このページの本文へ移動

財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会(令和2年12月2日開催)議事録

第30回
財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会議事録

令和2年12月2日(水)
於:財務省本庁舎4階国際会議室


午後1時27分開会
〔 川北分科会長 〕 ただいまから財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会を開催いたします。
 皆様には、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日の分科会は、対面とウェブの両立ての開催となっており、希望いただいた委員の皆様にはテレビ会議システムを通じて御参加いただいております。
 本日は、国家公務員共済組合連合会(KKR)より、令和元年度の年金積立金運用に関する業務概況書につきまして説明をいただいた後、事務局より令和元年度の厚生年金積立金の管理運用状況に対する評価についてと、年金積立金運用におけるESG投資の推進について説明をいただき、その上で、国家公務員共済組合連合会より、KKRにおけるESGに関する取組について御説明をいただきたいと思います。
 議事に移ります前に、この夏、主計局の異動がございましたので、事務局から御紹介いただきたいと思います。

〔 高田給与共済課長 〕 給与共済課長の高田でございます。
 委員の皆様方におかれましては、大変御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、改めて事務局を紹介させていただきます。
 給与共済課担当の主計局次長、青木でございます。

〔 青木主計局次長 〕 青木でございます。
 7月から、この伝統ある国家公務員共済組合制度に携わることになりました。大変光栄に思っております。
 先生方におかれましては、今日、御出席の方、また、ウェブを通じてということですけども、平素より大変様々な面で御指導賜りまして、心より御礼を申し上げますとともに、本日は大変御多忙中お時間を割いていただきましたことに対しまして、重ねて御礼申し上げます。
 本日、これから御意見を賜ります年金積立金の運用状況に対する評価報告書(案)に加えまして、政府としても骨太方針等で推進するという方針を出しておりますESG投資について、国家公務員共済組合連合会から取組状況について御説明をいただくことになっておりますので、こちらについても忌憚のない御意見を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 すみません、予算編成の大詰めで、この後、中座させていただきますけれども、何とぞよろしくお願いいたします。

〔 高田給与共済課長 〕 続きまして、共済調査官の大石でございます。

〔 大石共済調査官 〕 大石です。よろしくお願いいたします。

〔 高田給与共済課長 〕 共済計理官の西尾でございます。

〔 西尾共済計理官 〕 西尾でございます。よろしくお願いいたします。

〔 高田給与共済課長 〕 また、本日は、国家公務員共済組合連合会から、菊地専務理事、水村資金運用部長、宮島運用リスク管理室長にお越しいただいております。

〔 菊地専務理事 〕 どうぞよろしくお願いいたします。

〔 高田給与共済課長 〕 なお、本日の資料1、資料2、及び参考資料5につきましては、現時点で未公開のデータが使用されておりますことから、議論の内容で市場に影響を及ぼすおそれのあるものもございますので、議事要旨、議事録と併せ、評価結果の公表日まで非公開とすることを提案させていただきたいと思います。また、配付した資料1、資料2、及び参考資料5につきましては、12月下旬に予定しております公表日まで取扱いに注意していただきたいと思います。

〔 川北分科会長 〕 事務局より、資料の一部と議事要旨、議事録について、評価結果の公表日まで非公開とするという提案がありました。この点につきまして、皆様、御異議等ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)


〔 川北分科会長 〕 御異議なしということですので、そのようにさせていただきます。
 それでは、議事に入ります。
 初めに、国家公務員共済組合連合会より、1つ目の議題であります令和元年度の年金積立金運用に関する業務概況書について、説明をお願いいたします。

〔 水村資金運用部長 〕 それでは、資料1に基づきまして、令和元年度の業務概況の御説明をさせていただきます。
 資料1は、概要版と表紙に書いてあるかと存じますけれども、全体版は参考資料1、2、3に含まれております。また、こちらの参考資料は、去る7月3日に連合会のウェブサイトで公表済みの内容でございます。
 それでは、資料1の目次を飛ばしていただきまして、3ページ目までお進みいただけますでしょうか。3ページ目には、1.といたしまして市場環境をまとめたページがございます。上にグラフが1つございますけれども、こちらは私どもが運用する際に参照しておりますベンチマークインデックスの令和元年度1年間の推移でございます。一番左側が昨年度末、ここを100といたしまして、その後、4つの資産クラスについて指標化したものをグラフとして表しているものでございます。なお、外貨建ての資産に関しましては、円建てのものと、現地通貨建てのものと両方を記しておりますので、線が6本走っている状況になっております。
 一番右側を御覧いただきますと、緑と青い線が2月、3月と急激に下がっていますけれども、これが内外の株価の移動でございます。説明が不要であるくらいのことではございますけれども、新型コロナが今年の1月から2月、3月と急激に株価に影響を与えたということでございます。日本の年度は3月末で切れましたので、残念ながら昨年度はこのような状況のまま終わったというのが市場の状況でございます。
 数字で確認させていただきます。左下に、ベンチマーク収益率の表がございます。上から、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式と、4つの資産クラスについて数字でまとめておりますが、一番右側の列を御覧ください。通期で数字をまとめてございます。国内債券、NOMURA-BPIはマイナス0.18%の利回りでございました。国内株式、TOPIXでございますけれども、こちらはマイナス9.50%、外国債券、FTSE WGBIでございますけれども、こちらは4.37%、1つ飛んで外国株式、MSCI KOKUSAIはマイナス12.42%というリターンでございました。先ほども少し触れましたとおり、株式については非常に大きなマイナスで令和元年度が終わったということでございます。また、外国債券に関しましては、期中で円高が進みました関係で、現地通貨ベースのリターンに比べても、さらに厳しいリターンになったということでございます。
 4ページ目にお移りいただきますと、私ども連合会の厚生年金に係る令和元年度の運用状況をまとめたページがございます。
 上に表がございますけれども、一番右側の列を御覧いただきますと、令和元年度の最終の着地の数字がございます。資産運用額は、期末で6兆5,156億円でございました。前の年度の最後が一番左側にございますけれども、6兆9,516億円でございました。この間、投資行動といたしましては、資金を財投預託の償還金から、基本ポートフォリオのアンダーウエイトになっている資産に移し替えることで、基本ポートフォリオへのキャッチアップを図ってまいりましたが、利回りといたしましては、先ほどの株価の大きなマイナスを映じまして、マイナス4.05%という結果に終わっているところでございます。
 なお、この表の一番下の行に、参考といたしまして実現収益率が掲示してございます。令和元年度は、通期で2.51%の実現収益率を得ているところでございますが、平成30年度は2.97%でございましたので、実現収益という意味では、前年度には到達できませんけれども、ほぼ近しいリターンを得ているということを付言させていただきます。
 令和元年度は、このような結果に終わったわけでございますけれども、今年度、令和2年度に入ってからの上半期の結果につきましては、参考資料4の中でまとめさせていただいておるところでございます。そちらの資料には移りませんけれども、結論だけ申し上げますと、利回りといたしましては全体で11.02%、総合収益額という意味では7,053億円の総合収益額を獲得しているというのが半期の状況でございます。株価は、新しい年度に入りましてから急激に戻しているところでございまして、残念ながら年度末で切ると非常に厳しい結果ではございましたが、その後、急激に戻しているということを付け加えさせていただきます。
 4ページ目の左下に、ポートフォリオの構成を示している表がございます。令和元年度末で、構成割合は、国内債券38.32%、国内株式22.33%、外国債券12.09%、外国株式22.24%、これ以外に短期資産が5.01%ございました。昨年度末までの基本ポートフォリオは、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%でございましたので、国内債券はオーバーウエイトでございましたが、それ以外の資産クラスについてはアンダーウエイトであったという状況でございます。なお、今年度、4月1日以降は、4つの資産クラスで全て25%という新しい基本ポートフォリオに変わっていることを付け加えさせていただきます。
 次のページにお移りいただきまして、5ページ目でございます。私どもが自主運用を開始いたしました平成13年度から令和元年度までの状況について、グラフに表しているものでございます。赤い線が時価利回りでございまして、一番右側の部分を御覧いただきますと、マイナス4.05%ということで先ほど御報告した数字になっており、これは過去から見ても一番大きいマイナス幅だったところでございます。また、緑の線では簿価利回りを載せてさせておりますけれども、実現収益率については着実に獲得しているところを確認いただければと思います。
 6ページ目に移っていただきまして、こちらのページでは、年金財政上求められる運用利回りとの比較をすることによって、私どもの運営がどのようになっていたのかを確認するページでございます。先ほど来、マイナス4.05という数字を申し上げておりますけれども、これは絶対的な利回りということでございまして、年金財政上求められる運用利回りとの比較、つまり相対的な利回りを確認することも運営上は非常に大事なことだと認識しております。
 6ページ目の表は、大きく横方向に3つのブロックに分かれております。一番左、表頭に実績①とございますけれども、こちらが実績の部分でございます。真ん中の部分は、財政計算上の前提②ということでございまして、一番右側のブロックが両方の差を取ったものとなっております。
 実績①のブロックの一番左側に令和元年度の数字がございまして、時価利回りはマイナス4.05%になっておりますが、令和元年度は名目賃金上昇率が0.60%でございましたので、名目賃金上昇率との比較におきまして、実質的な運用利回りはマイナス4.62%ということになっております。
 このとき、財政計算上の前提はどうなっていたのかというのが、真ん中のブロックの令和元年度の一番下の行の部分でございますけども、0.60%ということでございました。つまり、財政計算上は、令和元年度において0.60%の実質的な利回りを確保するようにという前提があったわけでございますけれども、残念ながらこれには遠く及ばないものだったということで、令和元年度はマイナス5.22%の未達ということになっておるわけでございます。
 しかしながら、マイナス5.22%の右隣に数字が3つ並んでいるかと思いますけれども、令和元年度までの5年平均、10年平均、15年平均のリターンを見てみますと、それぞれプラス1.58pt、プラス2.94pt、プラス2.70ptということでございまして、長期的に見れば、財政計算上、要求されるリターンは獲得してきているということが、右下の部分から確認できるかと存じます。
 次のページにお進みいただきまして、7ページ目でございます。改めましてパフォーマンスの確認ですけれども、ここは複合ベンチマーク収益率との比較を行っている部分でございます。
 左下に、令和元年度の数表がございますけれども、4つの資産クラスにおいて、基本ポートフォリオの構成割合と、そのベンチマーク収益率がございます。これを加重平均いたしますとマイナス4.23%、基本ポートフォリオを持っていればこのリターンが得られたということでございますけれども、実績収益率はマイナス4.05%でございまして、ここでは複合ベンチマーク収益率を18ベーシス上回ったということでございます。
 この要因につきましては、右側にありますとおり、資産配分要因①の列を御覧いただきますと、一番下の行が0.16%でございますので、ほとんどがこの資産要因から出ているということでございます。中でも、上のほうに遡っていただきますと、国内債券が0.20%でございまして、この国内債券のウエイト部分の影響が大きく出ているということでございます。ただ、通常、このような要因分解をする際、プラスのリターンが出ているときには意味があるものとなりますけれども、昨年度は複合ベンチマークも大きなマイナスだったということで、ここの部分についてはあくまでも参考と御認識いただければと思います。
 以上が、厚生年金の運用状況でございます。
 それでは、ページを先に進んでいただきまして、9ページ目を御覧いただけますでしょうか。このページからは、新3階の運用状況を御説明するものとなります。
 上に表がございますけれども、一番右側の列を御覧いただければと思います。令和元年度の運用資産額は、最終的に4,944億円ということになりました。平成30年度末は3,825億円でございましたので、この間、金額としては1,100億円ほど増えているということでございます。新3階は、時価会計ではなく簿価会計でございますので、1,100億円はそのまま保険料収入が積み上がったということでございます。新3階の給付は、金額的にはまだ非常に少ないということでございますので、増えている部分はほとんどが保険料収入の追加ということでございます。
 ここから得れられたリターンが次の行にございますが、実現収益率は1.61%でございました。国内債券100%で運用して1.61%ということでございますので、直感的にはかなり高いということでございますけれども、これは、国内債券の中に財投預託金のほか共済独自資産を抱えているためで、利回りは好調な状況になっているということでございます。
 10ページ目にお移りいただきますと、先ほど厚生年金でも見ていただきました、年金財政上求められる利回りとの比較がございます。左側の列に令和元年度の実績がございますが、実現収益率は今、御報告をいたしました1.61%、これに対して予定利率ないし基準利率はそれぞれ0.20%、0.06%と非常に小さなハードルでございましたので、この差を取りますと、1%を優に超えるようなアウトパフォームであったということでございます。また、右側には4.5年平均の数字も載せておりますけれども、こちらも十分な余裕を持って運営されているということを御確認いただければと思います。
 以上が新3階でございます。
 12ページ目にお進みいただきますと、今度は旧3階が出てまいります。旧3階は閉鎖年金でございますので、早期に積立金の規模が縮小するという特性に応じた運用をしているところでございます。保険料収入は、もう既にないということでございます。上の表の一番右側の列を御覧いただきますと、令和元年度末の運用資産額は3,921億円でございます。その1年前は5,380億円でございましたので、この1年間に1,400億円余り減少ということになっております。また、この1年間の運用の収益率は0.79%でございました。先ほどの新3階と比べても非常に低い利回りでございますけれども、これは先ほど申し上げましたとおり、この年金の現在のフェーズを映じまして、流動性の確保が第一であることから短期資産を非常に多めに持っているということで、利回りが低くなっている部分もあるということを御理解いただければと思います。
 おめくりいただきますと、先ほど来説明しております、年金財政上求められる運用利回りとの比較のページが出てまいります。運用利回りは、令和元年度は0.79%であったのに対して、目標運用利回りは3.55%と設定されておりましたので、非常に大きなマイナスになっております。また、直近4年半の数字で比べましてもマイナスになっているということでございまして、利回りとしては非常に厳しい状況になっていると認識しておりますけれども、一番右側の列、累積収益額で見るとプラスを確保しているということでございます。
 ただ、いずれにしましても、旧3階の年金については、もはや利回り向上は実質的に不可能なフェーズに入っていると認識しておりますので、何よりも流動性の確保を最優先して、今後も運営に努めてまいりたいと存じます。
 以上、運用の概況でございました。

〔 宮島運用リスク管理室長 〕 続きまして、15ページ、16ページで、運用リスク管理の状況を御説明申し上げます。
 まず、15ページでございます。資産運用事業全体のガバナンスと、リスク管理の体制でございます。
 図の上のほうに、運営審議会、財務大臣とございます。運営審議会は、国共済法で設置が定められておりまして、労使同数で構成されており、毎年度の事業計画、決算及び重要事項について、運営審議会の議を経た上で、財務大臣の認可、承認を受け、事業を行っているということでございます。
 また、右側にございます資産運用委員会でございますけれども、資産運用に関する有識者で構成されており、現在は7名の委員の皆様に、高度な御知見による意見、助言をいただきまして、運用を行っております。運用の専門分野につきましては、この委員会でチェックを受けているということでございます。
 そして、連合会内部では、図の中央にございます運用リスク管理委員会を四半期ごと、その下の運用リスク検討会議を毎月実施し、継続的に運用リスクに関するモニタリングを実施しているということでございます。
 次の16ページは、その具体的な内容でございます。
 左側のリスク管理の項目を運用リスク管理要領として定め、確認を行っております。令和元年度につきましては、コロナショックにより3月は内外株式市場が大きく変動いたしましたけれども、年度を通じては全ての項目において丸印であり、適切、あるいは許容範囲内という状況でございました。なお、本年4月からは、基本ポートフォリオの見直しを行いましたことから、新たな基本ポートフォリオの策定前提の確認、及びその乖離状況を中心にモニタリングを行っていくとともに、引き続き適切なリスク管理に努めてまいりたいと考えてございます。
 リスク管理については以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 続きまして、事務局より、2つ目の議題であります令和元年度の厚生年金積立金の管理運用状況に対する評価についてと、3つ目の議題であります年金積立金運用におけるESG投資の推進について、続けて説明をお願いしたいと思います。

〔 高田給与共済課長 〕 給与共済課長の高田でございます。
 ただいまKKRのほうから御報告のありました令和元年度の運用状況に対する財務省としての評価につきまして、資料2で説明をさせていただきます。ポイントのみ説明させていただきます。
 1ページ目は、今のKKRの説明をなぞっておりますけれども、元年度の収益率がマイナス4.05%であったということであります。
 2ページ目です。こちらも、今、説明がありましたように、令和元年度の実質的な運用利回りがマイナス4.62%ということで、財政計算上の前提である0.6%を下回っておるということです。ただ、この表の下段にもありますように、例えば過去10年平均で見れば財政検証の前提を上回っているということであります。いずれにしましても、今後、財政検証の前提を踏まえつつ、引き続き注視していくことが必要と考えております。
 続きまして、3ページ目です。表の上から3行目にありますように、令和元年度までの基本ポートフォリオはこのような数値となっておりまして、それぞれのアセットクラスの構成割合は、基本ポートフォリオの中心値からおおむねプラスマイナス3%程度の乖離に収まっておりますので、基本ポートフォリオに沿った運用がされたものと評価できます。
 4ページ目であります。先ほどKKRのほうから、複合ベンチマークと比べて超過収益であったという説明がありましたけれども、個別のアセットクラスに関して見ましても、それぞれベンチマークに対してプラスの収益を確保しておるということで、全体としては収益の確保がなされたものと評価できるかと思います。
 最後、5ページ目、今後の課題であります。こちらにつきましては、ESGに関する項目がございますので、ESGについての説明が終わった後に、またこちらに戻ってきたいと思います。
 続きまして、ESG投資に関しまして、資料3で説明をさせていただきます。
 ちょっと個人的なことになりますが、私、2015年から2018年まで3年間、パリのOECDという国際機関に出向しておりまして、そちらでグリーンファイナンス、環境金融について担当しておりました。したがいまして、こうしたESG投資というテーマはまさに携わってきたわけでございまして、関心もございます。しかしながら、そうした私の個人的な関心をさておいても、今、取り組まなければならない状況になっているということをこれから御説明させていただきます。
 おめくりいただきまして、2ページです。ESG投資とは、御案内のところかと思いますが、非財務的な要素であるESG、E=Environment(環境)、S=Social(社会)、G=Governance(ガバナンス)を考慮する投資を言います。
 3ページです。その中でも、ESGのE(環境)ですが、なかんずく気候変動などについては、環境問題を超えて金融市場のリスクになっているという認識が、近年、高まっております。
 ボックスの中を御覧いただきたいんですけれども、2015年は、国連でSDGsが採択され、また、パリでCOP21が開催をされ、パリ協定が合意された年でありました。この年の9月に、マーク・カーニー・イングランド銀行総裁、FSB(Financial Stability Board・金融安定理事会)の議長が、ロンドンでの金融機関向けの講演において、気候変動が金融市場にもたらすリスクについて強調いたしました。
 その年の暮れに、FSBがTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures・気候関連財務情報開示タスクフォース)を設置しまして、その最終報告が2017年に出ております。
 翌年、2016年には、G20におきまして、当時の議長国であった中国が財務トラックにグリーンファイナンス・スタディーグループを設置しました。これがG20の財務トラックにできましたので、G20各国の財務省や中央銀行がその議論に関与することとなったわけでございます。
 また、その年の暮れ、ポーランドが初めて国債でグリーンボンドを発行いたしました。翌月にフランス、その後、十数か国が追随しておりまして、直近ではドイツもグリーン国債を発行しております。
 2017年12月には、NGFS(Network for Greening the Financial System・気候変動に対する中央銀行・金融規制当局のネットワーク)が発足しておりまして、日本の金融庁、日銀も加盟しております。
 一番下に参りまして、2019年4月には、気候変動に対する各国の財務大臣連合も発足しております。
 これらが物語りますのは、今や気候変動問題というのは環境問題として、例えば環境省のみが対処する枠組みを超えておりまして、まさに金融問題、経済問題として各国の財務省、金融当局、あるいは中央銀行が正面から対処すべき問題になっているということでございます。
 次の4ページであります。他方で、こうした気候変動への対応は収益機会をもたらすものでもあります。左側ですけれども、パリ協定の目標を達成するためには、今後、世界で非常に多額のインフラ投資が必要になりますので、需要が創出をされるということであります。そうした投資をファイナンスするために発行されるグリーンボンドも、右側のグラフでありますけれども、発行額が拡大しているところであります。
 5ページです。ESGのS、社会要素につきましても、例えば人権でありますとか、ダイバーシティーは、リスク、収益機会、双方から重要であるとの認識が定着してきているところであります。
 同様に、6ページ、ガバナンスが投資パフォーマンスに影響するということは、以前から論じられているところであります。
 7ページです。こうしたESG要素に着目した様々な投資手法が市場で開発され、また、用いられているところでございます。
 8ページです。ESG投資は、世界でも、また、日本でも規模が拡大しております。特に、日本における規模の拡大は非常に早いペースとなっておりますが、世界に占める割合で見ますと、日本の経済規模からすれば総体的にまだ低い規模にとどまっています。ただ、それは逆に、日本の市場の伸びしろが大きいということを示すものでもあります。
 10ページです。ESG投資は、金融的リターン追求の手段であるとの認識が広がってきております。と申しますのは、以前、ESG投資について慎重な見方もありました。年金基金のような機関投資家の任務というのは、受益者のためにあくまでも金融的なリターンを確保していくことにある。したがって、それ以外の要素を考慮することは適切でないといった議論もありました。しかしながら、近年では、むしろ機関投資家がそうした金融的リターンを追求するという目的を果たすためにこそ、ESG投資が重要であるという認識が広がってきております。
 左側にありますけれども、例えばGPIFはユニバーサルオーナーという考え方を打ち出しております。GPIFは、市場全体に投資をしているようなものですけれども、そうしますと、市場全体、あるいは経済全体が成長していくことで受益者に、ほぼ日本国民全員に相当するわけですが、裨益するという考え方であります。
 また、右側にありますように、まさにESGというのは機関投資家にとって決して他事考慮ではなくて、むしろ受託者責任の一環であるという認識が、近年では主流となってきているところであります。
 11ページです。ESG投資が、実際にリスクの軽減、あるいはリターンの改善に寄与し得るというような研究、分析は、昨今、世界で多数出ているところであります。
 その一例でありますけれども、左側のグラフは近年のヨーロッパの株式市場です。グリーンのラインがESGのインデックスで、オレンジがベンチマークですけれども、グリーンのESGが上回る収益を上げているということであります。
 真ん中のグラフは、最近のOECDのレポートから取ったものであります。これは、今年1月以降、すなわちコロナ禍における株式市場の動向でありまして、下のほうの水平の黒いラインがベンチマークであります。折れ線のESGのインデックスは、その上に位置しています。したがって、世界全体で株式市場が下落する中、ESG銘柄については総体的に下げ幅が少なかった、すなわちダウンサイドリスクを軽減できる可能性があるのではないかということも指摘されております。
 右側のグラフですけれども、こちらも近年のヨーロッパの株式市場であります。水色の菱形がESGのインデックス、紫の菱形がベンチマークでありますけれども、リスク調整後のリターンにおいて水色が上に来ている、すなわちリスク調整後のリターンが改善されている可能性があるということであります。
 ただ、あくまでもESG投資というのは、将来に向かって中長期的にリスクを軽減し、また、リターンを確保していくことを主眼とするものでありますから、過去の一時点におけるパフォーマンスのよしあしに、過度にとらわれるべきではないというのが大前提であります。また、当然ながら、今後、ESG投資が超過収益を獲得できていく、あるいは有利になるということはもちろん誰も証明はできないわけでありますけれども、他方で、ESGをやることが不利であるという証明もまた誰もしていない、できないわけであります。少なくとも、ESGを全く考慮しないということは、むしろ将来に向けて非常にリスクの高いことではないかという認識が広まってきているということは言えると考えております。
 12ページであります。KKRを巡りまして、今年、変化がございました。それは、GPIF、KKR、地共済、私学共済の4つの厚生年金基金に共通して適用されます積立金基本指針という告示がありますけれども、それが本年2月に改正されまして、ESG投資に関する記述が強化されました。
 具体的には、下の赤字の部分でありますけれども、「投資先及び市場全体の持続的成長が運用資産の長期的な投資収益の拡大に必要であるとの考え方を踏まえ、被保険者の利益のために長期的な収益を確保する観点から」ESGを行うという考え方が明記されました。また、改正前は、ESGは「個別に検討すること」にとどまっておりましたけれども、この改正によって、「検討した上で必要な取組を行うこと」と明記されました。この基本指針は、当然、KKRにも適用されるものでありますので、こうした改正を受けて、KKRとしても一層ESGに取り組む状況になってきているということであります。
 13ページです。金融庁が出しております日本版スチュワードシップ・コード、従前よりKKRも受入れをしているものでありますが、こちらも本年3月に再改訂がありました。スチュワードシップ・コードには、以前からESGは盛り込まれておりましたけれども、今回の再改訂はさらにESGが前面に出てきた内容となっておりまして、まさにスチュワードシップ責任の定義の中に中核的に盛り込まれています。また、このページの一番下の行でありますけれども、こうしたスチュワードシップ活動に伴うコストは投資に必要なコストであるという意識を持つべきである、といったことも明記されているところであります。KKRにおきましても、再改訂版のスチュワードシップ・コードを受け入れることを本年9月に正式に表明されております。
 14ページです。KKRは委託運用が一般的であるわけですけれども、同様に委託運用が一般的である企業年金基金についても、その運用機関がESG投資を行うことを評価項目にすることが是認されているところであります。
 15ページです。労働団体、労働組合は、KKRにとって重要なステークホルダーの一つであります。今回、この準備に当たりまして、連合からも我々は話を伺っておりますが、連合としてもワーカーズキャピタルという概念を提唱して、以前からESGを推奨されております。
 左側のボックスの上から2番目の○にありますように、こうした責任投資を進めることが、ひいては最終受益者である労働者に中長期的に安定した収益を確保することにつながり得るという考え方でありまして、その下にありますように、共済年金の運営審議会等の場を通じてそれを推進していくことを呼びかけております。右側の上から2番目でありますけれども、例えば地共済においては自治労等の活動もありまして、かなり以前から、2010年からESG投資を明示的に行っているということでございます。
 続きまして、17ページです。この図におきまして、KKRは左側にある投資家(アセットオーナー)に相当しております。その背後には受益者がありまして、KKRの場合には国家公務員及びその被扶養者ということになります。その利益を代表しまして、主には運用会社を通じた委託運用をしております。委託を受けた運用会社は、投資先企業に投資するに際して、ESGの考え方を及ぼして銘柄を選定する、あるいは株式を所有すれば、その議決権の行使や企業との対話においてESGを考慮して行っております。
 18ページです。そうしたESG活動の実効性を高めるための一つの手段として、例えば責任投資原則(PRI・Principles for Responsible Investment)に署名をすることが考えられるのではないか。
 19ページです。同様に、先ほども言及いたしました気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同することが考えられるのはないか。
 20ページです。実際に、多くの機関がPRIやTCFDに賛同しているところであります。PRIにつきましては、左側になりますけれども、日本で87機関、うちアセットオーナー23機関が、11月時点で署名をしております。アセットオーナーの例としましては、GPIFが最たるものでありますし、幾つかの年金基金、また、生命保険会社に関しては大手は軒並み署名をしております。企業年金連合会も署名をしております。運用機関につきましては、今、大手はほぼ全て署名をしている状況であります。
 右側、TCFDの賛同機関ですけれども、日本では300を超える機関が賛同を表明しておりまして、賛同機関数で言えば日本は世界一であります。非金融企業も多くありますけれども、金融関係でもGPIFや保険会社、あるいは大手銀行グループ、証券会社など軒並み賛同しているところであります。
 22ページです。日本政府としましても、公式にESG投資の推進を表明しております。冒頭、青木次長からもありましたけれども、累次の骨太方針の中にも明記されておりますし、また、成長戦略においても同様であります。
 23ページ、これは政府首脳の発言にも表れております。左側、10月に環境省が開催しましたESG金融ハイレベルパネルという会議ですけれども、ここで小泉環境大臣はアセットオーナーの役割が非常に重要であるということを明言しておられます。真ん中、10月に開催をされたTCFDサミットにおいて、菅内閣総理大臣は日本政府がTCFDを支援していくということを明言しております。右側、これは2015年のものになりますけれども、SDGsを採択した2015年9月の国連サミットで、当時の安倍総理大臣はGPIFが責任投資原則(PRI)に署名したことを紹介されました。わざわざ国連サミットの場で総理が言及するぐらい、これは世界的にインパクトのある出来事であったということであります。
 24ページです。関係各省も、ESGを推進しております。近年では、環境省が金融セクターへのコミットを非常に強めてきており、これは一つの変化の表れであろうかと思います。
 25ページですけれども、金融庁も様々な活動をしております。先ほど申し上げましたNGFS(Network for Greening the Financial System)に金融庁も加盟しておりますし、昨年11月には日本銀行も加盟をしております。
 26ページ、経済産業省も産業所管省として、環境省、金融庁と協力してTCFDコンソーシアムを結成し、その推進を図っております。この3省庁がこうした分野で手を携えて協力している、そうしたことも近年の大きな変化だと思います。
 28ページ、アセットオーナーの状況であります。GPIFは、ESG投資について様々な取組を実施しておりまして、世界ではこの分野のリーダーとも目されております。例を挙げますと、まず一番上の○ですが、ESG指数、ESGインデックスを選定いたしまして、それを用いたESGパッシブ運用を行っております。あるいは、下から2番目の○ですけれども、グリーンボンドに関しまして、世界銀行グループといった国際機関の発行体に働きかけて、運用を委託する運用会社がこうしたものを購入できる投資機会を提供するといった取組も行っているところであります。
 29ページ、民間のアセットオーナーとしては生命保険会社がありますけれども、大手は軒並みESGに取り組んでおります。代表的なところとして、日本生命や第一生命は保有する全資産についてESGの対象としていくということを表明しております。
 30ページ、企業年金連合会もPRIに署名をしておりますし、様々な取組を行っております。
 31ページ、32ページは、欧米の主な公的年金基金の例を挙げております。アメリカのCalPERSなどが代表的でありますけれども、公的年金基金が率先してこの分野を引っ張ってきているという経緯もございます。
 最後、33ページでございます。内外におけるこうした状況を踏まえまして、私どもとしましても、KKRに対してESG投資の一層の推進について検討をお願いしているところであります。それと並行しまして、KKRと地共済、私学共済の3共済の合同勉強会も、10月に2回開催しております。1回目は、GPIFをお招きしまして、その先行的な取組について学ぶ機会を設けました。2回目は、環境省、金融庁、経産省をお招きいたしまして、3共済、また、それぞれの所管官庁が合同で意見交換を行うという取組を行っております。こうした形で、公的年金運用主体が横に連携をして、ESGに取り組んでいくといった体制もできつつあるところであります。
 私からの説明は以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 続きまして、国家公務員共済組合連合会より、4つ目の議題でありますKKRにおけるESGに関する取組みについて、説明をお願いいたします。

〔 水村資金運用部長 〕 それでは、今、給与共済課長のほうから御説明がありましたESGに関して、連合会がどのように取り組んでいるのか、あるいは取り組んでいこうとしているのかということについて、資料4-1で御説明させていただきます。また、スチュワードシップに関しましても、ESGとスチュワードシップは車の両輪だと認識しておりますので、続けて御説明をさせていただきます。
 2ページ目に目次がございます。1.2.3.4.と4行ございますけれども、1番目はESGを考慮する投資に関する考え方を整理して、一度、御説明をさせていただこうと思います。2番目には、ESGの投資に際してのアプローチを整理して提示いたします。そのアプローチに関して、これまでの連合会の取組を3番目で、これからの取組について4番目で御説明をするというように進んでまいりたいと思います。
 先ほど高田課長からの説明にもありましたとおり、最近は一般的にESG投資と言われているところでございますけれども、私どものこの資料の中では、ESG投資は「ESG要素を考慮する投資」という形で整理をさせていただいておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、3ページ目を御覧ください。連合会にとってのESGを考慮する投資に関する考え方がございます。上の箱の中は、運用の目的と目標を整理しておりますので、ここはまだ直接ESGには関係ない部分でございますけれども、被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたって、厚生年金保険事業の運営の安定に資することということが目的でございます。また、目標といたしましては、次の■でございますけれども、原則として各年度における各資産のベンチマーク収益率を確保するよう努めるということになるわけでございます。これは、3つ目の■にありますとおり、全ての投資活動における前提だと認識しております。したがいまして、先ほど申し上げましたESGを考慮する投資もこの中に含まれるという認識でございます。
 そのESGを考慮する投資については、四角い箱の下に3つにまとめて書いてございます。1つ目にありますとおり、投資銘柄の将来性や信用力の分析において、ESGといった非財務情報を用いるということは、長期的なリターンの追求を目指すものでありますから、これは極めて当然のことだと認識しているということを、まず申し上げたいと思います。
 また、EとSとGに関してですけれども、2つの行に分かれておりますが、まず1行目、投資先が持続的に発展していくためには適切なEやSの対応をしていく、これが必要だろうと認識しています。そして、次の行ですけれども、その対応能力を有しているのかどうか、持続的な発展の成否はマネジメントの根幹と言えるガバナンスにかかっているだろうと整理いたしまして、ESGの重要性を認識しているところでございます。
 一番最後の矢印でございますが、このような考え方の下で、リターンの獲得とリスクの低減、この両面からESG要素を考慮するということでございまして、これはまさしく受託者責任に直結するものだと認識しているところでございます。
 おめくりいただきまして、ESGを考慮する投資に関するアプローチを整理させていただいております。大きく3つのブロックに分かれておりますけれども、一番上のブロックは株式、エクイティー投資でございます。連合会の場合、エクイティーの投資は全て委託運用ということになっておりますけれども、①と②があると認識しています。1つは、アクティブ運用の部分でございます。運用の戦略に応じて、各ファンドマネジャーがESG要素を考慮して投資銘柄を選定していく伝統的なアクティブ運用でございます。②はESGインデックスに対するパッシブ運用でございます。ESGインデックスをベンチマークとして、これに追随運用していくようなものが挙げられるだろうと思います。
 その次のブロックは、アセットクラスとしては債券ということになります。ボンドの投資については、連合会は委託運用している部分と、自家運用している部分がございます。これについてはESGボンド投資というものが出てくるわけですが、2つの考え方があろうかと考えております。1つ目は、最近、脚光を浴びている部分と認識しておりますけれども、資金使途をESG分野に限定した債券、グリーンボンドでありますとか、サステナブルボンドでありますとか、いろいろなラベリングがされていると認識しておりますけれども、こうしたものの購入があるだろうと思います。それから、これはそこまで一般的ではないかもしれませんけれども、発行体の信用力の分析にESGの観点を取り入れて投資する銘柄を選定していくという考え方でございます。これは、先ほどのアクティブ投資で申し上げました株式と全く同じ考え方だと思いますけれども、こうしたものもESG債券の投資にカテゴライズできるものだろうと認識しております。
 ブロック3つ目は、今、申し上げました2つの投資行動ではなくて、推進活動として2つ挙げられるだろうと整理いたしました。これは、先ほど給与共済課長のほうから御指摘のありました2つであります。1つは、④TCFDへの賛同ということで、情報開示を積極的に促していく活動への参画ということになろうかと思います。それから、⑤とありますけれども、PRIへの署名、これは投資の意思決定プロセスに対してESGの観点を組み込んでいくことを推進していく行動だと整理いたしました。
 5ページ目を御覧ください。これまでの連合会の取組、以上の①から⑤までの活動について現状を整理したものでございます。
 まず、①の株式のアクティブ投資に関して、これは委託運用している部分ということになります。上の箱の中の1つ目にありますとおり、ESG要素を投資判断に組み込むということは、通常のアクティブ運用でごくごく一般的に行われていることだと認識していますので、私どもとしては既にESGを考慮する投資は行っていると認識しているものでございます。
 このページの左下に円グラフがございます。これは、スチュワードシップ活動の資料で出しているものでございますけれども、御覧いただきますと、全くESGを活用していないという部分が22%ございますが、これ以外はESGの考慮を何らかの形でしているものと考えれば、全体の4分の3は既にESGについての考慮がなされていると言えるのではなかろうかと考えているものでございます。
 上の箱の2つ目の矢尻にお戻りいただきますと、ESGに特化したファンド、これも実はアクティブ運用の中では、既に私どもには採用実績があるものでございます。このページの右下に棒グラフがございます。ESGファンドの対ベンチマーク超過リターンの2008年度以降の棒グラフでございますけれども、この長いトラックレコードの中で、ごくまれにマイナスの超過リターンということになっておりますけれども、多くの年度においてプラスの超過リターンを獲得しているトラックレコードがあるということでございます。私どもがこのファンドに投資を開始したのは2019年度でございますから、このグラフで言うと、ごくごく右端のところということになるわけでございますけれども、このようにトラックレコードをしっかりと確認して、投資を行っている実績があるということでございます。
 上の箱の3つ目の矢尻のところに移っていただきますと、これも先ほど給与共済課長のほうから御指摘がありました、日本版スチュワードシップ・コードの再改訂版でございますが、私ども9月末に受入れを表明しているところでございます。この受入れ表明のタイミングに合わせまして、連合会が運用を委託している全てのアセットマネジャーに対して、改めてESG要素の考慮を要請したところでございます。これは、書面という形式を取って要請いたしました。また、文字には落としておりませんけれども、アセットマネジャーとの面談の際には、必ずそのことについて言及するというような活動も行っているところでございます。
 箱の中の4つ目、マネジャーのエントリー要項にもESGの具体的な活用方法を説明してほしいということで、こちらから既に依頼をしているというのが①に関する現状になります。
 次のページに移っていただきますと、今度はESGのパッシブのほうになってまいります。投資対象はエクイティーでございますけれども、連合会ではESGパッシブ投資のファンドを採用するに至ったケースがないというのが現状でございます。ただ、こちらのほうから全く声をかけていないかというと、そういうことではなくて、マネジャーエントリーの受付のタイミングでは、ESG指数に連動したインデックス運用等に注目をしているということで言ってはおりますので、実際にそのモニタリングをしているところでございます。また、マネジャーのエントリー要項にESGの具体的な活用方法について説明してほしいと記しているというのは、先ほどと一緒でございます。
 このページの下に、主なESGパッシブファンドの数値例がございます。これは、一番下の行に書いてありますとおり、運用開始から2020年9月までの年率換算値でございまして、プラスが3つ、マイナスが1つということでございますから、一見、リターンの状況としては非常によいように見えなくもないとは認識をしておりますけれども、今年度に入りましてからは、いわゆる新型コロナの影響もあって超過リターンの獲得は非常に厳しい状況にあると、私どもでは認識をしているところでございます。ですので、ESGを考慮した運用に関しては、コロナという言わば雑音のようなものを抜くとどのようなパフォーマンスなのかということも、しっかり見なければいけないのではないかと考えているところでございます。
 7ページ目に移っていただきますと、今度は債券投資におけるESG要素の考慮というものが出てまいります。
 箱の中の1つ目でございますけれども、既に私どもは委託運用、自家運用ともにグリーンボンド等ESGボンドの購入実績はあるということでございます。このページの上下方向真ん中の辺りに、左側が厚年積立金、右側が新3階積立金ということでございますけれども、この2つの積立金において既に購入実績があるということはお示ししているとおりでございます。また、全ての運用委託先に対してESG考慮の要請をするということは先ほどのエクイティーと同じでございますし、エントリー要項に記しているということについても同じでございます。
 ただ、ボンドの場合、一つ懸念しなければいけないと思っているのは、このページの一番下のグラフでございます。これは、今年9月にドイツが国債として出したグリーンボンドと、通常のボンドのイールドをグラフにしたものでございますけれども、やはりグリーンボンドの利回りのほうが低い、つまり価格的にはグリーンボンドのほうが高い状況が持続的に続いているというところがございます。ここをどのように解釈していくのかというのは、一つ課題ではなかろうかと思っているのが現状でございます。
 続きまして、8ページ目に移っていただきまして、TCFD賛同でございます。現状、連合会としては、TCFD賛同は行っておりません。しかしながら、私どもが委託をしているアセットマネジャーは、基本的にほぼ全て賛同しているという状況でございます。また、TCFDというのは、運用委託先が投資先を分析していくに当たって、適切に情報開示がされていることを促していこうという活動だと思いますので、ここは私どものESGに対する基本姿勢に照らしましても、非常に重要な活動だと考えております。
 9ページ目に移っていただきますと、今度はPRI署名が出てまいります。こちらのほうも、連合会は現状で署名という状況には至っておりません。しかしながら、私どもが運用委託をしているアセットマネジャーは、ほぼ全て署名をしているところでございます。
 PRIに関しては一つ懸念するところがございまして、真ん中辺りの右側にPRIの除名制度における最低履行要件という表をつけております。中身については詳しく触れませんけれども、PRIに署名をするということは非常に大きな責任を伴うものでございますし、その責任を果たせなければ除名もあり得るということで、軽々に署名をするものでもないと、現状、私どもは認識しているところでございます。また、この最低履行要件が、今後、引き上がっていくというような話も出ておりますので、それについてもモニタリングは重要だと認識をしているところでございます。
 おめくりいただきまして、では、これから連合会としてはどのように取り組んでいくのかということが、10ページ目以降にございます。先ほど来、整理をしております①から⑤でございますが、①エクイティーの委託運用におけるアクティブ投資については、既に私どもは推進しているというところは先ほど御説明したとおりでございますので、従来どおり、全ての運用委託先に対してESG要素の考慮というものを明示的に要請してまいります。また、要請しっ放しではなくて、その評価、あるいはモニタリングも継続をしていくということで、従来どおり着実に進めてまいりたいと考えております。
 ②のESGパッシブ投資でございますけれども、これは先ほど少しメンションいたしましたとおり、インデックスのリターンがこのコロナでかなり影響を受けているのではないかという問題意識を持っておりますので、継続的に観測をしてまいりたいと考えております。また、インデックスというのは、基本的に運用フィーが安いというところもありますので、そういったコストパフォーマンスを含めました活用可能性は、しっかりと情報収集を行ってまいりたいと思っております。国内エクイティーだけではなくて、それ以外のアセットについても情報収集は継続していくと同時に、マネジャーエントリーのときにそういった情報も出してほしいということを要請してまいりたいと思っています。
 次に、③のボンド投資でございます。こちらも、先ほど見ていただきましたとおり、既に私どもは投資を行っておりますので、従来どおりの活動を継続してまいりたいと思っています。加えまして、D)のところにありますとおり、各国の政府債、ガバメントボンドだけではなくて、国際機関が発行するグリーンボンド等は購入検討の対象にできるように、ガイドラインに変更を加えていこうと検討しているところでございます。自家運用については、これも従来どおりでございますけれども、先ほど少し申し上げましたグリーンボンドプレミアム、あるいはグリーニアムと言われるようなものも観測されているところでございますので、継続的に情報収集をしてまいりたいと思っております。
 タイムラインは、一番下の矢印で書いてあるとおりでございます。
 11ページ目、残りは④と⑤でございますが、TCFDについては賛同に向けて準備をしてまいりたいと考えております。これは、リターンの向上とリスクの低減の両面から役に立つものだと感じておりますし、特にアセットオーナーが気候関連情報の開示を促していくということで、アセットマネジャーがその恩恵を受けるだろうと認識しておりますので、この部分については前向きに考えていきたいと思います。また、ほかの共済でありますとか、様々なステークホルダーとの意見交換も進めてまいりたいと思っています。
 ⑤PRI署名でございますけれども、既に私どもがやっているとおり、PRIに署名しているマネジャーを採用していくということを、今後とも継続的に進めていこうと思っています。PRI署名をしているマネジャーを採用することによってアセットオーナーとしての責任を果たすということは、この形でも十分に可能だろうと認識をしています。ただ、給与共済課からも御助言があるような形でございますので、将来的な署名も視野にということは、考えていきたいと思っています。先ほど申し上げました幾つかの懸念点、最低履行要件の引上げでありますとか、年次評価の厳格化といったところはもう少し検討を加える必要があると思っていますから、動向のモニタリングを継続してまいりたいと思っています。その中には、PRI事務局との対話も含めて考えてまいりたいと思います。
 最後、J)企業年金等の動向にも留意したいと思いますし、ほかの共済や各種ステークホルダーとも意見交換をしてまいりたいと思っております。
 以上が、連合会のESGに関する取組のこれまでと今後ということでございます。
 続きまして、資料4-2、スチュワードシップ活動の報告(概要)という資料がついているかと思います。こちらは、抜粋でございますが、全体版は、私ども連合会のウェブサイトに、今週の月曜日、11月30日に掲出をしているところでございます。
 スチュワードシップ活動の報告については、昨年度も国共済分科会で御紹介させていただいたものでございます。1ページ目を御覧いただきますと、これまでの取組のサマリーがございます。連合会といたしましては、平成17年の6月のコーポレートガバナンス原則、議決権行使ガイドラインの制定から始まりまして、今年9月、日本版スチュワードシップ・コードの再改訂の受入れまで、様々な形で環境の変化にキャッチアップするような活動を行ってまいりました。
 2ページ目は、金融庁の資料を参考にして整理させていただいたものです。このページの上のほうにポンチ絵がございますが、真ん中と右のほうに青い矢印が2つございます。真ん中の部分は、アセットオーナーがアセットマネジャーに働きかけをするところ、右側の部分は、アセットマネジャーが投資先対象に対してエンゲージメントをしていくこと、この2つは非常に重要な活動だと思っておりますので、今後とも引き続き強化をして推進してまいりたいと思っているところでございます。
 3ページ目は、活動の概要でございます。2つ目の矢尻のところにある事柄でございますけれども、スチュワードシップ・コードを受け入れるだけではなくて、行動を伴った形でやっていかなければいけないと思っていますので、必ずアセットマネジャーとはミーティングするということを継続的に行っているところでございます。その中で、運用受託機関の取組の概要と記している部分が、下から10センチぐらいのところにあるかと思いますけれども、各社とも創意工夫をしているということは聴取しているところでございます。その中で、エンゲージメントの高度化でありますとか、ESG要素の考慮というものは必ず入ってくる部分でございます。このエンゲージメントとESG要素の考慮は、両者でセットの概念だと私どもは考えておりますので、ここを今後とも強力に推進していくということでございます。
 4ページは、幾つかの例を記しているものでございまして、実際の全体版には好事例がたくさん並んでおります。ただ、今回は、あまりそれに時間をかけるのは適切ではないと思いましたので、幾つかのものに絞りましたけれども、ESGのEとSに関する対話と企業の反応をまとめております。私どものような委託運用では、いわゆるアクティビストのような形で企業に迫っていくのはなかなか難しいと認識しておりますけれども、アセットマネジャーは彼らなりに、自らの持っている範囲内で、マイルドなアクティビズムを追求しているということだろうと思いますので、ここはエンゲージメントも含めて、今後とも推進をしていきたいと思っております。
 5ページ目を御覧いただきますと、今度はESGのうちGに関する事例が2つございます。取締役会のダイバーシティーの問題でありますとか、特に女性をインクルージョンしていくであるとか、そういったことについては、アセットマネジャーが投資先としっかり対話をしているということが確認できるかと思います。
 6ページ目は、先ほど少し触れたESGの活用の割合を示しているものでございます。
 最後、7ページ目を御覧ください。今後の取組方針ということでございますけれども、(1)モニタリングプロセスの高度化というところでは、先ほど来申し上げているとおり、運用受託機関との対話を重視していきたいと思っております。アセットマネジャーから、ただ単に報告を受けるだけではなくて、我々のほうからもプロアクティブに会話をしていきたいと思っています。
 それから、(2)のコーポレートガバナンス原則等の改正でございますけれども、冒頭で御確認いただきましたとおり、コード改正でありますとか、社会情勢等の変化を踏まえて、我々としても遅れることがないようにキャッチアップをしていきたいと思っています。
 また、(3)、ほかの公的年金等との協力も進めたいというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。
 最後に、(4)といたしまして、ESG要素を考慮した対話は今後も推進していきたいと考えているというのが、現状の連合会の基本姿勢でございます。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 それでは、事務局からよろしくお願いします。

〔 高田給与共済課長 〕 それでは、恐縮ですけれども、資料2にお戻りください。財務省としての評価であります。その最終ページ、5ページ目、今後の課題というところであります。
 まず、引き続き中長期的な観点でベンチマーク収益率の確保に努めること。KKRの今後の運用手法の高度化、多様化に資する調査研究について、引き続き検討し、充実に努めること。これらは、昨年度まで申し上げてきたことと同様であります。
 3番目、ESGに関して、ただいまKKRのほうからも取組方針の御説明がありましたけれども、その5項目に沿ってそれぞれ申し上げます。
 まず、①、引き続き全運用受託機関にESGの考慮を要請するとともに、ESGへの取組も運用受託機関評価の要素とするということ。これは、KKRとして、これまでもやっていますし、今後もやっていくということでありますけれども、当方からも改めて強く要請をしたいと考えております。
 ②、ESGインデックス投資に関しましては、もう少しトラックレコードの蓄積、検討を深めたいということでありましたけれども、ぜひその検討を速やかに進めていただきたいと考えております。
 ③、グリーンボンド等への投資や債券委託運用におけるESG要素の考慮ということで、こちらについても引き続き取り組んでいくということでありますけれども、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと考えております。
 ④、TCFDについてですが、まず、運用受託機関にはこれに沿った取組を促すということ、そして賛同に向けて準備を行っていくということでありますけれども、それを速やかに進めていただきたい。
 ⑤、PRIについては、ぜひ署名を視野に入れて、関係者との協議、検討等を速やかに進めていただきたいと考えております。
 総じて申し上げれば、KKRにおいて、それぞれ非常に前向きに取り組み、ないしは検討していただいていることを評価したいと思いますし、KKRの事務局をはじめとして、関係者の皆様の御尽力に深く敬意を払いたいと考えております。その上で、それぞれの項目について、より前向きな、また、より速やかな取組を求めたいと考えている次第でございます。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に関しまして、質疑応答の時間に入りたいと思います。御質問、御意見等がございましたら、よろしくお願いいたします。

〔 加藤臨時委員 〕 加藤ですが、発言、よろしいでしょうか。

〔 川北分科会長 〕 はい、お願いします。

〔 加藤臨時委員 〕 2つほど質問があります。1つ目は今年度の運用についてです。3月初めにコロナショックがあり、大きく市場が下落したという局面がありまして、その説明もあったと思います。この折に、リスク管理のプロセスとしてどんなアクションが取られたのか。短期的なものでもありましたので、特に何もしなかったということでもいいだろうと思いますが、リスクが実際に出現したわけですので、このときに何らかのリスク管理プロセスのアクションが取られたのかどうかが1つ目の質問です。
 2つ目ですが、ESGについて質問させていただきたい。KKRのESGの取組のお話をお伺いしていると、現時点のESGの取組はどちらかというと二義的な取組のように感じました。二義的というのは、既存の運用プロセスの中で、ESGを考慮できるところは考慮していこうということであろうと思います。これは、優秀な運用機関であれば、当然そういうことはやっていると思いますので、もちろん問題ないのですが、そのように理解しました。一方、財務省さんのレポートや、今後の課題等を見ますと、より踏み込んで、ESGを一義的に採用していこうと。つまり、社会的な価値を高めることによって長期的なリターンを得に行くという、よりESGを前面に、一義的に押し出した方向のように感じました。ということで、私の質問は、ESGについては二義的な位置づけから一義的な位置づけに方向転換していくのかどうか、ということでございます。
 以上、2点、質問です。よろしくお願いいたします。

〔 川北分科会長 〕 では、KKRさん。

〔 宮島運用リスク管理室長 〕 それでは、1点目の3月のコロナショックの下落のときのリスク管理プロセスということでございますけれども、まず、通常のモニタリングを少しこまめに行ったということと、もう1つは、過去のショック、リーマンでございますとか、ITバブル、あるいはブレグジット、チャイナショック、こういったところとの下落状況との比較を行ってまいりました。その中で、どの程度の期間、どの程度の大きさであったかというようなところを、モニタリングの指標といろいろ合わせて分析をしておりました。委員から御指摘のとおり、その間に早期に回復をしたということで、実際のリスク回避としてのアクションは特に行っておりません。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 では、ESGに関して。

〔 水村資金運用部長 〕 続きまして、ESGに関して御指摘のありましたところにお答えをさせていただきます。
 私の説明がよくなくて、二義的であるとお受け取りになったのかと思いますけれども、必ずしも後回しだと認識しているものではございません。積極的にESGの要素を考慮していく、それがリターンにつながるものだということは、現在も、これからも継続してやっていきたいと思っているところでございます。あり得るとすると、二義的となるかどうかは分かりませんけれども、リターンを犠牲にしてESG要素を重視するというようなことになってしまってはいけない、現状では、まだそこまで社会的なコンセンサスはないのではなかろうかと思っておりますので、そこはESG要素の考慮とリターンを両立させるような形で運用していくことが大事ではなかろうかと思っております。また、この間、社会的な動きの加速は非常に大きいものがあると思いますので、昨日がそうだったから今日もそうであるというような考え方はよくないと思っておりますから、社会の動きについてはしっかりフォローをしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 加藤臨時委員、よろしいでしょうか。

〔 鳥畑臨時委員 〕 すみません、静岡大学の鳥畑ですけれども、発言、よろしいでしょうか。

〔 川北分科会長 〕 すみません、坂本専門委員から挙手がありますので、その後でお願いいたします。

〔 鳥畑臨時委員 〕 はい。

〔 坂本専門委員 〕 ありがとうございます。2つ質問があります。
 まず、資料1で、新3階の運用状況が報告されております。新3階も資産額が5,000億円規模になってきたという状態ですけれども、新3階が設立された経緯もいろいろありますので、そういうところもちゃんと踏まえないといけないと思うんですが、まだしばらくは掛金の収入のほうが給付よりもずっと多いという状態が続いていくと思いますので、この間、基本ポートフォリオを見直すようなお考えはお持ちなのでしょうか。それとも、やはりこれはもう絶対にマイナスを出さないという考えの下に、今現在の国内債券と短期資産に限った基本ポートフォリオで行くというお考えなのか、そこを教えていただけたらと思います。
 もう1点は、ESG投資の部分です。これは、川北分科会長からこれまで教えていただいたところでもあるんですが、ESG投資という概念はまだいろいろ揺れ動く時代であると。そうしますと、ESG投資のためのインデックスを見ながら投資するということにつきまして、連合会はまだやらないと、現在はやっていないということを言っておられますけれども、将来やるとなりましても、かなりインデックスが不安定ではないかという気がするんですけれども、それに対して連合会ではどういうようにお考えになっているのか教えていただけたらと思います。
 その2点です。

〔 川北分科会長 〕 では、お願いします。

〔 水村資金運用部長 〕 まず、1つ目の新3階の事柄でございますけれども、設立以来の経緯をしっかりと踏まえることというのは、まさに御指摘のとおりかと思っております。また、これも御指摘のありましたところでございますけれども、当面の間はキャッシュインが続く状況でございます。キャッシュアウトはほとんどないような状況だと認識しておりますので、まずは、この状況でどのような形に積立金が成長していくのかについては、確実にモニタリングをしていく必要があるだろうと認識しております。
 現状で、基本ポートフォリオを見直さなければいけない状況にあるという認識はまだございませんけれども、先ほど来、申し上げているとおり、まだ、この年金制度自体が出来上がってから間もないところだと認識しております。これが長期的にどのような財政見通しになっていくのかということについては、まだまだ、必ずこういうようになるという確信が持てる状況にはなっていないと思っていますので、将来の動向を考えていく必要があるだろうと思っています。
 また、マイナスのリターンを出さないということについては、制度上、そこまでリスクを取らなければいけないということにはなっていないものと認識しております。マイナスのリターンが出てもいいからリスクを取っていくというような事柄は、今すぐには踏み出していくということではないと認識しておりますけれども、先ほど長期的な財政を見なければいけないというところで申し上げましたとおり、それにふさわしい、長期的な財政にふさわしい運用の在り方は、また今後、出てくるかもしれないと思っておりますので、決め打ちをすることなく研究を進めていく必要があるだろうと認識しております。
 以上が、1つ目の回答になります。

〔 坂本専門委員 〕 ありがとうございます。

〔 水村資金運用部長 〕 2つ目に進んでよろしいでしょうか。

〔 坂本専門委員 〕 はい、ありがとうございます。

〔 水村資金運用部長 〕 ESGの、特にインデックスの概念が不安定ではないかということについては、まさしく御指摘のとおりだというのが我々の認識でございます。確かに、先陣を切ってGPIFが、この市場を開拓していっているということは十分認識しているところではございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、特に今年度に入りましてコロナの影響がかなり出ているところもあって、ESGが超過リターンを取ることにプラスになっているのかどうかが、よく見えなくなっているところもございます。また、御指摘の、そもそもインデックスをつくっていくときの考え方も、まだまだ改善の余地があるところではないかと認識をしております。ここは、いましばらくトラックレコードの観察を継続してまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 よろしいでしょうか。

〔 坂本専門委員 〕 ありがとうございました。

〔 川北分科会長 〕 それでは、鳥畑臨時委員、お願いします。

〔 鳥畑臨時委員 〕 静岡大学の鳥畑です。
 私も2つ質問を考えていたんですけれども、2つ目は、今、若干お答えがあったような気もします。
 1つ目は、やはりコロナ危機対応のリスク管理の問題でして、昨年度、株式運用では大きくマイナスになっておりまして、今年度に入りまして第3四半期の報告を見ますと、運用実績はかなり戻しておりますので、大きな問題にはならなかったと思います。そこで、リスク管理について、我々が外部から確認できる部分は資産運用委員会での議論かと思うんですが、議事録を見ますと、その内容についてかなり濃淡があるというか、非常に簡潔過ぎて何が議論されているのか分からない。例えば、7月31日のところでは、債券のクレジットリスクについて質疑があったという説明だけで、その質疑の内容が分からないということですので、ぜひ、より丁寧な情報開示に努めていただきたいということです。
 それに関連して、やはりESG投資についてですけれども、なぜインテックス運用、いわゆるパッシブ運用といいますか、私の目から見れば、インテックス投資のほうがよりコストが低くて、収益性が安定していて、年金の資産運用には向いているという認識ですが、これについて資産運用委員会での議論、例えば2月28日のところでは、インデックスファンドをポートフォリオに反映させることについては追加的な費用が発生すると書かれているんですが、これはどういう費用なのかということ。それから、アルファ獲得の可能性ということで、いわゆるアルファ、アクティブ運用のリターンということになるかと思うんですが、要するにKKRとしては、より収益を求めてアクティブなESG投資のほうを重視しているということなのか。
 それに関わって、8月24日からの持ち回りのところでは、スチュワードシップ・コードの受入れに関連して、ESG要素を投資収益以外の観点から考慮して運用内容に反映させること、要するに投資収益以外の目的でESG投資にコストを支払うことはすべきではないという反対意見があったと。つまり、ESG投資を経済政策的に進めるというのは大いに結構ですが、年金運用を政策手段としてはいけない、あくまでも受益者といいますか、加入者の利益のために、安定的な利益を求めて確保していくということは大切になるかと思います。
 そこで、先ほどもお話があったように、現状、ESG投資というのは、いわゆるアクティブといいますか、インデックス以外のところに比重をかけているというときに、先ほど若干説明はあったんですけれども、インデックス投資を増やしていくときの障害をどう認識されているのか、聞きたいと思っていた部分です。
 重複している部分はお答えいただかなくても結構です。よろしくお願いします。

〔 川北分科会長 〕 では、KKRさん。

〔 水村資金運用部長 〕 まず、資産運用委員会の議論の開示内容が十分でないということについては誠に申し訳ないと思っております。開示を充実する方向で検討できないかを、持ち帰りまして議論してみたいと考えております。
 それから、ESGのインデックスに関する考え方、これは先ほど来、御説明をしているとおりでございまして、やはりトラックレコードが不安定であるのではないか、トラックレコードの部分を無視して、ESGというラベルがついているからいいんですと納得をしていただくというのは、やや時期尚早ではないかと思っているところがございますので、このコロナの雑音が取れるということも含めて、中期的なトラックレコードを確認してまいりたいと考えているところでございます。
 ESGのインデックスに係る費用の部分でございますけれども、確かにインデックスにトラックするだけであれば、運用自体は低コストで済む可能性が高いと思っております。ただ、実際にインデックスをつくるところでお金がかかると認識しておりますので、今、よっぽど広範に使われているようなインデックスでない限りは、インデックスコストがそれなりにかかってくると認識しております。そういったものを総合的に勘案して、最終的にコスト控除後でプラスのリターンが取れるのかどうか、考えていきたいと思っております。
 それから、御指摘のありました、ESGに関する投資は政策の手段ではなくて加入者の利益を最大限に尊重すべきだというところは、そのように思っています。その考え方の下で、もう少しモニタリングを継続していきたいと思っているところでございます。
 十分でないかもしれませんが、以上でございます。

〔 鳥畑臨時委員 〕 ありがとうございました。

〔 川北分科会長 〕 開示の部分は、よろしくお願いしたいと思います。
 では、原臨時委員お願いいたします。

〔 原臨時委員 〕 私からも、ESG投資についてです。こういった時代ですので、いろいろな機関が署名や賛同などをされているという資料を見させていただいたんですけども、やはり機関投資家として、社会的責任は果たしていかなければいけない時代になっていると思うんです。社会的な役割というのは難しいですけれども、そういったものをきちんと果たした上で、これは個人的な意見ですけれども、長期的な観点で収益率の確保に努めるということが、意義あることだと思います。もちろん、加入者の利益のためにというのが一番大事だと思います。さきほど、PRIですとか、TCFDはちょっと責任が重大になるというような御発言がありましたけれども、署名とか、賛同することについては、しっかりと関係者との協議、検討、準備を速やかに進めていただくという方向がよろしいのではないかと思います。やはりこれだけ大きな資産をお持ちなので、そういった社会的責任という部分は果たしていかないといけないのではないかと思います。
 また、アクティブ投資については、もともと広くあったかと思うので、そのままでいいと思うんですが、今、委員からもお話がありましたけれども、やはり年金資産の運用は、どちらかというとインデックスのほうが向いているのではないかと個人的には思っております。そういった意味では、資料4-1の10ページにもありましたけれども、アクティブのところで従来的な評価、モニタリングをしっかりと継続していただいて、その手数料を含めて、インデックス投資とどう異なるのかなどその活用をする際には十分検討して進めていただきたいと思っています。GPIFさんでもやっていらっしゃることですので、ESGのインデックス投資も、検討を進めていただきたいと思います。
 ここで1点、質問ですけれども、具体的にお答えいただければということですが、ESGのインデックス投資の検討の時間軸について、KKRさんとしてはどのぐらいの検討期間を考えていらっしゃるか、可能であれば教えていただければと思います。お願いいたします。

〔 川北分科会長 〕 では、KKRさん、お願いします。

〔 水村資金運用部長 〕 まず、御質問の前にありました、社会的責任を果たすようにせよという御指摘でございますけれども、これはもう本当に、まさにそのとおりだと認識をしております。特に、社会的責任を果たすというのは公的年金において、年金給付だけではなくて、運用の面でも非常に重要だと認識をしているところではございますけれども、それがここに来て加速度的に、特に気候変動問題等を中心にして期待されている部分があるということは認識しておりますので、そこも含めて運用を継続し、また、我々が委託しているアセットマネジャーとも対話を継続してまいりたいと考えております。
 それから、インデックスについて御指摘をいただいているところでございます。確かに、一度インデックスをつくれば、あとはそれをパッシブで運用していけばいいということなので、その面で、一々ジャッジメントが入らないという意味では効率的な運用だということは言えるだろうと思っています。ただ、これは先ほど坂本専門委員のほうからもコメントがあったところと思いますが、インデックスをつくっていくに当たって、どういうようにつくったらばESGを一番キャプチャーできるのかというところに、まだ様々な議論がある段階ではないかと思っています。もちろん、試行錯誤だと思いますから、やって駄目な部分であるとか、やったら利いた部分というのはこれから明らかになってくると思います。そこは、GPIFが先陣を切ってつくっていっていらっしゃると思いますから、我々としては、その状況をしっかりフォローしていくということがまず大事ではないかと思っています。
 時間軸というところでございますが、私どもとしては、もう何年か見なければいけないと決めてしまっているわけではないのですが、先ほどアクティブ運用でESGファンドを採用している実績を御紹介させていただきました。そのファンドでは、2008年からトラックレコードがあり、かなりの期間において安定的にアルファが出ていることを確認して投資判断に踏み切っているところがございますので、やはり一定レベルの時間は必要なのではないかと思っています。
 それから、何度も繰り返して恐縮ですけれども、コロナという特殊な状況がありますから、こういう特殊な状況で上がったり下がったりしている部分を除いたときに、ESGを考慮するものがどのぐらい効果を発揮するのかというのは、一定のサイクルを経過しないと分からない部分ではないかと思っています。そういった意味でも、ごく短期間で判断がつくような状況ではないかと思っています。1年とかでは、見通しは立てられないのではないかと考えているところでございます。

〔 原臨時委員 〕 ありがとうございました。

〔 川北分科会長 〕 関委員、お願いいたします。

〔 関委員 〕 同様の意見ですので、簡単に述べさせていただきます。
 ESG投資については、まだいろいろと不明瞭なところもありますし、今年度、コロナで大変な状況ということなので、今、何ができるかというと難しいかと思います。とはいえ、国家公務員共済組合連合会は、ある意味、GPIF以上に公的な役割を担っておりますので、社会的責任を考えるときに、国家公務員の共済組合という性格も考えていただきたい。ESG投資というのは、非常に面白いものだと私もお話をお伺いしましたが、この点を考えていただければと思います。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 では、武藤臨時委員、お願いします。

〔 武藤臨時委員 〕 全農林の武藤といいます。
 ESG投資につきましては、私は投資の素人ですので、ずれていたら申し訳ないんですけども、国内におきましては数十年に一度という自然災害が毎年発生している状況にあります。世界的には地球温暖化による海面上昇、それに基づいて北極海の氷が溶けるとか、今、コロナが発生していますけれども、原因は分からないにしても、一説によれば、今後、永久凍土が溶解すれば違うウイルスが出てくるのではないのかと。そういう状況の中では、やはり世界的な潮流として、どう地球温暖化を遅らせていくのかが課題だと思います。
 企業活動も、総論的にはそのような課題を共有できるでしょうけれども、全ての企業がそうかというと、一概には言えない状況だろうと思います。例えば、自動車も二酸化炭素を出さないために、ガソリンから電気にシフトしているという報道も多くされてきている状況を見ていると、今後、そういった環境にやさしい企業活動というのはやはり増えてくるでしょう。そこをバックアップしていくことも、私たちの社会的責任として大切ではないかと思っております。
 一方では、資金を運用する上で、このような意見を言うのは簡単ですけれども、運用される側の事務方の皆さんとしては、リスクをどういうように軽減するのかということは大切だろうと思っております。そういった意味では、いかにリスクを軽減させるか、運用会社に信頼があるのか、そこをしっかり見極めることが大切だろうと思っています。
 総体的には、やはり気候変動への対応という世界的な潮流の中では、ESG投資を進めていくべきではないのかと思っておりますので、意見として申し上げます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 では、工藤臨時委員。

〔 工藤臨時委員 〕 事前説明のときにコメントも申し上げたので、今日は1点だけです。個人的には、ESG、日本の公的な運用機関もついにここまで来たのかということで、正直なところ、非常に感銘を受けております。
 やはりヨーロッパなどは非常に先行していて、かなりESGの意識が高いということと、今日、割と環境の話が中心だったんですが、ソーシャル、それからガバナンスも非常に重要な問題で、やはりそういう意味では公的な、非常に大きな資金を動かす機関が明確なスタンスを出していくということ自体は、私は非常に重要だと思います。もちろん、運営に対していろいろ工夫をされているのはよく分かるところで、そういう意味では、アプローチの仕方を3つ、それから主要項目を5つに分けられているところ、推進活動についても明確なスタンスを出されているというのは、非常に積極的で、個人的には評価したいと思います。その中で、バランスを取りながら、ちゃんとしたリターンを出すことをこれからやっていかれるということですので、期待をしております。ぜひ頑張ってください。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 ほかに、ございませんでしょうか。では、給与共済課長からお願いします。

〔 高田給与共済課長 〕 私のほうから、簡潔に補足をさせていただきます。
 まず、先ほど加藤臨時委員のほうから御質問があった、ESGは一義的か、二義的かという話です。KKRから説明がありましたように、必ずしも一義的、二義的といった分かれ目があるということではなくて、同じ考え方でやっていると思います。ただ、一つあるとすれば、我々はやはり政府としての立場でありますから、先ほど申し上げたように政府としてESGは積極的に推進するということを明確にしております。ですから、当然、リターンを犠牲にすることはないんですが、少なくとも同等程度のリターンが見込める、あるいはリスク回避の可能性があるのであれば、ぜひ積極的に進めていただきたい。やはり公的年金、アセットオーナーが動くことへの期待は、関係者、様々な市場関係者との対話の中からもひしひしと感じておりますので、そこはぜひ前向きに取り組んでいただきたいと考えております。
 それから、ESGインデックスについてです。これは、若干、私見になりますが、私の理解では、ESGだからといって何か一般とすごくかけ離れたことをやるということでは必ずしもなくて、多くのインデックスは一般のインデックスと、いろいろなウエイトのつけ方は多少変わっていても、多くの銘柄は重なるものが多いということであって、アクティブも含めて、インデックス、あるいはファンド、いろいろな運営手法がある中の一手法であると割り切って考えれば、少なくともポートフォリオの一部をそれに向けることを、過度にリスキーなものと捉える必要はないのではないか。
 また、実際、インデックスを一から作っていくとなると大変ですけれども、既にGPIFが採用しているものを含めまして、いろいろなものが市場で出ていますので、そういったものであればそれほどコストはかからないと思われます。いずれにしましても、そういうことも含めて、KKRのほうでこれから専門的に検討されるところだと思いますので、それはぜひよろしくお願いしたいと考えてございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 ほかに、よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から何かございましたら、よろしくお願いします。

〔 高田給与共済課長 〕 ありがとうございます。
 本日は、専門的見地から様々な御意見をいただきまして、ありがとうございました。本日の御意見も踏まえまして、厚生年金保険法第七十九条の八第二項に基づく評価につきまして、12月下旬に財務省ホームページにおいて公表させていただきます。
 繰り返しになりますが、資料1、資料2、及び参考資料5につきましては、公表日まで取扱いに注意いただきますようにお願いいたします。
 本日の議論のうち、ESG投資に関する部分、具体的には資料3、資料4-1、資料4-2につきましては、この後、私のほうから、記者ブリーフィングをさせていただくことにいたします。

〔 川北分科会長 〕 それでは、本日はこれで終了させていただきます。御多用の中、どうもありがとうございました。

午後3時11分閉会