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財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会(令和3年12月1日開催)議事録

第32回
財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会議事録

令和3年12月1日(水)
於:財務省本庁舎4階第3特別会議室


午後1時00分開会
〔 川北分科会長 〕 お待たせしました。時間になりましたので、ただいまから財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会を開催いたします。
 皆様には御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日の分科会はウェブでの開催となっており、委員の皆様には、テレビ会議システムを通じて御参加いただいております。
 本日は、国家公務員共済組合連合会より、令和2年度の年金積立金運用に関する業務報告書について説明をいただいた後、事務局より、令和2年度の厚生年金積立金の運用管理状況に対する評価について説明をいただきます。また、ESG投資について、国家公務員共済組合連合会より、取組状況を説明いただいた後、事務局からも、最近の動向を説明いただきます。最後に、事務局より、マイナンバーカードの健康保険証利用の対応状況について説明をいただきます。
 議事に移ります前に、この夏、主計局の異動がございましたので、事務局から御紹介をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

〔 八幡主計局総務課長 〕 主計局の総務課長の八幡でございます。
 本日は御多用のところ御参加いただきまして、ありがとうございます。本来でありましたら、給与共済課長から御紹介させていただくところでありますけれども、課長の吉田が、現在内閣官房に、先般の経済対策で出てきた10万円の給付の関係で、それを担当する内閣参事官を兼務することとなり、本日は大変申し訳ございませんが、分科会に参加できませんので、私から事務局を紹介させていただきます。
 まず、給与共済課担当の主計局次長の坂本でございます。

〔 坂本主計局次長 〕 担当次長の坂本でございます。
 委員の皆様方におかれましては、平素より御指導賜りまして、心より御礼申し上げます。また、本日は大変お忙しい中、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、年金積立金の運用状況に関する評価報告書等々について議題とさせていただいております。委員の皆様方におかれましては、忌憚のない御意見を賜りますよう、何とぞお願い申し上げます。

〔 八幡主計局総務課長 〕 続きまして、名前だけの御紹介で恐縮でございますが、まず、共済調査官の大石でございます。

〔 大石共済調査官 〕 大石でございます。よろしくお願いいたします。

〔 八幡主計局総務課長 〕 課長補佐の北原でございます。

〔 北原課長補佐 〕  北原でございます。よろしくお願いいたします。

〔 八幡主計局総務課長 〕 共済計理官の西尾でございます。

〔 西尾共済計理官 〕 西尾でございます。よろしくお願いいたします。

〔 八幡主計局総務課長 〕 本日は、国家公務員共済組合連合会から、松村専務理事、水村資金運用部長、宮島運用リスク管理室長にお越しいただいております。
 なお、本日の資料1、資料2及び参考資料4につきましては、現時点で未公開のデータが使用されておりますことから、議論の内容で市場に影響を及ぼす等のおそれがあるものもございますので、議事要旨、議事録と併せ、評価結果の公表日まで非公開とさせていただくことを提案させていただきたいと思います。
 また、配付させていただいている資料1、2及び参考資料4につきましては、12月下旬を予定しております公表日まで、取扱いに注意していただきたいと思います。

〔 川北分科会長 〕 事務局より、資料の一部と議事要旨、議事録について、評価結果の公表日まで非公開とするという提案がございました。この点につきまして、特に御異議等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、御異議なしということですので、そのようにさせていただきます。
 それでは、議題に入ります。
 初めに、国家公務員共済組合連合会より、1つ目の議題である令和2年度の年金積立金運用に関する業務報告書についての説明をお願いします。

〔 水村資金運用部長 〕 資金運用部長の水村と申します。よろしくお願いをいたします。
 資料番号、右肩に資料1と書いてあります、タイトル「令和2年度 業務概況書 概要版」、こちらに従いまして、昨年度の業務概況を御説明させていただきます。
 ページをおめくりいただきまして、3ページ目を御覧いただけますでしょうか。3ページ目、上にグラフがございますけれども、令和2年度、令和2年4月から令和3年3月末までの厚生年金の運用を行うに当たって、ベンチマークとするインデックスの推移をグラフに表現しております。緑色の線が外国株、赤い線が国内株ということでございまして、緑色は最後160に近いところまで上っているということでございます。また、国内株も150に迫らんというところでございまして、内外の株価が非常に堅調に推移をしたというところでございます。
 具体的に数字を確認していただくために、左下の数表を御覧いただければと思います。令和2年度、4つの四半期ごとに区切っておりますけれども、一番右側の列、通期の数字を御覧いただければと思います。
 一番上の行が国内債券、NOMURA-BPI(総合)ですけれども、マイナス0.7%ということで、マイナスのリターンでございましたが、次の行、国内株、TOPIXでございますが、42.13%、その次の行、外国債券、FTSE WGBI、除く日本でございますけれども、5.43%、外国株、下から2行目ですが、MSCI KOKUSAI、59.79%ということで、内外の株価が42%、59%と非常に高い利回りを記録したということでございます。
 4ページ目に移っていただきますと、運用資産額の状況が確認できるところがございます。一番右側の列を御覧いただければと思います。令和2年度末の簿価と時価と評価損益額が並べてございます。
 一番右側の列の評価損益額の一番下を御覧いただきますと、14,913という数字がございます。1兆4,913億円の評価益ということでございました。
 その1年前、ずっと左に行っていただきますと、令和元年度末の評価損益額の数字が同じ欄にございますけれども、3,130億円ということでございましたので、令和2年度の1年間で1兆円を超えるような評価額の増加になったということでございます。
 5ページ目を御覧ください。資産構成の割合を円グラフで示しているところがございます。御案内のとおり、現在の厚生年金の運用における基本ポートフォリオは、内外株債券それぞれ25%ずつ、こちらが基本ポートフォリオ、中央値ということになっております。
 御覧いただきますと、25%からずれている部分がございます。右上の国内債券、青い部分ですけれども、ここが30.7%ということで中央値を5ポイントほど超えて、オーバーウエートになっているということでございます。このオーバーウエートの反対側にありますのが緑色の部分、外国債券でございまして、外国債券は19.8%ということで、5ポイントを超えるアンダーウエートになっているということでございます。
 一方、残りの株の資産クラスでございますが、右下の国内株の赤い部分ですけれども、24.4%、その反対側にあります外国株25.1%ということでございまして、この株の資産クラスについては、基本ポートフォリオの中央値にかなり近いところで令和2年度は終わっているというところでございます。なお、この国内株、外国株が25%に近いところで終わっているということに関しましては、令和2年度期中にリバランスを行いまして、外株、内株が非常に好調であったものですから、こちらを売却して緑色の足りない外国債券のほうに付け替えたという投資行動を行っております。それを行っても、外国債券は25%の中央値にはまだ5ポイントほど足りないという状況だと御理解をいただければと思います。
 次に、6ページ目でございます。収益額の状況でございます。まず、上のほうに実現収益額がございますけれども、令和2年度は、合計で3,784億円の実現収益ということでございましたが、この3,784億円のすぐ左隣、第4クオーターで2,470億円ということで、ほとんどの部分をこの第4クオーターでたたき出しているということですが、これは、今し方申し上げましたリバランスを行った結果でございます。リバランスは、昨年度の第4クオーター、年が明けてからの3か月の中で行ったということでございます。
 また、実現収益と評価益を含めました総合収益額が、その下の少し大きな数表になって出ております。総合収益額、4資産クラスを全部足したものは、一番右の列の上のところにあります1兆5,568億円ということでございます。このうち、少し下に下がっていただきますと、真ん中辺りにある国内株から6,285億円、一番下の外国株から8,417億円ということでございまして、総合収益の大半の部分は、国内株と外国株から出ている。特に外国株から出てきているというところでございます。
 7ページ目を御覧ください。前のページは収益額でございましたが、これを率に直したページが7ページ目でございます。
 実現収益率のところは割愛をいたしまして、下の大きな表、修正総合収益率となっておりますところ、一番右上の数字を御覧いただければと思います。24.29%ということでございまして、4つの資産クラスから合計で24.29%の利回りであったということでございます。この24.29%という非常に大きな利回りを牽引したのが、先ほどから御説明をしている国内株と外国株ということでございます。国内株のリターンは42.48%、一番下の外国株からは58.72%ということでございました。このリターンは、先ほど御覧いただいたベンチマークリターンに比較的近い数字ということでございますけれども、この国内株、外国株の構成割合は全体の半分ということでございますので、この結果、全体の修正総合収益率は24.29%であったということでございます。
 この24.29%について評価の仕方が2つございますけれども、まず、8ページ目を御覧ください。中長期の運用状況、中長期の観点から評価をするということでございます。文章が書いてありますけれども、2行目のところを御覧いただければと思います。賃金上昇率を上回る実質的な運用利回り1.7%を達成するということが、厚生年金に求められている運用目標ということになります。これが実際にできているかどうかというのが、下の表でございます。先ほどの24.29%も含めて、5年平均、10年平均、15年平均で名目賃金上昇率を上回っている部分がどのぐらいあるのかというのが、一番下の実質的な運用利回りと書いてある行でございます。5年平均では6.11%、10年平均では4.69%、15年平均では3.68%ということでございますので、先ほど御覧いただきました1.7%は、かなり上回っている状況で確実に確保できているというところでございます。
 めくっていただきまして、9ページ目でございます。今度は、時間加重収益率とベンチマーク収益率の比較を行っているというところでございます。このページでは時間加重収益率を取っておりますので、先ほど御確認をいただいた24.29%とは少し違う数字になっておりますけれども、ここはテクニカルな差異だと御理解をいただければと思います。
 一番左上の角、24.54%、これが資産全体の時間加重収益率でございましたが、ベンチマーク収益率は、国内債券のところに財投預託を含めるということでやや調整がございますけれども、ベンチマーク収益率27.24%ということでございますので、超過収益率はマイナス2.70%であったということでございます。
 このマイナス2.70%というものがどこから来ているのかというのが、右半分の要因分解というところでございます。要因分解の寄与度の列を御覧いただければと思いますが、一番数字的に大きいのは国内債券のマイナス4.0%ということ。マイナス4.0%の右隣を御覧いただきますと、マイナス3.92%というのがございますけれども、マイナス3.92%というのは資産配分要因ということでございます。つまり、国内債券という資産をオーバーウエートで持っていたという資産配分の要因から、マイナス2.70%という数字のかなりの部分が説明できるということでございます。
 私どものポートフォリオは、国内債券のうち財投預託がございますので、ここの部分、簡単に縮小ができないということがございまして、いましばらく、基本ポートフォリオの中央値への到達には時間がかかるかと思っておりますけれども、そこも踏まえて、要因分解し、今後とも注視してまいりたいと考えております。
 10ページ目は参考でございます。これまでの運用実績ですが、平成13年度以降、一番右側のグラフを御覧いただきますと、棒グラフで5兆2,493億円、これが累積の総合収益額ということでございます。
 また、赤い線、時価利回りを御覧いただければと思いますけれども、令和2年度は24.29%ということで、過去と比べてもかなり異常なリターンだったということでございます。その前の年は、コロナショックがちょうど年度末を襲ったということでマイナス4.05%、このグラフの中では一番大きいマイナスでございました。このマイナスに匹敵するのは、平成20年度のマイナス3.89%、この部分がかなり大きなマイナスだったわけでございますけれども、これに匹敵するようなマイナスがコロナで令和元年度に出ていたということでございます。
 以上が厚生年金の積立金の状況でございました。
 12ページ目を御覧ください。12ページ目は、退職等年金給付積立金の状況でございます。ここからは簡単に御説明をさせていただければと思いますけれども、令和2年度末の簿価は6,061億円ということでございました。資産構成割合は、共済独自資産も含めますけれども、国内債券98.6%ということで、この部分は定めに則った運用をさせていただいているということでございます。
 おめくりいただきまして、収益の状況でございます。上のほうに、令和2年度の実現収益額がございますけれども、ほぼ4つの四半期で均等に収益が出ておりまして、年度では72億円でございました。この72億円を率に直したものが、下の表でございまして、実現収益率は、令和2年度通期で1.33%でございました。
 この1.33%を評価するのが14ページ目でございます。1.33%の目標運用利回りでございますが、予定利率0.20%ということでございますので、この単年度で見ると、実際の実現収益率が非常に高いものがあったということでございます。また、平成27年度以降の平均で見ますと、数表の右側の列にありますとおり、実際の運用利回りは2.34%出ておりましたので、予定利率の0.38%、あるいは基準利率の0.17%と比べても、非常に高い実績を出してきているというところでございます。
 次に、旧3階、経過的長期給付積立金の状況でございます。令和2年度末の簿価の金額は2,517億円ということでございます。徐々に徐々に運用金額は減ってきておりますけれども、これは閉鎖年金でございますので、保険料収入はなく、年金給付だけがあるという状況でございます。現在の推定では、来年度半ば、令和4年度の半ばにはこの運用残高がゼロになる見込みでございますので、資金運用からは卒業するというような形になるものでございます。
 17ページ目でございますけれども、ここに収益の状況を出してございますが、今御説明をいたしましたとおり、年金資金運用としては最後の段階を迎えているということでございますので、このページの一番下、運用利回りによる評価についてというところに書いてありますとおり、運用利回りの評価はもう実際には行っていないということでございます。
 駆け足でしたが、運用の状況は以上でございます。

〔 宮島運用リスク管理室長 〕 それでは、続きまして、19ページ、20ページで運用リスク管理の状況を御説明申し上げます。
 まず、19ページでございます。資産運用事業全体のガバナンスとリスク管理の体制でございます。図の上のほうに運営審議会、財務大臣とございます。運営審議会は、国家公務員共済組合法で設置が定められておりまして、労使同数で構成されており、毎年度の事業計画、決算及び重要事項について、運営審議会の議を経た上で財務大臣の認可、承認を受け、事業を行っているということでございます。
 資産運用事業におきましては、3つの積立金の管理運用方針等の重要事項について、運営審議会で御審議をいただいているところでございます。
 また、図の右側にございます資産運用委員会でございますけれども、資産運用に関する有識者で構成されており、現在は8名の委員の皆様に、高度な知見による御意見、御助言をいただきまして、運用を行っているところでございます。運用の専門分野につきましては、この資産運用委員会でチェックを受けているということでございます。
 そして、連合会内部でございますけれども、この図の中央にございます運用リスク管理委員会を四半期ごと、その下の運用リスク検討会議を毎月実施し、継続的に運用リスクに関するモニタリングを実施しているというところでございます。
 次の20ページでございますけれども、その具体的な内容をお示ししてございます。表の左側のリスク管理の項目を運用リスク管理要領として定め、月次でモニタリングを行っております。
 令和2年度の状況でございますけれども、まず、厚生年金につきましては、先ほど資産運用の状況でも御説明を申し上げましたとおり、内外株価が総じて上昇基調をたどりましたことから、内外株式の構成割合が中央値を上回る状況となっておりましたが、リバランスを実施いたしまして、増加したリスク量を適切にコントロールするオペレーションを実行いたしました。
 また、新旧3階の運用につきましても、各項目において問題がないことを確認してございます。その結果といたしまして、運用リスク管理要領の各項目、この表の真ん中から右側でございますけれども、全て丸印となっており、問題のないことを確認してございます。
 今後につきましても、適切なリスク管理を行っていくとともに、新たなリスク管理手法等を研究し、高度化を進めてまいりたいと考えてございます。
 運用及びリスク管理の状況につきましては、以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、事務局より2つ目の議題であります令和2年度の厚生年金積立金の管理運用状況に対する評価について説明をお願いいたします。

〔 八幡主計局総務課長 〕 総務課長の八幡でございます。
 それでは、資料2をお願いいたします。こちらの資料は、ただいまKKRによる説明がございました業務概況を受けまして、これに対して財務省が法律の規定に基づきまして評価を行った結果でございます。
 1ページ目は、ただいまのKKRの資料と同じ内容ですので、説明を割愛させていただきまして、2ページをお願いいたします。先ほどのKKRの資料にもございましたけれども、中長期的に見て、年金財政の観点から必要な利回りが確保されているというところでございました。この表の下段、実質的な運用利回りのところを見ていただきますと、左から順に5年平均、10年平均、15年平均で、それぞれ6.11、4.69、3.68%となっておりまして、KKRが長期的な運用目標とされている1.7%を上回っているというところでございますので、財務省としましても、年金財政に必要な運用利回りは確保されているという評価をしております。
 続いて、3ページをお願いいたします。(1)基本ポートフォリオの策定及び遵守状況でございますが、表の上から2段目、基本ポートフォリオ中心値からの乖離ということで、国内債券から順に5.7%、それから△0.6%、△5.2%、0.1%となっておりますけれども、この表の一番下段で、基本ポートフォリオからの乖離許容率が、それぞれ15、10、15、10までのプラスマイナスとなっておりますので、この範囲内であったものと考えております。
 それからまた、(2)運用リスク管理につきましては、KKR自身が定めておられる諸規定に沿って行っているものと考えております。
 ページをめくっていただきまして、(3)ベンチマーク収益率の確保状況でございます。超過収益率が表の右下ですが、△2.7%となってございます。この主な要因としましては、先ほどの御説明にもありましたけれども、国内債券の構成割合が年度を通じて基本ポートフォリオの中心値より高かったということによるものとなっております。これもKKRの御説明にありましたが、国内債券の大宗を占めるのが財投預託のものでありまして、その償還が進むのが多少時間がかかるけれども、国内債券の構成率は、基本ポートフォリオの中心値に接近していくという見込みと考えております。
 それから、資産ごとでは国内債券及び外国株式がマイナスの超過収益率となっておりますが、国内株式及び外国債券はプラスの超過収益率となっています。
 (3)の最後のところですが、以上のことから、KKRは、全体としてベンチマーク収益率の確保に努めているものと評価できるのではないかと考えております。
 それから、(5)その他に記載しておりますけれども、コンプライアンスや運用リスク管理の強化についても取り組んでこられているということでありまして、こうしたことから、全体としまして、KKRによる資金運用は、積立金基本指針や管理運用の方針を遵守されているものと考えてございます。
 最後に5ページをお願いいたします。KKRにとっての今後の課題としましては、従前から挙げております、3つ矢羽根がありますが、1つ目の中長期的な観点でベンチマーク収益率の確保に努めること、それから2つ目の矢羽根、KKRの今後の運用手法の高度化・多様化に関する調査研究について、引き続き検討いただくということに加えまして、3つ目の矢羽根で、ESGインデックス投資と責任投資原則の部分につきまして、引き続き検討を進めるよう申し伝えることを予定しております。3点目の本分科会の議論を踏まえという部分の議論につきましては、これから御議論いただくことも含んでおりますけれども、昨年度もKKRに伝えたESG投資の推進のうち、現在検討途上となっている項目を挙げているところでございます。こちらの項目にも特段御意見がございましたら、後ほどESGの議論の中で御提示いただければと考えております。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 ただいま説明にありました資料1と資料2について、御質問、御意見などがありましたら、よろしくお願いいたします。
 まず坂本委員から、お願いします。

〔 坂本専門委員 〕 恐れ入ります。坂本でございます。
 資料2の2ページにつきまして、コメントをさせていただきたいと思うのですが、2ページの表題は、運用状況が年金財政に与える影響ということになっておりますので、これは年金財政に与える影響がどうなっているかということを示したい部分だと思うのですけれども、年金財政という言葉が使われますと、5年に一度財政検証を行いますけれども、最初の財政検証を行いますときの出発点の年に、全てそれ以前の運用状況というのを集約しまして、それを新たに出発点として年金財政の見通しをつくりますので、そういう意味では、過去がどうだったかという、最新の財政検証以前の運用状況がどうだったかというのは、年金財政の見通しには影響しないことになってまいりますので、例えば、令和元年の結果が非常に悪かったと、しかし、過去ずっと平均すると、実質的な運用利回りを確保していますよという結果になったとしても、それは、令和元年の財政検証から出発しました財政見通しとしては、そこでもう年金財政には悪い影響になっていると言わざるを得ませんので、この辺の表現がここではちょっと曖昧になっているなと。
 それで、過去の平均を使っておられますので、積立金の運用としてはいいんですけれども、年金財政への影響を安定する上ではこれだけでは不十分であって、財政検証で一旦必ず御破算になるというところを踏まえた上で、年金財政に与える影響というものを見ていかないといけないという点に注意しないといけないと思いますので、この点は昨年も申し上げたことですけれども、御配慮いただけたらと思うところです。よろしくお願いいたします。

〔 川北分科会長 〕 今の坂本委員の意見に関しまして、事務局のほうから何かありましたら。

〔 八幡主計局総務課長 〕 ありがとうございます。御指摘の趣旨は十分御理解させていただきます。
 今回、財務省としての評価のうちの年金財政の影響の部分の書き方については、厚労省が令和元年度のGPIFに対する評価からこのような枠組みにされたということを受けまして、財務省でも同様の評価を行う形にさせていただいているものであります。
 今回の運用評価としまして、厚生年金の実施機関の所管省庁として足並みをそろえることが適当と考えたところでありますが、御指摘の問題意識につきましては、KKRの資金運用の在り方に関する今後の検討の中で、しっかり留意をさせていただきたいと思っております。

〔 川北分科会長 〕 坂本委員、よろしいでしょうか。次回以降検討するということですけれども。

〔 坂本専門委員 〕 そうしますと、あくまでこれは運用評価だという、運用評価を中心に書いておられるという意味と理解してよろしいわけですね。だから、用語法として、年金財政への影響というのはちょっと問題を変えてしまうような感じがするものですから、項目の立て方としてどうなのかなとも思うところであります。

〔 川北分科会長 〕 この点、この資料によると、運用状況が年金財政に与える影響という修飾語がついているので、かつ、坂本委員も御理解していただいているように、運用としては単年度で見るというのは好ましくないので、運用状況のみの観点から見て年金財政にどういう影響を与えているのだろうという、そういうことなのかなと私は思ったのですけれども。

〔 坂本専門委員 〕 そうですね。だから、表現の仕方として、例えば、時々企業年金なんかで使われます別途積立金みたいな形で、非常に運用がよかったときに余裕金として何らかの形の金額を別途把握しておくという使い方をするのであれば、こういう見方をして年金財政に与える影響という表現をして、あまり矛盾はないように思うのですが、今のやり方だと、財政検証のときにそれまでの全てのプラスを吸収した形で、一旦そこから、それを発射台に、これから100年の将来見通しをつくって年金財政を調べているというところがありますので、その点がある意味でぼやけてしまわないようにしておかないといけないと、そういう意味で申し上げているところですが。
 だから、仕組みがそういう別途積立金を設けるような形にはなっておりませんので、このまま年金財政に影響がないという形で進んでいった場合に、今の場合はまだプラスなのでいいのですけれども、マイナスになった場合に、それでも過去がよかったからいいという判断にはつながらないということは言えるのだろうと思うところです。だから、その辺をしっかりと区別しておく必要があるという意味で申し上げさせていただきました。

〔 川北分科会長 〕 事務局から何かございますか。 

〔 西尾共済計理官 〕 御指摘ありがとうございます。坂本委員の御指摘のようなところは、財政検証の前提を踏まえた目標あるいは前提そのものと過去の実績を比較するという枠組みは以前から行っておりましたので、そういう意味では、以前から御指摘のようなことが起こっていたわけですけれども、今回改めて御指摘いただいた点を踏まえまして、次回以降の扱いにつきましては、厚生労働省のほうと相談をしてみようかと思います。

〔 坂本専門委員 〕 よろしくお願いいたします。

〔 川北分科会長 〕 よろしいでしょうか。
 それでは、あとお二人手が挙がっています。まず、鳥畑委員、お願いいたします。

〔 鳥畑臨時委員 〕 鳥畑です。
 私は、ごく簡単な質問を2つほどですが、資料の手数料の表記が、運用手数料又は資産管理手数料という表現になっていて、これについては、参考資料1の16ページのところには、委託手数料という形でデータが表記をされているわけですが、まず、手数料の表記について整理をしておきたいということと、参考資料のところには、アクティブ運用については実績連動報酬で、報酬率は一定の上限がということがあるのですが、そこもどれぐらいの報酬率が設定されているのか、差し支えがない範囲で教えていただければというのが1点目です。
 それから、適切な管理がファンドの解約等により行われているという評価がされています。これについても、参考資料4の6ページ等で同様の評価がされていて、具体的に外国債券と外国株式でのパッシブファンドをそれぞれ1件解約したという指摘があるのですが、この場合、パッシブファンドでどういう理由で解約されたのかなというのがちょっと気になるところですので、これも差し支えがない範囲で教えていただければということです。

〔 川北分科会長 〕 それでは、これはKKRからですか。

〔 水村資金運用部長 〕 お答えをさせていただきます。
 まず、報酬料率に関しましては、個別にいろいろ差異がございますので、参考資料も含めてここまで開示しているもの以上のものは、恐縮ですけれども、遠慮させていただければと思っております。
 ただ、基本的な方針として、できるだけ報酬料率を低くしていくという努力は常日頃行っているところでございますので、ここの部分、報酬料率で抜かれてしまうようなことがないようにということに細心の注意を払っているということについては、御理解をいただければと思っております。
 それから、もう一点のパッシブ運用で解約をしたときの理由ということですけれども、これもあまりつまびらかに御説明するのはなかなか難しいという認識をしておりますが、これも基本的には報酬料率等も含めて判断をさせていただいているというところでございます。
 実際問題として、パッシブ運用も、アクティブ運用もなんですけれども、基本的に委託運用に関しましては、我々のほうからすると委託手数料というのは、先方の提示がばらばらということでございます。定価があるということでもございませんし、それから運用額に応じても料率が変わってくるというところがございますので、こういった点から。それから、もちろんですけれども、運用の成果のところはしっかりと把握して対応を決めているというところでございます。
 パッシブ運用は、基本的にインデックスにトラックをする運用ということでございますので、ものすごく大きな差が出るということではないということは、ごく当然のことということでございますけれども、それでもやはり差異は生じます。運用委託先の違いによって、成績に差が出てきているというところがございますので、ざっくり言うと、委託手数料が相対的に高いのに、運用の成果がどちらかというとぱっとしないというようなところについては、解約をすることによって、できるだけ委託するサイズを大きくする、そこのところで手数料を下げていくというような努力をしているというところでございます。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 鳥畑委員、よろしいでしょうか。
 それでは、もう一人、加藤委員から手が挙がっていますので、加藤委員、お願いいたします。

〔 加藤臨時委員 〕 加藤でございます。2つほどコメントをさせていただきたいと思います。
 まず1つ目ですが、資料2の3ページ目、基本ポートフォリオの現状の表のところです。表の一番下に乖離許容幅というのがあります。これ、国内債券と外国債券がプラスマイナス15%ということで、ボラティリティーの高い株式よりも高い許容乖離幅になっています。これは、私の理解では要するに移行過程、つまり、国内債券のウエートがもともと高くて、それを償還を待ちながら減らしていくということを配慮して高めの許容乖離幅にされたのではないかと記憶しておりますが、現状で既に国内債券で5.7%という範囲内に入ってきております。こういったことを考えますと、そろそろこの乖離許容幅を本来あるべき水準に戻すべきではないかと考えますが、これについていかがお考えでしょうかというのが1つ目です。
 2つ目が、その次のページの4ページ目でございます。ベンチマーク収益率の確保努力というところで超過収益率が出ておりまして、プラスであったりマイナスであったりしています。この下の文章に、単年度で見ればばらつくのでとあります。私も全くそのとおりだろうと思います。従いまして、であれば、評価するときのこの表も、単年度ではなくて、過去3年、あるいは過去5年といった複数年度の超過収益といったものを見て評価するといったことが必要ではないかと思います。
 以上2点、コメントということでございます。

〔 川北分科会長 〕 これは、事務局ですか。
 
〔 西尾共済計理官 〕 御指摘ありがとうございます。1点目の基本ポートフォリオの許容乖離幅につきましては、これはKKRの管理運用方針のほうで定めているということで、今後もしそれをKKRの側で変えたいといったような御相談があったときには、所管庁として対応いたします。KKRのほうで何かお考えがあれば、後ほどおっしゃっていただければと思います。
 2点目の時間過重収益率等々の、単年度ではなくて複数年度の観点も必要ではないかというところにつきましては、これは評価の枠組み上、KKRの業務概況書類に出てきているものを評価するという枠組みになっているものですから、これもKKRの次回以降の業務概況書のほうでそういった表示の仕方をされるかどうかを、今後御検討いただくのかなと考えてございます。

〔 川北分科会長 〕 KKR、何かございましたら。

〔 水村資金運用部長 〕 まず、基本ポートフォリオの中央値からの乖離許容幅の改定計画がありやなしやというところでございますけれども、現状はこれを変更しなければならないというようには、まだ議論に上っているという状況にはないというところでございます。この乖離許容幅があるからここまでずらしてもいいのだというような運用はもともとしていないわけですけれども、基本ポートフォリオの中央値に添うような形で、じりじりとではありますけれども、接近をしてきたというのがこれまでの経緯でございますので、この乖離許容幅そのものを使いながら運用するということは現状していないので、こちらのほうをすぐさま直さなければいけないというような状況にはなっていないと考えております。
 ただ、御指摘のとおり、かつてはここの乖離許容幅のところを使いながら縮めてきたというところが歴史的な経緯としてある一方で、実際のポートフォリオはもうかなり基本ポートフォリオの中央値に近づいてきているというところもございますから、次回のモデルポートフォリオの策定、ひいては我々の基本ポートフォリオの策定の段階で、中央値を見ながら、必要に応じて乖離許容幅を縮めていくということは検討に上ってくるのではないかなと思っております。
 実際、今の基本ポートフォリオというのは、25%の中央値が4つの資産クラスで共通ということになりましたけれども、その前の段階では国内債券35%ということでございましたので、このような形で財政計算を行うたびに中央値は動き得るということだと思っていますから、財政検証の動向の中で、乖離許容幅の変更の必要性というのを考えてまいりたいと思っております。
 それから、2つ目の点でありました複数年での評価ということについては、給与共済課の評価の手続もあろうかと思いますので、調整をしながら、検討を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 加藤委員、よろしいでしょうか。

〔 加藤臨時委員 〕 了解いたしました。

〔 川北分科会長 〕 他にございましたら。よろしいですか。
 また後で戻っていただいても結構かと思いますので、3つ目の議題に入りたいと思います。年金積立金運用におけるESG投資の推進状況について、まずは国家公務員共済組合連合会から説明をお願いいたします。

〔 水村資金運用部長 〕 右肩、資料番号3-1です。ESGに関する取組状況でございます。
 おめくりいただきまして、目次のところは飛ばしていただいて、3ページを御覧いただければと思います。これは、1年前にもお出ししたものと全く同じというところでございますけれども、改めまして掲げさせていただきました。
 上の箱の中は飛ばさせていただいて、下に3点ほどありますものでございますが、1つ目のやじりのところを御覧いただければと思います。ESGを考慮する投資は、投資銘柄の将来性や信用力の分析において、E、S、Gといった非財務情報を用いることで長期的リターンの追求を目指すものであって、一部の例外を除いて原則として当然のことだと認識をしています。私どもの主張は場合によってやや否定的と捉えられるケースがままあるのかなと思っておりますけれども、こちらにありますとおり、ESGを考慮するということ、これはもう極めて当然のことだと認識をしておるところでございますし、後述のとおり、連合会は実際にESGに積極的に対応して投資行動を行っているということを御説明させていただければと思っております。
 それから、一番最後のやじりのところですけれども、後半ですが、厚生年金の積立金の運用において、こういったESGへの考慮というものは、受託者責任を果たすという観点からも求められているということだと思っています。ですので、現状、厚生年金の運用を担う管理運用主体として、ESGを考慮するということは非常に重要なことだと認識をしているということを、改めまして整理させていただきました。
 4ページ目でございます。現在、連合会のほうで取り組んでいる内容を表の形式でまとめさせていただきました。
 まず、表に入る前に、1つ目の黒四角のところです。令和2年度以降、ESGを考慮した投資を推進することについては、個別に検討した上で、必要な取組を行うと定められているところでございます。これは、積立金基本指針の中に書いてあるということでございますけれども、個別に検討した上でということでございますので、一元化された被用者年金にとって適切と考えられるものについては、的確に取組を行っていかなければいけないと考えているということでございます。
 それをまとめたものが下の表でございます。コマを1つずつチェックしておりますとあっという間に時間がなくなってしまいますけれども、横軸の表頭に運用の形態がございます。一番上の分かれ目が、委託運用、自家運用、アクティブ運用かパッシブ運用か、それからアクティブ運用の中でもジャッジメンタル運用なのかインデックス運用なのかというような分け方で、運用の形態ごとに整理を行っております。一方、左側の列の部分ですけれども、プロセスという形で幾つかの形態に分けさせていただいています。一番上の調査・研究から始まりまして、真ん中辺りの運用管理、それから一番下の運用評価といったようなプロセスの中で、どのような活動を行っているのかというのを整理させていただいております。
 中身までは説明できないので記号のところを御覧いただければと思いますけれども、基本的には丸ないしは二重丸ということでございます。丸印は以前より取り組んでいたもの、二重丸は令和2年度、現在の評価年度、こちらのほうから取組を始めているものということでございます。やや検討が遅れているものもございましたけれども、このような整理の中では、かなりのところについて実際にESGの取組を進めてきているというところでございます。
 5ページ目でございます。ジャッジメンタル運用に関する取組ということで整理をさせていただきました。運用形態としては委託運用で、資産クラスとしては内株、外株と外国債券、つまり、国内債券を除くということになりますけれども、ここで実際に行っているESGに関する取組ということでございます。
 1つ目のプロセス、募集・採用のところでは、ESGファンドのマネージャーエントリーを開始しているということでございまして、私どもとしては門戸を開放しているという状況にさせていただいております。
 それから、2つ目のブロック、運用管理のところでございますけれども、これは令和2年9月ということでございますが、全ての運用受託機関に対してESG要素の考慮を要請しております。もともとESGは重要だということで要請はしていたわけですけれども、昨年9月の段階で、改めて文書を発出する形で要請を行っています。
 それから、2つ目のポツですけれども、エンゲージメントの状況に関するアンケートを行っておりまして、その中でクライメートチェンジに対する対応状況等についても新設を行って、ヒアリングを行っているところでございます。
 運用評価について、個別ファンドに対する総合評価の項目の中で、ESGの要素の考慮状況といったものを設けて、ヒアリングを進めているというところでございます。
 次のページ、6ページ目でございます。こちらのほうは、インデックス運用に関する取組ということでございます。調査・研究のプロセスのところを御覧いただければと思いますけれども、令和2年11月からESGインデックスとかグリーンボンド指数のパフォーマンスについて、月次でモニタリングを開始し、現在でも毎月モニタリングをして情報共有をしているというところでございます。その中で、活用の可能性でありますとか効率性については、まだ情報収集を継続する段階ではないかということで、当面の間はこの活動を継続してまいりたいと思っているところでございます。
 一方で、募集活動の中では、今年度に入ってからということになりますけれども、ESGファンドのマネージャーエントリーは受付をしているということで、先ほどと同じように、門戸は開放して、その中で、果たして適用することが妥当なのかどうなのかというのを研究してまいりたいと考えております。
 実際のESGインデックスの状況を簡単に左下の部分でまとめさせていただきましたけれども、上の少し大きめの表は、国内株、TOPIXに対する超過収益がどのような状況かということでございますけれども、名前は伏せ字にさせていただいていますが、A、B、C、Dの4つのインデックスに関して、2015年度以降直近のところまで御覧いただくとお分かりになりますとおり、TOPIXに対してプラスの超過リターンも出ているときもあれば、マイナスの超過リターンもあるというところで、ここはまだばらつきがあると認識をしているというところでございます。また、債券のインデックスに関しても同じでございます。
 ということで、ESGインデックスの状況については、今後も、毎月というレベルにはなりますけれども、着実に情報収集を行い、適切性についての判断をそのたびにしてまいりたいと考えているところでございます。
 それから、7ページ目でございます。今度はパッシブ運用でございますけれども、運用管理のところのESGに関する取組でございますが、まず、1つ目のポツにありますとおり、政策ベンチマークに追随するということが、パッシブ運用ですから当然のことではございますけれども、ここでもESG要素を考慮に入れるよう、全ての運用受託機関に対して要請を行っているところでございます。ただ、実際には銘柄のピックアップがなかなか難しいというところだと思いますので、ここは効果として現われてくる部分というのは限界的ではないかと思われるところでございます。
 それから、2つ目のポツ、外国債券のところでございますが、国際機関の発行するグリーンボンド等を購入できるように、我々がアセットマネジャーに提示をする運用ガイドラインを変更しているというところでございます。
 さらに、最後のところ、これは先ほどと少しかぶるところでございますけれども、エンゲージメントの中で、気候変動への対応状況をアンケート項目として設けているというところでございます。
 実際に、先ほど申し上げた国際機関の発行するグリーンボンドを購入できるようにガイドラインを変更したということでございますけれども、委託運用として、下の表にありますとおり、幾つかの発行体に関しては、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドといったようなものにも投資実績があるというところでございます。
 それから、8ページ目でございます。ここは、グリーンボンドプレミアム、グリーニアムというものがあるのではないかということで、月次でモニタリングを行っておりますということを御報告させていただく部分でございます。
 右下にありますとおり、これは、ドイツが発行しております全く同じ条件の、ただしグリーンかグリーンでないかというところだけが違うというものの、プレミアムの状況というのを確認しているというところでございますが、やはり、現状で債券の場合には、グリーンというラベルがついているものに対して非常に大きな需要があるということで、需要があるということは値段が高いというのは経済学の教えるところでございますから、発行の段階に当たっては、グリーンボンドはまだ高いということになっているのではないかということを懸念しているところでございます。引き続き、研究を進めてまいりたいと考えております。
 なお、基本的には、これまで厚生年金の運用について御説明をしてまいりましたけれども、3階部分の運用においても債券を買っているところがございまして、ここではいわゆるESG債の保有実績があるというところでございます。日本の国内の発行体が発行するグリーンボンド、あるいはソーシャルボンドといったものの購入実績があるということでございます。
 9ページ目にお進みいただければと思います。ここは、ESG推進活動が2つあるうちの1つ目でございます。TCFD、気候関連財務情報開示タスクフォースということでございますけれども、こちらには賛同実績がございます。今年の5月にTCFDへの賛同を表明いたしまして、TCFDのウェブサイトで連合会が賛同しているということが確認できるという状況になっております。
 この活動は非常に重要なことだと思っておりまして、一番下のところにポンチ絵がございますけれども、一番左側がアセットオーナーで、このアセットオーナーの一部を連合会が構成していると思っております。真ん中に運用受託機関、我々からすると運用委託先ということになりますけれども、この運用委託先がいて、一番右側が、その運用委託先が投資をする投資先企業ということになるわけでございます。
 私どもが、直接的にはなかなか難しいところでございますけれども、TCFD賛同をしているということを、シグナルとして投資先企業には、最終的な投資先企業あるいは潜在的な投資先企業も含めてということだと思いますけれども、こちらが気候変動を含めて、様々なESGに関する情報開示をしてくれればしてくれるほど、我々が委託をしている運用委託先、アセットマネジャーは、それを踏まえて適切な投資行動ができるだろうと、このような投資サイクルというものが回るということを期待いたしまして、TCFDに賛同したというところでございます。
 めくっていただきますと、最後のページ、ESG推進活動のうちのもう一つのほう、PRI、責任投資原則への関与ということでございます。
 真ん中の辺りに黒四角がございますけれども、原則として、連合会はPRIに署名をしているマネジャーを採用するという方針でございます。この方針は、対外的に公表しているものでございます。この我々の取組に関しましては、PRIの東京の事務局の方からも、非常に評価できる取組であるとお認めをいただいております。自主的に我々がPRIに署名をしているマネジャーを採用することによって、このコミットメントというものが達成できているということだろうと思います。また、実際、我々、このインベストメントチェーンにおけるコミットというものが、確実に有効であるやり方であるという確信を持ってやっているところでございます。
 あと、最低履行要件の引上げの話とか、年次レポーティングのフレームワークの話等いろいろ話題も豊富なPRI活動ということでございますので、PRIの事務局をはじめとして、我々も既にこのような形でチャネルを持っておりますので、ここのところで適切に対応しながら、幅広く情報収集を継続してまいりたいと考えているところでございます。
 ESGに関しては、以上のような考え方で進めているところでございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 3つ目の議題に関連しまして、事務局より説明をお願いしたいと思います。

〔 八幡主計局総務課長 〕 それでは、資料3-2、事務局で用意しました「ESG投資について」の資料に基づいて御説明させていただきます。
 まず最初に、これまでの議論の振り返りをざっとさせていただきます。2ページ目でございます。議論の出発点は、昨年2月に、公的年金基金に共通して適用される積立金基本指針が改正されまして、この中でESG投資に関する記述が強化されたということでございました。
 3ページをお願いします。そもそもESG投資とは何かというのを改めて記載をしておりますけれども、財務的な要素に加えまして、E、S、Gをそれぞれ考慮する投資ということでございました。
 4、5、6ページについて、それぞれESGを考慮する意義を書いておりますけど、これは本日の説明では省略させていただきまして、7ページをお願いいたします。
 最近の政府のスタンスとしまして、下にも書いておりますけれども、累次の骨太の方針でありますとか、成長戦略など、ここにも記載しておりますとおり、政府としましても、ESG投資について推進する旨、何度となく言及がされているところでございます。
 次の8ページをお願いいたします。ESG投資につきましては、これは労働団体が賛同しております。9ページのほうを見ていただきますと、政労使の使の側であります経団連が、ESG投資を推進することが望ましいとする報告書を出しているところであります。これも前回も紹介させていただきましたので、詳しい説明は割愛しまして、スライドの10ページをお願いいたします。
 このような状況を前提として国共済分科会でも御議論いただきまして、これを踏まえて、KKRの令和元年度運用評価書におきまして、ESG投資の推進について5つの課題をお示ししました。これらのうち、①、③、④につきましては、KKRでも既に前向きに取り組んでいただいているところでございます。
 以上が、今までの分科会で御議論をいただいたことの、ざっと振り返りをさせていただいたところであります。
 次のページに行っていただきまして、ESG投資の最近の動向について御説明をさせていただきます。
 12ページをお願いします。ESG投資の市場規模について記載しております。左側が世界の市場ですが、この4年間で1.5倍に拡大しておりまして、右側が我が国の市場の拡大でございますけれども、この4年間で5.8倍、約6倍とかなり大きく伸びてきていることが見て取れる状況でございます。
 13ページをお願いします。サステナブルファイナンス全般についての政府の検討状況でございますが、金融庁の有識者会議で報告書が取りまとめられておりまして、ESGの考慮というのは、受託者責任上望ましいという基本認識が示された上で、①比較可能なサステナビリティ報告基準や、②グリーンボンド等のESG関連債の適格性を客観的に認証する枠組みなどの整備が重要であるといった方向性が示されているところでございます。
 14ページをお願いします。ここからは、E、S、Gのそれぞれの動向ですけれども、まず、Eに関して、前回も御紹介させていただきました気候変動対策推進有識者会議で議論が行われて、この10月に報告書が取りまとめられております。
 一番下の箱のゴシックで記載している部分でございますが、ESG投資の文脈で、気候変動対応は世界中が着目する投資機会であり、この機会を逃さずに大胆に投資していくべきと強調されているところでございます。
 次、15ページをお願いいたします。Eの続きでございます。全世界的に気候変動が社会経済の持続可能性のリスクとなっていることが、気候変動政府間パネルなどをはじめ様々な方面で指摘をされている中で、先日、COP26での岸田総理の演説でも、2050年カーボンニュートラルに向けて我が国は鋭意取り組むこととなっておりますが、こうしたことを実現するためには、新たな技術開発に向けた投資が必要であるといったことも言われているところでございます。
 それから、スライド、16ページでございますが、こちらは前回御紹介させていただいたESGのSの部分でございます。左側のほうにグラフがございますが、ESG投資を行う投資家が重視するテーマとしまして、労働慣行でありますとか人権といった、Sに該当する要素が上位に挙げられているところであります。右側は、民間シンクタンクのレポートでございますが、現在のコロナ禍という状況の下で、Sに対する関心が高まっているといった報告がされていることも前回御紹介させていただいたところでございます。
 17ページをお願いします。今度はGに関するトピックでございます。これは、GPIFが上場企業に行ったアンケートでございます。適切な開示を通じたガバナンス向上のために、財務情報に加えてESG投資でも着目される非財務情報を統合したいわゆる統合報告書というのがあるわけですけど、これの活用が進んでいるかどうかということを質問したアンケートに対して、青の部分が、今回は61.7%になっていますが、活用が進んでいると感じるという企業が、前々回、前回に比べてかなり割合が高まっていると、こうした状況が見て取れるかと思います。
 18ページでございます。公的アセットオーナーに対し、各方面から様々な指摘があるところでございます。左側のほうの箱は、これは前回も御紹介させていただいたかと思いますけれども、今年の3月に、自由民主党の財金部会がおまとめになっているサステナブルファイナンスに関する提言におきましては、連合会を含む3共済を具体的に例示した上で、PRI責任投資原則署名などを求めていくべきだとされているところでございます。
 それから、右側のほうが、今年の4月に開催された厚労省の社会保障審議会でありますけれども、駒村委員、それからまた、この分科会の委員でもあられます関委員から、国共済は、政府の政策に盛り込まれたESG投資を推進することに関して、GPIFよりも、むしろ一層の社会的責任があるのではないかといった御指摘もございました。
 それから、19ページでございます。これは、我々財務省です。財務省の外為特会の動向でございますが、年金ファンドではないわけでありますけれども、広い意味でKKRと同様の公的アセットオーナーの一種ということで、財務省のホームページでの公表文の真ん中辺りのゴシックのところですが、「上記の背景を踏まえ」のところで、外為特会が保有する外貨資産の運用においても、従来からの安全性、流動性及び収益性についての基本原則は堅持しつつ、今後、Eのみならず、S、Gの要素を考慮して投資を行っていくこととされているところでございます。
 それから、20ページで、海外の動向でございます。3つ箱を掲げておりますが、左の上の米国において、2021年3月、米国年金基金での、かぎ括弧のところですけれども、投資の評価は専ら金銭的な要素に基づかなければならないとの規制については、撤廃をされています。
 右側の上はレポートですが、PRⅠに署名することは、運用パフォーマンス上でも有利になっているといったような分析もされておりますし、下側のほうですけれども、GFANZ、ネットゼロに向けた金融連合の動きなどが強化されているといった、国際的な流れとしまして、ESG投資に向けた動きや議論がますます活発になっているというところでございます。
 21ページでございます。その上で、これまで資料でもお示ししてきました政労使という切り口の他に、別の見方として、前々回にお示ししたような形で、消費者、企業、投資家という区分けで、それぞれ主体のESGとの関係について、簡単に御説明したいと思います。
 まず、22ページでございます。消費者という観点でございますが、左の下は消費者庁の調査で、消費者の多くは、いわゆるエシカル消費の意味で、赤い部分と緑の部分ですけれども、ESG関連の要素を考慮した製品を購入したいという回答をしている割合が大きくなってきているということでありますし、右側は、消費者は、そうした製品に一定程度の価格プレミアム、割増しの価格を払ってもよいと、特に若年層のほうが高いような感じがしますが、そのような調査結果も出ているところでございます。
 それから、23ページでございますが、今の消費者のマインドと呼応する形で、企業の側でも、ESG活動に積極的に取り組む傾向であるとか、事例が見られているところであります。例えば、左の上のほうは小田原市の事例でありますけれども、CO2を排出しない太陽光発電機を設置した家庭に地域の飲食店の割引クーポンが付与され、消費者と企業がそれぞれウィン・ウィンの形で地域経済を活性化するといったような試みが行われているものでありますし、Sの関連でいうと、右上のほうで障害のある方が主体となった企業というような事例も挙げているところでございます。
 それから、24ページに行っていただきまして、こちらは国内の投資家の動向でありますけれども、昨年も御覧いただきましたPRIへの署名、それから、気候関連財務情報開示への賛同を行っている機関の数でございますが、引き続き足元も増加しているというところでございます。
 それから、次、25ページ以降は、前回までの議論で委員の皆様から御指摘をいただきました点でありますとか、それに関連する点について、簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、26ページでございます。前回、川北分科会長のほうから、ESG株式指数の中には、ESGを必ずしも重要視していないような企業も入っているのではないかといった御指摘をいただいております。この点、一例としまして、MSCI社のグローバルESG株式指数の場合の企業銘柄選択の考え方を事務局のほうで整理をさせていただきました。
 基本的には、E、S、Gの3本柱それぞれで着目する項目ごとにスコアをつけて、そのスコアに応じた格付の高い企業群から選択されるということでございますし、おおむねESG指数というのはそういうものが一般的かと思われますが、ただし、やはり市場ベンチマークである親指数と、業種構成とか地域構成を整合させるといった指数をつくる側での調整も行われているようですので、結果として、必ずしもESGの格付の最上位の銘柄のみが選択されるというわけではない、といったこともあるようでございます。
 次に、27ページでございます。これまで原委員のほうから、市場全体の成長を享受する観点から、ESGインデックス投資についてリスク水準などの視点でも検討が必要ではないかという御指摘をいただいておりました。こうした観点を踏まえまして、先ほどのMSCI社の指数を例にリスク・リターンを見てみたものでございます。
 左のグラフを御覧いただきますと、先ほど業種構成とか地域構成を親指数と整合させていると申し上げましたけれども、その結果かと思われますが、市場ベンチマークである親指数とESG指数の動きというのは、ほぼ重なって違いが見えないぐらいになっているのがうかがえます。
 右側に親指数からの乖離を表わすトラッキングエラーをパーセントで出しているところでは、1.17、1%程度ということになっているかと思います。
 KKRの別の公表資料でいうと、トラッキングエラー0.4%程度までの株式ファンドが市場連動ファンドとされているところでありまして、このようなことから考えますと、ESG株式投資を使うと、ESGを考慮しつつ、市場ベンチマーク連動の運用と同じような運用もできるのではないかとも考えているところでございます。
 それから、28ページを御覧いただければと思います。これは、前回、鳥畑委員から、例えば、民間の労働環境が改善すれば、それが人事院勧告に反映されて、それを通じて国家公務員の処遇にも結びつくといったような外部経済の効果も重要であるといった御指摘をいただきました。こうした外部経済の効果に関しましては御指摘のとおりでありまして、GPIFの運用の在り方を見ておりましても、社会的な課題解決が事業機会と投資機会を生むといった外部経済効果が期待できることを踏まえたESG投資を行っているのではないかと理解をしているところでございます。
  それから、29ページをお願いいたします。今の外部経済効果の関連ということで、もう一点御説明ができればと思います。
 持続的にリターンが得られる投資環境、図では真ん中の下に書いておりますけれども、そういうものは、同時に多くの投資家が利用できるということでありますので、外部経済効果を持つ公共財のような性質を持つものではないかと思っています。
 公共材の利用者には、投資環境を維持するコストを払う投資家もいれば、そういうコストは負担しない、いわゆるフリーライダーのような投資家の両方があるのだと思われます。フリーライダーを排除することはできませんけれども、フリーライダーが仮に多くなってくると、公共財が過少供給となる、つまり投資環境の持続可能性が阻害されていくということになってしまうかなと思います。そういう意味で、投資環境の持続可能性を高めることが広く国民にとって利益になるという観点からは、GPIFもそうですし、KKRのような公的なアセットオーナーは、やはり投資環境を維持する側にいるというのが望ましいというような論点もあるのではないかなと思うところでございます。
 それからもう一点、前回、江夏委員から、PRIについては、履行要件を満たせず除名処分になってしまったような事例もあることから、まず、対応できる体制の整備というのが重要ではないかといった御指摘をいただいておりまして、30ページですが、PRIというのはどういうものかという意味で前回の資料の振り返りをつけさせていただいております。
 31ページを御覧いただきまして、PRIの署名に必要な体制ということを考えますと、例えばGPIFは180兆円の資金規模でありまして、おそらくそれ相応の体制もあるということであります。一方で、KKRは資金規模8兆円ということであります。ここに挙げさせていただいた4つの機関投資家は、KKRに比べると小さな規模になるわけでありますけれども、PRIの署名をされているというところでありまして、これらの投資家のESGの考え方の事例をここに書いてございます。各投資家のESGの考え方の中では、持続可能な社会の実現に貢献してまいりたいとか、サステナビリティ経営を加速させたいとか、長期的なリターンの向上を目指していきたいといった認識が記述されているところであります。
 このようなところを考えますと、一番下の矢印のところに書いておりますが、先ほど出てまいりましたような、ESG活動を通じて投資環境の持続可能性を高めることが投資の受益者の利益になるというような姿勢も、見て取られるのかなと思っております。
 また、2つ目の②として書いていますが、PRIに署名することというのは、目に見えて明らかなメリットではなくとも、自分はフリーライダーではないということを伝えるメッセージになる、そのようなメリットもあるように考えられるところでございます。
 以上、資料に基づいて説明させて頂きましたが、前回までの政労使の切り口だけでなく、今回、消費者、企業、投資家といった切り口で見ても、やはりESG投資は引き続き推進されていくのではないかと思っておりますので、KKRにおかれましても、本日の議論やこれからの議論を踏まえながら、引き続き御検討をお願いできればと思っております。その上で、今後も毎年度の年金積立金管理運用状況の評価でありますとか、適切なタイミングでの検討状況をアップデートして頂きながら、ESG投資についての議論も引き続き行っていくような機会を設けていければと考えているところでございます。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 それでは、ここで、本日欠席されています寺井委員より、ESG投資及びPRI署名に関する意見を書面で頂戴いたしておりますので、事務局より御紹介をいただきたいと思います。

〔 八幡主計局総務課長 〕 それでは、寺井委員から頂いた紙の御意見を御紹介いたします。
 勝手ながら要約をさせていただいておりまして、大きく2点ありますが、1点目が、第2パラグラフの後半にございますように、ESG株式指数などのパフォーマンスの検証をKKRの資金運用に反映させれば、年金財政の改善につながる可能性があるのではないか。
 それからもう一点、最後のパラグラフでございますが、公的アセットオーナーとしてのコミットメントを示し、投資環境を維持するためのコストを負担する観点から、KKRがPRIに署名されることは有意義ではないかといった、要約で恐縮ですけれども、御意見でございました。詳しくはお手元の御意見を御覧いただければと思います。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 それでは、ただいまの資料3-1、3-2の説明について御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。挙手をお願いしたいと思いますが。鳥畑委員、まずお願いいたします。

〔 鳥畑臨時委員 〕 説明ありがとうございました。意見といいますか、本日も組合を代表するという立場からの意見表明に努めたいと思っております。その点で若干気になる点がありますので、意見を述べさせていただきます。
 KKRがPRIに署名してESG投資を推進することは賛成ですが、それを政策の責任を負う政府の職員である国家公務員を構成員としている共済組合が政府のESG投資推進に責任を負うからとは思いません。ましてや、共済組合員が政策実行の使命を負うからとも思いません。国家公務員共済組合法が定めるように、本共済は国家公務員等の相互救済を目的とする共済組合であり、公的年金資金運用は専ら被保険者の利益を目的とするものだからです。公的年金も政府の政策推進にコミットしていくべきという自民党政務調査会提言も、あくまでも長期的な財務収益についての検証や受託者責任の徹底の観点から、積極的に役割を果たしていくべきとしています。KKRは、国家公務員等が老後のために積み立てた年金資金の運用において、受託者責任を徹底する、受益者の長期的利益の実現に徹するべきだと思います。
 私が、KKRはESG投資を推進すべきというのは、それが受益者の真の利益になると考えるからです。KKRがアセットオーナーとして果たすべき受託者責任においては、金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議報告書でも、ESG投資は受託者責任に反しないという認識は、世界的に一定程度の支持を得ていると指摘しています。PRI署名の広がりが、その証明と言えます。この報告書は、ESG投資の中でも、正や負の外部性を適正に織り込み、環境や社会課題を考慮した投融資等を行うことで、環境や社会課題が改善するなど、経済社会システム全体の便益に寄与するインパクト投資に注目をしています。ここでいう社会課題とは、経済的格差の拡大と中間層の没落、貧困と飢餓、新たな感染症の出現、強制労働やジェンダー差別等のビジネスと人権等を指しますが、ESG投資を促進し、環境や社会を犠牲にした短期的利益追求を抑制し、かつ、株主還元に傾斜した利益配分を制限することは、例えば賃金や労働環境の改善を通じて年金基金を提供している労働者の利益につながるものと考えます。
 日本労働組合総連合は、労働者が拠出した、ないしは労働者のために拠出された資金をワーカーズキャピタルと定義しているわけですが、その代表的なものを年金基金としています。現在、短期的利益を最優先する株主重視の経営で犠牲になっているのは、労働者であり、公的年金のESG投資、とりわけ、社会的責任投資やインパクト投資等を通じて、社会課題の解決に貢献することは、公的年金の提供者である労働者の利益につながるものと考えます。ESG投資を通じた長期利益の追求には、財務的投資リターン以外の社会課題解決を通じた非財務的利益増進も含まれるものと考えます。私がKKRはESG投資を推進すべきと考えるのは、その運用する資産が国家公務員等の労働者の積立資金であるワーカーズキャピタルにほかならないからです。
 その意味で、KKRは短期的リターンだけではなく、長期的リターンも重視する。その長期的リターンの中に、経済社会全体の便益向上を通じたリターンというものも重視した運用に積極的に取組むべきであり、その意味で、ESG投資の中でも社会的責任を重視し、さらにインパクト投資にも積極的に取り組んではどうかと思います。
 また、現在のエンゲージメントにおいても、人権等の社会課題の取組を重視したエンゲージメントを重視すべきではないかと考えています。
 以上、意見を述べさせていただきました。

〔 川北分科会長 〕 ただいま御意見を承ったということです。たくさん手が挙がっていますので、次に行きたいと思うのですが、まず、井堀委員、お願いします。

〔 井堀臨時委員 〕 井堀です。よろしくお願いします。
 今、事務局から説明いただいたように、ESG投資が、外部経済効果とか、あるいは公共財的な側面を持っているとすれば、私的なマーケットでの収益率は、それを必ずしも内部化できていないと、特に短期的には内部化できていないということなので、そうすると、やはり、ESG投資の収益率というのは、平均的に見ると、そうではない投資に比べると多少は低くなると。それが外部効果とか公共財的な側面の裏側にあるということだと思うのです。
 それにもかかわらず、ESG投資を推進するということであれば、多少は収益率が低くても、それを公的な政策目標の実現のために必要だという国民的な納得感が必要で、それをまずKKRのような公的な色彩がかなり強い年金の資金運用からそういったところを進めていって、社会全体として外部効果なり公共財的な側面から、マーケットでも内部化できるようなそういう雰囲気に持っていけるのがいいのだと思うのです。そのために、やはりKKRはより積極的にこういったESG投資を進めていただきたいと思うのです。
 1つよく分からないのは、今日の説明でもESG投資に関しては、実質的な面で非常にメリットがあっていろんな形でやりますというのは分かるのですけれども、具体的に数字として、今までKKRが行ってきた投資のうちの中で、ESG関連の投資ではどのくらいの量的な規模なのか、あるいは今後ESG投資を推進するときに、どの程度の数量的なボリュームでESG投資全体を考えているのか、そういった数量的な目標がもう少しはっきりすれば、ある程度、その目標のためにどの程度、収益率が全体として多少犠牲になるのかという量的な何かそういう情報も必要だと思うのです。だから、具体的に、ESG投資がどの程度数量的に今後拡大するという、そういう議論というのはあるのでしょうか。今の点は私の質問です。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 今の御質問に対して、KKRから規模的な面について、お答えできるようでしたらお願いしたいと思うのですけれども。

〔 水村資金運用部長 〕 資料の説明の中でも触れましたとおり、私ども基本的に、アクティブ運用でもパッシブ運用でもESG要素を考慮してくださいと伝えてきているわけでございます。そういう意味では、ちょっと想像されている答えとは違っているのかもしれませんけれども、私どもが現在運用している資産は、基本的に全てESGを考慮しているものだと認識をしているところでございます。ですから、ESG考慮がまだ小さいので、もっと拡大しなければいけないというような発想ではないと思っています。
 実際に我々が委託をしているアセットマネジャーがどのぐらい考慮するのかというのを数量化するというのは、これはなかなか難しいと思っています。それは、アセットマネジャーがリターンで結果を示してくるという部分だと思っていますし、アセットマネジャーが示してくるリターンが、ここからここまでの部分はESGから出てきていますというふうに説明をさせるということは無理だろうと思っていますので、そういった意味での数量化は、当面は難しいのではないかと思っておりますが、貴重な御意見を頂戴したと思っておりますので、今後の業務運営の参考にさせていただきたいと思っております。

〔 川北分科会長 〕 関連して、パッシブでESGの考慮というのは、これはエンゲージメントとか何かそういうことで努力しろということなのか、それともまた別のことなのか、これは私からの質問なのですけれども。

〔 水村資金運用部長 〕 御指摘のとおり、アクティブほど明確にESGを考慮していくというのは、パッシブの場合には難しいだろうと思っています。そこの1つの打開策としては、御指摘のとおり、エンゲージメントの中で、会話をしていって改善を求めていくということができるだろうと思っています。エンゲージメントのやり方も、例えば集団的エンゲージメントであるとか、いろいろなやり方をアセットマネジャーのほうで検討しているというところだろうと思いますので、そういったものがどういうふうな効果を得るのだろうかというのは注目をしてまいりたいと思っています。
 1つあるのは、アクティブ運用でピックアップしている会社は、通常の場合には、ベンチマークインデックスを構成する会社だったりするわけです。例えば、アクティブ運用でA社に投資をしていますということであれば、A社がTOPIXを構成しているのであれば、自動的にパッシブ運用の投資対象先と個別にコンタクトを取っているケースというのはあり得るだろうと思いますので、そういった中で、間接的にではありますけれども、アクティブ運用での積極的なエンゲージメントというものが、最終的にパッシブ運用でのESG考慮にじわじわと広がっていくという効果は期待できるのではないかと考えているところでございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 井堀委員、よろしいでしょうか。

〔 井堀臨時委員 〕 結構です。どうもありがとうございました。

〔 川北分科会長 〕 では、続きまして、原委員、お願いいたします。

〔 原臨時委員 〕 ありがとうございます。加入者の利益のためというのはもちろん一番大切なことかと思います。そして、今の時代、やはり機関投資家として様々な社会的責任ということを果たしていかなければいけない時代になっているかと思います。
 個人的には、年金資産の運用というのはどちらかというとパッシブのほうが向いているのではないかと思います。そのようなことを前提として述べさせていただくと、政府からのいろんな推進表明等もあり、また、世の中的にもESG投資という方向へ向いていっている中で、やはり長期的な視点で、機関投資家としての社会的責任という意味において、検討を行っていかなければならない時期になっているのだと思います。
 KKRさんの資料の6ページにあるような一般的なリスク・リターンという側面を比較するということももちろん重要だと思うのですが、ただ、もう一方で、社会的リターンを考慮すること、サステナブルな社会の実現に向けて責任ある機関投資家としての姿勢を見せていくことも、求められる時代になっているかと思います。
 もちろん経済的リターンも重要なのですけれども、その投資によって、時間はかかるかもしれませんが、いろいろもたらされる社会的な便益というものを考える長期的な視点も必要かと思います。GPIFさんですとか、地共済連さんも、既にESG株式指数を採用されているという記述も資料にもありました。
 したがって、一定の範囲内で、少額から検討を進めていくことは、今後必要になってくるものと思われます。もちろん、比較検討しなければいけないいろいろな問題はあると思いますけれども、市場全体の成長を享受して、投資環境自体のサステナビリティを確保するという観点からも、ESGインデックス運用の検討はしていっていただきたいと思っております。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 御意見として承りました。
 それでは、加藤委員、お願いいたします。

〔 加藤臨時委員 〕 加藤です。ありがとうございます。
 KKRに、ESGインデックス運用について、1つお伺いしたいと思います。
 財務省の資料には、ESGインデックス運用について検討してほしいというような旨のことが載っておりますけれども、KKRの資料、ページ6を見てみますと、ESGインデックスのパフォーマンスが出ておりまして、勝ったり負けたりということで、まだどうかなという、そういう御判断ではないかと思います。KKRとしてESGインデックス運用に踏み切るとすれば、どういう状況になったときに踏み切りたいとお考えですか。これが、継続的に超過リターンが出るようになった場合に踏み切るというお考えですか。あるいは、ほかに何か基準があるのであれば教えてください。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 では、KKRからお願いします。

〔 水村資金運用部長 〕 お答えいたします。
 外形的な条件としては1つ、御指摘のありました安定的に超過リターンが出るということだろうと思います。それは1つの条件だろうと思っています。
 ただ、それが本当にESG考慮の結果として出てきているのかどうかというのも見ていかなければいけないと思っています。なかなか想像し難い組合せかもしれませんけれども、超過リターンが安定的に出ているのだけれども、客観的に世の中で言われているところのESG行動を取っているような会社のリターンではないというような組合せもあるのではないかなと思いますので。
 ただ、厳密にリターンの源泉というものをESGだけ純粋に抽出することができるかどうか難しいというのは、恐らく昨年のこの場でも申し上げたと思いますので、そこはないものねだりだということも承知はしております。ですので、あまりそこのところを厳密に詰め過ぎるという態度はよくないだろうと思っておりますけれども、総合的にESGを考慮すると、超過リターンというのが短期的にも出ているのだということが確認できれば、考慮の対象になってくると思っています。
 また、今、短期的に出ると申し上げましたけれども、実際には短期的に出ないことなのかもしれないと思っていますので、短期的には出ないのだけれども、長期的に出るというのはどういうことなのかといったようなことも含めて、継続的に研究を進めてまいりたいと考えているところでございます。

〔 川北分科会長 〕 この点に関しましては、私も某学者と共同研究していまして、ESGに関して長期的にはやはり3年とか5年のタームでは超過リターンが出てくるという結果になります。ただし、そんなに大きな出方ではないです。超過リターンの多くは、ESGの要素が貢献しているわけではないということになります。
 ただ、統計的に有意な分析を行うというのはなかなか難しいので、これはやはり、例えばESG関係のインデックスをつくっているところに分析をしてもらうとか、そういうことで検討を進めるのがいいのではないのかなと個人的には思っています。
 以上ですけど、加藤さん、よろしいでしょうか。
 それでは、関委員、お願いいたします。

〔 関委員 〕 他の委員の方々とかぶる部分もありますが、意見を述べさせていただきます。
 KKRもESG投資に前向きというお話をうれしく伺いました。KKRが受託者責任を果たすうえで、KKRの資産投資委員会といった関係者の中には、もしかすると、投資は効率が最優先であると考えて、コストをかけて投資環境の持続可能性に取り組むことには否定的な方がいらっしゃるかもしれないなと危惧しておりました。そうではないということなら安心なのですが。
 とはいえ、PRIに署名しているマネジャーを採用されているということですけれども、KKRそのものはPRIに署名されておりません。民間企業と比べて、PRIに署名してESGの取組をアピールすることがイメージアップにつながるというインセンティブが、KKRには少ないのかもしれません。
 といっても、例えばこれから公務員となるかもしれない若い学生の環境問題や社会問題などについての関心は高まっています。そうすると、社会的責任を果たすためにPRIに署名されている民間のアセットオーナーが増えてきている状況の中で、KKRが署名していないということについて、公的アセットオーナーなのにやっていないのかと言われはしないかなということは気になりました。
 もしKKRがPRIに署名されましたら、公的年金ファンドが動いたということで、中小の投資家も追随する可能性がございます。すると、本日のお話にもありましたような外部経済効果によって、投資環境自体の持続可能性の確保ということに対して、日本全体としてはKKRがかけられたコストを上回るベネフィットが期待できるのではないでしょうか。このような日本全体の観点から御検討いただくことも、公的アセットオーナーだからこそ必要なのではないかと考えております。
 報告書の提出など、いろいろとPRIに署名するとなると大変かとは思いますが、既に署名しているGPIFの経験などを参照しながら、署名を御検討いただければと思います。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 この点、KKRから何かございますか。

〔 水村資金運用部長 〕 PRI署名については、かねていろいろな御意見を頂戴していると認識をしております。それに対して、先ほど御説明をさせていただいたとおり、私どもがアセットオーナーとしてアセットマネジャーにPRI署名を求めているということで一定の効果はあるだろうと思います。ただ、その中で、幾人かの方々から、外部性というような単語も使って御説明をいただいたわけですけれども、そういう効果があるということも含めて考えていかなければいけないと思っておりますので、我々のリソースというものも含めて考えながら、今後の課題として認識してまいりたいと思っているところでございます。
 現状、公的年金としては、GPIFだけと認識しておりますが、認識違いありましたら申し訳ないのですけれども、GPIFがPRI署名をしていて、世の中で公的年金の運用というと、GPIFを想起される方が多いという中では、公的年金がPRIと積極的に関与しているということは、そこの部分でも言えるということではないかなと思いますので、4つの運用主体のうち、GPIFを除くところとも協議を進めながら、どういうことが我々に求められているのだろうかというのを研究してまいりたいと思っております。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 私もPRIに関しましては別の懸念がありまして、北欧のファンドが全部PRIから脱退したということを、現状どうなっているのかまだ調べ切れていないのですけど、そういうことも聞いていますので、もう少しPRI自身の活動がどういうことなのかも調べていただいて、署名するのかどうか判断していただければなと個人的には思っています。
 それでは、江夏委員、よろしくお願いします。

〔 江夏臨時委員 〕 野村資本市場研究所の江夏でございます。私のほうから幾つか発言をさせていただければと思います。
 資料3-1の9ページ目のTCFD署名につきまして、大変前向きなお取り組みと捉えています。特に6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードを通じて、プライム市場の上場企業にTCFD提言に沿った開示を求められており、大変時節を捉えたものと感じました。今後の課題といたしまして、主に2点あるかと思います。
 1点目ですが、世界的な流れとして、国際サステナビリティの基準の方向に向かっております。資料3-2の13ページ目、金融庁の取りまとめを御覧いただきたいのですけれども、サステナビリティの項目で、比較可能で整合性のとれたサステナビリティ報告基準の策定に向け、日本として、IFRS財団における基準策定に積極的に参画すべきとの言及があります。また、ニュースを覚えていらっしゃる方もいると思いますが、COP26において、IFRS財団がISSBの設立を公表しています。さらに、TCFDの設定主体の金融安定理事会(FSB)が7月に示したロードマップでは、TCFD提言からISSB基準に重点を移すことが示されています。この流れをしっかり追っていくことが大切と思います。
 それに付随をして、TCFDのみならず、TNFDについても現在検討が進められています。TCFDは気候変動関連ですが、TNFDは自然資本関連です。TNFDについては、2023年後半に向けて開示基準が検討されているところです。ちょうど10月に生物多様性に関するCOPが中国の昆明であったこともあり、注目を集めています。こちらについても、しっかり流れを追っていくということが大切と思います。
 もう一点目といたしましては、カーボンをどう考えるかということかと思います。御案内のとおり、環境省と経済産業省を中心に、カーボンプライシングについて検討が進められています。私自身、ここ数か月、カーボンについて、投資家や企業の方々から多数の照会を受けています。カーボン関連の金融商品を取引するという問題はさておき、例えばGPIFでは、2年ほど前にTrucostに委託し、カーボン関連の定量分析を公表しており、参考になると思います。カーボン関連の金融商品を取引するしないは別として、世の中の注目が高まっていることもあり、少なくともカーボンに関するKKRとしての考え方はお持ちになっても良いように思います。
 3点目といたしましては、ESG評価・データについてです。資料3-2の13ページ目のESG評価・データ機関の項目で、金融庁において、ESG評価・データ提供機関に期待される行動規範のあり方等について、議論を進めることを期待との言及があります。諸外国では、ESG評価・データに関して、質や透明性を確保すべく、規制当局による適切な関与の検討を求める声が上がっています。このような議論は、本物のESGを金融市場が求めていることを示唆していると思います。この機運も捉えて、KKRの運用全体としてリスクを負わないようにしっかりと取り組まれることがいいかなと思います。
 次につきまして、この資料、13ページ目の左下には、インパクトファイナンスの普及・実践に向け、多様なアイディアを実装していくことが望ましいと記されています。KKRにつきましては現状、インパクトファイナンスには特にお取り組みされていないと理解をしています。ただ、先ほど原先生のほうから社会的リターンということでキーワードが挙げられたと思うのですけれども、やっぱり世の中でインパクトをどう捉えるのかという点は、サステナブルファイナンスの中で大きなテーマになっています。
 とはいえ、今すぐインパクトファイナンス、インパクト投資に取り組めと言われても、とても難しいのが現状です。しかし、日本でも環境省や金融庁が研究会等を通じて背中を押しているという状況になっています。なので、しっかりインパクトファイナンスの動向を追っていくことが必要かと思います。
 最後にというところで、前回、PRI署名について発言させていただいたところで、被保険者の方々の大切な資金を運用されているので、慎重に御検討されるというのは大変重要という考えは変わらないです。ただ、やはり世の中の流れがとても速いのがこちらの世界かと思います。例えば11月末に、日本のサステナブル投資残高を日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)という団体が発表しています。2020年3月には約310兆円だった残高が、2021年3月には一気に514兆円にまで広がっています。514兆円というと日本の大体GDPと同じぐらいということで、大きな資金がそちらに向いているということがあります。もちろん、慎重にということは大前提ですが、サステナブルファイナンス、ESG投資への取組みが遅れてしまうことによって、それが機会損失にならないようにしっかり流れを追って、ある程度の機動性も確保することが大切なのではないかと思います。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 それでは、各委員、手を挙げておられた方の御意見は以上だと思います。
 最後の江夏委員の意見にありましたように、非常に流れが速いので、その流れ、何が本流なのか、それも見極めつつ、検討、対応していただければと思います。
 それでは、今日の4つ目の議題でありますマイナンバーカードの健康保険証利用の対応状況について説明をお願いしたいと思います。

〔 八幡主計局総務課長 〕 それでは、資料4、オンライン資格確認の対応状況について御説明を申し上げます。
 1ページ目をお願いします。皆様も御案内かと思うのですが、本年10月20日より、オンライン資格確認(マイナンバーカードの健康保険証利用)が本格開始されております。この資格確認は、医療機関の窓口に設置された顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをかざすことによって、患者の医療保険の資格情報をオンラインで確認できるというものであります。
 この1ページの右上のほうに①の登録とありますが、患者の医療保険の資格情報を医療保険者、我々でいうと共済組合でありますけれども、が支払基金とか国保中央会にあらかじめ登録をしているということでありまして、左のほうに②がありますが、患者は医療機関に行きまして、窓口で顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置くとか、あるいは健康保険証の場合は提示することになりますが、患者が健康保険証を提示した場合は、病院の窓口のスタッフが、オンライン資格確認等システムの端末に記号等を入力します。
 真ん中の中央にありますが、患者がマイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーに置いた場合は、マイナンバーカードのICチップ内の電子証明を用いて、オンライン資格確認等システムから患者の医療保険の資格情報が取得されます。
 従来は、窓口で健康保険証の記号番号等を確認して、支払基金を通じて医療費を請求してみると、その結果資格が喪失されていたというようなことがあったわけですけれども、そうしたリスクが減少するということが期待されるところであります。
 ちなみに、デジタルの日とされた10月10日には、後藤厚労大臣と牧島デジタル大臣が虎ノ門病院でオンライン資格確認のデモンストレーションをされたというようなことがございました。
 2ページをお願いいたします。このオンライン資格確認導入によるメリットです。先ほど申し上げました資格の過誤によるレセプト返戻作業の減少が期待されることのほか、医療保険者にとりましては、医療費が高額になった際に交付される限度額適用認定証等を交付しなくてよくなるということがあります。
 また、病院においては、窓口における資格確認事務負担が軽減されるほか、医師が診察する際に、患者が同意すればですが、オンライン資格確認等システムから、患者の特定健診情報であるとか薬剤情報等を取得することができますので、患者さんの現状に合った投薬、診療が効率的に行うことができるということであります。
 それから、患者側にとっては、左下にありますけれども、病院との受付が自動化されて、特定健診情報とか薬剤情報に基づく診察や薬の処方が受けられて、限度額適用認定証がなくても、限度額以上の医療費の一時支払いが不要になるというような通院時のメリットのほか、右下にありますが、マイナポータルで特定健診情報とかを閲覧できたり、医療費控除の申告に必要なデータをマイナポータルから取得できると、こんなメリットがあります。また、転職とかで健康保険証が再交付される場合でも、再交付される前にマイナンバーカードを健康保険証として使えるということであります。
 最後の3ページでございます。こういう便利な面もありますけれども、医療保険者、病院、それから被保険者それぞれが対応すべきことがありまして、まず医療保険者としては、新規資格取得の場合とか保険者の変更に際して、速やかに組合員の資格情報とか特定検診情報を、支払基金のオンライン資格システムに登録する必要があります。
 今年の6月の分科会でも御報告しましたが、令和4年10月から短時間勤務職員が国共済の短期給付を適用することになっているのですけれども、今109万人の組合員のところ、さらに30万人が新たに組合員になるというのが見込まれていると。短時間勤務職員は、今は協会けんぽの被保険者ですので、医療保険の変更を迅速に登録しなければいけないということがあります。
 それから2つ目の、病院にとってですが、顔認証付きカードリーダーを設置して院内システムと連携するシステム改修を行う必要があるということで、ちなみに、KKRの病院をこの表に書いていますけど、全32病院が既にカードリーダーを申し込んでいまして、今の時点では21病院が運用を開始しています。なお、今年度中には31病院で運用開始がされて、令和5年3月には全32病院で運用を開始するという予定になっています。
 最後のところですが、被保険者にとっては、初回登録というマイナンバーカードの保険証利用の申込みをする必要がありまして、今現在、国共済の申込み率は7.2%であります。病院に設置されている顔認証付きカードリーダーでも初回登録できるのですけれども、登録には10秒程度ですけど時間がかかってしまい、そこで待ちが増えていくということになってしまいますので、マイナポータルとか、セブン銀行ATMとか、事前に申し込むことが推奨されているところであります。
 ちなみに、先般決定された経済対策では、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録を行った場合、7,500円相当のポイントを付与することともされていまして、こういう機会を使いまして、国共済の組合員の初回登録が進むように、我々としても各省各庁共済組合を通じてしっかり働きかけていきたいと考えているところであります。
 以上でございます。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございました。
 ただいまの資料4の説明について、御質問、御意見がありましたら、よろしくお願いします。よろしいですか。
 特に今日、全体通じて是非とも言っておきたいというのがございましたら、お願いしたいと思うのですけれども。

〔 松村専務理事 〕 是非ともではないですが。

〔 川北分科会長 〕 はい。

〔 松村専務理事 〕 国家公務員共済組合連合会、専務の松村でございます。
 本日は、いろんな御意見、御指摘を頂戴いたしまして、ありがとうございました。我々連合会も、ESGを考慮して投資をしていくということは、我々自体が長期的に安定した運用を目指す団体でありますので、非常に重要なことだと思っております。今、ESGに関していろんな世の中での動き、今日も最新、最先端のお話がいろいろございましたけれども、そうしたものをよく踏まえて、我々のほうのリソースの制約等もございますけれども、できる限り、実質的な意味で、ESG考慮を進めていけるように今後ともやっていきたいと思っておりますので、御指導いただければと思います。

〔 川北分科会長 〕 ありがとうございます。
 他によろしいでしょうか。
 では、この辺りで質疑を終わりとさせていただきます。
 最後に、事務局から何かございましたら、お願いします。

〔 八幡主計局総務課長 〕  本日は、専門的見地からたくさんの御意見をいただき、ありがとうございました。本日の御意見も踏まえまして、厚生年金法第79条の8第2項に基づく評価につきまして、12月の下旬に財務省のホームページにて公表させていただきます。
 冒頭と繰り返しになりますが、資料1と資料2、それから参考資料4につきましては、公表日まで取扱いについて御注意をお願いしたいと思います。
 以上です。

〔 川北分科会長 〕 それでは、以上をもちまして、本日はこれで終了させていただきます。御多用の中、大変ありがとうございました。
午後3時05分閉会