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財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会(令和4年11月25日開催)議事録

第33回
財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会議事録

令和4年11月25日(金)
於:財務省本庁舎4階国際会議室

議題
1. 令和3年度の年金積立金運用に関する業務概況書について
2. 令和3年度の厚生年金積立金の管理運用状況に対する評価について
3. 年金積立金運用におけるESG投資等の対応状況について
4. マイナンバーカードの健康保険証利用について
5. 短時間労働者への国家公務員共済組合制度の適用拡大状況について

午前10時00分開会
〔 川北分科会長 〕 それでは、時間になりましたので、ただいまから財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会を開催いたします。皆様には御多用中のところ、御出席いただきありがとうございます。

 本日の分科会は、ウェブでの開催となっております。委員の皆様には、テレビ会議システムを通じて御参加いただいております。
 本日は、国家公務員共済組合連合会より、令和3年度の年金積立金運用に関する業務概況書について説明をいただいた後、事務局より、令和3年度の厚生年金積立金の管理運用状況に対する評価について説明をいただきます。また、ESG投資について、国家公務員共済組合連合会より取組状況を説明いただいた後、事務局からも最近の動向を説明いただきます。最後に、事務局より、マイナンバーカードの健康保険証利用の対応状況及び短時間労働者への国家公務員共済組合制度の適用拡大状況について説明をいただきます。
 議事に移ります前に、この夏、主計局の異動がございましたので、事務局から御紹介いただきたいと思います。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 この夏より給与共済課長を拝命しております尾﨑と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 委員の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、本日御参加をいただきまして誠にありがとうございます。
 この夏の人事異動を踏まえまして、事務局を御紹介させていただきたく存じます。
 まず、給与共済課担当の主計局次長の中村より、一言御挨拶申し上げます。

〔 中村主計局次長 〕 主計局で給与共済課を担当しております中村でございます。皆様方におかれましては、平素より御指導いただいておりますこと厚く御礼申し上げます。本日は、皆様非常にお忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 私、厚生労働省担当次長として社会保障を担当しておりまして、医療制度、年金制度の改革に取り組んでいるところでございます。そういう中、国家公務員共済組合制度は、皆様のアドバイスを基に非常にしっかりとした運営を行っているという意味では、模範的であり、目標となる仕組みだと思っております。他方で、様々民間では先進的な取組もございまして、そういったところも参考にしていかなきゃいけないという面もあると思っております。
 本日は、そういった様々な観点から、毎年御意見を賜っております年金積立金の運用状況に対する評価報告書の案を提示させていただきまして、それに加えまして、前回からの引き続きの議論になっておりますインパクト投資、ESG投資についても議題とさせていただきまして、皆様から御議論をいただきたいと思っております。
 また、先般、政府のほうでも方針を出させていただきましたマイナンバーカードの健康保険証利用の対応状況、また、短時間労働者への国家公務員共済組合制度の適用拡大状況、いずれもこの共済組合にとっても非常に重要ですし、また、社会にとっても非常に大事な取組だと思っております。こういったものについても事務局から説明をさせていただき、御意見いただければ幸いに存じます。よろしくお願いいたします。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 続きまして、紹介を続けさせていただきます。共済調査官の北原でございます。

〔 北原共済調査官 〕 北原でございます。よろしくお願いします。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 共済計理官の西尾でございます。

〔 西尾共済計理官 〕 西尾でございます。よろしくお願いします。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 また、本日は国家公務員共済組合連合会から、松村専務理事、水村資金運用部長、宮島運用リスク管理室長にお越しいただいております。
 なお、本日予めお手元に送付させていただいております資料1、資料2及び参考資料4についてでございますが、現時点で未公開のデータが使用されており、議論の内容で市場に影響を及ぼす等のおそれがあるものも含まれておりますので、議事録と併せ、12月下旬を予定しております評価結果の公表日まで非公開とさせていただくことを御提案させていただきたく存じます。あわせて、配付させていただきました資料1、資料2、参考資料4につきましては、公表日までお取扱いに御留意を賜りたく存じます。

〔 川北分科会長 〕 ただいま事務局より資料の一部と議事録について、評価結果の公表日までは非公開とするとの提案がありました。この点につきまして、特に御異存等ございませんでしょうか。
 (Webミーティングの画面上頷く姿あり)
 よろしいですか。それでは、御異議なしということですので、そのようにさせていただきます。
 それでは議事に入ります。
 まず、国家公務員共済組合連合会より、1つ目の議題である令和3年度の年金積立金運用に関する業務概況書について説明をお願いいたします。

〔 水村資金運用部長 〕 それでは、資料番号1に基づきまして、令和3年度、昨年度の業務概況書の概要版を御説明させていただきます。
 次のページには目次がございます。大項目として一番上が厚生年金保険給付積立金でございます。その次、退職等年金と経過的長期給付の積立金がありまして、最後に運用リスク管理関係ということでございます。勘違いされないように申し上げると、その一番最初の厚生年金保険給付積立金につきましては、国家公務員の方のための年金ではなくて、もう既に一元化をされている厚生年金の運用であるということ、被用者年金の積立金であるということ、こちらを御理解いただければと存じます。
 それでは、その厚生年金から御説明させていただきますので、資料の3ページ目を御覧いただければと思います。こちらは、厚生年金の運用におきまして参照いたしますベンチマークインデックスの推移でございます。御覧いただきましてすぐにお分かりになりますとおり、一番上を走っております緑色のグラフ、こちらは外国株の収益でございますけれども、非常に堅調な令和3年度ということでございました。令和4年も11月末ということでございまして、半年以上も前に終わった年度で、しかも、この1月以降の経済変動は非常に激変でございましたので、なかなか令和3年度まで戻るというのは、頭の中のチャンネル切替えが難しいと思いますけれども、あくまでもこちらは令和3年度、昨年度の状況ということでございます。
 この外国株の緑色のグラフで御覧いただきますと、そのすぐ下にグレーの破線が走っているものがあると思います。こちらがその外国株の現地通貨ベースのインデックスの状況ということでございます。ちょうどこのグラフの真ん中の辺りで様相が大きく変わっております。前半までは、緑の線とグレーの破線がほぼ同じ軌道をたどっておりますけれども、年度後半になりますと、緑の線のほうが上振れている状況にございます。これは、皆様御記憶に新しいと思いますけれども、円安の影響ということでございます。それ以外の資産クラスに関しましては、100のところを上回ったり下回ったりという状況でございました。
 一応数字で御覧いただきたいと思いますので、左下のベンチマーク収益率の表を御覧いただければと思います。一番右側の列に通期の数字がございまして、右上の数字がマイナス1.22%というところがあるかと思いますけれども、こちらが国内債券のベンチマークインデックスの令和3年度の収益率でございました。その下、1.99%が国内株式、それからその下が1.96%、外国債券の円ベースの収益率でございます。1.96の下に少し行の高さの狭い数字がございます。マイナス4.82%、こちらは現地通貨ベースということでございますので、このマイナス4.82と、その上の1.96の間、ここが為替が引き上げた部分ということになります。それから、下から2行目、22.95%、こちらは外国株の収益率でございました。現地通貨ベースでは12.87%ということで、ここでも10ポイント上回るような為替のかさ上げがあったということでございます。
 それから4ページ目に移りまして、実際に国家公務員共済組合連合会として運用している厚生年金の状況ということでございます。一番左側が令和2年度末でございまして、令和3年度については、第1四半期、第2四半期、第3四半期も並べておりますけれども、一番右側の年度末の状況を御覧いただければと思います。右側のブロックの一番右側の列から1つ戻っていただいたところが時価ということでございますけれども、一番下の行を御覧いただきますと、8兆3,069億円という数字があるかと思います。こちらが昨年度末の連合会がお預かりをしている厚生年金資金の時価残高ということでございます。令和2年度末の数字がずっと左のほうにございますけれども、令和2年度末は7兆9,430億円ということでございましたので、令和3年度の1年間で3,639億円の増加ということでございました。また、時価と簿価と並べて数字がございますけれども、この差が評価損益額ということになります。一番右下の角のセルを御覧いただきますと、1兆5,592億円という数字があるかと思います。こちらが含み益ということになるわけですけれども、その上を遡っていただきますと、すぐ上に1兆257億円という数字があるかと思いますが、外国株のほうで大きな含み益を得ているということでございます。また、そこまで大きくはございませんけれども、4,535億円という数字があるかと思いますが、国内株でも大きな含み益を得ているという状況でございました。以上が令和3年度末の実額のベースということでございます。
 続きまして、次のページに移っていただきまして、これを構成割合に直したものを御確認いただきます。右側にパイチャートがございますけれども、ほぼ4つの資産で均等のポートフォリオを維持できているという状況でございます。実際、基本ポートフォリオの中央値は、各資産で25%ということなっておりますので、微少なずれというところかと思います。
 それから6ページ目に移っていただきまして、収益の状況を御覧いただきます。上のほうの少し小さな表は、実現収益額の表ということになりますけれども、年度計のところを御覧いただきますと、4,038億円ということでございました。ここのところで第1四半期から第4四半期の数字のバランスを御覧いただければと思うのですけれども、一見してお分かりになりますとおり、第2四半期のところで1,675億円ということで、ほかのセルに比べて少し大きめの数字になっております。これは、昨年度の第2四半期にリバランスを行いまして、外国株を売却したということがございましたので、その実現収益額が大きく出ているということでございます。
 それから、その下の総合収益額の表を御覧いただければと思いますが、総合収益額の一番上に合計値が出ております。右上の角ですけれども、4,803億円ということでございます。この大半を占めるのが一番最後の外国株の3,960億円ということでございます。
 先に進みまして、7ページ目を御覧ください。今度は金額を率に直したものでございます。先ほど御覧いただきました実現収益額を実現収益率に直したものが、上の小さな表でございます。年度計で6.40%でございます。
 それからその下、少し大きな表になりますけども、含み益を加味した修正総合収益率に関しましては、右上の角の数字、6.13%という数字がございます。この6.13%というのが、連合会が令和3年度に獲得いたしました総合収益率ということでございます。その下に資産クラス別の数字がございますけれども、一番下の行を御覧いただくと、21.20%という数字がございます。先ほどから御説明をしているとおり、外国株が令和3年度は非常に堅調でございましたので、ここで大きくかさ上げをしているということでございます。
 それから、8ページ目に移りまして、このページからは、中長期の運用状況のお話ということになります。(2)中長期の運用状況と左上に書いてございますけれども、その次のところを少し読み上げさせていただきます。年金積立金の運用は長期的な観点から行うこととされており、長期的な運用目標については、令和元年財政検証の長期の経済前提を基にして、賃金上昇率を上回る実質的な運用利回り1.7%とすることが財務省の財政審国家公務員共済組合分科会で示されているということでございます。ですので、ここはまず長期的な運用目標の話であるということ、それから、それが具体的に何なのかというと、実質的な運用利回りとして1.7%であるということでございます。この実質的な運用利回り1.7%というのは、厚生年金制度の統一の目標ということでございます。
 その1.7%を達成したのかどうかというのがその下の表でございます。一番下の行に実質的な運用利回りというところがございまして、過去に振り返りまして手前5年間で6.02%、10年平均でも4.96%、15年平均では3.85%ということでございまして、1.7%と比較をして、この過去の時間においては十分な利回りを獲得しているということが御確認いただけるかと存じます。
 先に進みまして9ページ目を御覧ください。このページは、また昨年度の話に戻るのですけれども、昨年度単年度でベンチマーク収益率と競争したときに勝ったのか負けたのかというところでございます。表がございまして、左右2つのブロックに分かれておりますけれども、左側のブロック、令和3年度の収益率と書いてある部分は3列に分かれております。一番左側が時間加重収益率で、これが連合会の成績でございます。これは時間加重収益率ですので、修正総合収益率とは微妙に数字が違っておりますけれども、これはほぼ同じものだとお考えください。連合会の収益率が6.19%に対して、ベンチマーク収益率、複合ベンチマーク収益率は6.30%でございました。ですので、連合会の6.19%は、ベンチマークに対しては0.11%の劣後であったというのが令和3年度の状況ということでございます。そのうち、マイナス0.11%というのをずっと下に下がっていただきますと、一番最後の行にマイナス2.11%という数字があるかと思いますが、外国株のところで大きくベンチマークリターンに劣後した部分があったということでございます。その代わり、マイナス0.11%のすぐ下のところ、プラス2.53%という数字があるかと思いますが、国内債券に関しましては、財投預託の恩恵もあり、大きくプラスということになっています。そこで何とか追い上げをしたのですけれども、全体ではベンチマークの劣後であったというのが令和3年度の状況でございます。
 それから、10ページ目はこれまでの運用状況ということでございますけれども、一番右側のところを御覧いただきますと、赤い折れ線グラフで、グラフマークは四角になっていますけれども、6.13%というのが令和3年度の状況でございまして、その前年度の令和2年度が、ちょっと信じられないぐらいの数字で24.29%というリターンだったので、それから比べるとかなり普通のリターンになったということではございますけれども、このコロナの状況下で、このようなばたつきはやむを得ないところではないかと考えております。
 以上が厚生年金の運用の状況でございます。
 続きまして、ここからが国家公務員の方々のための年金制度ということになりますけれども、まず最初は退職等年金給付積立金ということになりますので、退職金の別払いでお支払いをする年金制度ということになります。12ページ目を御覧いただいて、まず右下のパイチャートを御覧いただきますと一見してお分かりになりますとおり、ごく僅かな短期資産以外は全て国内債券で運用をしているという状況でございます。上の表にございますとおり、令和3年度末の簿価は全体で7,176億円、こちらをお預りして運用しているという状況でございます。
 それから、次のページに移っていただきまして、収益の状況でございます。実現収益額のところは飛ばしていただきまして、実現収益率の数字を御覧いただければと思いますが、一番右側の列の上の数字、1.13%という数字があると思います。これが令和3年度の新3階年金の実現収益率ということでございます。
 この1.13%がどういう評価をされるのかというのが14ページ目でございます。14ページ目の真ん中に表がございますけれども、左側の列が令和3年度、その下のところを御覧いただきますと、括弧の中の数字になっているのですが、基準利率0.00%というのがございます。これがこの年金制度の実質的な負債利率ということになります。0.00%ということでございますので、これは制度設計により、お預かりはしているんですけれども増えませんというような形になっているものでございますが、実際にお預かりしたものの運用利回りは、その上にあります1.13%であったということでございます。それから、これを制度発足以来の平均で見たものがその右側の列にございますけれども、基準利率の平均が0.14%であるのに対して、実際の運用利回りは2.15%を得ているという状況でございます。
 続きまして、16ページ目を御覧ください。16ページ目からは、経過的長期給付積立金ということでございまして、退職等年金制度発足前の職域加算の残りの年金積立金を運用してきたというところでございます。こちらの右下のパイチャートを御覧いただければと思いますが、全て短期資産という状況になっております。債券で運用しているものはございません。その残高が昨年度末には1,193億円ございました。来月、12月の支給で、この新3階の積立金というのは全て使い果たす予定でございます。その後は、地方公務員共済組合からの財政調整で必要な支払いを賄っていくということになりますので、年金資産運用としては、この12月でなくなるということでございます。
 次のページです。17ページ目、下のほうを御覧いただければと思います。運用利回りによる評価についてということでコメントしておりますけれども、今申し上げたとおり、来月には残高がゼロになるということでございますし、全部短期資産で運用しているという状況でございますので、最後の行の一番右端ですけれども、運用利回りによる評価は行っておりません。
 以上が運用の状況でございました。

〔 宮島運用リスク管理室長 〕 それでは続きまして、19ページ、20ページで、運用リスク管理の状況を御説明申し上げます。よろしくお願いいたします。
  まず、19ページでございます。資産運用事業全体のガバナンスとリスク管理の体制でございます。図の上のほうに、運営審議会、財務大臣とございます。運営審議会は、国家公務員共済組合法で設置が定められておりまして、委員は労使同数で構成されており、毎年度の事業計画、決算、その他重要事項について、運営審議会の議を経た上で財務大臣の認可・承認を受け、事業を行っていくということでございます。
 資産運用事業におきましては、3つの積立金の管理運用方針等の重要事項について、運営審議会で御審議をいただいているところでございます。また、図の右側にございます資産運用委員会でございますけれども、資産運用に関する有識者で構成されておりまして、現在は8名の委員の皆様に、専門的な御知見による御意見、御助言をいただきまして、運営を行っているところでございます。運用の専門分野につきましては、この資産運用委員会でチェックを受けているということでございます。
 そして、国家公務員共済組合連合会内部でございますけれども、この図の中央にございます運用リスク管理委員会を四半期ごとに、その下の運用リスク検討会議を毎月実施をいたしまして、継続的に運用リスクに関するモニタリングを実施しているということでございます。
 次の20ページでございます。モニタリングの具体的な内容をお示ししてございます。表の左側に、リスク管理の項目を運用リスク管理要領として定めまして、月次でモニタリングを行っております。表の真ん中から右、全部丸になっておりますけれども、実際には詳細な数値分析を行っているところでございますけれども、ここでは分かりやすく、丸、三角、バツという形で表示をさせていただいているところでございます。
 令和3年度の状況でございますけれども、まず、厚生年金の主要な事項について御説明を申し上げます。表の一番上の行の基本ポートフォリオの妥当性の検証ということで、リターン、リスク、相関係数の状況を確認するものでございます。まず、リターンにつきましては、現行の基本ポートフォリオでの運用開始後、累積のベンチマークリターンと基本ポートフォリオの策定時における前提における期待リターンの比較でございます。リターンの中心となります内外株式が、策定前提の期待リターンを大きく上回る状況となっております。また、外国債券につきましても、先ほど資金運用部が御説明申し上げたように、為替リターンの効果もあり、期待リターンを上回る結果となっております。
 次に、リスクでございますけれども、各資産とも、策定前提を下回る状況でございます。相関係数につきましても、許容範囲内で推移しているということであり、全て問題ないことを確認しております。
 次に、管理の視点の2行目でございます。基本ポートフォリオからの乖離の管理でございます。各資産25%の中央値から4資産がどの程度乖離しているかということをチェックするものでございまして、内外株式につきましてはほぼ25%周辺で推移しているということでございますけれども、乖離の大きい内外債券も、昨年度より乖離が縮小しているという状況でございます。
 また、これも先ほど運用状況で御説明申し上げたところでございますけれども、第2四半期に外国株式が株価の上昇等を受けて乖離幅が拡大いたしましたけれども、リバランスを実施して、乖離幅の縮小を適切に実行しており、4資産のいずれも、ほぼ中央値の25%周辺で推移をしているという状況でございます。その他の項目につきましても、全て適切ないし許容範囲内であることを確認してございます。
 次に、新旧3階の運用でございます。右2つのブロックでございますけれども、この2つの運用についても問題がないことを確認しております。その結果といたしまして、運用リスク管理要領の各項目、この表の中央から右側でございますけれども、全て丸印となっており、問題ないことを確認してございます。
 以上が令和3年度の状況となります。今後のリスク管理でございますけれども、各国における金融政策の動向、地政学リスクなど資産運用を取り巻く環境変化等について、専門家等からの情報収集を積極的に行いまして、引き続き適切にリスク管理を行っていくとともに、新たなリスク管理手法等を研究し、高度化を進めてまいりたいと考えてございます。
 令和3年度の運用及びリスク管理の状況につきましては以上となります。よろしくお願いいたします。 


〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 続きまして、事務局より、2つ目の議題である令和3年度の厚生年金積立金の管理運用状況に対する評価について、説明をお願いいたします。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 資料2を御覧いただければと存じます。法令に基づきまして、今KKRから御説明をいただきました業務概況書につきまして、財務大臣は評価を行うこととされております。この評価につきまして御説明をさせていただきたく存じます。
 1枚飛ばしていただきまして2ページを御覧いただければと存じます。今し方KKRからも御説明がありましたけれども、真ん中の表を御覧いただきますと、中長期的な運用実績ということで、一番下の段を御覧いただきますと、実質的な運用利回りということで、左側から、5年平均が6.02%、10年平均が4.96%、一番右、15年平均が3.85%となっております。KKRの長期的な運用目標でございますが、こちらの分科会で1.7%ということでお示しをいただいておりますので、そのターゲットに照らしますと、年金財政上必要な運用利回りを確保していると評価できるかと存じます。
 1枚おめくりいただきまして3ページを御覧ください。一番上の四角の枠の1行目から御覧いただきますと、KKRは、管理積立金の管理及び運用にあたり、積立金基本指針及びKKRの管理運用の方針に定める事項を遵守することとされております。真ん中の辺りの(1)基本ポートフォリオの策定及び遵守状況を御覧ください。表の一番上、令和3年度末の資産構成割合とありますが、国内債券27.7%、国内株式23.7%、外国債券22.5%、外国株式26.1%というような資産構成割合になっております。こちらは、基本ポートフォリオ、基本的にこの4つの要素を4分の1ずつから一定の乖離幅の中に入っていればいいということでございますので、これは許容幅の範囲内に入っていると評価できます。
 また、(2)運用リスク管理でございますが、KKRは、運用リスク管理方針及び運用リスク管理要領を制定して、運用リスク管理委員会を設置しているなど、KKRからリスク管理について今し方御説明があったとおり、適切に運用しているものと考えています。
 それから1枚おめくりいただきまして、4ページを御覧ください。(3)ベンチマーク収益率の確保努力でございます。上の表の一番下の欄、超過収益率を御覧ください。一番右側を御覧いただきますと、資産全体でマイナス0.11%という形になります。これをどう見るかということなんですが、その下の文章の6行目を御覧いただきますと、委託運用については、単年度については、やはり収益率にばらつきが生じるということですので、中長期的に評価する必要があると考えています。KKRは、こうした点を踏まえまして、ファンドの解約等により、様々な評価の下に適切な対応を実施していると考えております。KKRは、全体としては、ベンチマーク収益率の確保に努めているものと評価できるかと考えます。
 (5)その他のところを御覧いただきますと、KKRは、コンプライアンスの推進や運用リスク管理の強化などに取り組んでいるほか、この分科会での御議論を踏まえたESG投資利活用の検討ということも行っておるということでございますので、積立金基本指針及びKKRの管理運用の方針に基づいて、管理積立金の管理及び運用を行っているものと評価できると考えております。
 最後に、もう一枚おめくりいただきまして5ページを御覧ください。今後の課題ということでございますが、大きくいって3つ挙げさせていただいております。1つは、引き続き中長期的な観点でベンチマーク収益率の確保に努めること。2つ目は、KKRの今後の運用手法の高度化・多様化に資する調査研究について、引き続き検討し充実に努めること。3つ目として、こちらの分科会の議論を踏まえましたESG投資の利活用について引き続き検討することということが今後の課題ということで考えられるかと存じます。
 簡単でございますが、以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。ただいまの資料1と資料2の説明について、御質問、御意見等ございましたらお願いしたいと思います。では、鳥畑委員お願いいたします。

〔 鳥畑臨時委員 〕 静岡大学の鳥畑です。よろしくお願いいたします。
 ちょっと確認なんですが、今日頂いた資料の名目の利回りという数字は、頂いた資料では全部一致しておりますが、名目賃金上昇率の数字がちょっとそれぞれ違っている。事前に頂いた資料を今日は訂正されたもので報告いただいたと思いますが、概況書に載っている数値とまたちょっと違っていて、さらに、今資料2で出された名目賃金上昇率、これは最新のものに替えるということで、暫定的な数字だという説明ですが、実質運用利回りを出すときの名目賃金上昇率が、今日頂いている資料ではばらばらなものですから、現時点ではどれが一番正しいものなのか、確認させていただければ 。

〔 西尾共済計理官 〕 御指摘ありがとうございます。事前にお送りさせていただいたものですと少し時点が古く、一部昨年のままであったり、あるいはKKRの参考資料1業務概況書が公表された時点でのいわゆる厚生年金本体の数字が入っていたりということでばらばらになっておりまして、大変失礼いたしました。本日お示しをしている資料1、資料2、参考資料4のものが確定値、いわゆる厚生年金全体の賃金上昇率となっておりますので、これを正しいと思っていただければと思います。なお、暫定値から確定値への変更に際しましては、1.7%というターゲットを確保しているかどうかといったところには影響はございませんでした。

〔 川北分科会長 〕 よろしいでしょうか。これは最終的には数字は揃えていただけるということでよろしいわけですね、はい、よろしくお願いします。
 では次の方、井堀委員お願いいたします。

〔 井堀臨時委員 〕 資料2の最後のところで、KKRの今後の運用手法の高度化・多様化に資する調査研究という話が出ているんですけど、高度化・多様化って、例えばどういうことを想定されているのか、何かあれば教えてください。

〔 川北分科会長 〕 では、これは事務局のほうから。

〔 西尾共済計理官 〕 御指摘ありがとうございます。年金資金の運用の手法は、日々年々進化をしているかと承知をしております。最近ですと、いわゆるオルタナティブ運用、例えば不動産を証券化して組成されたファンドでありますとか、あるいは少しデリバティブを組み込んだようなファンドなどもございますので、そういった新しい運用手法が出てくる中で、キャッチアップをしておいていただきたい、そういった趣旨も踏まえて書かせていただいております。

〔 川北分科会長 〕 井堀委員、よろしいでしょうか。 

〔 井堀臨時委員 〕 そういう手法は日々もちろん進化していると思うんですけど、特に最近、高度化・多様化をしなきゃいけない状況になっているんですか。これは昔からそういうことはやっていると思うんですけど、何か新しい手法を特に入れているとか、そういうことはあるんでしょうか。

〔 西尾共済計理官 〕 特にどの運用手法が要注意といったことはございませんけども、繰り返しになって恐縮でございますが、やはり年々進化している様々な運用手法をきちんとフォローしておいてくださいといったことでございます。

〔 井堀臨時委員 〕 分かりました。結構です。

〔 川北分科会長 〕 よろしいでしょうか。それでは、江夏委員が挙手されているようですので。

〔 江夏臨時委員 〕 ありがとうございます。資料2について、御教示いただきたい点がございます。4ページ目の委託運用についての御説明があった箇所で、定量的評価・定性的評価による総合評価を実施した結果、ファンドの解約等により適切な対応を実施しているという言及がございました。こちらについて、差し支えない範囲で結構ですが、定量的評価・定性的評価は具体的にどのようなことを評価の対象とされているかをお教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

〔 川北分科会長 〕 これはKKRさんからですかね。

〔 水村資金運用部長 〕 それでは、連合会のほうから御説明をいたします。
 まず、定量的評価というのは、分かりやすいところでは収益率ということになろうかと思いますけれども、もちろん実現した収益率を見るということが一番大事なことにはなるのですけれども、ただ独立してそれだけを評価するというのはなかなか難しいところがありますので、もともとファンドを採用するときに、このぐらいの目標のリターンをこのぐらいのリスクで上げたいと思いますとファンドが言ってきているわけなので、それに対して、言っているのと違うことになっていないかどうかというところが定量的評価の大きなところだろうと思います。
 それから、なかなか無いのかもしれませんけれども、こういうふうにやろうと思っているという定性的な目標に関して、そのとおりに運用したわけではないのに、定量的評価で合格になっているというケースもなくはないのだろうと思いますけれども、やはり我々としては、ファンドの運用を委託するに当たって、こういう考え方で運用すると言っていることは遵守をしていきたいと思っておりますので、仮にその定量的評価のところで短期的に想定しているようなリスク・リターンの関係が出ていなかったとしても、コミュニケーションを通じて、定性的にやろうとしていることは間違っていないなというような評価ができるのであれば、それは継続して運用していくということになりますし、逆に、数字は出ているのだけれども、何か言っていることが違いますねというようなファンドの場合には、もちろん今後ある程度時間をかけて評価をしていくということにはなろうと思いますけれども、なかなかうまく意思疎通が取れていないのではないかということが懸念されるような状況であれば、そこはかなり慎重にモニタリングをしていくというようなフェーズになろうかと考えております。

〔 江夏臨時委員 〕  ありがとうございました。具体のイメージが湧きましたので、こちらで結構でございます。ありがとうございます

〔 川北分科会長 〕 それでは、鳥畑委員の挙手がありますので、お願いします。

〔 鳥畑臨時委員 〕 今の問題に関わって、またちょっと教えていただければと思いますが、業務概況書のほうを見ると、実際、アクティブ運用とパッシブ運用のどちらがいいかどうかというのはそれぞれ違うようですが、特にアクティブ運用を含めて解約が非常に増えている、これは概況書の53ページのところで、令和元年度、2年度、3年度という3年間の時系列の数字が出ていますが、令和3年度が特に増えているといったときに、ここで急に増えたのは何か原因があるのか。今、定性的・定量的評価といったときに、何年間かけて評価された結果としてこういう事態になっているのかという部分をちょっとまた教えていただければと思います。

〔 川北分科会長 〕 これもKKRさん。
 
〔 水村資金運用部長 〕 連合会のほうからお答えさせていただきます。御指摘のとおり、数字としては上昇傾向にあるのではないかと思われるところもあるのかもしれないんですけれども、必ずしも数字で管理をしているというものではございません。スポーツのリーグ制みたいに、下位2位のチームが自動的に二部降格みたいな形で、数量的に一刀両断に切っているというようなことはございませんで、先ほど御説明をしたとおり、定量的・定性的両面から、我々が委託をするに適当なのかどうかということを判断するということが1つあるのと、これは先生のほうからも御指摘があったところなのですけれども、1年だけの成績で切ってしまうということはなかなかできないということでございまして、ファンドのほうからも長期で見てくれという話はもちろんあるわけなんですが、こちらとしても、1年だけで違うと判断するというのは難しいと思っていますので、何年か付き合ってみて、やはりこれは違うんじゃないかということになれば、最終的には解約に至るというようなことでございます。

〔 川北分科会長 〕 よろしいですかね。
 これはちょっと追加で質問なんですけれども、ファンドマネージャーの構成を一斉に変えられるとか何か、そういうことはKKRさんとしてやられていないのかどうか、確認なんですけれども。

〔 水村資金運用部長 〕 マネージャー・ストラクチャリングということをおっしゃっているんじゃないかと思うのですけれども、一気に今までのやり方を総取っ替えするというようなやり方を数年前までは取っていたというのは事実でございます。実際には、そういうような形に現状はなっておりませんで、マネージャー・エントリー制というやり方を採用しておりまして、実際に我々が採用していないファンドに関しても、ファンドのほうからデータの提供というものをしていただいている状況でございます。その中で、必要な交代が要るんだということになれば、エントリーしているものからピックアップし、実際に契約をしているファンドを解約するというようなやり方を取っていますので、そのときには、非常に小規模のメンバー変更になることもあれば、場合によっては大規模なメンバー変更になることもあるということでございます。ですので、その大規模なメンバー変更が、結果的に従来やっていたマネージャー・ストラクチャリング、実際にはリストラクチャリングといったほうがいいと思いますけれども、そのような形に見えることはあるのかもしれませんけれども、常にそれを繰り返しているというのは現状ではないということでございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 ほかに御質問があるでしょうか。なければ、また後で戻っていただくことも可能だと思いますので、次に進みたいと思います。
 続きまして、3つ目の議題でありますESGに関する取組状況について、まずはKKRさんのほうから説明をお願いいたします。

〔 水村資金運用部長 〕 それでは、右肩資料番号3-1に従いまして、連合会のESGに関する取組状況を御説明いたします。と申しましても、実は昨年度からは大きく変わっておりません。我々がやっていることは、当初からそんなに問題があるとは思っていないということでございまして、それをもう一度御説明をさせていただきます。
 ページ番号2になりますけれども、こちらのほうは専ら、冒頭に申し上げました厚生年金の運用に関することということでございます。基本的に株とか外債とかの運用の話になってきますので、こちらは新3階、旧3階ではそういったものを運用する資産クラスとして対象にしておりませんので、完全に厚生年金の話だと御理解をいただければと思います。
 その中で、この2ページ目に関しては、①と②というくくりがございます。①はジャッジメンタル運用、②がインデックス運用とさせていただいておりますけれども、いずれにしても、こちらのほうはアクティブ運用の範疇に入るものという整理でございます。この①のジャッジメンタル運用に関しましては、1つ目の黒四角に書いてありますとおり、令和3年の4月から全ての資産においてESGファンドのマネージャー・エントリーを受け付けているという状況でございます。それから2つ目のところ、ここはかねてやっているところでございますけれども、運用委託先に対してエンゲージメントの状況を定期的にモニタリングしているところでございます。今まさに事務局ではこれらの作業を行っているところでございまして、もうすぐエンゲージメント等に関するレポーティングも対外的にできるものというふうに鋭意進めているところでございます。
 それから3つ目の黒四角でございますけれども、個別ファンドに対して総合評価の項目の中にESG要素の考慮状況というものを設けておりまして、投資判断における考慮の内容を直接切り取るというような活動を行っております。
 それから②はインデックス運用でございますけれども、こちらのほうも、ESGファンドのマネージャー・エントリーを受け付けているというのは①と一緒なわけなのですけれども、2つ目の黒四角にありますとおり、現状は引き続きパフォーマンスについてモニタリングを行って、活用可能性あるいはこういう運用を行うことの効率性について情報収集を継続しているところでございます。
 以上が2ページ目でございまして、3ページ目に進んでいただきまして、パッシブ運用のほうでございます。こちらのほうは、もともと、最初の黒四角にありますとおり、政策ベンチマークに追随するということが最大の目標であります。ですので、なかなかESGの要素を考慮するというのが前面には入ってこないところではありますけれども、それでも、その中でエンゲージメントの努力をしている、してほしいといったようなことについては、パッシブ運用のマネージャーにも連絡をしているところでございます。
 それから3つ目の黒四角のところにあるのですが、外国債券の運用において、国際機関の発行するグリーンボンド等が購入できるように変更したというのは令和3年の3月でございます。ただ、グリーンボンドに関しましては、グリーンだから買うということではなくて、経済性を損なわないということが大前提だと考えているものでございます。昨今ではグリーニアムというものが大分縮小してきているというところもマーケットでは見られるところではありますけれども、そういったような状況も含めて、経済性を損なわないという前提でファンドマネージャーに購入を指示しているところでございます。
 実際に外国債券で持っているグリーンボンドの状況は、御覧のとおりでございまして、右下に389億円という数字がございますけれども、令和4年の10月の段階ではかなり大きなボリュームで持っているところでございます。
 それから④の国内債券のところは、専ら、先ほど申し上げました3階年金、国家公務員の方のための年金というところに関わってくるところでございますけれども、ここでもグリーンボンドあるいはソーシャルボンドといったようなものを前向きに購入しているところでございます。
 一番最後の行に数字がございますけど、ちょっと先ほどのタイミングとずれておりますが、令和3年度末の段階で415億円の保有というところでございまして、前年度末の235億からは、倍まではいきませんけれども、倍に近いところまで積み上げをしているところでございます。
 4ページ目でございますけれども、ESG推進活動ということで、これは前に報告したものと一緒ということになりますけれども、TCFDへの賛同を行っております。
 それから、②PRIへの関与については、これはまだ署名はしておりませんけれども、幅広く収集を継続していくところでございます。また、一番大事なところは、黒四角の1行目のところですけれども、原則として、PRIに署名しているマネージャーを連合会としては採用するのだということを公表しておりますので、実際問題として、実質的には全て署名しているアセットマネージャーを雇っているということでございますから、ここのところは、実質的にPRIの原則が貫徹した運用になっているということで差し支えないのではないかと考えています。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 続いて、3つ目の議題について、事務局より説明をお願いいたします。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 それでは資料3-2を御覧ください。ESG投資についてということで、私どもでご用意させていただいた資料でございまして、この資料の中では、大きく3つの観点から、足元のESGをめぐる状況につきまして見ていきたいと考えております。
 早速でございますけれども、まず1つ目として1枚おめくりいただきますと、1ということで、E、S、Gの各要素の視点で見た最近の動向ということでございまして、もちろん、EとSとGというのは相互連関している部分も相当程度あるかと存じますけれども、主にEとSとGという観点からどのようなことが起こっているかということで見ていきたいと考えております。
 おめくりいただきまして2ページを御覧ください。まず、ESGのEに関する最近の動向でございます。気温上昇等に伴う世界的な気候変動でございますけれども、社会経済システム全体にとっての大きなリスクであるということが明らかになりつつあるということで、右下のグラフを御覧いただきますと、全世界の経済損失額ということで、2010年代も非常に大きくなっているということが見て取れるかと存じます。
 もう一枚おめくりいただきまして、3ページでございます。気候変動への対応でございますけれども、投資先企業・投資家にとって、これは機会となるということかと存じます。左側を御覧いただきますと、COP21においても、様々な投資機会があるということが述べられておりますし、直近でございますと、COP27、先週にありましたけれども、そこでも化石燃料からの雇用転換などの重要性などが訴えられて、再生エネルギーに年4兆ドルの規模の投資が必要ではないかというようなことが謳われていると承知をしております。
 続きまして、4ページを御覧ください。ESGのSに関する最近の動向でございまして、近年、企業が社会的課題に取り組む姿勢というのが一層着目されているということで、左側を御覧いただきますと、人々が企業に取り組んでほしいSDGsの項目ということで、例えば上のほうから、「すべての人に健康と福祉を」ですとか、「働きがいも経済成長も」など、人々が非常に企業の活動においてSDGsというのを重視しているということが見て取れるということでありますし、逆に、そのようなことを軽視すると、例えば右側の表を御覧いただきますと、人権軽視とみなされ不買運動などにつながるということで、直近でも2019年、2021年にそういった事例があるということでございまして、こういったリスクが存在していると考えております。
 1枚おめくりいただきまして5ページですけれども、政府におきましても、新しい資本主義に取り組んでおります。右側、岸田総理のロンドン・ギルドホールでの演説を引かせていただいております。太い字の下のほうを御覧いただきますと、「民間の投資を集め、官民連携で社会課題を解決する」ということで、「社会課題の解決」ということも総理の口から実際に述べられていて、重要視しているということが見て取れるかと存じます。
 それから6ページを御覧いただきます。引き続きESGのSにつきまして、こちらは、今日は御欠席されていますが、加藤委員の研究成果を引かせていただいております。社会的リターンが投資リターンに結びつくことを示唆する研究結果ということでございまして、右側の緑の四角を御覧いただきますと、単数ではなくて複数の取組により、社会的リターンを同時に改善させることができれば、将来の投資リターンの改善に結びつくというような結果が得られたというようなことでございます。
 また、同じ研究成果という文脈なのですが、川北分科会長におかれましては、長年、証券投資を理論と実践の両面から研究を続けておられますけれども、このたび、来年の1月末から、長期投資家向けのベンチマークとして、京大川北/JPX日本株指数というのが公表される運びになったというふうに伺っております。この長期投資家向けの指数というものは、年金の投資の考え方と非常に軌を一にするかと存じますけれども、その作成過程ですとか、あるいはこれまでの御自身の研究を踏まえまして、ESGの観点から御示唆がもしあれば、後刻コメントいただければと存じます。
 では続きまして、7ページを御覧いただければと存じます。今度はESGのGについてでございます。我が国においては、昨年にコーポレートガバナンス・コードを再改訂しております。下の囲みを御覧いただきますと、自社のサステナビリティーについての取組を適切に開示すべきであると明示されておりまして、それを受けました開示というのが充実に向かいつつあるということかと存じます。
 それから8ページを御覧ください。投資家が重視するエンゲージメント、投資家との対話も、Gの要素だと思いますけれども、そのテーマとして、右側の下のほうにあります、重視しているエンゲージメントテーマということで、上位には「気候変動」、「人権」、「ダイバーシティー・インクルージョン」など、サステナビリティーに関する情報というのが重要になってきているということが見て取れるかと存じます。
 もう1枚おめくりください。9ページを御覧いただければと思います。現下の社会経済情勢に照らした留意点ということでございまして、これまでE、S、Gの各要素に照らして御説明をさせていただきましたが、現下を踏まえて、例えばロシアのウクライナ侵攻ですとか、これは世界的に非常に大きな影響を与えているわけですけれども、このE、S、Gを考えるに当たっても重要なことなのかなと思います。
 例えばEのところを御覧いただきますと、欧州では、ロシアからの天然ガス供給減少に伴い石炭火力発電を拡大する動き。それから、これは今年だけではありませんが、グリーンウォッシュの問題というのは引き続き懸念されています。
 それから左下を御覧いただき、Sを考慮する上でということで、天然資源や農産物につきましては、人権擁護に課題があるとされる国が主要な生産国であることも多いということですとか、あるいはロシアによるウクライナ侵攻の後に、資産運用会社の中にはESGファンドの中で軍需産業への投資を認める事例も、一部ではございますが、あると承知しております。
 それから右側を御覧いただきますと、Gを考慮する上でということで、ガバナンスが機能するということの大前提は、法治国家であるということですけれども、そうでない国があるというような指摘もあります。それから、2つ目の矢印ですが、脱炭素を目指す機関投資家には、温暖化ガス排出量の多い企業に投資しないダイベストメントという投資戦略を取っているところがあったわけですが、そういう方々がこの最近のエネルギーの供給動向ですとかを踏まえまして、エンゲージメントを通じた段階的移行を促す方向に切り替える動きも見られるということです。さらに、サイバーセキュリティーの重要性ということで、OECDとかSECでも御指摘をいただいているというようなことを伺っております。このように、様々な面において動きというのがあるかと存じます。この紙ですけれども、このようなことがあるからESG投資をやるべきではないというようなことを申し上げているつもりはありませんで、あくまで現状どのような動きが起こっているかということを叙述してみたということが趣旨でございます。
 続きまして、2つ目の観点として、政・労・使の視点で見た最近の動向ということで、11ページを御覧いただければと存じます。まず、政府としての取組ですが、新しい資本主義の中で、GX投資につきまして、今後10年間で150兆円規模を実現するとともに、世界のESG資金を呼び込むような取組をしております。
 それからもう1枚おめくりいただきまして、12ページです。金融庁におきましてサステナブルファイナンス有識者会議というのを開催しております。その第二次報告書がこの7月に出ていると承知しておりますが、その中でも、KKRを含むアセットオーナーがサステナビリティーを考慮しつつ最終的な受益者のために保有・受託資産の価値向上を図っていくための課題を共有することが重要だというような形で述べられておりまして、ESG投資について引き続き問題意識を持っているということでございます。
 続きまして、13ページを御覧ください。政・労・使の「労」の取組で、連合の取組を御紹介させていただきたく存じます。連合では、ワーカーズキャピタル、これは左側の四角にありますが、労働者が拠出した、または労働者のために拠出された資金を位置づけているものでございまして、その理念にのっとって、公的年金基金にESG投資を普及させるという活動方針がございます。
 それを受けまして、次のページ、14ページでございますが、連合のシンクタンクであります連合総研におきましては、ESGのSを考えるという文脈で、下にあるような8つの指標を提案いたしまして、企業による開示ですとか各指標の改善を促すことを検討しているという動きがあると承知しております。
 続きまして、15ページを御覧ください。政・労・使の「使」の取組でございまして、使用者団体、これは経団連の取組を御紹介したいと思います。下の左側を御覧いただきますと、絵のところの上になります。「ESG投資の更なる進化がSociety5.0の実現、SDGs達成に不可欠」ということでございまして、引き続きESG投資について経団連は前向きな姿勢であるということでございます。
 続いて16ページでございますけれども、経団連としましては、企業の目指すものや長期経営戦略により、結びつきやすいKPIとしてインパクト指標の活用を推奨しておりまして、この6月にもこのような形でのインパクト指標の活用の考え方ということを公表されております。
 続きまして、3つ目の視点として、消費者・企業・投資家の視点で見た最近の動向ということでございます。1枚おめくりいただきまして18ページを御覧ください。これは前回もお示ししたものでございますけれども、この消費者・企業・投資家の関係といたしまして、左側、絵のところで御覧いただきますと、投資家とあるところがKKRでございまして、こちらが委託先運用会社を通じまして企業に投資している。その収益を消費者に対して還元しているということで、企業と投資家と消費者の関係を示しているかと存じます。
 その上で、19ページを御覧いただければと存じますが、消費者のESG指向ということでございます。下の左側を御覧いただきますと、エシカル消費につながる商品・サービスつきまして、今後購入したいという赤と緑の部分につきまして、この3年で非常に大きくなっているということが見て取れるかと存じますし、右側を御覧いただきますと、環境に配慮した商品について、払ってもよいと思う価格プレミアム、全体的にもそれなりに高うございますけれども、若年層により高いということが示唆されているということでございます。
 もう一枚おめくりいただきまして、20ページでございます。消費者についてですが、投資の受益者である消費者は、企業がサステナビリティーを意識することを支持しておりまして、右側の下を御覧いただきますと、サステナビリティーを意識した商品の売上げが増加している事例というのをお示しさせていただいております。
 それからもう一枚おめくりいただきまして、21ページですけれども、今度は企業のESGへの取組と投資リターンということでございまして、ESGに投資すると、リターンは基本的に少し下がるのではないかというようなことを一般的に言われていることがあります。ただ、ここでお示ししている例なのですが、ESGを考慮しつつも、市場ベンチマークに遜色ないリスク・リターンの特性で運用できる可能性もあるのではないかということをお示ししています。当然ながら、これが全てにおいてESG投資に投資してもリスク・リターンが市場と全く一緒だということを申し上げているつもりはありませんで、こういった例もあるということをお示しさせていただいているつもりでございます。
 もう一枚おめくりいただきまして22ページでございます。企業のESGへの取組は、中長期的に企業の価値の向上につながり得るものであるということが認識されていると思います。左側の下を御覧いただきますと、企業のESGへの取組が企業価値に及ぼす影響ということで、上から2行目のところを例えば御覧いただきますと、障害者の雇用率につきましては、これは10年を超えるかもしれませんけれども、将来企業価値が上がるのではないかというようなことが示唆されておりますし、右側のKDDIとかNECとか日清食品ホールディングスですとか、ESGに関する取組の効果が6年後、7年後、8年後に出てくるのではないかというような開示をしているということでございます。
 続きまして、23ページを御覧ください。今度は投資家のESG指向ということでございまして、国内機関投資家のサステナブル投資残高でございますが、下の表の棒グラフを御覧いただきますと、これがサステナブルの投資残高の合計ということで、2020年にちょっと下がっておりますけど、基本的には右肩上がりだと御覧いただけるかと存じます。
 もう一枚おめくりいただきまして24ページですけれども、下の左側の紫のグラフが国内のPRIの署名機関数、この1年で増えておりますし、右側、TCFDの賛同金融機関数もこの1年で増えておるということが見て取れるかと存じます。
 以上が3つの視点から動きを見ておりましたが、前回の分科会で御議論いただきましたことにつきまして、主なご意見を3つの観点からまとめさせていただき、議論に供したいと存じます。
 まず、27ページを御覧いただければと存じます。1つ目の固まりとして、「投資環境をサステナブルに・社会的リターン」ということで、井堀委員から、外部経済効果の内部化というのを図るべきではないか。それから江夏委員、鳥畑委員、原委員からは、社会的リターンのほか、社会インパクトというようなことについて、より重視して考えていくべきではないかというような御意見をいただいております。
 それから2枚おめくりいただきまして29ページでございます。ESG株式指数の活用可能性等についてということでございまして、江夏委員からは、投資全般について機動性を確保していくべきではないかと。それから川北分科会長からは、指数作成会社との連携を図っていくべきではないか。それから寺井委員、原委員からは、GPIFが取組をしているので、その取組を参考にしていくべきではないかというような御意見をいただいております。
 それから2枚おめくりいただきまして、31ページ、3つ目の固まりとしまして、国際協調的な枠組みへのコミットメントについてということございまして、川北分科会長からは、欧米の年金基金の動向を踏まえた判断が必要ではないか。それから関委員からは、KKRがPRI署名に取り組めば、我が国全体としての費用対効果が期待できるのではないか。寺井委員からは、体制を整備した上で、PRIに署名されることは有意義ではないかというような御意見をいただいておるところでございます。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移らせていただきたいと思うのですけども、尾﨑課長のほうから、ちょっとコメントというか言及がありましたので、少しだけ私のほうで、資料はありませんけれども説明をさせていただきます。
 このたび、JPXというか、東証と共同で、長期に日本の株式に投資をするためのインデックスを作りました。名前としては、いろいろ経緯はあったのですけれども、結局、京大川北/JPXという名前を冠した株価指数になりました。この株価指数ですが、TOPIXを上回ることを一つの目標としている。そのためには、長期的に見て優良な日本企業を選ぶという、そういうコンセプトで200社を選んでいます。パフォーマンスは、長期的にはTOPIXを上回っているという状況になっています。
 ついでに、では、ESGの観点から、選んだ200社がどういう状況なのかを分析をしました。この分析には、私が長らく関わっていますESGの老舗というか先駆け的な調査会社であるグッドバンカー社という会社のデータを使っています。正確にはデータというか、その会社は995社の企業の調査をやっているのですけれども、その企業に対してスコアをつけているので、そのスコアを頂いて、そのすべての平均値と、我々が選んだ200社の平均値との比較を行いました。ほとんど我々の選んだ200社はそのグッドバンカー社の995社の中に入っているのですけれども、平均値を比べてみたところ、E、S、Gそれぞれの観点からグッドバンカー社のユニバースである995社の平均点を統計的に有意に上回っているという結果が出ています。
 今後は、ESGをメインに据えたような株価指数も研究開発をしていきたいとは思っていますが、結果的には、今選んだ200社はそういう状況になっているということをお伝えしたいと思います。
 それと同時に、KKRさんの資産運用委員会の委員である青山学院大学の白須洋子さんと一緒に、このグッドバンカー社のデータを使ったESGの研究を行ったことがあります。それは英文の論文になっているんですけれども、その結果によっても、グッドバンカー社のデータというかスコアの上位の企業に投資することによって、有意にTOPIXを上回るリターンが得られるという結果が出ています。特にEとSの観点からそういう結果が出ている。まあ、Gは弱いんですけれど。そういうことで、むしろその白須さんと2人で共同研究したものがベースになって、ESGの観点からこの200社の状況を見てみようという、そういう発想になったというのが正直なところです。
 すみません、ちょっと長くなりましたけれども、私からは以上です。
 それでは、質疑応答の時間に移らせていただきます。御質問、御意見等がありましたら、挙手をお願いいたします。では、江夏委員お願いします。

〔 江夏臨時委員 〕 ありがとうございます。2点ございます。まず1点目ですが、資料3-1の全体的にですが、金融庁で、実態を伴わない、いわゆるESGウオッシュについての懸念を背景に、2022年5月に、「ESG投信を取り扱う資産運用会社への期待」を公表しています。これは資料の3-2の12ページ目にございます、金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議でも取り上げられていますが、新しい資本主義実行計画のフォローアップ文書の中でも、年度末をめどに監督指針について所要の措置を講ずるというのが明記されており、本年度中に監督指針の改正を検討することになっています。こちらの動きについて、KKRもESGの考慮についてお取り組みをしていらっしゃると認識しておりますが、恐らく前回までのこの会合と局面が変わってきていると考えています。つまり、ウオッシュに対して、金融市場関係者も含めて懸念が高まっていることがありますので、KKRのいかなる風評リスクも回避するという観点からも、金融庁の動きもぜひ御注視されるとよいのではないかと思いました。
 2点目について、資料3-2の9ページ目です。現下の社会経済情勢に照らした留意点として、多くの先を見据えたキーワードが掲げられていたと認識しています。先ほど御説明にありましたサイバーセキュリティも大変注目をされるところですが、仮にそのほかに今後の留意点があるとすると、例えば、これは前回の会議でもキーワードとして挙げさせていただいたとおり、日本でもカーボン・クレジット市場の実証が2022年9月に始まっていることもあり、カーボン・クレジットが挙げられます。それから、KKRではTCFDには既に賛同されていますが、現在、TCFDの自然資本版のTNFD、こちらのフレームワークの検討が進められています。2023年の9月に最終提言の発表が予定されています。このように、自然資本関連の動きも注目が高まっておりますので、今後のテーマとして御留意されても良いのではないかと思った次第です。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 では、これはまずKKRさんからですかね、答えていただいて。

〔 水村資金運用部長 〕 では、まず連合会からお答えさせていただきます。いろいろな点を御指摘いただきましたので、全てお答えし切れるかどうか自信がないところでございますが、まず最初にあったポイントは、ESGウォッシュなるものに気をつけなければいけないということだと認識をいたしました。ESGウォッシュというのは、意図してESGウォッシュをしているのであれば、これはもう言語道断であり、評価の対象外だということだと思いますので、もちろん、そういうものに引っかからないようにしなければいけないということではあると思いますけれども、そういう意味では、我々は、先ほど御説明をしましたとおり、ESGインデックスよりは、ファンドマネージャーが人間の手で、人間の頭脳でハンドピックするもののほうが結果的には効率的なのではないかという仮説の下に運用をしておりますので、もちろん、ファンドマネージャーも引っかかってしまったというケースがないとは言い切れないと思いますけれども、そこはできる限りそういうことのないように、ファンドマネージャーとの意思疎通をしっかりと図っていきたいと思っております。全てのファンドマネージャーに対して、EとSとGという非財務情報を考慮するようにということで、ここはもう口を酸っぱくして言っているところでございます。
 問題なのは、意図せずESGウォッシュになってしまうというところだと思いますので、これは、先ほどもいろいろなところでESGファクターに効果があるのかないのかとかというような議論もありましたけれども、ここはやはり一定の時間を経る中で、そういうものの効果がある程度不滅の状態でいけるのかどうかというところも含めて、しっかりと研究を継続していきたいとは思っております。決して食わず嫌いと言うつもりではございません。モニタリング、ウォッチはしていきたいと思っております。
 それから、金融庁をはじめ、いわゆる当局のほうで、いろいろなガイドラインとか、監督指針とかというのはこれからも継続して出ていくんだろうと。それから、当局以外でもいろいろな団体が基本的な考え方というものを新しく打ち出していくということが今後しばらくは続くのではないかなと思いますので、そういった取り巻く環境に対するモニタリングというものはしっかりとやっていきたいと思っております。周りの環境の変化に気がつかずに唯我独尊でやっていくということにならないように、戒めてまいりたいと考えております。

〔 川北分科会長 〕 それでは事務局のほうから何か追加で何かございますでしょうか。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 先生の御指摘のとおりだと思いますし、12ページの資料を御覧いただきますと、一番左側の下のところに、概要側で、ESG投信に係るモニタリング結果を5月に公表して、年度末を目途に監督指針を改正ということで、2行ほど触れられている、これがまさに江夏委員御指摘いただいたところでございまして、そういったところもよく我々としても注視して見ていきたいと考えております。様々な御示唆ありがとうございました。

〔 川北分科会長 〕 よろしいでしょうか。では、寺井委員の挙手ありますので、寺井委員お願いいたします。

〔 寺井臨時委員 〕 御説明をいただきまして、どうもありがとうございました。私の方からは3点質問させていただけたらと思います。
 まず最初の2つは、KKRさんにお伺いしたいんですけれども、資料3-1の2ページ目で、参考1、主要な国内株式ESG指数の超過収益率、数値がそれまでの数値とはちょっと傾向が違っていて、例えばロシアのウクライナ侵攻やエネルギー価格の高騰のような突発的な出来事、ショックの影響を受けているでしょうかというところなんです。もしそうだとしますと、GPIFのESG活動のレポートなんかを拝見しますと、例えば過去5年といった中長期でも見ていますので、KKRのほうでも、例えば5年間の移動平均を取るなど中期的な視点で見るということもあってもいいのではないかなと思いました。質問といいますか、意見かもしれません。
 それから、こちらは質問なんですけれども、4ページのほうで、最低履行要件の引上げや年次レポーティングのフレームワークについて、PRI事務局・署名機関と対話しながら情報収集を継続中ということでした。現在どのような感触を持たれているのか、差し支えない範囲でお聞かせいただけましたらと思います。
 それで、あともう一つなんですけれども、これは資料3-2の22ページで、企業のESGへの取組が中長期的に企業価値の向上につながり得るといったお話がありました。左側の表の基になっている文献、エーザイの2020年の統合報告書を読んでみたんですけれども、5年から10年、あるいはそれ以上の期間を経て、ESGのKPIが企業価値に正の効果を持つことが確認できたという内容だったんですが、推定方法が詳細に説明されていなかったのと、データ観測数が少ないという印象を持ちまして、推定結果を慎重に解釈する必要があるなと私自身は感じました。
 そこでなんですけれども、このESGの企業価値への長期遅延浸透効果、これが存在するという結果、あるいはこういう見方が説得的というか、納得感があるものなのかどうかということについて、もし可能であれば、ESG投資が御専門の江夏委員のお考えを伺うことができたらと、また、川北先生にも、ESGの企業価値への長期遅延浸透効果について、何かお考えをお聞かせいただけたらと思います。
 私のほうから質問は以上です。よろしくお願いします。

〔 川北分科会長 〕 少し挙手が多いので、まとめてお答えいただくということにしたいと思います。次に、原委員ですね、お願いいたします。

〔 原臨時委員 〕 ありがとうございます。ESGのところで、質問も含めてなんですけれども、KKRさんの資料3-1の、皆さんも同じところを言っているのかと思うんですが、3-1の最初の2ページの②のところ、インデックス運用に関する取組と書いてある、その下のところについてです。全体的にESGについて、やはりいろいろな課題というか、留意点もあると思いますけれども、サステナブル的な社会の実現に向けて、前にも言ったように、責任ある機関投資家としての姿勢を見せていくということは引き続きいろいろなところで、ESGに限らず求められてくると思います。例えば公開されている情報を見ると、GPIFについては2017年度からESG指数に基づいた株式投資を行っているということが書かれていて、現在ではESG指数に連動するパッシブ運用の運用資産額も結構大きいものになっているというようなことが公開されています。
 それと特に比較するとか、そういう意味ではないのですが、この②のところの指数Aから指数Hまで、この8つの国内株式のESG指数市場に対する超過収益率ということに注目しているところから見ても、やはりKKRさんはESGの株式指数はアクティブ運用として捉えていらっしゃると感じられます。このアクティブ運用というのは、ESGに限らず、ファンドの過去のパフォーマンスから将来のパフォーマンスを予見するのはなかなか難しいというか、不可能と一般的に言われていると思うのですが、そうすると、これはESG株式指数に限ったことではないんですけれども、過去のパフォーマンスにとらわれることなくファンドを採用するか否かということを検討していくということについて、KKRさんがどのように考えていらっしゃるかというのをお聞きしたいと思っております。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。それでは続きまして、関委員お願いいたします。

〔 関委員 〕 ESG投資について、2点KKRに、質問がございます。
 財務省から御説明いただいた資料3-2の各種の視点に賛同します。10ページで御説明いただいた点も、ESG投資を検討する際に、これらの点に留意する必要性が高まっていることを示していると受け取りました。幾ら投資効果が高いとしても、人権を軽視するような団体に投資してよいのかという点が問われているということかと思います。未来を担う若者が環境問題における先進国の責任を問うたり、人権軽視とみなされる商品の不買運動がおきたり、貿易においてフェアトレードが広まるなど、人権や貧富の格差などに配慮した取組が世界的に重視されております。
 先ほど、ESGウオッシュについても気をつけているとのことでしたが、KKRでは、こうした点をどの程度、どのように投資において加味されているか、もう少し御説明をお願いします。
 2点目です。先ほどの寺井委員の御質問とかぶりますが、KKRではPRI、責任投資原則への署名を決意表明されており、資料3-1の4ページで、原則としてPRIに署名しているマネージャーを採用することを公表していることから、実質的にPRIに関与しているとの御説明がありました。その状況について、もう少し詳しく御説明をお願いします。
 また、PRI事務局・署名機関と対話しながら幅広く情報収集されているとのことですが、どのような情報を収集されていますでしょうか、御説明をお願いいたします。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。それでは、鳥畑委員お願いいたします。

〔 鳥畑臨時委員 〕 度々すみません。私も大きく分けると2点質問というか、教えていただければということなんですが、KKRさんのほうではベンチマーク収益の確保に努めるというのは前提としながら、ESG要素の考慮を委託先に要請をしているということです。このESG要素の考慮を要請するというのは、具体的にどういう中身で共有をされているのか。PRI(責任投資原則)のホームページなんかで、ESG要素を考慮するというのはどういうことかということで、インテグレーションとスクリーニングと、あとテーマ設定ですね、この3つの手法というものを例示をしている。例えばスクリーニングであれば、ネガティブ・ポジティブあるわけです。ですから、こういう手法も含めてESG要素を考慮するということを具体的に議論、共有されているのか。
 これに関わって、概況書の26ページのところで、議決権の行使状況についての資料がありまして、気候関連についてという部分に限定してですが、国内外の株式で、議決権をどう行使したのか、会社提案・株主提案でそれぞれかなり賛成・反対が分かれる、委託先の行動が分かれているように見えるんですが、このとき、どういう基準で賛成したのか、反対したのかまで含めてお互い共有されているのかどうかというところが分かれば、教えていただきたい。
 もう1点、すみません。このESG要素を考慮するといったときに、サステナブルファイナンス有識者会議の二次報告書では、ESGを考慮するというのは受託者責任には反しないということで、最終的な受託者の便益を拡大するという表現が使われていて、一次報告書のときの便益の使い方というのは、かなり経済社会全体に幅広い意味で便益が使われているのに対して、二次報告書では、経済社会全体の便益と並んで、最終的な受益者の便益という表現になっていて、これについてはアセットオーナーとして、例えばKKRなどが知見を深めていくということが求められているわけです。
 そこでちょっと私自身確認したいのは、例えば今日、資料の3-2、消費者の側から見た18ページで、投資の収益というのを受託者、受益者の利益と捉えているような。ただ、サステナブルファイナンスの報告書を見ると、この最終的な受益者の便益と、また広い意味で使われていて、インパクト投資も含めて社会全体を変えていくと、回り回って受託者といいますか、年金基金を出している勤労者側にもかなり恩恵が回っていくということが意識されているのかなと私なりに勝手に読んでいるんですけども、その辺り、最終的な受益者の便益というのは、KKRさんはどういうふうに理解されているのかなというのを教えていただければということです。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。それでは、井堀委員お願いいたします。

〔 井堀臨時委員 〕 ESG要素というのはかなり定性的なところが多いと思うんですが、要するに社会的にもっともらしいというのはいろんな側面から捉えることができて、なかなか定量的に評価するのは難しいと思うんですけど、KKR全体の資産運用の中で、ESG投資に関わるような資産運用の定量的な重みがどのくらいあるのかという、目安でもいいんですが、何らかの数値的なものが言えるのかどうか。もしもそれが言えれば、数値目標としてどのくらいESG投資の比重を今後増やしていくのか、そのようなことが目標の設定としてあり得るのかどうかというのは、ちょっとお聞きしたいんですけど。まあ、ESGといってもいろんな要素があって、いろんなファンドがESGを考慮していますといっても、どういうものかというのはなかなか難しいと思うんですけど、全くESGと無関係のものと多少ESGと関係あるものを分類できれば、それなりの数値目標も設定できるのかなと思うので、その点が質問です。
 それから意見ですけど、ESG投資は、そもそも基本的には収益を最大にするということは両立しにくい、つまり社会全体に広く、あるいは現在だけじゃなくて将来にも便益が及ぶような、そういう投資を想定しているので、収益率のところで必ずしも市場収益率あるいはベンチマーク収益率を両立することをあまり考えなくてもいいんじゃないかという気もするんです。特にKKRのような公的な性格の強い資金運用の場合は、多少収益率がある程度犠牲になってもESG投資の社会的なメリットが非常に大きいんだという、そういうメッセージで社会全体に、ESGといいますか、国民全体の、あるいはマーケット全体のそういったESGに関する関心を高めていくように、そういう役割も必要じゃないかと思うので、あまり収益率にこだわらなくてもまあいいんじゃないか。だから、どこまでこれを実現するかというのは難しいと思うんですけども、そういう方向で、少しESGについて、よりメリットのほうを強調するような形で、何か議論したほうがいいんじゃないかと、それが1点です。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 それでは最初に、江夏委員と私に、中長期の企業価値とESGの関係に関して質問があったと思いますので、それに答えたいと思うんですけど、少し時間が押していますので、簡潔にお願いできればと思います。では、江夏委員からよろしくお願いします。

〔 江夏臨時委員 〕 ありがとうございます。私自身はESGの企業価値への長期遅延浸透効果が存在するとの指摘について、基本的には違和感はないと思っております。ESGへの取組について、似たような概念として、非財務要素が企業価値に寄与し得るというような観点がありますが、これに関して様々な先行研究が存在します。例えば、ニューヨーク大学のバルーク・レブ教授や、米国の知的財産の評価を手がけるオーシャン・トモの分析は知られているところです。あと、日本につきましては、例えば経済産業省と東京証券取引所が取り組んでいる「なでしこ銘柄」、これは女性活躍推進に優れた銘柄を選定、公表するものですが、同銘柄に選定された企業の株価のパフォーマンスがTOPIXを上回っているというような分析結果もあります。一方、非財務要素を財務要素、貨幣価値に織り込むというのはとても難しいことではありますが、現状、エーザイを始めとしたいくつかの企業が検討、取り組みを始めています。国際的にも、例えばハーバード大学のジョージ・セラフェイム教授のグループがインパクト加重会計というものを研究しているなど、様々な動きが観察されています。
 ということで、様々な研究もあり、ESGの企業価値への浸透効果の存在について基本的には違和感はございません。ただし、御指摘には共感しております。例えば、実証分析に際して、様々な要素が数値に影響し得る、分析対象となるサンプル数が少ない、定量面のみならず定性面も随分影響してくるのではないか等について、投資家からも指摘を受けることがあります。個人的には、ESGの歴史は僅か20年程度のものですので、パフォーマンスの精度を上げるという点では、より長期間、より多くのサンプルで分析、それから実証分析の蓄積が求められるのではないかと考えています。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 私にも質問がありましたので、簡潔に答えます。
 長期投資と企業価値というか、我々はパフォーマンスの評価をやっているんですけれども、これは白須さんと私が共同で出した英語の論文なんですけれども、検索していただければ、そこで見ることができると思います。それで、私自身は、優れた企業というのは、ESGという観点ではなくて、社会が何を要請しているのか、それは現在は環境とか社会性ということだと思うのですけれども、それに機敏に応えていくという企業だと思います。それが結果として、3年とか5年とかの中期というのかな、そのパフォーマンスを高めると私は理解をしています。
 それともう一点、インデックス運用に関して言うと、やはりこれはウオッシュの可能性が結構あります。ウオッシュをしなくても、ほかの投資家がそれを追いかけることによって、その指数に組み込まれている企業の株価が非常に高くなりえる。ということで、指数投資をするに際しても、ウオッシュはちょっと別にして、投資家としていち早くそういうESGに関する動きを察知して投資することが必要だろうと私自身は思っています。
 以上です。
 それでは、各委員の質問に対しまして、まず、KKRさんのほうからお答えいただければと思います。

〔 水村資金運用部長 〕 非常にたくさんの御意見、御質問を頂戴しましたので、ちょっと私には一問一答で回答する能力がないということをまず初めに申し上げなければいけないと思いますので、私の理解で再構成をした形で回答させていただければと思います。
 まず、御質問にお答えするということではないのですけれども、どうしても、私どものほうから説明をした資料の中で、これこれはしていません、例えばインデックス投資はしていませんというような否定文で終わっている部分がありますので、なるべくそういうとこが突出しないように説明をしたつもりなのですけれども、御認識として、連合会としてはESGに後ろ向きなのではないのかと思っていらっしゃるのではないのかなというような懸念をしているのですけれども、決してそのようなことはございません。連合会といたしましても、ESGを考慮した投資というのは極めて重要なミッションだと考えております。特に、EとSとGというような形で限定列挙して、それを収益につなげていくということではなくて、広く非財務情報としての投資判断への活用ということで考えております。あるところで、非財務情報じゃなくて未財務情報だというような話を言っている人もいたのですけども、つまり、今日の非財務情報も、いつの日にかは財務情報になるんだというような解釈なのかと思いますけれども、そういうことも含めて、財務情報になっていないものというものを活用していくということが非常に重要だと思っています。
 それから、これは私どもの投資原則ではなくて、GPIFさんの投資原則なので、ちょっと恥ずかしいのですけれども、彼らの投資原則の第4にはこのようなことが書いてあります。投資先及び市場全体の持続的成長が運用資産の長期的な投資収益の拡大に必要であるとの考え方を踏まえ、被保険者の利益のために長期的な収益を確保する観点から、財務的な要素に加え、非財務的要素であるESGを考慮した投資を推進するとなっておりまして、全くこのとおりだと私どもも考えているところでございます。
 そうした中で、幾つかお話にあったと思うのですけれども、インデックスについては、確かに今年度、戦争が起こってインフレが急激に高まってというような大きな環境変化がありましたので、この令和4年度だけの状況を見て判断するというのは適切ではないだろうと思いますから、こういったESGのインデックスというものも含めて長期で見ていくというような態度は必要だろうと思っています。ですので、この令和4年度の数字だけ見て、やはりESGは駄目なんだというような短絡的な評価をしようと思っているわけではございません。
 それから、ESG要素の具体的な考慮の方法なのですけれども、これは、こういうふうなやり方ですと決めてかかるという話ではないと思っています。ですから、一部の御意見で、インテグレーションなのか、あるいはダイベストメントなのかというような議論があったと思いますけれども、最終的にはインテグレーションというような形だと思っています。また、そのインテグレーションに当たりましては、我々アセットオーナーがアセットマネージャーに対して、こういうインテグレーションをするようにしてくれというふうにちょっかいを出すということは、これは本来の立ち位置をずらした形になってしまうと思いますので、そこは最終的にアセットマネージャーがどのように判断するかということに依拠してまいりたいと思っています。ただ、もちろん丸投げではいけないと思っていますので、実際にどういうふうに判断をして、それが投資的パフォーマンスとしてどういうふうに出ているのか、あるいはこれから出てくるのかといったような事柄については、アセットマネージャーとの不断のコミュニケーションの中でしっかりと把握をしてまいりたいと考えております。ですので、ここの部分がESGからのリターンですと分類をしていくということは、あまり適切ではないだろうと思っています。全体のリターンの中にESGが織り込まれているというのが、やや理想論なのかもしれないですし、精神論かもしれませんけれども、方向性としてはそういうことではないかなと思っています。
 ですから、そうした中でいうと、パッシブ運用ですね、実際に我々の株の運用でも8割がパッシブ運用ということになっていますけれども、そこのところがESGの考慮という前に市場の動向のトラックということがまず優先されるというところでありますので、このパッシブ運用の中でESGをどのように織り込んでいくのかというのはかなり難しい課題ではないだろうかと考えております。
 あと、受託者責任関係のお話もあったと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、ESGを考慮するということが受託者責任に反するものだとは全く考えておりません。ESGというものを織り込んだ中で、どのように課せられた収益というものを得ていくのかという方向を見ていきたいと思っております。
 あと、幾つかPRI署名について触れていただいたところがあったと思いますけれども、PRIの効果については、現状で問題なく得られているのではないかと思います。ESGの考慮とともに、PRIに署名をしているところをアセットマネージャーとして選んでいますので、彼らの投資行動の中にPRIの精神というものが自然と織り込まれているのだろうと考えております。
 一方で、我々自身がPRIに署名をするということのメリットとデメリットを比較衡量いたしますと、現時点では、連合会にとっては、残念ながら明らかにデメリットのほうが凌駕しているというような状況にあるということだと認識をしておりますので、現時点で署名をするというのは難しいところではなかろうかと思っております。ここはいろいろな情報収集も含めて、それから昨年度も出ましたけれども、PRI署名に関しては、ネガティブな情報というのもあったりしますので、そういったものも広く情報収集をしながら、最終的に我々がESGを考慮する投資というものにどういう形で具体的に寄り添っていけばよいのかというのを継続して検討してまいりたいと考えております。
 申し訳ございません、全てについてお答えになっていないかもしれませんが、以上、御説明とさせていただきます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 では、事務局から追加で何かありましたら。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 事務局からは特にございません。

〔 川北分科会長 〕 よろしいですか。
 それでは、ほかに御質問もまだあろうかとは思いますけれども、時間が大分押してきましたので、取り急ぎ、次の議題に進みたいと思います。
 事務局より、4つ目の議題であります、マイナンバーカードの健康保険証利用の対応状況及び短時間労働者への国家公務員共済組合制度の適用拡大状況について、説明をお願いいたします。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 では、資料4を御覧ください。共済をめぐる最近の状況として2つ御説明をさせていただきたいと思いますが、その1つ目、マイナンバーカードの健康保険証利用についてということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、1ページを御覧ください。真ん中辺りにあります令和4年10月13日の河野大臣発言の下線部を御覧いただきますと、「2024年秋に現在の健康保険証の廃止を目指すということにいたします」とご発言されています。このご発言なども踏まえまして、10月末に閣議決定されました総合経済対策の中で、下線部を御覧いただきますと、「健康保険証との一体化を加速し、令和6年、すなわち2024年秋に健康保険証の廃止を目指すための環境整備等の取組をしていく」ということでございます。
 これにつきまして、当然共済組合としましても、大きな影響があるかと存じます。今後、対応を進めていかなければいけないということですが、課題を示しておりますのが次のページでございます。2ページを御覧いただければと存じます。大きく言って課題は3つあるかと存じます。
 まず1点目の黒丸ですが、共済組合員等への普及ということで、マイナンバーカードによる健康保険証利用登録でございますけれども、下の表を御覧いただきますと、国家公務員共済組合、上の欄でございますが、申込率30.5%ということで、3割をようやく超えたというところとなりまして、全体のその下の24.9に比べれば高いので、多少優秀なんですが、ただ、これは令和6年の秋までには100%を目指していかなければいけないということで、普及をきちっとやっていく必要があります。
 それから2点目の黒丸ですが、共済組合等が運営する医療機関の課題等ということでございまして、1行目にありますが、保険医療機関においては、令和5年4月、すなわち来年の4月からマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認の導入が義務化されるということでございます。KKR病院につきましては、これは全て御対応いただいておりまして、来年3月までにきちっと運用開始ができるということが完全にめどが立っております。ですが、1つ目のアスタリスクになりますが、保険医療機関の指定を受ける共済組合等が運営する診療所は18か所あるわけですけれども、こちらがまず来年の4月までにきちっと対応していく必要があると。加えて、2つ目のアスタリスクですが、保険医療機関ではない共済組合等が運営する診療所においてもオンライン資格確認ができる仕組みを厚労省で構築中でございますので、これを令和6年秋までにきちっと対応する必要があると。この診療所は242か所ありますので、これもきちっと対応していく必要があると考えています。
 それから3つ目の黒丸でございますが、共済組合の課題等ということで、マイナンバーカードの取得は義務ではありませんので、引き続き任意の仕組みになっています。ですので、マイナンバーカードがない方というのもあられるかと思いますので、そういった方には代替措置ですとか、組合員の皆さんに影響を与えない、不利益がなるべく生じないような形での事務手続の検討というのをしていく必要があるだろうと考えております。これも厚労省のほうで検討されているとのことでございますので、それに倣ってきちっとやっていきたいと考えております。
 以上がマイナンバーカードの健康保険証利用についてでございまして、次に資料5を御覧いただきますと、この10月から開始されております短時間労働者への共済組合制度の適用拡大状況についてということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、前回も御報告させていただいておりますけれども、令和2年の法律におきまして、赤字を御覧いただきますと、「厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付を適用する」と書かれております。それを具体化しておりますのが、もう一枚おめくりいただきまして2ページの赤い文字のところ、具体的な対象者ということでございまして、これを政令で定めまして、今年の10月から施行しているということでございます。
 具体的には表で御覧いただくのがよいかと存じますので、1枚飛ばしていただいて4ページを御覧いただければと存じます。上が適用拡大前、下が今年10月からの適用拡大後ということで御覧いただければと存じます。左上を御覧いただきますと、紫が共済、ピンクが健保の適用者でありまして、適用拡大前はフルタイムの方だけが共済の適用を受けておりまして、短時間労働者の方々はピンクであったというところが、下を御覧いただきますと、10月適用拡大後は、フルタイムの方も短時間労働者も医療保険について共済組合の対象になるということでございます。
 なお、年金保険につきましては、適用関係は変わっておりません。
 この適用拡大がどの程度の規模で影響があったのかということが次の5ページになります。上の色がついた表を御覧いただきますと、一番上の欄の適用拡大前の右側を御覧いただきますと、加入者数が210.7万人という形になっております。その次の欄の適用拡大による新規加入者というのが35万人ということであり、足して245.7万人というのが適用拡大後の推計値でございます。およそ2割弱の方々が新しく入ってこられたと考えております。
 どんな方が実際入ってこられたのかということなのですけれども、御覧いただきますと、下の表になりますけれども、日本郵政共済組合におかれては、郵便局などでの非正規職員の方々など、文部科学省共済組合においては、国立大学法人の非常勤職員の方々など、それから厚生労働省共済組合におきましては、ハローワークあるいは労基署の非常勤職員などの方々が入ってこられているのが主な内訳でございます。
 では、この適用拡大によって掛金率ですとか負担金率にどのような影響があるのかということをお示ししているのが、最後の6ページになります。上側を御覧いただきますと、適用拡大以前からの組合員の構成でございまして、適用拡大前からの組合員数が109万9,000人、平均標準報酬が41.9万円/月、平均医療給付費が年に22.3万円という形になっています。そしてその下を御覧いただきますと、適用拡大により加入した組合員の方々ですが、組合員数が28.7千人、平均標準報酬が22万円/月ということで、適用拡大以前からの組合員の方と比べますと、大体半分ぐらいの水準になっております。平均医療給付費でございますけれども、年19.9万円ということで、ほぼ同じような水準になっております。ですので、右側を御覧いただきますと、適用拡大前と比べて給付水準が同程度で、平均標準報酬が半分程度と見込まれる者が新たに加わることから、掛金率・負担金率につきましては上昇する要因になるということが、今回の適用拡大の影響ということでございます。
 以上でございます。ありがとうございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。ただいまの資料4、5の説明について御質問、意見等がありましたらよろしくお願いします。
 ございませんでしょうか。それでは、資料4、5について、これで終わらせていただきます。
 全体としてですが、ほぼ時間になりましたので、このあたりで質疑応答を終わらせたいと思いますが、これだけは特別に聞いておきたいというのがありましたら、あと数分はございますので。
 よろしいですか。では、これで今日の審議会を終わらせていただきます。
 最後に、事務局から何かありましたら、よろしくお願いいたします。

〔 尾﨑給与共済課長 〕 本日は、委員の皆様方それぞれの専門的な御見地から様々な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。本日の御意見も踏まえまして、厚生年金法第79条の8第2項に基づくKKRの管理積立金の管理及び運用の状況についての評価につきまして、12月下旬、来月の下旬に財務省ホームページにて公表させていただきたく存じます。
 なお、繰り返しになりまして誠に恐縮ですが、資料1、資料2及び参考資料4につきましては、公表日までのお取扱いに御配慮を賜りますようお願い申し上げます。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 それでは、本日はこれで終了させていただきます。御多用の中、どうもありがとうございました。

午前11時54分閉会