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財政制度分科会(平成30年3月30日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成3月30日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成30年3月30日(金)14:00〜16:00
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)

1.開会

2.議題

NIRA総合研究開発機構説明

「人口変動が突きつける日本の将来」

海外調査報告

3.閉会

出席者

分科会長代理

田近栄治

岡本主計局長

茶谷次長

大鹿次長

神田次長

青木総務課長

中野司計課長

奥法規課長

若原給与共済課長

関口調査課長

竹田官房参事官

江島主計官

安出主計官

湯下主計官

高橋主計官

中島主計官

阿久澤主計官

岩佐主計官

前田主計官

中山主計官

内野主計官

北尾主計企画官

藤ア主計企画官

赤井伸郎

秋山咲恵

遠藤典子

黒川行治

神 津 里季生

佐藤主光

武田洋子

竹中ナミ

土居丈朗

宮島香澄

臨時委員

伊藤一郎

老川祥一

大槻奈那

岡本圀衞

加藤久和

北尾早霧

小林 毅

末澤豪謙

十 河 ひろ美

冨田俊基

増田寛也

~子田 章 博

吉川 洋

 

 


午後2時00分開会

〔 田近分科会長代理 〕 ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様には、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

本日は2つの議題を取り上げます。1つは、NIRA総合研究開発機構からの御説明、そしてもう1つは、海外調査報告です。

それでは、最初の議題に入ります。本日は、NIRA総合研究開発機構から、森田朗 津田塾大学総合政策学部教授と、岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授のお二人にお越しいただいております。

お二人にお話しいただくテーマですが、まさに財審でこれから考えていく最も重要なイシューの一つである社会保障に関連して、「人口変動が突きつける日本の将来」という内容でお話をいただきます。では、森田先生、岩本先生、よろしくお願いします。

〔 森田朗 津田塾大学総合政策学部教授 〕 皆様、こんにちは。津田塾大学の森田でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、感謝申し上げたいと思います。

現在、少子高齢化、人口減少の時代と言われておりますが、その中にありまして社会保障の今後のあり方は、国民の多くの関心事であり、特に財政面については非常に不安感も漂っているところかと思います。将来、社会保障はどうなるのかということにつきまして、厚生労働省は2012年に、税・社会保障一体改革に向けた議論の中で社会保障に係る費用の将来推計を示していますが、それも2025年までのものでして、それ以降の推計は示されておりません。

そこで、NIRA総研では、今、画面に出ているメンバーで研究会を組織し、そこで将来推計を行いました。本日は、その内容を報告させていただきます。

なお、こうした数字の長期の推計に関しましては、しばしばそれが当たっているかどうかということに関心が向けられることが多いわけですが、ここでの推計の目的は、あくまでも今後の政策をより良い方向に変えていくための議論の土台を提供することでして、当てることを狙っているわけではございません。具体的な推計方法、推計結果につきましては、担当の岩本教授に御説明をいただきたいと思います。

それでは、岩本先生、よろしくお願いします。

〔 岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授 〕 東京大学の岩本でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

それでは、早速、説明に入らせていただきたいと思います。

これから主に数字を示していきますが、まずこの推計の目的をお話します。将来はなかなか不確定なものが多いので、予想は正確にできるものではございません。その中でも我々は、将来かなりの確実さで訪れるものに焦点を絞りまして、不確定なものに関しては幅を持って見るといいますか、少し重点を置かない形で考えていくことにしております。

何を主に置いているかといいますと、まず政策に関しましては、現在計画されている政策が想定どおり実施されて、想定された効果が生じるという前提で推計を組み立てております。推計の終わりは2041年、すなわち今から23年後ということで、それほど遠い将来ではなく、先に行くほどより不確定になりますけれども、現実的な範囲で見通せるということで、この年代を選んでいるということです。

2041年という中途半端な数字になっておりますが、その理由は、後で御説明しますように医療・介護の費用に関係しております。これまで医療費適正化計画というものは5年サイクル、介護保険事業計画は3年サイクルで策定されておりまして、医療・介護の連携が重要であると言われながら計画はまちまちでありました。これが、来年度から医療費適正化計画の策定を6年ごとに変更とし、サイクルをそろえることにしております。来年度から6年間のサイクルが4回、24年間の最後の年が2041年なので、2041年をこの推計の終わりの期間にした次第でございます。

人口構成につきましては、社会保障・人口問題研究所が発表しております将来推計人口を用いており、人口構成の変化が社会保障に関係する費用にどのように影響を与えるのかが主な焦点になるということでございます。

その結果につきましては、資料の3枚目に文章でまとめておりまして、4枚目にグラフを掲載しています。どちらも同じ内容になっておりますので、見比べていただければと思います。

まず、社会保障全体の費用です。2016年度、足元は21.5%ですが、これが2041年度には24.5%になります。社会保障給付費の対GDP比は、足元の2016年度の21.5%から2041年度には24.5%へ、GDPの3%分上昇するということになります。名目額では、足元は116.2兆円ですが、これが190.7兆円という金額まで膨らむということでございます。

内訳ですが、5つの分野に分けております。それぞれ見ていきますと、年金は、マクロ経済スライドがこれから実施されることが想定されますので、足元よりも若干の減少になります。具体的には、GDP比10.4%から9.8%に減少するということでございます。

子ども・子育て経費につきましては、これから重視するということで費用は上昇するということなのですが、先行きでは、人口につきましては少子化が進み、政策に関する費用は若干低下するということで、ほぼ同水準になります。

医療につきましては、足元7%から8.5%へ、GDP比1.5%の増加、介護につきましては、足元1.8%から3.9%へ増加ということになります。

現在、全体水準としては介護の方が費用はかなり少ないのですが、伸び幅でいいますと介護が医療を上回るということが推計で示されております。その理由は、介護については、高齢人口が相対的に伸びていくと大きく伸びるためでございます。これについては後で詳しく説明したいと思います。また、公費負担の伸びが保険料の伸びよりも大きいということについても後ほど御説明したいと思います。

それでは、5枚目のスライドです。今、総費用を示しましたが、これは保険料と公費でどのように分担、負担されることになるかを、現在の費用負担の仕組みがそのまま維持されるという前提で推計しております。

公費負担で見ますと、医療は、足元、GDP比2.5%が公費負担に相当する分と推計されますが、これが3.4%へ増加するため、変化率で見ますと1.3倍になるということです。介護は、1%から2.1%へ、2.2倍という形で増えるということでございます。公費負担が、社会保障目的税として消費税で賄われるとしますと、現行の軽減税率がないもとでは、消費税率1%でGDP比0.5%分の税収になるという目算が立ちますので、合わせますと、GDPで2%強の費用増が生じますので、消費税率に換算しますと4%程度の財源が必要になるということが示されております。

保険料負担につきましては、実際の制度は細かく分かれておりますが、ここでの計算は保険料で賄われるもの全体を対GDP比で示しております。医療は、足元3.7%から4.3%へということで1.1倍、介護は0.8%から1.7%へということで2.2倍という形で推計されております。

直感的に理解するには、もう少し制度別に保険料を計算した方が良いですが、制度はやや複雑でございまして、そこまで推計するための情報が不足しており、概算は荒くしか申し上げられません。例えば医療ですと、負担が1.1倍になるという意味は、もし各保険制度のもと均等に分担する形になればそれぞれの保険料率が約1.1倍になるだろうということです。現在、協会けんぽは足元10%の保険料率ですが、これが11%強ぐらいになるという相場観でございます。

介護は、もう少しややこしく、第1号被保険者と第2号被保険者の負担割合が決まりまして、そこで分担しますので、実は第1号被保険者の負担割合が増えるということで、必ずしも保険料率はそれぞれの制度のもとで2.2倍になるということではございません。

ここまでが全体像ですが、その内訳について、まず医療・介護から説明していきます。資料の6番目のスライドになります。作成に当たっては、私と京都産業大学の福井先生が開発しました「医療・介護保険財政モデル」を用いております。モデルの目的は別のところにもありますが、このモデルを用いて費用推計を行ったということでございます。

推計のやり方を簡単に御説明しますと、現在の足元のデータで年齢階層別の1人当たりの医療費、介護費を作成しまして、それらに将来の人口を掛けて総費用を求めております。その中には、伸び率として医療の高度化、あるいは名目所得の伸び、物価の伸びといったものを反映させております。その経済前提につきましては、内閣府で試算されております最新の中長期試算のベースラインケースを用いております。我々は、政府が行った税・社会保障一体改革の際の推計を更新するという目的でやっておりましたので、税・社会保障一体改革のときに使われた経済前提がこのベースラインケースに相当するような慎重シナリオだったので、それを踏襲しているということでございます。

政策としましては、一体改革推計の時とは違いまして、現在は第3期医療費適正化計画のための医療費の見通しが出されておりますので、それに置き換えております。そのことによって、今から2023年度までの医療費は少し下方修正された形になっております。

介護の方は、そういった計画の見直しがございません。医療の計画が変更された分、医療から介護に入院患者が移ってくるということが入っておりましたので、その移ってくる人数を変更することで調整し、全体的に整合するような手直しをして介護の計数を計算しております。

次の7番目のスライドは、年齢階層別の足元のデータでございます。御承知の方もおられるかと思いますが、医療・介護どちらも高齢化に伴って費用が増えていくわけですが、介護は高齢者の中でも特に後期高齢者、つまり年齢がかさむほどさらに増加していくということでございます。日本の今後の高齢化は、高齢者の中でもより高齢の人口比率が増えていくと予測されておりますので、医療費の伸びよりも介護費の伸びが大きくなると先ほど御説明したのは、こういった現在の費用構造を反映したものということでございます。

次に、8番目のスライドは年金と子育てをまとめたものです。先ほど御説明しましたように、経済前提に基づいてマクロ経済スライドが発動されるという前提で、現在、2014年度財政検証の想定をベースにした給付費を2041年まで推計しております。

年金の給付に関しましては、全体の計数は社会保障費用統計ベースに合わせておりますので、恩給等の計算を別途しまして、足し合わせるという作業をしております。

子育てにつきましては、ベースにありますのは一体改革の際に行われました推計ですが、その後、実際の施策は大分変わっておりますので、項目ごとに反映しております。最近の新しい経済成長パッケージにおける子育て関連施策も、全体像が完全に数値として示されているものはございませんので、こちらの方で可能な限り数字を拾って中に取り込む作業を行っているということでございます。

ここまで御説明した数字は、経済前提としてベースラインケースを用いたものですが、もう一つ、中長期試算の中には成長実現ケースというものが存在します。経済成長すれば名目所得も上昇するので、費用負担ももう少し軽くなるのではないかと言われることがよくありますが、それが正しいかどうかを検証するために、経済前提を成長実現シナリオに変えた推計を資料の9番目のスライドに示しております。

上の折れ線グラフは、ベースラインケースと成長実現ケースを示したものでございます。名目額で見ますと、名目で経済成長しますので成長実現ケースは大きくなりますが、負担能力を見るのであれば所得に対する比率で見るのが適当と考えられますので、下の棒グラフの対GDP比で見ますと、2041年は成長実現ケースでは若干下がりますが、費用負担の増加は避けられないということが示されています。

所得はかなり増えまして、2027年度以降はこちらの方で数字をアレンジしてつくっておりますが、ベースラインケースでは2041年度は779兆円ですが、成長実現ケースでは1,128兆円と1.45倍に増え、名目費用、社会保障費用も増えるということになります。

右の方に単価の伸び率の想定と書いていますが、経済成長しますと、賃金の上昇と物価の上昇を考慮する必要があり、それは医療・介護サービスの単価の伸びにも反映されるということが推定に含まれております。この推定の単価の伸び率は一体改革推計で用いられた値をそのまま用いておりまして、医療は成長率の3分の1だけ伸びると想定し、介護は賃金の65%、物価上昇の65%が反映されるという推計になっております。ですから、名目所得の伸びに比べて少し下がるものの、かなりの部分が将来の伸びに反映されるという形になっておりますので、必ずしも名目経済成長が問題を解決するわけではないということが、このグラフで示されていることでございます。

以上が、主な数字になります。これを踏まえて、どのように考えるかということを御説明して、私の報告を締めさせていただきたいと思います。10枚目のスライドで御説明していきます。

これまでの説明は、費用負担の構造を前提にしまして、機械的に計算されたものと言えますが、費用負担の構造を見直して、少しでも費用の節約を図ることが大事になってくるのではないかと思います。

そのように考えると、それぞれの分野に関してフォーカスを当てていかなければいけないのですが、伸びが大きい分野がやはり重要になってくると考えますと、順番としては介護・医療を考えなければならないと思います。現在、全体の水準は医療の方が大きいので、どうしても医療の方が介護よりも関心が高いですが、将来の伸びの大きさということで見れば、介護に関して真剣に考える必要があるのではないかと思います。

医療は、先ほど示したように先に向けてある一定の率で伸びていく傾向にありますが、2015年度の高額医薬品の登場などによっては医療費が急激に増えることが考えられます。これは推定に盛り込みようがありませんので、そういった上振れリスクがこの中に反映する可能性もあるという点に注意する必要があると言えるかと思います。

年金は若干減りますと言いましたが、マクロ経済スライドはそのまま実行されるという想定に基づくものでございます。マクロ経済スライドを実際に発動していきますと、高齢者の年金額が減っていくことになりますので、そういったことに関しては摩擦が生じる可能性もあることに注意する必要があるということが言えるかと思います。

こういったことに注意しながら、さらには、費用構造を見直すということで提供体制の見直し、そして生産性向上が必要になってくるのではないかと思われます。医療や介護の質を落とさずに支出を抑えるために、提供体制を見直すことをさらに進めるということを重点的に考える必要があるかと思います。

介護に関しては、フォーマルなケアを見ているのですが、現在、実際にはインフォーマルなケアも相当ございまして、介護を受ける必要のある人たちが増えるということは、インフォーマルなケアがどんどん増えていくということに繋がり得ます。仮に財政支出が増えなくても、インフォーマルなケアが増えるということは、社会全体にとって大きな費用になりますので、それについてのケアも必要になってくるのではないかと思われます。

最後に、今後経験する人口構造の変化は非常に大きなものになりますので、その数字を御説明しましたが、給付負担構造の見直しや、様々なリスクへの対応と、課題は山積みであるということでございます。その解決策というのはこちらで示すものではございませんで、我々としては、こういった問題の深刻さを認識していただくことで、議論、政策をさらに前に進めていくことが大事であると訴えたいということでございます。

先ほどの政府が出されている推計は2025年度までということですが、これはあと7年程度しかありません。2025年度までの推計を過去に遡り調べますと、1994年のときに、2025年までの社会保障費の見通しというものを厚生労働省が出しております。この推計では31年先まで出していました。我々は、今、23年先の推計を出していますが、23年先の推計を政府が出すことは大胆過ぎるということではございません。政府は、これまで2025年までの推計しか出していなかった、先を見る期間がどんどん短くなっていたということでございますので、ぜひ推計期間を先に延ばして政府がそういったことを示して、見通しを示すことでさまざまな政策の議論が起こるということになると思いますので、そういったことを進めなければいけない。我々のこういった推計が議論の呼び水になればありがたいと思っております。

以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 大変明瞭な御説明、ありがとうございました。

それでは、今の御説明につきまして、御意見、御質問等ありましたら、御自由に御発言ください。いつものとおりネームプレートを立てていただいて、こちらから指名させていただきたいと思います。私の方から見える、岡本委員、加藤委員、北尾委員の順番でお願いいたします。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。

これまで2041年まで見通したものはあまり見たことがありませんでしたので、これは大変素晴らしいですし、またベースラインケースをもとにしているというところも非常に素晴らしいと思います。

その中で、私からは質問ですが、2025年度の社会保障給付費は141.1兆円となっています。ところが、厚生労働省でしたか、前に試算したときには148.9兆円というものがあります。大抵、試算で先を見るときはもっと増えることが多いのですが、これが141.1兆円というむしろ低い数値で出たというのは、例えば毎年社会保障費の伸びを5,000億円にとどめようとか、そのような政策が寄与してこのような数字になっているのか。それとも、そういったことは全く関係なく、今、推計をやり直してみたところこのような数値となったのか。この辺の食い違いについてお聞きしたいというのが1点目。

2点目は、2041年度までの給付費の増は消費税率で6%程度に換算できるとのことですが、そうだとすると2025年度はこの数字でいくと0.8%程になるわけです。消費税の議論というのはいろいろありますが、そうした中、社会保障はかなり大きな割合を示しているので、現在、消費税率は8%、来年には10%で、その後どうするのかという議論になるのでしょうが、このような数値を見たときに、本来、消費税というのはどうあるべきか、少しでも御示唆いただければありがたい。

3点目は、資料を見ますと、やはり情報通信技術等、様々なもので改善していく必要があるということですが、この辺については、こういうことをやると数量的にどの程度改善する等、そういったところについてもいつも話がありますよね。Society5.0やそのようなことをどんどんやると医療関係にいい等の議論があるのですが、こういうものの試算がどこかにあればいいと思っています。

この3点について、御質問です。

〔 田近分科会長代理 〕 北尾委員まで御質問いただいて、その後まとめてお答えいただきたいと思います。

〔 加藤委員 〕 御説明、どうもありがとうございました。

こういった推計は非常に役に立つものだと思いますし、こういった形で大胆に出されることはなかなか勇気の要ることではないかと思います。最近では、こういった将来見通しがあまりなされていないため、非常に大きなインパクトを与えるものではないかと思っております。

実は、私たちも数年前に同じような試みをやったのですが、そのときに感じたのは、こういった将来見通しをしたときに、人口と経済と制度、つまり人口は高齢化していきますし、経済成長、特に名目の部分がどうなるかという話があり、それから制度、1人当たり医療費や介護費用の伸びはどうなのかという話もあり、それら3つに分けたときに、何が一番、将来の社会保障費を大きく上昇させているのか、もし感覚的なものがあれば教えていただきたいというのが1点ございます。

もう一つは、我々が様々な形で同じようなことをやったときに批判された一番大きな理由は、経済前提を置いて社会保障や何かの推計をすると、逆に社会保障や財政の状況が経済にも影響を与えるのではないかというような批判をいただいたことがあります。これに対して、先生方はどのような形で考えていらっしゃるのか。

この2点について、後で教えていただければと思います。以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 北尾委員、お願いします。

〔 北尾委員 〕 ありがとうございました。

手短に3点あるのですが、2025年までの政府の推計を2041年まで延ばしたということは素晴らしいと思いますが、私もマクロモデルを使った同じような研究をしておりまして、2041年だけではなく2050年、2100年というところまでやっておりますが、現在は2065年まで人口推計が出ているので、ぜひそこまで推計を延ばしていただければというのがさらに求めるところであります。なぜかというと、やはり気になるのは、自分が高齢者になったときだけではなくて、例えば自分の子供が高齢になるとき、50年後、どうなっているのか。そういった数字を実際に示していただくことによって、将来世代とのトレードオフを考えた上での議論を進めることができるので、こういった形で数字を示していただく際に、もっと推計を長くしていただければ意味のあることではないかと思います。

2点目、GDP比で様々なものを表していると思うのですけれども、分母に来るGDPは内閣府の推計を二通りそのまま使っていらっしゃると思います。ただ、例えば消費税率で6%程度の支出が必要になるということで、もし様々な税のオプションを考えた場合、かなり大きな影響を与えることになると思うのです。例えば、消費税を使うかわりに保険料で賄ったらどうか、6%税金が上がったら働くインセンティブはどう変わるか、それによってGDPがどう変わるか。政策のオプションによっても分母の部分が大きく変わってくると思うので、そういったことももし示せれば、様々な幅を見るという意味でよいのかなと思います。

最後、3点目、年金の割合が下がったというのは少し驚いたのですけれども、やはり前提として、マクロ経済スライドはきちんと効くということを仮定しているのが前提にあると思うのですけれども、今までのデータを見て、その前提を採用するのはどうかなと個人的に若干思いました。スライドがうまくいくというのは、多分、ポジティブなシナリオということで、仮にベースラインケースとして、スライドがうまくいかないというシナリオも用意し、マクロ経済スライドに関してもベースラインケースと成長実現ケースの両者を用意し、プラスマイナスの幅を持って推計を見ることができればいいのではないかと思いました。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、岩本先生、ご回答をお願いします。

〔 岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授 〕 順番にお答えしたいと思います。

まず、今回の推計での2025年の数字が、厚労省が行った一体改革のときの推計よりも下がっている原因ですけれども、様々なものがあります。実績値が大分積み上がっていますけれども、実績値が一体改革の推計よりも下振れして動いております。医療費もそれほど高くなかった、介護費もそれほど上がっていなかったということでございます。それは、医療・介護それぞれ理由がありますけれども、医療は想定したよりも費用が抑制されたということだと思います。介護は、実は介護費用が伸びていくということがもともと織り込まれていたのですけれども、想定ほど伸びなかったということがあります。

これから先ですけれども、一体改革で伸びを想定している分よりも、先ほど見ましたが、改訂された医療費適正化計画では抑制が考慮されているということで小さくなっています。費用関係につきましては、一体改革推計のときよりも実績が下振れしていることと、医療の方で抑制が入って抑えられているということでございます。

それ以降は、ちょっと御説明は省略しましたけれども、単価の伸び率に関しましては賃金成長率を使っておりますので、一体改革の推計よりも少し高い伸びを置いているわけでして、こちらの方はどうなるかわからないということかと思います。

次に、消費税がどうあるべきかという政策論につきましては、踏み込んでおりませんので、先ほど説明しましたのは、社会保障目的で消費税も上がるということならば増税は必要ということでとどめております。政策論をやりますと長くなりますので、そこまでにとどめております。

費用削減につきましては、研究会のスコープでは、そういった議論は考えておりましたけれども、現状はここまでしかございません。まずはこの推計を示して、そういったものに関して盛り込めるのだったら盛り込もうと思っておりましたが、かなり議論されて固まった数字を示す研究はなかなか見つからないという現状かと思われまして、こちらは十分入っていないということかと思います。

これからの様相につきましては、人口、経済、制度のどれかということになりますと、やはり人口構成の変化に伴います医療・介護費用の変化というのが、インパクト的にはかなり大きいというのが私の個人的な印象でございます。

社会保障から経済への影響というのは、こちらの推計にはあまり入っておりません。ただ、費用面だけ考慮していますけれども、医療・介護サービスが増えるということは、すなわち需要が増えるということだと思います。それは、需要にちゃんと見合う供給があるのかどうかということで、様々な影響が生じてくるということがあります。例えば、労働者の需要が大分変わってくることのインパクトとか、それは大事かと思います。もちろん、費用負担が増えることによって租税負担が増える、保険料負担が増えるということのディストーションの問題もあるかと思いますけれども、こちらの推計は経済学的に見ると非常に単純化されていて、そういったものは入っていないということになるかと思います。

先に延ばすことが重要というのは、もちろん非常に大事なことだと思います。実は、医療・介護につきましては、我々のモデルはもっと先まで計算しています。2200年ぐらいまで計算しています。大事なことは、2041年はまだピークアウトしていない、それから財審の資料でも2060年まで計算されていると思うのですけれども、2060年はまだピークアウトしていない、伸びる途中で推計がとまっている。どこまで伸びるのか、上がるのかということは大事なことだと思いますので、どこまで上がるかを確認することは一つ大事ではないかと思います。それは、医療・介護保険財政問題でやっております。簡単に申し上げますと、医療は2060年代、介護は2070年代にピークを迎えることになっています。ただ、ピークアウトするというのは先に下がってくるということではなくて、高原状態、プラトー状態ということになるかと思いますので、もっとこの先には大変なことがあるということが言えるかと思います。費用に関しては、先に行くほど非常に不確実になるということがございますので、数字を示すことによって全体が不確定になると見られることもあります。だから、発表の目的として確実なものということで2041年の数字を出したのですけれども、ここで高齢化によるインパクトが終わるわけではないということは大変重要なことかと思います。

分母は、消費税が増税されますといろいろと計算が変わりますけれども、それは考慮せずに出してございます。そういった数字だと御理解いただければと思います。

年金は、マクロ経済スライドは実施されるという前提です。実施されない可能性は相当あるかと思いますけれども、そういったポリティカルな要因は留意事項ということで大事なことだと思いますけれども、推計に関しては持ち込めないということでございます。

以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

少し時間が押してきていますけれども、私のところで確認できているのは佐藤委員、武田委員、伊藤委員、大槻委員、土居委員です。では、佐藤委員、武田委員、伊藤委員と続けてお願いします。

〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。

質問ですけれども、年金について2点です。1点目は、高齢者の労働参加率をどう見込んでいるのか。つまり、今、政府は高齢者の労働参加を高めようとしていますけれども、そういったものは織り込むのか、あるいは現状を見て考えているのか。それから、生活保護との関係、特に団塊ジュニアを中心に、無年金者が恐らく生活保護に入ってくると思いますが、年金は減っていますけれども、生活保護に回っていることはないのでしょうか。

医療ですけれども、医療費適正化計画、これはこれでかなり楽観的なシナリオなのですが、これはどの程度、例えば地域差の半減部分とか、そういったところはどの程度織り込んでいらっしゃるのか。それから、賃金の上昇率に合わせているというのは、どちらを見ているのかというちょっと素朴な疑問があります。賃金とともに上昇するのは、おそらく、保険料であって、ここの審議会でも度々問題になりましたけれども、診療報酬自体、賃金の上昇率を上回って推移しているという過去の経緯があるわけなので、それを考えると、賃金の上昇率に医療費が合わせられるとすれば、実は保険料と伸びが合うので、それはそれで悪くない。ですから、これはどの程度楽観的なシナリオと思っていいのか、あるいは、これがある種自然体と理解していいのかということです。つまり、何が聞きたいかというと、これはどこまで楽観的なのか、どこまで悲観的なシナリオなのかということを知りたいと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 では、武田委員。

〔 武田委員 〕 本日は、大変貴重な御発表をありがとうございました。先を見るというメッセージは非常に重要だと思いますし、将来を直視し、前向きに制度改革の議論を進めることも重要だと思います。

質問が1点ございます。介護の重要性を強調されていらっしゃいましたけれども、最近、健康寿命をより長くするという視点もよく議論されると思いますが、シミュレーション上、要介護度が改善するとどのくらい変化があるか、そのような試算もモデルの中で考慮することができるのか。あるいは、されていらっしゃるとしたら、結果が出ているようでしたら御紹介いただければと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 伊藤委員、お願いします。

〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。

時間の関係でコメントだけします。2041年までの推計を出していただいたということは、僕は非常に貴重だと思います。現実問題として、足元の潜在成長率が1%前後ですから、ベースラインケースを用いて計算されているということなので、より現実的な想定のもとでこういった推計になるということですから、やはり財政健全化を考える上での大事な指標になると思います。聞くところによると、今年6月に、政府は経済財政運営と改革の基本方針を出されると聞いているのですが、その中でこういった数字をやはり意識して、具体的で実効性のある計画、特に社会保障費のところは絶対にやらないといけない。それに対応して、消費税を含めた税の問題を考えないといけませんので、そういった意味で具体的な計画を示して、実行していっていただきたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、岩本先生。

〔 岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授 〕 御質問ありがとうございました。

まず、前提についての御質問がありましたけれども、細かい前提、あるいは細かいことにつきましては、NIRA総研のウェブサイトに説明文書が掲載されておりますので、関心のある方はそちらで御確認いただきたいと思いますが、簡単に申し上げますと、労働力参加につきましてはJILが出しておりますが、楽観的なケースを使っております。過去の実績を見ますと、女性労働参加が進んでいる楽観的なケースの方が割と当たっているような印象を持っておりますので、そちらを用いているということでございます。

年金が削減されますと生活保護の受給者が増えるという影響につきましては、我々の方でも考慮に入れているということでございます。

将来の伸び率、賃金上昇を考慮しているということですけれども、これは楽観的、悲観的というより、私どもは中立的と考えております。このように置かないと、実は長期に延ばすと所得の伸びよりも費用の伸びが上回ってしまうとか、下回ってしまうということで、比率が安定しないのが一つの大きな要素であります。実は、賃金成長率の想定に対GDP比の数字は依存しない形になるということで中立的、人口構成の変化が反映されると見ているということでございます。実際の数字は、賃金成長率の上下ぐらい動いているという感じかと思いますので、抑えられたり、あるいは抑えがきかなくて少し上振れしたりという形かと思っております。

健康寿命が改善しますと、介護費用、医療費用もかからなくなってくるということでございますので、そういったことが実現できれば費用は削減されることになるかと思いますけれども、あいにく現在ところ、科学的、客観的な根拠に基づいて考慮するところまでは行っておりませんで、これは私なども含めて学会全体の将来の課題かと思っております。

以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 よろしいですか。

それでは、大槻委員と土居委員、お願いします。

〔 大槻委員 〕 御説明ありがとうございました。

詳細についてはNIRAのペーパーを拝見させていただきたいと思いますので、コメントだけ一言申し上げます。私の方では個人投資家と日々付き合っている中で、最近、おかげさまで、iDeCoの影響もあって若い方からの御紹介、コミュニケーションを非常に多く持たせていただいている中で、社会人1年目の方から自分の将来が不安だ、医療費も上がって財政は大丈夫なのかという言葉を聞く中で、確かにこのような形でより現実的な視点で、しかも厳しいことを直視するということは非常に大事なことだと思います。同時に、そのメッセージが間違って伝わらないような形で、財政の健全性をより回復することで、今ある不安を後退させることが大事だろうというメッセージにつなげることが必要なのであって、バリバリ節約しなければといけない、消費はどんどん先送りにしようというようなメッセージにならないように工夫することが大事なのではないかと思った次第です。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

〔 土居委員 〕 御説明、どうもありがとうございました。両先生にはいつも御指導いただいている立場なのですけれども、1点だけ質問をさせていただきたいと思います。

地域医療構想の病床再編の効果をどのように見ておられるかということであります。昨日、経済財政諮問会議で、経済・財政一体改革推進委員会の試算報告というものが出たのですけれども、病床再編で数千億円単位の削減効果が2020年までに出るというような試算ですが、私はちょっと生ぬるいと思っていて、兆円に届くような単位の抑制効果が出てくると思っています。なぜならば、高度急性期の病床縮減がもう少し進む、つまり単価の高い入院のベッドがより少なくなるという効果がありますから、単純に平均的な入院医療費が下がるだけの効果ではないということが考えられる。しかも、それは入院が必要な患者を追い出すわけではなくて、入院の将来需要を図った上でそういった計算になっているということですから、その効果をこの試算でどういうように織り込んでおられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

〔 岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授 〕 ありがとうございます。

地域医療構想の最近の議論につきましては、時間的に織り込む余裕がありませんでした。先ほど申し上げましたように、医療費適正化計画で出されたケースを織り込んでいるということです。また、先ほど答弁漏れがありましたけれども、都道府県の格差解消等につきましては、医療費適正化計画の見通しの方で、ある前提のもとで出された数字がありますので、それをそのまま取り入れているという状況でございます。その持続可能性につきましては様々な議論があるかと思いますけれども、推計から外れてしまいますので、個人的にはなかなか難しいと思います。医療費適正化計画のとおり削減が本当に進むのかというのは、こちらの推計と離れて、個人的には非常に険しいものがあるかと思います。そういった意味では、その分に関して、この推計は医療費適正化計画とともに少し楽観的になっているおそれはあるかと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 末澤委員からの御質問で締めるということで進めさせていただきます。

〔 末澤委員 〕 ありがとうございました。

先ほど御説明のあった図1で社会保障費の将来見通しは、2016年度の21.5%から2025年度の21.9%へと9年間で0.4%伸びる。一方、その後の2025年度から2041年度の間は16年間で2.6%ですから、比率で見ると相当上がるわけです。おそらく、これをもっと先まで延ばすと、もっと上がるということだったのですが、このカーブと人口動態の変化の両方をセットでお見せいただければ、人口動態の変化によってこれだけ社会保障費が必要であると、私どもを含めて国民の皆さんも理解が進むのではないかということで、次回機会があればそういった図を見たいなと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 岩本先生、ご回答をお願いします。

〔 岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授 〕 社会保障の費用、高齢者に向ける費用というのは、やはり人口構成、高齢化率と非常に密接に関係がありますので、将来推計人口で100年後まで参考推計を含めて見通しがありますので、それに沿った動きをするだろうという予測で、まずは大体の感触はつかめると思います。先ほどお見せした2041年後につきまして、医療・介護のピークを迎える年代は、実はそのときに一番使う年齢階層が多いところにちょうど対応しているということで、人口構成を押さえることが大事になりますので、対比して見せるというやり方はビジュアル的にも非常に有益かと思います。賛成いたします。

〔 田近分科会長代理 〕 森田先生、岩本先生、本日は本当にありがとうございます。今後、財政健全化の計画を考えていきますけれども、その要になる社会保障関係のところで大変貴重な御報告をいただきました。結果等はNIRAのホームページに出ております

ので、それも適宜参考にさせていただいて、議論を進めたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。

両先生におかれましては、所用のため、ここで御退室されます。大変御多用中、ありがとうございました。

(森田教授、岩本教授退室)

 

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、次の議題に移らせていただきます。資料3、資料4で海外調査報告を進めていきます。

資料3の1ページを御覧いただけますか。財政健全化に向けた海外調査を、4班に分かれて行ってきました。各班の御報告を、印象も含めたお話を伺いますけれども、その前に簡単に全体的な話をしたいと思います。

早速、このスライドの次のページですけれども、財政健全化目標・計画に対する各国の取組ということで1から6まで、財政健全化に向けてのPDCAサイクルをイメージしてまとめています。ポイントと思われるところに集中して話させていただきたいと思います。

スライド1は、いわゆるPの部分ですけれども、ここに書きましたように、堅実な経済予測に基づき、財政健全化目標と毎年の財政政策の指針等をしっかりと関連付けて策定する必要があり、そしてまた、政治のコミットメントが必要と。各国については、これから御説明があると思いますけれども、堅実な経済予測、財政健全化目標、それを達成する道筋、政治のコミットメント、そういったものが重なって財政健全化が行われるというところだと思います。

ここの下の方に、これは後でIMFに行った方からも御説明いただきますけれども、IMFからは、最終的な財政目標と、それに向けた財政収支や支出をコントロールするための毎年の財政政策の指針、歳出規律等が重要という指摘がありました。

それから、「目標」という項目の真ん中あたりですけれども、少し細かいようで重要だと思われるものは、財政目標の指標として何を使うかということです。欧州委員会では、構造的な財政収支から景気循環的な要因を除いたものを使っています。これは、潜在的GDPよりも景気が悪くて、GDPが非常に小さいというときには財政赤字が大きく見えてしまうわけですけれども、そうではなく定常的な状態で財政収支を考えましょうということがあるわけです。今回、やはり構造的財政収支の集計には様々な仮定が置かれていることから、恣意性とは言わないですけれども、これを排した、財政健全化に向けてはよりシンプルな歳出コントロール、「歳出ベンチマーク」というのが重要ではないかというような話も聞いてきました。

それから、調査から得られる視点2というところで、目標とその裏づけとなる計画期間は一致させることが通例とありますが、それはそうだと思います。

私は、このスライドの2番目に掲げられた項目が非常に大切だと思うのですけれども、財政健全化は財政出動自身が景気を加熱させ得る、GDPギャップが閉じているとき、すなわち、現在のように景気が良くなり、ほぼ潜在的経済規模を達成しているときにこそ健全化を実現すべき、進めるべきだということが御報告指摘されました。

それから、これはまさに森田先生、岩本先生の御報告に直結しますけれども、団塊の世代が高齢者に移行する期より前に目標を達成すべきだということが、OECDでも指摘されたということです。

それから、「その他」というところで、これも我々はこの財審の場で触れてきましたけれども、財政健全化の道筋が不透明であることが社会保障制度の持続可能性に対する不安を増大させ、それが過剰貯蓄等につながり、むしろマクロパフォーマンスを下げているのではないか、との指摘がありました。したがって、健全な財政運営と経済成長の関わりをしっかり認識すべきだということです。

次のページです。各国の基礎的財政収支、財政収支、構造的財政収支の状況です。日本の水準は、非常に赤字が大きいということもありますけれども、日本の構造的財政収支の対GDP比はマイナス4.8%と、財政収支対GDP比のマイナスの4.1%よりも大きくなっています。イタリアのように、財政収支がGDP比でマイナス1.6%、そして構造的財政収支がマイナス1.4%というのは、イタリアのGDPは潜在的なGDPよりも小さいので、構造的に見ると赤字幅は小さくなる。日本は逆になっているのは、先ほど事務局とも確認させてもらったのですけれども、OECDのGDP統計では日本のデフレギャップがもう解消されている。であるならば、なおさらのこと財政健全化を進めなければならないということなのだろうと思います。

次のページ、左側は各国の財政収支のGDP比率です。リーマンショックの際に各国の財政赤字が深くなったわけですが、日本は、デフレギャップから解消されつつあるにもかかわらず、その後、改善がおくれているというのがポイントの一つだろうと思います。

続いて、3、各国の歳出規律として、囲みの一番上を御覧いただきたいのですけれども、各国では歳出のシーリングを設けています。その実効性は、政治のコミットメント、会計年度を通じた歳出の実績に基づく取組状況の評価、是正措置の実施によって担保しております。歳出規律の維持により、好況期に歳入が上振れした場合には財政健全化に適切に活用。これも、私たちのグループが訪問したオランダでも大分言われました。つまり、まずは歳出をきっちり管理する、そこがぶれてはいけない。その結果、景気が悪いときには財政赤字になるかもしれないけれども、長期的に見ればきっちり取り返すのだという歳出コントロールが重要だ。したがって、歳出圧力の高い社会保障や地方財政に個別の規律を設ける例がある。この辺については、これから各国のお話があると思います。

次のページに、各国の社会保障等の分野での取組が書かれているということです。

次は、5、実際行っていくプロセスでの話です。財政健全化の進捗状況を検討し、計画、実績に乖離が見られるときには、それを是正していく。ローリングできっちりやっていきましょうという話です。具体的なことは、ここに書いてあるとおりです。

次に、6になります。今度は、それを国民にどう伝えるかということで、各国、様々な取組が書いてあります。たまたま私が行ったドイツで、連邦財務省に行ったのですけれども、シュヴァルツェ・ヌルという言葉があって、黒字のゼロ、つまり財政で赤字を出してはいけないと。前の連邦財務大臣、ショイブレ氏が辞めて連邦財務省を出るときに、財務省の職員が皆さん集まって黒いゼロを人文字で書いたという話もありました。

そういったことで、駆け足で恐縮ですけれども、財政再建に向けて、やはりきちんと目標を定めて、目標を達成する筋道を示す。そして、政治的なコミットメントをきちんと確保するということです。それから、先ほど申し上げたように、GDPギャップが閉じている現在の日本は、ここで財政再建をしないで済むわけはない。それから、団塊の世代が後期高齢者になるに向けて、きっちり社会保障、エンタイトルメントの予算をコントロールしなければいけないということ等だと思います。

これから各班のお話を伺います。まず英国、イタリアに行かれた遠藤委員、~子田委員からお願いいたします。

〔 遠藤委員 〕 英国とイタリアに行ってまいりました。大変旬な時期で、ブレグジット前と、イタリアの選挙前と大変面白い時期に行かせていただきました。

英国の資料を見ていただきますと、ブレグジットについては、2019年3月29日ですけれども、今後、移行期間とか、離脱の条件をめぐって、今年の秋辺りまで様々な問題が起きると思いますが、そういった不透明感の中で、経済は一応順調に推移しているという状況があるからか、私たちが抱いていた過度な悲壮感というか、悲観はあまり見られなかったというのが非常に印象的でした。

経済の指標、4ページ目を見ていただければおわかりだと思いますが、5ページ目、財政の進捗状況があります。構造的財政収支、2020年度までに対GDP比2%以下という目標は、2018年に2年前倒しで達成する見込みになっています。歳出については、リーマンショック後からGDP比に対して5%以上削減を行ってきているわけですけれども、これは日本で言えば25兆円から30兆円の規模になります。過度の歳出削減はもちろん望ましくないかもしれないのですが、これだけの歳出削減を行っても、なお歳出の対GDP比を削減する見通しを立てているというのが非常に印象的でございました。先ほどの田近分科会長代理のお話にもありましたPDCAの話は、しっかり英国でも管理されておりました。左側になります。

6ページ目、これはスペンディングレビューなど具体的な合理化策について御紹介していますので、見ていただければと思います。民間のエコノミストも政府も、皆様はもう御承知おきだと思うのですけれども、経済の見通しが政治的に楽観的になってしまうことを警戒する庁が財政責任庁としてできたのですが、ベースラインの予測の正確性や、客観性について、民間からも高い信頼が寄せられておりました。日本においても財政健全化計画を策定しているわけですけれども、そのベースラインの予測を信頼に足り得るものにすることが第一条件なのではないかという印象を持って英国を出ました。

それで、イタリアに参りました。お願いします。

〔 ~子田委員 〕 ポイントは、先ほど田近分科会長代理にお話ししていただいたので、私は少し感想めいたことを話したいと思いますが、イタリアは2017年度、財政収支の対GDP比が2.2%の赤字、債務残高の対GDP比が133%と決して財政状況はよいとは言えないのですけれども、意外なことに、リーマンショック直後を除いてプライマリーバランスが一貫して黒字である。金利や成長率は完全にコントロールできていないのですけれども、また、日本と同様、社会保障関連の歳出拡大圧力も強いのですが、歳出の名目値は政府が規律を持ってコントロールできていて、このPB黒字の継続は、例えば年金の支給額を抑えたりして、歳出をしっかりコントロールしているということの現れだと思いました。

そして、なぜ財政規律が維持されるかということですが、ちょうど出張時、総選挙の前で、同盟五つ星、中道右派、中道左派、それぞれ好き勝手な財政拡張的な公約を掲げていて、現地の人が解説するに、今は幾らでもでたらめな公約を掲げられるのですと。なぜかというと、どうせ連立になるのだから、政権を組むときに相手の党が反対して実現できなかったと言えばいいのですと。まことにいいかげんな政治だなと思ったのですけれども、それでも彼らが財政規律を維持しようという動機は、やはりEUの一員でありたいということだと思います。EUのファウンディングメンバーの一つという自負もありますし、英国と違ってEUを出たら自律して生きていけないということが、おそらく国民のコンセンサスとしてあり、各政党もEUから出ると言っている人はいない。その中で、よきEU市民となるためには言うことを聞かないといけないかというか、財政規律を保たないと追い出されてしまうと。非常に他律的ではあるのですけれども、規律が守られている所以ではないかと思いました。

一方で、やはり債務残高が多い分だけ利払い費というのは大きな問題でして、それが財政再建を難しくしているということがあります。日本は、今、金利環境がたまたま低位に安定しているわけで、この機を逃さずに債務残高の削減に取り組んでいく必要があると思いました。

2011年11月、債務危機の後にモンティ政権が発足して、国民に大きな痛みを求める財政再建を行ったのですけれども、これに対してはヒアリングを行った方々、一様に評判が悪くて、当時、失業率も高止まりしていて、経済全体の需要と供給の差、いわゆるGDPギャップもマイナスだった。こういうときは、むしろ財政再建のペースは緩めないといけないのではないか、何か誤った時期に誤った政策をやったという分析が多かったのですけれども、逆に今の日本の状況は財政再建の好機であると。先ほどの田近分科会長代理のお話にもありましたけれども、今やらないでいつやるかということだと思います。

最後に、印象的だったのは、若者のための予算とか、教育研究開発費を非常に削ってしまったがゆえに、将来の成長性に関して懸念を抱いている方々がいらっしゃいました。やはり財政規律の維持と、将来にわたって成長力を保つ、この両立を考えながら経済運営を進めていかなければならないと思いました。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 続きまして、フランス、OECD、スウェーデンについて、赤井委員、宮島委員、お願いします。

〔 赤井委員 〕 では、ポイントを絞って説明したいと思います。私の方からはフランスとOECDに関してということで、資料でいいますと18ページになります。

この図にありますように、フランスも厳しい財政状況が続いております。ただ、このグラフを見ていただきますと、財政収支は改善の方向にあるということが見えるかと思います。先ほども出ていましたけれども、やはりEUとの関係で、過剰財政赤字手続というものが適用されているのですが、マーストリヒト基準を超えた厳しい財政状況から脱出してこそEUの一員であるというようなプレッシャーもあり、特にマクロンがそれを重視しているということで、歳出改革に取り組んだ結果、19ページ、2017年に財政収支マイナス3%以下がほぼ達成される見込みと、財政の健全化が進んでおります。そのために厳しい歳出改革に取り組んでいるので、今後、これを維持していけるかというところは、リスクもあるのですけれども、マクロンがEUを重視しているということもありますので、それを達成するべく今後も努力していくことが見込まれます。

20ページが歳出の中身ですけれども、特徴としましては、3カ年の政策分野別のシーリングの設定をしているとか、右は5カ年にわたる歳出総額上限の設定をしているということで、このような取組があります。

特に、21ページと22ページですが、21ページは社会保障支出の管理、これはこれまでにも紹介されたことがありますけれども、ONDAMという医療保険支出目標というものを決めまして、その範囲内で支出をして、右下にありますようにほぼ達成できているということです。

地方政府に関しましても、ODEDELという地方財政の支出目標というものを導入しておりまして、特に2018年からはより厳しく水準の目標を決めて、一定規模以上の自治体だけですが、その水準を上回った場合には交付金を減額する。実際、どこまでできるのかというところもあるのですけれども、そういったような仕組みで規律を守らせるという試みをしております。目標を甘くすれば達成できるのではないかという議論はありますし、詳細を見ていかないと真の意味での厳しさはわからないのですけれども、こういうような目標を達成して、国が取り組んでいるという意欲を示すことで、国全体として財政健全化の方向に向かえるのではないかと思いました。

OECDに関しては、これまでのところでも議論が出ているのですけれども、全員が後期高齢者となる日本では、やはり2025年の前にプライマリーバランスの黒字化を達成した方がいいのではないかということと、今やらなくてはいつやるのだということで、GDPギャップが改善しているところで、経済が好調な時こそ財政健全化を進めるべきではないかというような議論が多かったということです。

以上です。

〔 宮島委員 〕 フランスに続きまして参りましたスウェーデンです。

財政の状況が日本とかなり違いまして、まず補正予算も含めた実績ベースで、歳出シーリングの仕組みを厳格に遵守しているというところがありました。さらに、財政健全化目標などの財政運営に関するフレームワークについては、与野党が合意して、どんな政権であっても8年間変えられないようにしているというところが印象に残りました。

それから、来年から財政健全化目標の水準を引き下げる予定なのですけれども、これは、言ってみれば、今のままだと財政が良くなり過ぎるというか、大変うらやましい状態でありまして、少し緩めることで、今、予想されている人口増加に伴う教育、それから福祉などの分野の需要増の対応の余地を広げていく。これも、やはり経済が非常に好調で、財政運営も健全だからこそできるということです。

そうはいいましても、スウェーデンは国民所得における税や社会保障の負担が大きい国なのですけれども、非常に印象に残ったのは、国民が負担に見合ったサービスを得られていて、減税すると必要なサービスを受けられなくなるのではないかという認識を持っているということです。つまり、歳出と歳入がちゃんと国民の中でも結びついているという印象を持ちました。例えば、日本から見ると、国立病院で診察のために長時間待つ必要があるというのは国民の不満になりそうなものですけれども、これを完全に解決するにはすごく多くの費用や負担が必要ということが認識されているので、どこまでやるのが自分たちに合っているのか。いわゆる身の丈を知るというのですか、足るを知るというのですか、そういった感覚があって、国民はそれを全部満たすところまでは望んでいないというような様子でした。

特に、この点について印象的だったのは、やはり1990年代の金融危機の記憶が大きくて、あんな目にもう遭いたくないというようなことだと思うのですが、この経験を繰り返さないように、政治家は選挙のときも歳出シーリングの重要性を遵守することを訴えるということです。

ヒアリングの途中で、特に最初のうち、とても感覚がずれましたのは、私たちは自然と政治家、国民というと、歳出は拡大、給付は拡大、減税を望むというところから入っていくのですが、話をしているうちに、翻訳された先方の言葉について「え?今は黒字と言ったの?」、「赤字と言ったの?」、「それは与党が賛成で野党が反対なのですか?」と、頭の転換を求められるシーンが時々ありました。つまり、政治家や国民の期待する方向が日本と違うのです。もちろん、皆が皆そうというわけではないと思うのですけれども、現地のJETROの方に聞きましても、減税をすると国民は反対すると言うのです。要するに、自分たちが受けるサービスがちゃんと受けられなくなるのではないかという心配をする。全ての国民がそうではないと思いますが、財政の持続性に対する感覚、自分たちの財政という感覚が全然違うということに大変大きな開きがあるとの印象がありました。

余談ですけれども、スウェーデンの財務省に行きまして、ヒアリングをしていまして、いかにも財務省中枢職員という方がヒアリングの終わり近くになって、5時ごろだったと思うのですが、そろそろ切り上げたい、子供を迎えに保育園に行くからと言ってきました。これは別にいつもではなくて、予算編成の本当にぎりぎりの時は彼らも24時より遅くまで働くことは普通にある。しかし、そうではないときは、普段から早く帰ってきちんとやるのだというようなことをおっしゃっていて、今の日本の状況を見まして、課長や補佐たちがヒアリングの途中に、今から保育園に迎えに行くのだというようなことができる国になるのは何年後かなと思い、それも大変印象に残りました。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 次は、EU、欧州委員会、それからオランダ、ドイツについて、これは土居委員からお願いします。

〔 土居委員 〕 田近分科会長代理とともに、EU、欧州委員会とオランダ、ドイツに参りました。

資料の39ページにもありますけれども、EU加盟国は世界金融危機、欧州債務危機の後に洗練化された財政運営に関するより厳格なモニタリングの仕組みに基づいて、かつ、それをPDCAサイクルのような形で、毎年フィードバックするような形で財政運営を行っています。もちろんギリシャなど、まだ財政健全化の道半ばという国もありますけれども、経済再生のための金融緩和と規律ある財政運営が両輪となって、域内の経済の安定化、財政健全化は進んでいるという印象を持ちました。特に、財政規律については、複雑な構造的財政収支ではなくて、よりシンプルに歳出の伸び率を潜在成長率以下に抑える歳出ベンチマークというものを重視している。かつ、その指標において歳出の定義として利払い費は除くというような形で、結局のところ、プライマリーバランスの考え方に近いものになっているという意味では、日本と似ているところもあるのかなというようなヒアリングをしてまいりました。

次に、オランダですけれども、42ページにありますように、財政健全化努力を続けている中でも、引き続き経済成長率が改善、向上しているという恵まれた状況にありまして、これがまさに財政健全化と経済成長の両立といったところだろうと思います。特に、オランダの一つの特徴は、中立的な立場で経済予測などをする経済分析局(CPB)というところがあります。ここが最も現実的と考えられる経済・財政の見通しを策定していて、より良い政策が経済成長にプラスを与えるという効果が、こういう見通しに反映するなどとは考えていなくて、基本的にはより客観的な、最も現実的な経済見通しに基づいて、かつ歳入と歳出を分離して考える。つまり、歳入が増えたということが途中で観察されたからといって、それを何か歳出増に充てようというような財政運営の発想を排しているところが、かなり重要なポイントになってくるかと思います。

それから、44ページですけれども、財政運営を支える6つの原則、コーナーストーンと彼らは英語で呼んでいたわけですけれども、これら6つは我々の今後の財政運営を考える上でも示唆に富むところがありました。

特に、4番目の歳入・歳出の分離というのは、オランダは連立政権になることが多いのですけれども、政権が始まる前に連立合意というものを交わして、任期4年間の中でひとたび合意されると、それをコミットするという形で事前にその中で歳出シーリングというものを定めて、政権期間内の歳出総額を一旦決めると基本的には変更しない。歳入が増えようが何しようが、基本的にはこれを守るという方針になっているということであります。

かといって、全く柔軟性に欠くということではなくて、多少の年度間の歳出増、歳出減、例えば景気が悪くなったときには多少歳出を増やすとか、景気が良くなったら、その分、総額の範囲内で歳出を減らすというような柔軟性は一定程度確保している。ただ、歳入が増えたからといって、それを補正予算で振る舞うような議論は封じ込めているというところがポイントになって、この6つのコーナーストーンというものを重んじているということであります。

それから、4年に一度、選挙があるわけですけれども、これは46ページにも例がありますけれども、先程御紹介した経済分析局が総選挙の前に各政党のマニフェストを経済、財政、所得などの点で包括的に分析していて、これを国民にも情報提供して、投票行動を決める際の参考にしていただく。経済分析局は、もちろん各政党に対する好評価、悪評価があったりするので、政党からひどいことを言うじゃないかとかいうような批判も受けたりするとはいえ、そこは動じずにしっかりと国民に情報提供する。各政党のマニフェストがどういう経済効果をもたらすかをしっかり示しているというところは一つ特徴的かなと思いました。

もう一つは、財政健全化は長期にわたることが多いですので、政権交代後も改革が持続されるように、関係省庁や中央銀行の高官が健全財政を目指した目標、取組に関する提言をまとめて、議会に報告することが定例化しているというところが非常に興味深い話でありました。

最後に、ドイツであります。まず一つ特徴的なところは、長期推計を3年に一度行って定例化していて、予見可能な財政リスクを中期財政計画などの策定に活用しているというところは、我が国にとっても非常に参考になるところではないかと思います。この取組は、冒頭申し上げたように、EUを通じて欧州全体の取組としても定着させていて、ドイツが自らの国で行ってきたことが各国にも良い影響を及ぼしているのではないか。

それから、先程田近分科会長代理からもありましたけれども、当時のショイブレ連邦財務大臣が「黒字のゼロ」という簡潔な言葉で、これは流行語大賞第2位というぐらい国民に広く広まった言葉として、簡潔、明瞭な言葉で国民の理解を促したところも非常に重要なポイントかと思います。

最後に、46ページに戻るのですけれども、オランダの財務大臣の部屋に「セイレーンの誘惑」というタイトルの絵画が掲げられていました。これは何を意味しているかというと、ギリシャ神話のオデッセイがまさにこれから難航海に臨むと。この難航海を財政健全化に取り組むところと重ね合わせて、誘惑に負けない仕組みづくりが大事だということを、その絵を掲げることで案じているというところが非常に面白かったと思います。

私からは以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

続いて、アメリカ、カナダ、IMFについて、大槻委員、お願いします。

〔 大槻委員 〕 ありがとうございます。

まず、IMFの方から御説明させていただければと思います。70ページ目になります。先ほど田近分科会長代理からもありましたように、IMFについては、そもそも政治にはどうしても財政赤字の拡大バイアスがあることを前提として、そういった中でも政治と、その後ろにいる国民意識の問題に非常にフォーカスを当てて、議論しているということが印象的でした。

先程御説明もありましたように、左の方ですが、財政ルールについては2つ、分けて考えるべきであるということを明確に言っています。ここで言うと、1のフィスカル・アンカー、これは最終的なものということです。それから、オペレーショナル・ガイダンス、毎年のガイドラインということになると思いますけれども、それぞれを分けて、今、日本でもディスカッションになっていますけれども、債務残高のGDP比率については、先ほどもありましたけれどもフィスカル・アンカー、つまり最終的な財政目標であって、年度のオペレーショナルなものとして、プロシクリカリティーになりがちですし、GDP次第で数字が変わってくるということもありますので、ストラクチャルにどこまでやれるかということも含めて、やや複雑になりがちなこともあり、IMFの考え方としては債務残高、対GDP比率はフィスカル・アンカーには適するが、オペレーショナル・ガイダンスには適さないということを議論していました。

米国について申し上げますと、先ほどの誘惑に負けやすい国の筆頭かもしれませんが、こちらについては2つほど補足で述べさせていただければと思います。田近分科会長代理からもありましたように、財政健全化の必要性を国民に理解してもらうことはなかなか難しいということはどうしても言えるかと思います。為替、金利への影響がどうしても限定的であって、先ほど来様々な国で述べられていたような、後でカナダにも触れますが、国民に痛みを強いる事態がそこまで現実化していないということは、政権も、議会も、シンクタンクも、専門家がみんな口をそろえて指摘していたところです。

ただ、そういった国であっても、60ページを御覧いただければと思うのですが、こうした困難さを共有しつつ、予算管理法の効果もあると思うのですけれども、右側を御覧いただきますと、国防費と非国防費からなる裁量的経費が対GDP比で着実に減少している。これは、中立的である議会予算局(CBO)の見通しでも御覧いただきますと、赤い方ですけれども、じわじわと継続的に減少していくように管理されているということが1点。

それから、次のページになりますが、義務的経費についても、御存知のとおり政権としては大胆な歳出抑制策を提案しているということで、これはどうなるかわからないということはあるのですけれども、日本に比べればまだ高齢化の影響がそこまで差し迫っていない中においても、政権が危機感を持ってこれだけの抑制策を提案していること自体、注目に値するのではと思いました。

もう一点ですが、先ほど来の経済見通しの客観性についてであります。先ほど申し上げたように、CBOが中立的な機関として信頼を確立していますし、行かれた方は御存知だと思いますが、非常に御経験もあって、しっかりしたスタッフが推計しているということでリスペクトされていて、ここについては疑義を挟まない前提でもって、様々な考え方を意思決定していくためのインフラとして、ある程度の尊重がされているというところが一つポイントかと思いました。

カナダについて申し上げます。カナダのページを御覧いただきますと、先ほど来お話にありますとおり、代表的な健全財政の国ということであります。そこを支えているのは、制度面というよりは健全財政を強く期待する国民意識だということを、様々な関係者の方からコメントとしていただきました。経緯は様々ですけれども、特に90年前後の財政赤字に伴う金利の上昇ですとか、カナダドルが減価してしまったことを通じて国民自身が痛みを感じたということで、財政赤字がこんなにつらいものだということをまだトラウマとして持っていることがやはり大きかったと思います。

少し余談ですが、行かれた方は御存知だと思いますけれども、行ったときもとても寒くて、マイナス40度で、我々、慌てて長靴を買わないと歩けないくらいの感じでありまして、南に、アメリカの国境から100マイルのところに90%の人口が住んでいます。そういったことで、行き来が非常に盛んで、しょっちゅうアメリカに行っては買い物をすることが習慣化していると、先ほど申し上げた為替が弱くなってしまうことの痛みがより国民の身近な問題として意識されているのだろうと感じました。

財政当局のお話では、財政目標の変更が政治的なリスクを伴うということを認識しており、ある程度保守的な見通しを立てることで目標を着実に達成するための工夫を行っているということでありました。もう一つ、先ほど来の中立性というところですけれども、これはアメリカと少し違うところでありますけれども、民間予想のアベレージを使っているということで、ある程度民間の意見も聞いていると。それから、議会予算局(CBO)でも政権の見通しを適切に評価して検証をするという形になって、政府の恣意性を防ぐような仕組みができているということだと思います。

最後にまとめですけれども、これらは非常に大局的な2つですけれども、一番の違いは、制度もさることながら、繰り返しではありますが、政治、国民意識といったことが重要で、避けては通ることができないところだと思います。

アメリカについては、印象よりは歳出削減の旗印が少なくとも上がっているということで、日本も見ておくべきところがあるのではないかと感じました。さらに、中長期的な予算の議論も行っているということだと思います。

IMFからは、最初、田近分科会長代理からも指摘がありましたけれども、財政健全化の道筋の不透明さが結果としてマクロ経済のパフォーマンスを低下させており、消費喚起や物価上昇の観点からも信頼性の高い財政ルールを策定して、着実に健全化を進めることが重要との指摘を受けておりますが、そうはいっても日本とアメリカは非常にスペシャルだということもIMF等からコメントがありました。それは、先ほど来のEUのような縛りがない、為替の問題などが感じづらいというところに起因すると思います。

ちょっと余談かもしれませんけれども、金利のあたりについては、帰ってきてからの話ですが、足元だと、相当LIBORの金利上昇や、長期金利などもじわっと上がっていて、市場の方の受け止め方は、やはり財政の問題に対する不安であったり、債務上限についての問題が少し意識されているというような声も聞かれる中だと、今までは意識が低かったことについても、これからは意識が進む可能性もあって、やはり楽観視できない市場の状況にあるのかなということも意識しながら帰ってきたところであります。

以上でありました。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

各国の経済、そして財政健全化の取組の御報告、ありがとうございました。大変興味深い御報告であったと思います。各国、経済だけではなくて、政治のコミットメントがいかに重要になっているかということも印象づけられました。

本当ここからはフリートーキングですので、どんなことでも御自由にお話しください。

では、今度は逆に末澤委員、佐藤委員、神津委員、岡本委員の順でお願いします。

〔 末澤委員 〕 私は2年前に米国とカナダを訪問させていただいたのですが、今年はラニーニャ現象で厳冬、実は2年前はエルニーニョ現象で暖冬でカナダは0度、ワシントンは25度でございました。そういった意味では御苦労でございました。

それは置いておいて、本日、8カ国御説明いただいたのですが、過去2年半の間に8カ国のうち7カ国で選挙がございました。なかったのはスウェーデンで、今年の秋の予定です。実は、7カ国での選挙は全て与党が負けていまして、うち5カ国でトップがかわりました。何をお伺いしたいかというと、本日、御説明あったと思うのですが、多分、この2年半の選挙の大きなテーマは、1つは移民・難民問題、もう一つは所得・富の格差拡大の問題があったと思います。あとは、やはり経済・財政政策です。つまり、今回、お伺いした8カ国、選挙があったところでは、何に注目が当たってそういった結果になったのか、特に経済・財政政策に関して、お答えできる範囲で結構でございますので、一言お願いしたいと思います。

〔 土居委員 〕 オランダは、2017年3月に選挙があって、一応、第1党は同じ自由党のままだったのですが、連立の他の党が負けまして、結局、連立合意になかなかたどり着けずに、10月にようやくできた。連立合意のために半年以上、時間がかかったということですが、その連立合意の内容はEUが定める財政ルールにきちんと沿っているかどうかとか、そういったようなこともきちんと確認をとった上で、一旦、連立合意ができたならば、しっかりと歳出シーリングを堅持して、残り4年弱の政権担当をするという形になります。結局、財政面では、もちろん選挙の時には様々移民を受け入れられるかどうかとか、そういったような問題はありましたけれども、財政健全化に対しての姿勢は引き続きというところであります。

ただ、ドイツは、報道等でも御存知かと思いますけれども、第4次メルケル内閣になりまして、歳出拡大が行われるのではないかとか、年金の国庫負担を増やすところで財源がまだ確保できていないのではないかとかような問題が残されておりますけれども、そうはいっても、やはりEUの中で財政健全化、あるいは財政規律を維持するという立場でおりますので、そこがアンカーになるというところは基本的に変わっていないのではないかと思います。

〔 遠藤委員 〕 英国は、まさしくブレグジットで、離脱条件の中にアイルランドの移民問題がまた大きく首をもたげてきていますので、引き続き大変な状況は続いていくと思っています。

〔 ~子田委員 〕 イタリアの選挙というと、いいかげんなイメージしか残っていないのですけれども、例えばフラットタックスにする等をベルルスコーニさんが言ったり、財政規律的にはかなり緩い、拡張的な政策を掲げている一方で、EUには残ると言っているのです。おそらく財政問題というのはどこもいいかげんなことを言っているから争点になっていないと思って、それよりも移民問題、アジアのイスラム諸国の方からやってくる移民をどういうようにするか。そこで厳しいとか、緩いとか、むしろそういった方が問題になったのではないかという印象はありました。

〔 赤井委員 〕 フランスの方は、前大統領の様々な問題もありましたけれども、やはりマクロンがこれまで経済の方で、マクロン法など様々な実績を上げてきたということもあって、マクロンへの期待が大きくてマクロンが大統領になった。期待もあるけれども、マクロンはEUのことも重視しているので歳出改革にも取り組んでいるということで、2017年度は財政赤字3%以下を達成できる見込みですけれども、今後、期待に応えられるだけの経済成長とか、経済面での期待に応えられるような状況を財政健全化とともに続けられるのか。フランスでは、そういったところが来年度から重要な視点になってくると思います。

〔 宮島委員 〕 スウェーデンはなかったので、そんなに話題にはならなかったのですけれども、やはりどの政権であっても与野党が8年変えないというのは大きいと思います。

あと、1990年代の金融危機というのは、本当にどのヒアリングに行っても最初はそこから入るぐらい、国民も政府も相当痛い思いをしたのだと感じました。そこで共通意識を持っているところから、財政が必ずしも与野党激突みたいにならない状況なのかなと思いました。

〔 大槻委員 〕 アメリカは、言うまでもなく、もし末澤委員の御指摘、御質問の件が財政健全化との関係でということであれば、そういったことではなかったということです。

カナダについての補足で、先程格差ということをおっしゃいましたけれども、今回、触れなかったことが1点あります。カナダは、連邦、中央政府の方は財政健全ですが、地方の格差は非常に大きく、財政も健全でない州の方が多いということで、ここら辺の州間の格差は今後の一つの課題であると思いますし、次回以降の財政調査のときには、ひょっとしたら地方の州政府の財政のところを見に行ってもいいのかもしれないと思いました。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、佐藤委員。

〔 佐藤委員 〕 本当はやはりこういった海外調査をすると、いかにヨーロッパとかアメリカは素晴らしくて、我々にそれに従うべきかというメッセージ性を持つのですけれども、今のヨーロッパとか、アメリカの状況というのは反面教師の部分もあると思うのです。もちろんヨーロッパの場合、移民の問題とか、アメリカもそうですかね。あと、EUとか、ちょっと日本にはない特殊事情がありますけれども、やはり財政問題が政治的な一つの争点になるのは事実であります。移民問題も、ある意味、財政問題の結果でもあるわけですよね。ですから、彼らの課題は何なのかということを、自分たちの反面教師として取り込んでいくということはあっていいのかなと思います。特に、財政再建をやろうと思ったときには、社会の分断を起こすことが一番危険なパターンですから。

とはいえ、やはり学べるものは少なくとも3点あったと思ったのは、1つは歳出に対してコントロールを適切にかけようとしている。ここの分科会もそうですけれども、我々か建議で言うのは予算で、補正が入っていない。だから、予算では幾らでもきれいにできるけれども、補正でぐじゃぐじゃというのが毎年の大体の落ちですよね。平均すれば、補正で大体5兆円使っていますから。やはりオランダもそうですし、スウェーデンもそうですけれども、歳出をちゃんと見て、歳出が目標を上回るようだったら翌年度の予算を切り詰めるのだと。それは、フランスのONDAMでもそうですよね。ですから、やはり歳出にもっとちゃんと注目するべきだということがあっていいと思います。

もう一つは、やはり国民からの信頼。以前、私も英国で財政責任庁のお話を伺いましたけれども、客観性が第一。先程の岩本先生たちの議論ではないですけれども、正確性ではなくて客観性だと思うのです。将来など誰も予想はできないわけで、客観的に出された試算であれば、それには信頼が伴うわけです。やはりどうしても日本の試算はどこがやってもお手盛り感があるので、どうやって試算に対して客観性を持たせるのか、国民の信認を確保するのか。これは学べるところがあるかなと。

それから、最後に1つだけ。明後日4月1日になると、毎年、各新聞で今年の皆さんの生活はどうなるかということで、増税はこうなりました、受益はこうなりましたと報道があります。つまり、国民は生活者として財政と関わるのです。生活者としての財政は、歳出が増えた方がいいし、増税は嫌なわけです。それは自分たちの生活を直撃するから。しかし、スウェーデン等の話を聞くと、彼らの目線はもう少し高く、有権者目線なのだと思うのです。だから、この国の財政はどうなるのかという観点から受益と負担を捉えている。この目線の高さの違いを感じるということです。

〔 田近分科会長代理 〕 神津委員。

〔 神津委員 〕 それぞれ大変御苦労されたことに感謝を申し上げたいと思いますし、参考になる話が随分あると思いました。

幾つか申し述べたいのですけれども、まず1つは政治のリーダーシップの重要性ということです。これは既にお話もありましたけれども、スウェーデンの8年間の財政のフレームワークの話は非常に象徴的かと思いますけれども、与党であろうが、野党であろうが、あるいは政権交代があろうが、なかろうが、やはり一貫したものを大事にするというリーダーシップを求めていくことが大事だと思います。日本の場合、3党合意、一体改革がないがしろにされているというのは非常に対照的だと思います。前にもこの場で、政治の世界に勇気を求めていきたいという言い方をしましたけれども、リーダーシップは極めて重要ということだと思います。

それから、これもお話が出ていますけれども、予算編成の枠組みのルール化という視点であります。様々な事例があると思います。これは大いに参考にすべきだろうと思いますし、日本の場合、例えば新規国債発行、あるいは歳出額の上限といったことも含めて、枠組みのルール化ということが検討されるべきだと思います。また、今、佐藤委員がおっしゃられました、この財政審でも重ねて様々な方から意見が出ていますけれども、補正予算編成も含めての財政規律の厳格化について、ルール化が必要だろうと思います。

それから、財政の支え手を増やすという視点についてですけれども、OECDの報告をいただいています。2025年より前に目標達成年度を設定すべきと、これはこれで大事だと思います。それと同じくOECDの報告の中で、国民が安心、信頼を持てるようなフレームワークとすることが重要だと。あるいは、歳出を画一的に削減するのではなくて、支出全体の見直し、削減合理化の対象を決定するということが望ましいと。これは非常に大事な視点だと思います。やはり財政の支え手を増やすということを十分に意識しながら、削減の状況、あるいは振り返りを含めて検証しながら、国民の暮らしに直結する、回り回って財政の支え手を増やすということを考慮した上で、雇用の質の向上、あるいは格差の是正、貧困の解消、そういったことを考えていく必要があるだろうということも改めて思ったところです。

最後に、これも前に申し述べたことはあるのですが、やはり日本の状況を考えると税財政一体での対応が不可欠だと、歳出面の対応だけでは極めて限界があるということははっきりしていると思います。この点についても、今後、踏み込んだ提言が必要なのではないか。このことを申し述べておきたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

では、岡本委員。

〔 岡本委員 〕 素晴らしい報告、本当にありがとうございました。

今、制度の問題がいろいろあるとか、あるいは国民の意識が日本と全然違うと、本当に日本と違うなということをいろいろ伺ったのですが、その中で基本的に日本と何が違うのかといったら、やはりEUの存在だと思うのです。各国は自分で好きなことができない。要するに、EUの中で対GDP比で財政赤字3%以内、債務残高60%以内とか、もともと財政をきっちりしようというベースがあるから、例えばギリシャの問題や、オランダの問題等があっても、そういった中でその国は考える。つまり、政治家自体がものすごく財政に近い、それに応じて国民も財政に近いと、そういった形になっている。カナダの話も先ほどありましたけれども、これはEU加盟国ではないが、かつて財政危機があった。その財政危機のときも、国民レベルでそこについてしっかり考えた。こういうような背景のある国と、今の日本の政治状況と国民の考え方があまりにも違うのです。

そのように考えた場合、せっかくここまで調べた調査をどのように活用していくかということです。これから6月まで財政問題について考えるときに、このようなヨーロッパにおける、欧州委員会、EUの締めつけではないですが、もっと日本という国を超えたような存在があって、こういう中でやっているのだと。要するに、政治も選挙だけ考えているのではない、逆に言えば向こうは選挙があってこれを言っているのだと。これも、やはりEUがあるからだと思うのです。そういった仕組みを6月にも、細かいところまでは要らないと思いますが、紹介していくことが必要だと思います。それでもだめだったら、IMFでもどこでもいいですけれども、日本がいかにひどい数字かということを、我々も言いますが、やはりそういったことを言っていくことも必要であると私は思います。

それから、昨日の経済財政諮問会議に提出された中間評価を見ますと、PB改善の進捗の遅れの要因として、税収の伸びが緩やかだったこと等の影響が0.8%程度、消費税率引上げ延期の影響が0.7%程度、補正予算の影響が0.4%程度と指摘されていますが、こうしたことは我々がずっと言ってきたことです。その言ってきたことも全部、現実に今、現れてきているわけです。今回、税収の見通しをどう考えるかというときに、やはりベースラインケースで考えることは当然だと思います。ベースラインケースだって、成長率が名目2%、実質1%で本当にできるかということはあるわけで、もちろん我々経済界としてもSociety5.0ということで経済を発展させるようにとかやりますが、財政の方はやはりきちんと見ないといけないし、消費税率の引上げは必ずやらないといけない。補正については、やはり財政法29条があるわけだから緊急のものだけに限るとか、本当にこれを実行すると。小林委員の産経新聞を読んでいたら、そこもきちんとやると書いてありましたので、おそらくやってくれると思いますが、いずれにしてもこれはものすごく重要なので、私はこういうものをきっちりとそういった場で議論するべきだと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、冨田委員。

〔 冨田委員 〕 お聞きしたいことなのですけれども、ヨーロッパでも、アメリカでも金利が低くなっていて、我々の感覚で言うと、それが財政規律を緩めてしまっていることにつながっていると私は思いますが、そういった点についてはどうだったか、それぞれ財務省に行かれていると思いますので、お聞きしたい。

2点目は、ドイツは随分前のハイパーインフレーションの経験、スウェーデンについては先ほど宮島委員が言われたような、90年代の財政危機という国民生活が極めて圧迫されたという経験なのですけれども、では、他の国で、イタリアなどはどうだったか。何が健全化のきっかけになっているかということについて、お聞きになられたかどうかは別にして、何か感じられているところがあったら教えていただきたい。

それと、もう一点、簡単にですけれども、フランスについて、先ほどお伺いした中では、赤井委員、多年度のシーリングを御指摘になっていたのですけれども、その有用性や、導入の経緯について、かつてですと英国がやっていたわけですけれども、そういったことについての評価をもしお聞きになっておられたら、お教えいただきたいということです。いずれも簡単で結構です。

〔 竹中委員 〕 意見というか、感想に近いのですけれども、自分の仕事柄、やはりスウェーデンに一番関心があって、本日も相当インパクトのあるお話でしたけれども、私自身はまだスウェーデンに行ったことがなくて、ただ、スウェーデン大使館などにお友達が多くいて、本日、お聞きしたようなお話を日ごろも聞かせていただいています。

そういったお話をもとに、私たちも「チャレンジドをタックスペイヤーにできる日本」ということを掲げて活動させていただいていますが、やはり現実にスウェーデンは相当重症というか、重度の方までが、その方のできるお仕事を国中で開発してやっていらっしゃって、タックスペイヤーになっていらっしゃる。しかも、タックスの割合も一般の方と全く変わらない割合で、私らの感覚から言うと取られているのですけれども、そのことをお聞きしたときに、いや、これを払うことが自分の権利なのだとおっしゃったのです。これを払っていることによって、自分がこのように働ける環境を国家が社会の中に作っているということをきっぱりとその重症の方がおっしゃって、非常に印象に残っています。

そういった雰囲気を、単に国柄が違うで片づけるのではなくて、何か日本の国の元気につながるようにうまくヒントとして使えないかと思いながら、改めて本日もスウェーデンのお話を聞きました。障害のある方とお会いになったりはされませんでしたか。

〔 宮島委員 〕 今回は、残念ながら政府等の方々だったのですけれども、本当に様々なところで国民が自分でちゃんと立っているというか、何でしょうね、国だけではなくて自分で立っているところに対する意識を感じました。

〔 竹中委員 〕 日本も、本当にそういったイマジネーションをたくさん持たれている方が多いので、近づくことはできると思うので、頑張りましょう。

〔 田近分科会長代理 〕 では、冨田委員からいただいた質問について、お答えしていただける範囲で御回答をお願いします。

〔 ~子田委員 〕 イタリアですけれども、緊縮財政を進めたときの政策が非常に評判が悪いというところは、例えば5人のエコノミストと一堂に話したときに、要はその時期にそういった政策をとるべきではなかったかと質問したところ、5人が口をそろえてイエスというように答えて、そういったコンセンサスがあるのだと。そのときに聞いた話は、当時の政策は近年最悪の政策だと認識されていて、産業が発展しているヴェネト州というところで、モンティ政権の時代に140人の実業家が自殺したと、それだけ追い込まれたという話をしていました。ですから、イタリアがGIIPSの一角になって債務危機で追い込まれたというのは、そこまでに既に財政がかなり悪化していたということがあるわけですから、教訓としては、もちろん最悪期に債務削減をするともっとひどいことになるということはあるのですけれども、それよりも前に、そうなる前に手を打とうということが最大のメッセージだったと思います。

私は、イタリアもちゃんとやっているところがあるのだなと。彼らエコノミストの人たちが言っていて印象深かったのは、政治家はだめなのだけれども、イタリアという国家はしっかりしているのだというようなことを言っていたのです。国家というのは、官僚機構とか、中央銀行とか、そういった人たちが一生懸命、真面目に支えていると。政治家がでたらめなことをやっていても、私たちはきちんとやっているのですという国民の妙な自負心みたいな、その辺が印象に残りました。

例えば、議会の予算局というところが、マクロ見通しの作成と財政ルールの遵守状況の評価というのをやっているのですけれども、3人の理事がいまして、この3人の理事と直接、相対面して話したときに、彼らは議会の両院の議長によって任命されて、両院のそれぞれ3分の2以上の同意を得て選ばれる。つまり、完全に中立的な存在として機能しているというようなことを言っていまして、これこそ政権がどちらに転んでも、一応、その人たちの言うことは中立だと思って受けとめると。そういった仕組みをつくられたのは2014年だそうですけれども、やはり過去の教訓を経て、正しい軌道でやっていこうというようにしているのではないかと、印象に残りました。

〔 赤井委員 〕 では、フランスに関して簡単にコメントします。

資料でいいますと20ページあたりになるかと思うのですけれども、2012年、憲法に基づいて複数年財政計画法というものが制定されています。もちろん、その時々に応じて調整はありますけれども、それがベースになっていて守っていこうということがまず大きいというのと、20ページにもありますように、以前の歳出ルールをさらに進化させるということで、調整可能な歳出と硬直的歳出を分けて、調整可能な歳出の上限を全体で決めており、さらにシーリングを政策分野ごとに決めております。

また、次のページでは、21ページのところですけれども、御存知のようにONDAMという医療保険支出に関しましても細かく、開業医に関してはこの程度の総額、あとは病院、障害者向けの施設サービス、それぞれに関して、ここまでは削減できるだろうというようなことを決めて、実際、達成してきています。そのように将来の見通しのようなものを決めて、規律づけているというところが効果的なのかなと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 本日は、これで終了させていただきます。いつものとおり、本日の内容については私にお任せいただき、この後の記者会見で御意見の様子について報告させていただきます。

次回、いよいよ、これまでの御報告、そして本日の森田先生、岩本先生の社会保障の推計、各国の経験等を踏まえて、財政健全化に向けてどのように作戦を練っていくのかという議論に入っていきます。次回の日程については、調整の上、改めて事務局より御連絡させていただきます。

本日は、これに閉会いたします。御多用中のところ、ありがとうございました。

午後4時00分閉会

財務省の政策