する支援措置、民間に対する処分等及び国による暫定的利用の拡大について提言を行った。
 今後、本答申に基づき、国と関係地方公共団体が、それぞれの責任の下で、民間の発想をも活用しながら、留保地の利用計画の策定及びその具体化に真摯に取り組み、都市部に残された最後の広大な留保地を我が国の構造改革に資する都市再生、経済活性化等の起爆剤として、有効に活用することを期待するものである。
   


[続きがあります]

 

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